2020年10月1日2024年4月30日資産運用
投資信託は特定口座を利用したほうがよい? 属性や投資スタイルで変わる最適の種類とは?
投資信託に利用する口座は、特定口座を含む3種類から選べます。しかし、「どの口座を選べばよいか分からない」「特定口座の種類や特徴を詳しく知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、投資信託で利用する特定口座の種類や特徴・選び方のポイントについて解説します。自分に適した特定口座を選ぶことで、効率よく資産運用ができるでしょう。
目次
投資信託の税金と控除について
投資信託で得た利益はどのように課税されるのか、分からない方も多いのではないでしょうか。損失がある場合は控除を利用できるため、うまく適用すれば節税できます。ここでは、投資信託で課せられる税金と控除について見ていきましょう。
売却益・分配金に課せられる税率
投資信託の売却益と分配金に課せられる税率は、いずれも20.315%です。売却益の場合、課税対象となるのは売却額と購入額の差額で、売却したときに手元に入るお金ではないので注意しましょう。売却額より購入額の方が大きい場合は損失となり、課税されません。
例えば、購入額が90万円・売却額が100万円で売却益が10万円だった場合、納める税金は「10万円×20.315%=2万0,315円」の計算式で求められます。
分配金の場合、分配金として得た利益がすべて課税対象です。分配金が2万円なら、納税額は「2万円×20.315%=4,063円」となります。ただし、特別分配金は元本の払い戻しにあたるため非課税です。
損失は3年にわたって繰越控除が可能
投資信託で損失が出た場合、最大3年間にわたり繰越控除ができます。繰越控除とは、控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越して、各年の運用益から差し引ける制度です。課税対象となる金額が減るので、翌年以降の節税につなげられるでしょう。
ただし、繰越控除を利用する方が専業主婦でかつ夫の給与が1,000万円より少ない場合は注意が必要です。妻の年間所得は繰り越された損失を控除する前の金額で判断するため、所得の額によっては配偶者控除が適用できなくなります。
繰越控除を利用したいと考えている方は、配偶者控除を適用する場合と比較してどちらがより節税できるか確認すると良いでしょう。
【特定口座の種類】源泉徴収「あり」と「なし」
投資信託で選べる口座は、一般口座と2種類の特定口座の合計3種類です。ただし、NISAを利用する場合はNISAを含む4種類になります。中でも特定口座はメリットが多く、投資信託を行っている方のほとんどが利用しているようです。ここでは、2種類の特定口座について解説します。
確定申告の手間が省ける「源泉徴収あり」
源泉徴収ありの口座は、売却損益と納税額の計算・源泉徴収を証券会社が行ってくれます。源泉徴収により納税が済んでいるため、確定申告が不要なことがメリットです。ただし、複数の運用している口座のうち一部の口座で損失が出ている場合は、確定申告をしたほうが良いでしょう。損益通算することで、過払い分の税金が還付されます。
「源泉徴収なし」でも売却損益計算はしてくれる
源泉徴収なしの場合、自分で税金を納める必要があります。利益が20万円を超えているなら確定申告をしましょう。ただし、「年間取引報告書」が発行されるので、売却損益の金額を記入するだけで簡単に申告できます。
複数の口座を管理する方は、源泉徴収によって損をする場合もあるでしょう。さまざまな控除や損益通算を利用したいなら、源泉徴収なしの口座を選ぶと良いかもしれません。
特定口座「源泉徴収あり」のメリットと注意点
源泉徴収ありの特定口座は、源泉徴収を自動で行ってくれるので手間がかからないことがメリットです。ただし、中には確定申告したほうが良いケースがあります。ここでは、源泉徴収ありの特定口座のメリットと注意点について見ていきましょう。
計算から納税までの手間が省略できる
源泉徴収ありの特定口座は、売却損益と納税額の計算・所得税や住民税の納税までを証券会社が代わりに行ってくれます。したがって、確定申告は不要で、申告書の作成や計算の手間が省略できることが大きなメリットといえるでしょう。確定申告をする場合でも、年末に送付される「年間取引報告書」を利用すれば、簡単に申告書が作成できます。
確定申告したほうがよいケースもある
源泉徴収ありの特定口座は確定申告の必要はありませんが、中には申告した方が良いケースもあります。例えば、運用している複数の口座の中に損失が出た口座がある場合、確定申告をしないと税金を余分に納めてしまうかもしれません。
利益と損失を相殺する損益通算を行えば、払いすぎた税金は還付されます。また、控除しきれない損失は翌年以降に繰り越すと良いでしょう。いずれも源泉徴収では対応しきれない部分なので、確定申告をおすすめします。
サラリーマンや年金受給者は注意が必要
投資信託の利益が20万円以下の場合、原則、確定申告や納税は不要です。しかし、源泉徴収ありの特定口座を利用していると、自動的に税金を徴収されてしまいます。確定申告をすれば過払い分は戻ってきますが、口座のメリットは生かせないでしょう。20万円を超える利益が期待できない場合、源泉徴収なしにするのも選択肢のひとつです。
