2020年10月28日2024年4月28日税務
所得税は年収いくらからかかる?収入別の税率や節税対策まで網羅解説
会社員や個人事業主など、働いて収入を得ていくうえで所得税を避けては通れません。
所得税は、1年間における個人の所得に対して課される税金です。収入-経費で算出される所得によって納税額が決定されますが、いくら納めることになるのか詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、所得税について分かりやすく解説します。年収別の税率や手取り額、そもそも収入がいくらから発生するのかまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
所得税がかかるのは給与年収いくらから?
そもそも、所得税は給与年収いくらから発生するのでしょうか。
結論、給与年収103万円以下なら課税所得は0になり、所得税は発生しません。
所得税の計算には、世帯全体の経済状況や扶養家族の人数などによって適用される所得控除制度があります。1年間における全ての所得から所得控除を差し引いた分が課税対象です。
基礎控除が48万円であるため、給与所得控除の最低額55万円を合算した103万円までは相殺できるため、課税対象の所得は無くなります。
よって、103万円超の収入があると所得税が発生すると把握しておきましょう。
年収別の所得税率一覧
所得税率は、個人の年収によって異なります。所得税の課税方式は超過累進課税が採用されており、7つに分かれた区分から超過した分の金額に対応する税率を乗じて求める仕組みです。しかし、実際に区分ごとに計算するのは大変で、ミスも出やすくなるでしょう。
所得ごとの税率や控除金額について、以下の早見表にまとめました。
【早見表:所得税】
課税所得金額 |
税率 |
控除される金額 |
---|---|---|
1,000円〜194万9,000円 |
5% |
0円 |
195万円〜329万9,000円 |
10% |
9万7,500円 |
330万円〜694万9,000円 |
20% |
42万7,500円 |
695万円〜899万9,000円 |
23% |
63万6,000円 |
900万円〜1,799万9,000円 |
33% |
153万6,000円 |
1,800万円〜3,999万9,000円 |
40% |
279万6,000円 |
4,000万円〜 |
45% |
479万6,000円 |
課税所得金額は年収とは異なり、収入金額から給与所得控除など各種控除対象となる金額や経費を引いたものです。具体的な所得税率は上記の表に当てはめて計算してください。
また、あくまでも所得税分のみであり、住民税の10%も加えると最大55%になります。
では、課税所得金額が500万円・1,000万円・2,000万円のケースでそれぞれの所得税についてシミュレーションをしてみましょう。
課税所得金額が500万円の場合
課税所得金額が500万円の場合、330万円〜694万9,000円の範囲に当たるため、税率は20%になります。
- 税率:20%
- 控除額:42万7,500円
- 所得税額:500万円×0.20-42万7,500円=57万2,500円
よって、課税所得金額が500万円になると、所得税は57万2,500円になります。
課税所得金額が1,000万円の場合
課税所得金額が1,000万円の場合、900万円〜1,799万9,000円の範囲に当たるため、税率は33%になります。
- 税率:33%
- 控除額:153万6,000円
- 所得税額:1,000万×0.33-153万6,000=176万4,000円
よって、課税所得金額が1,000万円のケースでは、所得税は176万4,000円になります。
課税所得金額が2,000万円の場合
課税所得金額が2,000万円の場合、1,800万円〜3,999万9,000円の範囲に当たるため、税率は40%になります。
- 税率:40%
- 控除額:279万6,000円
- 所得税額:2,000万×0.40-279万6,000=520万4,000円
よって、課税所得金額が2,000万円のケースでは、所得税は520万4,000円になります。
所得税の計算方法3ステップ
所得税は、一律では課税されません。自分の収入で納税額はいくらになるのか求める方法を知っておきましょう。
所得税は、下記の計算方法を用いて算出できます。
所得税額=課税所得金額×所得税率-控除額
そして、所得税を計算する方法は以下の3ステップです。
- 各種所得を合算して総所得金額を計算する
- 各種所得控除を差し引き課税所得金額を計算する
- 課税所得金額から所得税額を計算する
なお、今回は10種類ある所得のうち「給与所得」を例に挙げ、所得税額の算出方法を解説します。
1.各種所得を合算して総所得金額を計算する
課税所得金額を算出するために、まずは総所得金額を計算しましょう。所得の種類によって計算式は異なりますが、基本的に総収入金額から必要経費を差し引く形になります。
ただし給与所得は他の所得のように必要経費を原則引けないため、代わるものとして給与所得控除があります。給与所得金額は、下記の計算式で算出できます。
給与所得金額=源泉徴収される前の収入金額-給与所得控除額
収入金額とは勤務先から支給される給料などのことで、基本給のほか残業代なども含まれます。ただし、交通費といった手当については含まれません。給与所得控除額は、収入金額に応じて下記のようになります。(2020年分以降)
