2021年5月19日2024年10月9日その他
遺言書の作成費用と内訳は?専門家別の報酬相場も徹底調査
家族や親族に向けて作成する遺言書は、主に3種類あります。作成する際には手数料や専門家への報酬といった費用がかかることがありますが、具体的な費用や内訳を知らない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、遺言書の作成にかかる費用の内訳や相場を紹介します。実際にかかる費用を押さえておくと、無駄な支出を少しでも減らせるでしょう。後半では、それぞれの種類に向いている方の傾向について解説します。
目次
遺言書の種類別|作成費用の違いは?
遺言書の作成にかかる費用を知るには、3種類の遺言書の違いや特徴を理解しておくことが重要です。コストを抑えたい場合、あまり費用がかからない方法を選択しましょう。ここでは、3種類の遺言書の費用について解説します。
自筆証書遺言は最も費用がかからない
遺言者となる方(被相続人)が自筆で作成するのが「自筆証書遺言」です。自分が好きなときに作成し、気軽に修正できます。他の方法では必要な公証人への手数料がかからず、3種類の中で特に費用を抑えやすい方法といえるでしょう。
必要な費用は、筆記具の購入費用と印鑑登録証明書の発行にかかる費用と少額です。ただし、遺言書の保管制度を利用するなら、申請や交付請求にコストがかかります。作成の際に専門家に相談した場合も、報酬の支払いが必要です。
公正証書遺言は公正証書作成手数料がかかる
公証役場に足を運び、公証人や証人のもとで作成するのが「公正証書遺言」です。正しい形式で作成するので形式不備による無効がなく、遺言者の意思を正確に反映できるというメリットがあります。公正証書遺言の作成にかかる費用は以下の通りです。
・公正証書作成手数料
・遺言書正謄本の交付手数料
・必要書類の交付手数料
・証人手数料
自筆証書遺言よりはコストが増えますが、信頼性の面では魅力的な要素が多い方法といえるでしょう。
秘密証書遺言は一律の手数料
公証人や証人の立ち合いにより遺言書の「存在」を証明してもらうのが「秘密証書遺言」です。遺言書は自分で作成し、内容を明かす必要はありません。
作成のための報酬や手数料はかからないものの、証人手数料が必要です。秘密証書遺言の作成に関する手数料は、手数料令28条により一律1万1,000円と定められています。内容を他人に知られない点はメリットですが、形式不備のリスクがあり、あまり使われていません。
項目別|遺言書作成にかかる費用
現在、遺言書の作成や保管についてリサーチしている方は、まず必要書類や手数料をチェックしましょう。書類や費用の内訳が分かれば、遺言書をスムーズに作成できます。作成に関する費用だけでなく、保管にかかる費用を把握することも大切です。ここでは、遺言書の作成にかかる費用について詳しく解説します。
遺言書作成の必要書類と費用
遺言書を作成するには、印鑑証明書や不動産関係の証明書といった書類が必要です。自治体によって交付手数料が異なる書類があるので、自分が住んでいる自治体のサイトで確認するとよいでしょう。以下の表は必要書類と交付手数料の目安です。
書類 | 交付手数料(目安) | |
---|---|---|
遺言者の本人確認書類 | 印鑑登録証明書 | 1通300円 |
運転免許証 | なし | |
遺言者と相続人の関係性が分かる戸籍謄本 | 1通450円 | |
相続人以外に遺贈する場合、受遺者の住民票 | 1通300円 | |
不動産を相続財産に含む場合 | 登記事項証明書 | ・書面請求:600円 ・オンライン請求:500円 |
固定資産評価証明書 | 350円~400円 | |
証人の名前や職業(メモ) | なし |
公正証書遺言:作成手数料
相続あるいは遺贈する財産の価額によって、公正証書遺言の作成手数料は決まっています。手数料は以下の通りです。なお、全体の財産が1億円以下の場合、遺言加算として1万1,000円加算します。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円超え500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円超え3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円超え5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円超え1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円超え3億円以下 | 4万3,000円+超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算 |
3億円超え10億円以下 | 9万5,000円+超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算 |
10億円超え | 24万9,000円+超過額5,000万円までごとに8,000円を加算 |
遺言者の病気といった理由で公証人への出張依頼も可能ですが、基本手数料は遺言加算を除いた目的の価額による手数料額の1.5倍です。例えば、目的の価額が500万円なら、基本手数料は1万1,000円×1.5=1万6,500円かかります。
(参考: 『公証人手数料令第9条別表』)
公正証書遺言:遺言書正本・謄本の交付にかかる手数料
