2020年10月23日2021年12月23日税務
詳しく知りたい!所得税の計算方法や納税方法を徹底解説!
給与や事業収入により所得を得た個人は、所得税法が定めるところによって所得税を納税しなければなりません。所得税は1年間に得た所得に対してかかる税金で、超過累進課税方式が採用されています。
所得税の計算式は複雑なため、「今年の納税額はいくらになるのだろうか」と思っている方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、所得税の計算方法と併せて納税方法も詳しく紹介します。所得税の計算方法と納税方法について理解を深めましょう。
所得税:計算方法の手順
所得税は1年間(1月1日~12月31日)の所得に対してかかる国税です。所得税を正確に算出するためには、段階を手順通りに踏まなければなりません。所得の区分ごとに所得を計算し、これに税率を掛けて税額を計算します。この税額から税額控除を差し引いた金額が所得税となります。
税率や控除額は算出した金額によって異なるため、以下で紹介する手順に沿って計算することが重要です。
step1:所得額の計算をする
所得税の計算をするときは、収入と所得の違いを押さえておくことが大切です。以下のように定義されます。
・収入:事業活動や会社からもらう給与(源泉徴収前)などによって得た金額
・所得:収入から経費を差し引いた金額
所得税の計算では、最初に(所得の種類ごとに)1年間の所得額を計算します。以下が所得額の計算式です。
・所得額=1年間の収入額-収入を得るために要した支出額-所得の種類ごとに定められた一定の控除額*
*(一時所得は経費ではなく支出額という考え方であり、直接に要した金額しか含まれません。)
(※給与所得は一定の場合を除き必要経費を差し引くことができません)
総合課税の対象になっている所得が複数ある場合、上記の計算式でそれぞれの所得額を計算します。所得の種類ごとに算出したそれぞれの所得額を合計し、総所得金額を算出しましょう。申告分離課税対象の所得がある場合、上記の計算式で所得額を算出するところまでは同様です。申告分離課税は所得の種類ごとに個別で課税されます。
step2:課税所得額を算出する
所得税は、所得額に対してではなく、課税所得と呼ばれる金額に対して課税されます。以下の計算式で課税所得の金額を求めましょう。
・課税所得額=所得額-所得控除額
所得控除には基礎控除や配偶者特別控除など14種類があります。もれなく計上することで税負担の軽減ができるため、控除の種類を把握しておきましょう。
総合課税対象の所得と申告分離課税対象の所得の双方がある場合、所得控除は総合課税対象の所得から控除します。控除しきれなかった分が発生した場合は、申告分離課税対象の所得から控除する仕組みです。課税所得額に1,000円未満の端数が出た場合は切り捨てましょう。
step3:基準所得税額を計算する
課税所得額を基にして基準所得税額を計算します。基準所得税額を計算するときは、以下の速算表を使いましょう。課税所得額に対応する計算式で算出した金額を基準所得税額といいます。
課税所得額 | 控除額 | 所得税率 | 計算式 |
---|---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 0円 | 5% | 課税所得額×0.05 |
195万円~329万9,000円 | 9万7,500円 | 10% | 課税所得額×0.1-9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 42万7,500円 | 20% | 課税所得額×0.2-42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 63万6,000円 | 23% | 課税所得額×0.23-63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 153万6,000円 | 33% | 課税所得額×0.33-153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 279万6,000円 | 40% | 課税所得額×0.4-279万6,000円 |
4,000万円~ | 479万6,000円 | 45% | 課税所得額×0.45-479万6,000円 |
(参考: 『国税庁No.2260所得税の税率』)
【該当するとき】計算した税額から税額控除を差し引く
場合によっては、基準所得税額から定められた金額を差し引く「税額控除」を利用できることがあります。主な税額控除には次のようなものがあるので、併せて確認しておきましょう。
税額控除の種類 | 受けられる条件 |
---|---|
寄附金特別控除 | 政党、政治資金団体、認定NPO法人、公益社団法人に寄附をする |
配当控除 | 総合課税対象の配当所得を有する場合 |
外国税額控除 | 日本国外で発生した所得に対し、当該国で所得税相当の税が課税されている場合 |
住宅借入金等特別控除 | 住宅ローンを使用し、一定の要件を満たす自己居住用の住宅を取得した場合 |
税額控除は基準所得税額から直接差し引くものであるため、大幅な節税に役立ちます。受けられる税額控除がないかを忘れずにチェックし、もれなく正確に申告することが大切です。
step4:復興特別所得税額を計算する
2011年に制定された特別措置法に基づき、2013年から2037年までに得た所得に対して所得税が課税される場合は、同時に「復興特別所得税」が課税されます。復興特別所得税の税額は、基準所得税額の2.1%です。以下の計算式で求められます。
・復興特別所得税額=基準所得税額×0.021
一例として、基準所得税額が10万円の場合の復興特別所得税は「10万円×0.021=2,100円」です。所得税と合わせて合計10万2,100円を納税することになります。
所得税を納税する:2つのパターン
