2020年10月5日2021年12月23日税務

贈与税の申告漏れや脱税はばれる?発覚するケースとペナルティは?

贈与税の申告書

贈与税を支払いたくないという理由で、あえて申告しなかったり脱税したりするケースがあります。申告漏れや脱税行為は後からばれるものであり、発覚した際には厳しいペナルティが科せられるので、正しく申告しなければなりません。贈与税の申告漏れや脱税がばれる可能性について知りたい方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、贈与税の申告漏れや脱税が発覚するケースについて解説します。ペナルティの内容や申告のルールが分かれば、贈与税を正しく納税できるでしょう。また、贈与税がかからない方法も紹介します。

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データで見る|贈与税の申告漏れ発覚の状況


贈与税の申告漏れは、毎年一定の件数が発覚しています。相続税の税務調査の際に発覚することも多く、申告を怠っていても最終的にはばれるケースが大半です。平成30事務年度を例にすると、実地調査の状況は次の通りです。

  • 実地調査件数:3,732件
  • 申告漏れ等の非違件数:3,549件
  • 申告漏れ課税価格:207億円(1件あたり平均555万円)追徴税額:67億円(1件当たり平均181万円)

また、無申告の割合は申告漏れ等の非違件数が82.6%、申告漏れ課税価格が88.3%と高い割合になっています。財産別の非違件数は現金・預貯金等が74.3%で1位です。

(参考: 『平成30事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁』

贈与税の申告漏れや脱税がばれるケース


税務調査や法定調書、不動産の登記名義など、贈与税の申告漏れや脱税はさまざまな資料をもとにばれるケースがよく見られます。年収に見合わないお金の使い方をしている場合も、脱税が発覚しやすいといえるでしょう。ここでは、申告漏れや脱税がばれるケースについて、どのような流れで発覚するのか詳しく解説します。

税務調査による発覚

相続を開始するタイミングに合わせて相続税に申告漏れがないか税務調査が入り、贈与が発覚する場合があります。相続税申告書の内容に誤りや計算漏れがないか事前調査をし、不備がありそうだと判断された場合に税務調査の対象となるケースがほとんどです。

また、近年ではマイナンバーと預金情報のひも付けを義務化する案が検討されています。義務化が実現すると、相続の際の税務調査により贈与が発覚しやすくなるので、正しく申告するように心掛けましょう。

法定調書による発覚

税務署は給与所得者の源泉徴収票や報酬、契約金や賞金、料金等の支払調書をはじめとした法定調書の交付からお金の流れを把握しており、不自然な箇所があれば贈与があったことを判断できるのが一般的です。

サラリーマンやアルバイト、フリーランスにかかわらず、何らかの報酬を得ている方の支払い調書は税務署に提出されています。その種類は全部で60にも上るので、申告漏れがあれば分かることを覚えておきましょう。

不動産の登記名義による発覚

土地や建物といった不動産が贈与された場合、贈与者から受贈者に登記名義を変更します。贈与税を申告していないと、不動産の登記名義から申告の不備が発覚することがあるので注意しましょう。

不動産が贈与されると、登記の原因欄に「贈与」と表示されます。税務署は変更したタイミングで内容を随時確認しているので、贈与税の申告を怠ると、いずれは発覚するでしょう。不自然に高額な不動産を一括で購入するといった動きがあると、お尋ね文書が来る場合もあります。

年収に不相応なお金の使い方による発覚

明らかに年収に対して不相応なお金の使い方をしている場合、贈与の方法が現金の手渡しであっても簡単に発覚します。特に、金やプラチナのような高額な買い物をしたりオークションで高額商品を落札したりすると、購入した業者から税務署に支払調書を送付するのが一般的です。

税務署が贈与を疑うケースには、自動車を購入した場合があります。年収や預金の状況に見合わない買い物だと、贈与があったのではないかと疑われるでしょう。

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贈与税の申告漏れや脱税に対するペナルティ


贈与税の脱税や申告漏れが発覚すると、ペナルティが科せられます。納税の遅延に対する延滞税や申告しなかったことによる無申告加算税など、加算されるペナルティはさまざまです。悪質な場合は刑事罰の対象となるでしょう。ここでは、具体的なペナルティを紹介します。

納税が遅れたことによる「延滞税」

本来贈与税を納めなければならない期間を過ぎると、ペナルティとして「延滞税」が課されます。また、申告していても期日までに未納の場合には、同じく延滞税がかかるので注意が必要です。