特定口座「源泉徴収なし」のメリットと注意点
源泉徴収なしの特定口座は確定申告を自分で行う必要がありますが、税金を自動的に差し引かれないのがメリットです。手元に残る資金が多ければ、より効率的に再投資できます。ここでは、源泉徴収なしの特定口座のメリットと注意点について見ていきましょう。
利益を再投資に回せる
源泉徴収なしの特定口座は税金を自動的に差し引かれずに、多くの資金を再投資に回せるのがメリットです。例えば、100万円の売却益を得た場合で考えてみましょう。源泉徴収ありの口座だと約20万円が自動的に引かれて、手元に残るのは約80万円です。一方、源泉徴収なしの口座なら、100万円を全て再投資に回せるのでより効率的に運用できます。
納めなくてもよい税金が自動納税されずに済む
源泉徴収なしの特定口座を選択するメリットは、納めなくてもいい税金を支払わずに済むことです。例えば、利益が年間20万円以下なら税金はかかりませんが、源泉徴収ありの特定口座だと自動納税の恐れがあります。源泉徴収なしの特定口座なら、自動的に源泉徴収されることはありません。
確定申告をする必要はありますが、年末に送付される「取引報告書」を使えば、申告書の作成も簡単にできます。
主婦や学生は扶養から外されるケースもある
源泉徴収なしの特定口座の場合、主婦や学生の利益が年間38万円を超えると扶養から外されます。扶養から外れると、配偶者控除や扶養控除が受けられません。したがって、家族単位で見たときに納税額が増えてしまう恐れがあります。
ただし、源泉徴収ありの特定口座ならどれだけ利益を出しても扶養からは外れません。一方、利益が20万円を超えない見込みの主婦や学生は、源泉徴収なしの特定口座を選ぶと良いでしょう。
「源泉徴収あり」が向いているタイプ
年間20万円を超える利益を出しているサラリーマンや年金受給者の方、年間38万円を超える利益がある主婦や学生の方、複数口座を運用していない方は「源泉徴収あり」が向いています。
20万円を超える利益があるなら自動的に税金を納めてくれるだけでなく、源泉徴収ありのデメリットも関係ないため損をすることがありません。また、主婦や学生の方は源泉徴収ありにしておけば扶養から外れないのでおすすめです。
「源泉徴収なし」が向いているタイプ
複数口座を運用している方や年間20万円以下の利益しか見込めない方は「源泉徴収なし」がおすすめです。
利益が20万円以下だと税金がかからないので、源泉徴収なしにすれば納めなくてもいい税金を自動的に源泉徴収されずに済みます。また、複数口座を運用している場合、損益通算や繰越控除を受けるには確定申告が必要です。つまり、自分で納税額を計算して申告できる源泉徴収なしの特定口座が向いています。
特定口座の種類変更はできるのか?
利益や運用方法、生活が変化したことで、特定口座の種類を変更したいという方もいるのではないでしょうか。ここでは、特定口座の途中変更が可能かどうか、また変更する場合はどのような点に注意すべきかを解説します。
源泉徴収「あり・なし」の途中変更は可能
特定口座の源泉徴収「あり・なし」の途中変更は可能です。源泉徴収なしからありにすることも、源泉徴収ありからなしにすることもできます。ただし、適切なタイミングで手続きをしないと変更が認められないことがあるため注意が必要です。
種類変更するときの注意点
特定口座の種類変更は、その年の最初の取引が行われる前であれば可能です。通常は1月4日に最初の取引が行われますが、特定口座の場合、2営業日前までに売買注文を成立させる必要があります。例えば、来年2021年に変更したい場合、1月4日(月)の2営業日前である12月29日(火)の売買が最初の取引です。
種類変更をしたいなら、12月29日から変更日までの間は取引ができなくなることに注意しましょう。また、12月中旬を変更期限としている証券会社もあります。
特定口座の種類選びに迷ったら
投資信託でどのくらいの利益が出るか分からない方は、どちらの特定口座を選べばいいか迷うかもしれません。そのようなときには、専門税理士への相談がおすすめです。
専門税理士に相談すれば、特定口座の種類の選び方だけでなく、投資先の選定や運用手段についてもサポートしてくれます。投資信託への理解が深まり、リスク回避ができるようになるので安心して資産運用できるでしょう。
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まとめ
特定口座には「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2種類があります。源泉徴収ありの特定口座は確定申告の手間がかかりませんが、余分な税金を納める場合があることがデメリットです。一方、源泉徴収なしの特定口座は確定申告が必要ですが、支払わなくてもいい税金を納めるリスクがありません。
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現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
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