日本においては、所得税は確定申告によって1年間の所得金額と税額を申告し、納税しなければなりません。事業所得者だけでなく、年末調整によって申告が不要となる給与所得者でも給与所得以外の所得がある場合や一定の控除を受けたい場合には確定申告が必要です。
(※一定の要件を満たし、給与所得・退職所得以外の所得額が20万円以下の方は申告不要です。)
場合によっては、受け取る報酬から事前に所得税を控除する源泉徴収があります。源泉徴収の有無によって、所得税の納め方が変わるので注意が必要です。ここからは源泉徴収の有無による納税方法の違いを解説します。
源泉徴収がない場合
所得税が源泉徴収されていない場合は、確定申告によって決まった所得税額を全額納付します。主な納め方は以下の通りです。
・振替納税
定められた期日までに預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を提出し、指定日に金融機関の口座から納税する
・e-Taxやクレジットカード
オンライン上で納税手続きをして納税する
・現金
税務署の窓口もしくは金融機関の窓口に納付書と現金を持参して納税する
振替納税を利用したい場合は、依頼書の送付期限が決まっているため、確定申告書と同時に提出するのがおすすめです。一度手続きすると、翌年以降は自動的に振替納税が適用されます。
源泉徴収がある場合
所得税が源泉徴収されている場合は、所得税額から源泉徴収税額を差し引いた金額を納付しなければなりません。源泉徴収税額は支払元ごとに分けて確定申告書に記載し、自分で申告する必要があります。
支払い元が発行した支払調書がある場合は、支払調書に源泉徴収税額が記載されているので税務署に提出しましょう。納税方法は、所得税額と源泉徴収税額の関係によって以下の3パターンに分かれます。
・所得税額が源泉徴収税額より多い場合:差額分を納税する(納税方法は源泉徴収がない場合と同様)
・所得税額が源泉徴収税額と同じ場合:追加の納税は不要
・所得税額が源泉徴収税額より少ない場合:確定申告をすることにより差額が還付される
所得税対策に効果的な4つの方法
納めなければならない所得税額が増えてくると、納税額を抑えたいと考える方もいるでしょう。所得税額を抑えるためには、制度の活用や工夫が必要です。ここからは、所得税額を減らす対策を紹介します。それぞれの対策を把握し、状況に合わせて適切な方法を活用しましょう。
青色申告をする【事業所得などのある方】
青色申告とは、青色申告をする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受けることによって利用できる方法です。年の途中で開業した場合は、開業日の2か月以内に開業届とともに提出する必要があります。
原則として複式簿記により記帳された帳簿を備え付ける必要がありますが、青色申告特別控除の金額は大きいため、節税効果は高いといえるでしょう。また、青色申告を利用することで専従者給与(家族従業員に支払った給与を必要経費に参入できるようになることや損失の繰越しができることもポイントです。以下に青色申告特別控除の金額をまとめました。
青色申告の控除額 | 控除を受ける条件 |
---|---|
10万円 | ・簡易記帳 |
55万円 |
・複式簿記で記帳 |
65万円 | ・55万円控除の条件+e-Taxによる申告または電子帳簿保存をする |
(※書類は原則7年間保存)
2020年の税制改正によって65万円控除を受ける条件が厳しくなっています。65万円の控除を受けたい場合は、e-Taxによる電子申告をするのがよいでしょう。
必要経費はもれなく計上する
税金を抑えるためには、かかった経費をもれなく計上することも大切です。事業だけでなく不動産投資、株式のトレードなどをしている場合も経費がかかります。記帳するときには、事業のために支出した金銭を経費として計上しているかを確認しましょう。
例えば事務所を運営するためにかかった費用、事業のために必要なものを購入したときの費用、事業に関連するセミナーに参加したときの参加費や交通費、宿泊費なども経費に計上できます。細かい費用が抜けていないかを確認することが大切です。
控除を活用する
所得控除や税額控除など、受けられる控除は多くあります。控除をもれなく利用できたかによって税額が大きく変わることもあるため、控除の種類や内容をあらかじめ把握しておくことが大切です。
例えば一定額以上の医療費を支払ったときの「医療費控除」や「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」などは、その年の状況に応じて利用することで税金を抑えられます。
利益が多い場合は法人化する
事業が拡大し、利益が多くなった場合は法人化することで税金を抑えられる場合があります。法人化によって法人税の納付義務が発生するものの、法人税率は15%~23.2%(普通法人の場合)です。所得税の最高税率が45%であることを考えると、法人税率の方が低いことが分かります。
また、自身を株主や出資者として法人を設立し、法人から自身に役員報酬を支払う形にした場合、給与所得控除が使えます。給与所得控除は55万円~195万円で、青色申告特別控除より控除額が大きいことが特徴です。
事業の利益が多い場合は、法人化してこれらのメリットを組み合わせることで税金を抑える効果が期待できます。
主な所得控除の種類
税金を抑えるためには、控除を活用することが大切です。ここからは、利用することで所得税の納税額が減る所得控除をピックアップして紹介します。それぞれの所得控除について理解を深め、自身のケースで使える控除を把握しておきましょう。
2,500万円以下の所得者であれば受けられる「基礎控除」
「基礎控除」は、所得が2,500万円以下の有所得者であれば誰でも受けられます。2020年時点において、基礎控除の金額は以下の通りです。