税率は納付期限の翌日から2か月を経過する日までは7.3%、それ以降は14.6%にもなります。高額な課税にならないように滞りなく申告と納付を済ませましょう。ただし、不正があるケースを除き、提出済みの申告書を訂正するといった理由で延滞税の計算期間から除外される特例が適用される場合もあります。

(参考: 『延滞税について|国税庁』)

無申告による「無申告加算税」

納めるべき贈与税があるにもかかわらず、期限までに申告しなかった場合は「無申告加算税」が課せられます。無申告の場合は延滞税も加算されるため、納付する贈与税が非常に高額になりやすいので注意しましょう。

税務調査の通知が来る前に自主申告すれば、加算される無申告加算税は5%です。ただし、税務調査の前に指摘を予測する前なら10%(50万円を超える部分は15%)、それ以降の期間は15%(50万円を超える部分は20%)と税率が増えていきます。

(参考: 『加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし|国税庁』)

悪意のある隠蔽や詐欺で課される「重加算税」

申告を忘れていたのではなく、意図的に申告しなかったり詐欺や隠蔽を目的としていたりする悪質なケースでは「重加算税」が課せられます。重加算税は課税額が非常に大きいので、申告せずに隠していた場合は重いペナルティがあることを覚えておきましょう。

税率は、過少申告加算税・不納付加算税が35%、無申告加算税が40%です。正しく納付せずに後からばれると、当初の金額よりも高額な贈与税を納付しなければなりません。最初からしっかりと申告することを心掛けましょう。

(参考: 『加算税の概要|財務省』)

悪質な不正行為に対する「刑事罰」

不正行為によって贈与税を脱税した場合、刑事罰が科せられる場合もあるので注意が必要です。重加算税だけでなく罰金が上乗せされ、中には、懲役刑が適用される場合もあります。

正当な理由がないのに期限内に贈与税の申告をしなかった場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金刑に処されるでしょう。非常に重いペナルティなので、脱税は考えない方が賢明です。

(参考: 『雑則及び罰則|国税庁』)

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贈与税申告のルールや納税方法


贈与税の申告には、法律によって細かいルールや納税方法が定められています。申告が必要な条件や申告期限、必要書類をしっかりと確認して、スムーズに手続きを進めることが大切です。また、納付にも期限が設定されているので、遅れないように注意しましょう。ここでは、贈与税申告のルールや納税方法について解説します。

贈与税|申告が必要となる条件

財産の贈与を受けた際に贈与税の申告が必要となる条件は、次のいずれかに該当する場合です。

  • 1月1日~12月31日の1年間に110万円を超える財産を受け取った場合
  • 相続時精算課税制度や非課税特例措置を受けたい場合

子どもが親から財産を受け取った場合も課税対象となるので注意しましょう。2人以上からそれぞれ110万円以下の財産を受け取ったとしても、合計が110万円を超えれば申告対象です。相続時課税制度を利用したい場合、贈与された金額が110万円に満たなくても申告する必要があります。

贈与税|申告期限と納付期限

贈与税の申告期限は、財産の贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日で、納付期限も同様です。どちらも忘れずに早めに手続きしましょう。

一般的に、納付期限に遅れると延滞税が課されますが、一定の要件を全て満たすと5年以内で分割納付する延納が認められる場合があります。延納の要件は次の通りです。

  • 納税予定額が10万円を超えている
  • 一度に納付するのが難しい明確な理由がある
  • 担保を差し入れられる(※延納する金額が100万円以下かつ延納期間が3年以下は不要)

贈与税|申告時の必要書類

【暦年課税の場合】

必要書類 内容
申告書第一表(兼贈与税の額の計算明細書) 国税庁指定の申告書類
贈与を受ける人の戸籍謄本 贈与を受ける人の氏名と生年月日、贈与者の子や孫であることを証明する書類
※20歳以上の子が直系尊属から特例贈与財産の贈与を受ける場合のみ必要(初回のみ)


【相続時精算課税制度を利用する場合】

必要書類 内容
相続時精算課税の計算明細書 国税庁指定の申告書類
贈与を受ける人の戸籍謄本又は抄本

贈与する人とされる人の相続関係を証明する書類

※贈与を受けた日以降の日付で発行されているものに限る(初回のみ)

贈与を受ける人の戸籍の附票の写し
贈与する人の住民票の写し
贈与する人の戸籍の附票の写し


【非課税制度を利用する場合】

必要書類 内容
住宅取得等資金の非課税の計算明細書 国税庁指定の申告書類
贈与を受ける人の戸籍謄本 贈与する人とされる人の相続関係を証明する書類
贈与を受ける人の源泉徴収票や確定申告書といった所得の分かる書類 贈与を受ける人の所得を証明する書類
贈与を受ける人の住民票の写し 贈与を受ける人の最終居住地を証明する書類
贈与対象となる不動産の登記事項証明書 贈与対象の不動産の情報を確認する書類
売買契約書、工事の請負契約書の写し 契約関係を確認する書類
耐震基準適合書や住宅性能証明書、保険加入証明書等などの各種証明書 各種証明書類