収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額の計算式 |
---|---|
~162万5,000円 |
55万円 |
162万5,001円~180万円 |
収入金額×40%-10万円 |
180万1円~360万円 |
収入金額×30%+8万円 |
360万1円~660万円 |
収入金額×20%+44万円 |
660万1円~850万円 |
収入金額×10%+110万円 |
850万1円~ |
195万円(上限) |
(参考: 『No.1410給与所得控除 国税庁』)
2.各種所得控除を差し引き課税所得金額を計算する
総所得金額を出した後は課税所得金額を算出します。課税所得金額は、総所得金額から各種所得控除額を引いた金額です。基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除、医療費控除などが所得控除に該当します。
控除額は種類により異なりますが、2020年からは基礎控除や配偶者控除などの金額が改正されているので注意しましょう。ここでは基礎控除額の一覧表を挙げます。
納税者本人の合計所得金額 |
基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 |
48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 |
32万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 |
16万円 |
2,500万円超~ |
なし |
2019年までは一律で38万円が控除されていましたが、2020年からは合計所得金額によって基礎控除額が変わるため、覚えておくと安心です。
(参考: 『No.1199 基礎控除 国税庁』)
3.課税所得金額から所得税額を計算する
課税所得金額が算出できたら、所得税率をかけて控除額を引き、基準所得税額(所得税額)を計算しましょう。所得税の速算表で課税所得金額に対する税率と控除額を探します。なお、基準所得税額に復興特別所得税率2.1%を乗じた額を加えた合計が納税額です。
例)課税所得金額250万円の場合
- 税率:10%
- 控除額:9万7,500円
- 所得税額:250万×0.1-9万7,500=15万2,500円
年収別:手取り金額の目安(給与所得者)
手取り金額は年収そのままではなく、各種税金が差し引かれて実際に受け取れる金額のことです。手取りの年収は下記の計算式で求められます。
手取りの年収=総支給額-所得税-住民税-社会保険料
年収300万円〜2,000万円の範囲における手取り金額の目安を下記の表にまとめました。
【年収別手取り金額の目安:40歳未満・東京都在住・配偶者なしの場合】
年収 |
所得税 |
住民税 |
社会保険料 |
手取り金額の目安 |
---|---|---|---|---|
300万円 |
約6万円 |
約12万円 |
約41万円 |
約241万円 |
500万円 |
約15万円 |
約25万円 |
約68万円 |
約392万円 |
800万円 |
約50万円 |
約46万円 |
約105万円 |
約599万円 |
1,000万円 |
約85万円 |
約64万円 |
約127万円 |
約724万円 |
2,000万円 |
約374万円 |
約158万円 |
約180万円 |
約1,288万円 |
40歳未満で配偶者がいない場合を想定しています。実際の金額は住んでいる場所や年齢、控除額などによって変わるため、上記の表はあくまでも目安として参考にしてください。
所得税額を抑える7つの節税方法【年収関係なく実践できる】
支払い義務がある所得税ですが、少しでも納税額を抑えたいと思う方もいるでしょう。所得税率は課税所得金額によって変わるため、少しの工夫で納税額を抑えられる場合があります。ここからは所得税額を抑える6つの方法を紹介します。
- 事業に関連する必要経費はもれなく計上する
- 所得控除や税額控除の申告を怠らずにする
- 上場株式などの譲渡損失の損益通算と繰越控除を活用する
- 青色申告で確定申告をする
- 寄付金控除(ふるさと納税)を活用する
- iDeCo(イデコ)を利用する
事業に関連する必要経費はもれなく計上する
課税所得金額が少なければ、その分所得税額も少なくなります。そこで、必要経費を計上して課税所得金額を抑える方法も効果的です。
経費は、基本的に事業のために必要であれば認められるケースが多いといえます。例えば事業の運営に必要な光熱費や事務所の家賃などは、必要経費として認められるでしょう。普段から必要経費として計上することを念頭に置き、領収書を取っておくことをおすすめします。
所得控除や税額控除の申告を怠らずにする
利用できる控除の数が多ければ、その分だけ課税所得金額を抑えられます。ただし、多くの控除は申告制となっているため、申告しなければ利用できません。所得控除や税額控除の申告は徹底するように心掛けましょう。
例えば、生命保険料控除も所得控除の一つです。
2012年1月1日以降に契約した生命保険料や介護保険料、個人年金保険料における所得控除の金額は以下の通りです。
支払い金額 |
所得控除の金額 |
---|---|
20,000円以下 |
支払い金額の全額 |
20,001〜40,000円以下 |
支払った金額×1/2+10,000円 |