納税義務者の合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超~2,450万円 | 32万円 |
2,450万円超~2,500万円 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
2019年までは一律38万円の控除が受けられたものの、2020年からは所得に応じて控除できる金額が異なります。所得が2,400万円以下の場合は48万円と控除額が大きくなっていますが、2,400万円を超えると0円~32万円と少なくなっているのが特徴です。
(参考: 『国税庁No.1199基礎控除』)
控除対象配偶者がいる場合に受けられる「配偶者控除」「配偶者特別控除」
「配偶者控除」とは、納税義務者本人の合計所得金額が1,000万円以下かつ一定の条件を満たした配偶者がいる場合に利用できる控除です。2018年の税制改正で配偶者控除の仕組みが変更されており、2020年時点では以下の条件を満たす場合に利用できます。
・民法の規定に基づく配偶者である
・納税義務者と生計を一にしている
・配偶者の合計所得金額が48万円以下である
・控除を受けようとする年に事業専従者として給与の支払いを受けていない
配偶者控除の具体的な金額は以下の通りです。納税義務者の合計所得金額によって控除される金額が異なります。
納税義務者の合計所得金額 | 控除対象配偶者の控除額 | 老人控除対象配偶者の控除額 (配偶者が70歳以上の場合) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超~950万円 | 26万円 | 32万円 |
950万円超~1,000万円 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超~ | なし | なし |
配偶者控除を利用できない場合でも、配偶者の合計所得が48万円を超えた額から133万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けられます。配偶者特別控除による控除額は納税義務者と配偶者それぞれの総所得金額によって決まり、1万円~38万円です。
(参考: 『国税庁No.1191配偶者控除』)
支払った医療費が多いと受けられる「医療費控除」
「医療費控除」とは、当該年に支払った医療費の合計額が一定の金額を超える場合に受けられます。医療費控除の金額を計算する場合は、以下の計算式を利用しましょう。自身だけでなく、生計を一にする親族のために支払った医療費も合算できます。
・総所得金額が200万円以上の場合
控除額=支払った医療費の合計額-保険金で補てんされる金額-10万円
・総所得金額が200万円未満の場合
控除額=支払った医療費の合計額-保険金で補てんされる金額-総所得金額×0.05
実際に支払った医療費から医療保険や健康保険によって補てんされる金額を差し引き、さらに10万円を差し引いた金額が所得から控除されると覚えておきましょう。納税義務者の総所得金額が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額の5%にあたる金額を差し引きます。
健康保険や年金の保険料を支払った場合に受けられる「社会保険料控除」
「社会保険料控除」とは、当該年に支払った社会保険料の金額がそのまま所得額から控除される仕組みです。控除の対象になる社会保険料のうち、主なものには以下があります。
・健康保険、国民健康保険の保険料
・国民年金、厚生年金の保険料
・介護保険料(介護保険法の規定によるもの)
・国民年金基金の掛金
社会保険料控除の対象になる支出のうち、実際に支払ったものが控除の対象です。納付期日が年内であっても未納になっているものは控除できません。
翌年分の保険料を前納している場合は、前納した期間が1年以内であれば保険料の金額を控除できます。(国民年金保険料は2年分の前納額も対象)公的年金から差し引かれた保険料も控除対象なので、忘れないようにしましょう。
寄附金を支払った場合に受けられる「寄附金控除」
「寄附金控除」とは、納税義務者が国や地方公共団体などに特定寄附金を支払った場合に、所得額から控除されるものです。寄附金控除の上限額が定められているため、無制限に控除されるものではありません。具体的な計算式は以下の通りです。
・寄附金控除額=当該年に支出した特定寄附金の合計額または当該年の総所得金額のうち、低い金額×0.4-2,000円
当該年に支出した特定寄附金の合計額または当該年の総所得金額×0.4の部分は、いずれか低い方の金額を用いましょう。
災害や盗難の被害で受けられる「雑損控除」
自然災害や盗難、横領などによって損害を受けた場合は、「雑損控除」として一定の金額が所得額から差し引かれます。雑損控除を受けるためには、損害を受けた資産が以下の条件に該当していなければなりません。
・納税者もしくは生計を一にする総所得金額が48万円以下の親族が保有している資産
・棚卸資産、事業用固定資産、生活に通常必要でない資産に該当しない資産
これらの条件を満たしている場合は、雑損控除を受けられます。雑損控除の金額を計算する場合は、以下の計算式を利用しましょう。
・差引損失額-総所得金額×0.1
・差引損失額のうちの災害関連支出額-5万円
上記の計算式で計算した結果、金額が大きい方を雑損控除として所得から控除できます。所得から雑損控除を全額控除できない場合は、翌年(以降3年間)の所得からも控除可能です。
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まとめ
事業や投資、資産運用などで所得が発生した場合、所得税法の定める所によって確定申告をして所得税を納めなければなりません。所得税は超過累進課税方式が採用されていることや、多様な控除が存在することによって、税額を計算する方法が複雑になっています。
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