贈与税の申告方法は大きく分けて4つあります。それぞれの申告方法の詳細は以下の通りです。贈与税|申告方法

  • 税務署での直接申告
    税務署に直接足を運んで申告書を提出する方法です。贈与を受ける人の居住地を管轄する税務署で手続きします。
  • 申告書を郵送する
    作成した申告書を印刷し、郵送して手続きができます。提出日は通信日付印に表示された日となるので、期限に遅れないように注意しましょう。
  • e-Taxを利用する
    e-Taxで電子申告する方法です。税務署でIDとパスワードを発行してもらうと利用できます。2019年度からはマイナンバーやICカードリーダーが不要になり、申告が容易になりました。
  • 税理士へ依頼する
    税理士へ依頼して申告書の作成や申告作業を代行してもらうことも可能です。専門的な知識を持つプロに任せられるので、間違いが少なく安心できます。

贈与税|納税の手段

贈与税の納付方法は全部で4種類です。それぞれの状況に合わせて、支払いやすい手段を利用するとよいでしょう。

  • 窓口での現金納付
    金融機関や税務署で納付する方法です。納付書を自分で記入し、銀行や郵便局、税務署の窓口で支払います。
  • e-Tax
    e-Taxを利用して納付する方法です。IDとパスワードを発行してもらい、ログインして納付します。
  • クレジットカード
    クレジットカードを利用すると、24時間好きなタイミングで納付が可能です。支払いには所定の決済手数料がかかります。
  • コンビニ(QRコード納付)
    自宅で作成したQRコードをコンビニで提示して納付金額を支払う方法です。キオスク端末を使用して手続きを行います。

生前贈与で贈与税がかからない3つの方法


贈与税を少しでも安く抑える対策として、生前贈与という方法があります。扶養家族へ生活費や教育費として渡したり基礎控除額を超えない範囲で暦年贈与したりする方法が考えられるでしょう。また、国が定める非課税制度を活用するのも手段のひとつです。ここでは、生前贈与で贈与税がかからない3つの方法について解説します。

扶養家族の生活費や教育費として渡す

一般的には生前贈与も贈与税の対象ですが、扶養家族の生活費や教育費であれば、生前贈与とは見なされません。贈与税の課税対象から外れるので、必要な分の生活費や教育費を家族に渡すのは有効な手段です。結婚や出産にかかる費用も生活費として認められています。

ただし、必要とされる範囲を明らかに超えている場合や預金や株式の購入といった本来の用途以外に使われている場合は課税対象となるので注意しましょう。

基礎控除額を超えないように暦年贈与をする

年間110万円を超えない範囲の贈与なら、贈与税を申告する必要はありません。毎年110万円以下の贈与を繰り返せば、「暦年贈与」として贈与税を申告せずに済みます。

ただし、金額と期間が定められた贈与は「定期贈与」と見なされ、課税対象となるので注意が必要です。例えば、「500万円を5年間で100万円ずつ毎年贈与する」といった場合、あらかじめ全ての金額を贈与する意向があったと判断されて定期贈与になります。

非課税制度を活用する

特定の条件に当てはまるなら、本来かかる贈与税が非課税になる制度があります。上手に利用すると非課税枠を増やせるので、積極的に活用するとよいでしょう。例えば、次のようなケースで非課税制度が適用されます。

条件

上限額

【贈与税の配偶者控除】結婚から20年以上が経過している夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合

2,000万円

直系尊属(父母や祖父母)からマイホームを購入するための資金援助を受けた場合

3,000万円

結婚や子育ての資金として資産を一括で贈与する場合

1,000万円

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贈与税は無申告や脱税をしてはなりません。万が一、申告を怠った場合、相続の手続きや高額な買い物をしたときといったさまざまなタイミングでばれる可能性が非常に高いことを覚えておきましょう。贈与税の申告や相続税対策でお悩みなら、ネイチャーグループにご相談ください。

まとめ


贈与税の申告漏れや脱税はどのようなケースでも、いずれどこかのタイミングで発覚します。延滞のペナルティは重く、最悪の場合には刑事罰も科されるので、忘れずに申告を行いましょう。また、生前贈与で贈与税がかからないケースを覚えておくと、安く抑えることが可能です。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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