40,001〜80,000円以下 |
支払った金額×1/4+20,000円 |
80,001円以上 |
40,000円 |
生命保険や個人年金保険料も上記の計算で控除すれば、税金の負担を軽減できます。
上場株式などの譲渡損失の損益通算と繰越控除を活用する
「上場株式などの譲渡損失の損益通算と繰越控除」とは、翌年以降の3年間に渡り上場株式などの取引による利益や損失を損益通算できる制度です。
株取引によって損失が出た場合、利用することで翌年以降に損失を繰り越せるため税金を抑えることにつながります。
譲渡損失を繰り越すためには、すべての口座において損益通算し確定申告が必要です。損失が出た場合は所得税対策に活用できることを覚えておきましょう。
青色申告で確定申告をする
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があり、青色申告を利用することで税金を抑える効果が期待できます。青色申告での確定申告は、経費として計上できる項目が増えたり、事業所得や不動産所得で最大で65万円の控除を受けられたりすることがメリットです。
「青色事業専従者給与に関する届出書」を出すことにより家族従業員への給与額を必要経費にできるため、税金対策としては大きいといえるでしょう。なお、青色申告を利用する場合には、事前の申請が必要です。また2020年の税制改正により、利用できる条件が限定されていることにも注意しましょう。
寄付金控除(ふるさと納税)を活用する
寄付金控除(ふるさと納税)は、地方自治体に寄付をして翌年の税金を前払いする制度です。ふるさと納税を活用すると、自治体から地元の特産物や体験チケットなどの返礼品が送られます。
勘違いされやすいですが、ふるさと納税は税金の前払いなので厳密には節税対策ではありません。とはいえ、本来ただ納めるだけの税金で地方の特産物が手に入るので、お得感があります。
ふるさと納税を活用したからと言って、全体の年間納税金額は変わりませんが、寄付額のうち2,000円を超える部分は、翌年の所得税や住民税から控除されます。
iDeCo(イデコ)を利用する
会社員の場合は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用も検討してみてください。
iDeCoとは、毎月一定金額を積み立て、60歳以降に受け取れる私的年金制度です。
iDeCoを活用した場合、大きく下記3つのケースで節税効果が期待できます。
- 掛け金の積み立て時:月々の掛け金が全額所得控除の対象になる
- 積み立てたお金が増えたとき:利益分が非課税扱いになる
- お金を受け取るとき:退職所得控除もしくは公的年金等控除が適用される
節税対策を行いながら、老後の資金繰りも見込めるため、非常にプラスな点が多い制度となります。
所得税の納税方法を2つのケースで紹介
所得税の納税方法はいくつかの種類があります。状況に合わせて適切な納税方法を選択しましょう。ここでは、「源泉徴収で所得税が支払われている場合」と「個人事業主や副業による収入がある場合」の2ケースを取り上げて紹介します。
- 源泉徴収されている場合は勤務先にお任せする
- 個人事業主や副業収入がある場合は自分で確定申告して納税する
ケース1.源泉徴収されている場合は勤務先にお任せする
勤務先が源泉徴収をしている場合は、所得税が差し引かれています。会社勤めの場合は源泉徴収されていることが多く、該当する場合基本的には勤務先に任せて問題ありません。
しかし、給与所得や退職所得以外に20万円を超える収入がある場合や、医療費控除等の年末調整の対象でない所得控除を活用したい場合は、確定申告をして所得税を納税しなければなりません。給与の収入額が2,000万円を超える場合、一定の条件のもと2か所以上から給与を受けている場合なども確定申告が必要です。
ケース2.個人事業主や副業収入がある場合は自分で確定申告して納税する
個人事業主の場合は確定申告をして納税する必要があります。繰り返しになりますが、会社勤めであっても副業による収入が20万円以上ある場合や、医療費控除など各種控除を利用する場合には確定申告が必要となるケースもあるでしょう。確定申告をして納税する場合は、下記のいずれかの方法で所得税を納めます。
- 税務署や金融機関の窓口において現金で納める
- 振替納税で口座からの引き落とし
- e-Taxを利用して納める
- クレジットカードを利用する
状況に応じてさまざまな方法で納税できますが、振替納税はあらかじめ申し込みをする必要があります。
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まとめ:年収ごとにかかる所得税を把握して正しい節税対策をしよう
年収は所得税額の目安になりますが、資産の状況や家族構成などによっても異なります。所得税の仕組みや計算方法を正しく理解しておくとスムーズでしょう。所得税の納税額を抑えるためには、経費を計上したり青色申告を利用したりといった方法が有効です。また自分が他に利用できる控除がないか確認しておきましょう。
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現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
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