公正証書遺言を作成する際は、公証役場で保管してもらう原本に加えて正本や謄本の交付にも費用がかかります。交付手数料は、遺言書の枚数×500円です。ただし、遺言書の枚数が縦書きで4枚または横書きで3枚を超える場合、超えた枚数×250円を加算します。「原本」「正本」「謄本」の違いは以下の通りです。
種類 | 使い方 | 特徴(定義) |
---|---|---|
原本 | 公証役場で保管 | 作成されたオリジナルの書類 |
正本 | 遺言者に交付 | 原本と同じ効力を持つ写し |
謄本 | 遺言者に交付 | 効力は持たないが、内容の確認に活用できる写し |
公正証書遺言・秘密証書遺言:作成時の証人手数料
作成の際に証人が必要な公正証書遺言や秘密証書遺言は、証人に支払う手数料がかかります。いずれの遺言書でも証人2人以上の立ち合いが必要で、支払う手数料も人数分です。公証役場で証人を紹介してもらった場合、証人1人で6,000円、つまり最低2人分の1万2,000円の手数料がかかります。
家族や知人を自分で手配した場合、手数料は不要です。ただし、礼儀として謝礼を支払うこともあります。
遺言書の保管にかかる費用
遺言書の保管場所や手数料は遺言書の種類によってさまざまですが、保管方法を選べる場合もあります。自筆証書遺言は自宅で保管することが多いですが、紛失や廃棄、改ざんの危険性が高いので注意が必要です。しかし、法改正により2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管する制度が設けられました。紛失が不安な方は保管制度を利用するとよいでしょう。
保管方法 | 手数料 | |
---|---|---|
自筆証書遺言 | 保管制度を利用 | 1件につき3,900円 |
遺言者本人が保管 | 自宅で保管するなら無料 ただし、専門家に保管を依頼する場合、別途保管料が必要 (付帯サービスで無料の場合もある) |
|
公正証書遺言 | 原本は公証役場で保管 正本や謄本は遺言者本人が保管 |
|
秘密証書遺言 | 遺言者本人が保管 |
専門家別|遺言書作成報酬の相場
遺言書の作成を依頼する専門家には「司法書士」「弁護士」「行政書士」「税理士」「信託銀行」といった選択肢があります。専門家に支払う報酬は明確な金額が決まっていないため、専門家ごとの価格帯の傾向を把握すると安心です。ここでは、専門家別の報酬相場をチェックします。
司法書士の報酬相場
法務局で手続きする書類の相談や作成代行を受け付けているのが「司法書士」です。不動産に関する手続きの他、公正証書遺言の作成も依頼できます。以下は司法書士の報酬相場の一例です。公証人手数料のような法的に決まった手数料はないため、あくまで目安と考えましょう。
依頼先 | 報酬の相場 |
---|---|
A事務所 | 5万円前後 |
B事務所 | 6万円前後 |
C事務所 | 7万円前後 |
証人として立ち合いを依頼した場合、さらに数万円程度の証人依頼料が上乗せされます。「財産総額が3,000万円を超えると1,000万円ごとに3,000円加算」といった料金体系もあるため、依頼する前に詳細を確認するとよいでしょう。
遺言書の作成のみを依頼すると、5万円~10万円が目安といえます。報酬は司法書士ごとに異なるため、費用を抑えたい方は複数の事務所を比較するのもひとつの方法です。
弁護士の報酬相場
弁護士の報酬は事務所によって異なります。しかし、2004年4月1日より前は、弁護士に支払う報酬は日本弁護士連合会報酬等基準で定められていました。現在は廃止されていますが、旧規定にのっとって金額を決めているケースが見られます。
旧規定による計算方法の表を参考に遺言書作成報酬の相場を求めると、定型であれば10万円~20万円です。一方、手間がかかる非定型の場合、最低20万円以上と高額になりやすいといえるでしょう。
定型 | 10万円~20万円 |
---|---|
非定型 | 経済的な利益が ・300万円以下:20万円 ・300万円超え3,000万円以下:1%+17万円 ・3,000万円超え3億円以下:0.3%+38万円 ・3億円を超える場合:0.1%+98万円 |
公正証書の場合 | 上記の手数料に3万円加算 |
(参考: 『(旧)日本弁護士連合会報酬等基準』)
行政書士の報酬相場
市区町村役所や警察署への申請手続きや書類作成の代行を受け付けているのが「行政書士」です。司法書士や弁護士同様、明確な規定はなく事務所によって報酬は異なります。以下は行政書士の報酬相場の一例です。
依頼先 | 報酬の相場 |
---|---|
A事務所 | 6万円前後 |
B事務所 | 7万前後 |
C事務所 | 10万円前後 |
事務所によって大幅に上下する可能性はありますが、遺言書作成の報酬は6万円~10万円が相場です。司法書士に依頼した場合と同等の価格帯と考えてよいでしょう。証人としての立ち合いを依頼した場合、上記に加えて数千円~数万円加算されます。
税理士の報酬相場
税金の申告や相続といった税務関係全般の業務を担うのが「税理士」です。税金に関わる相談や手続きだけでなく、公正証書遺言の作成も依頼できます。
依頼先 | 報酬の相場 |
---|---|
A事務所 | 基本6万円(公正証書の場合は3万円程度加算) |
B事務所 | 6万5,000円前後 |
C事務所 | 15万円前後 |
報酬の価格帯が6万円~15万円と幅広いため、信頼性を重視した上で予算に合った依頼先を選ぶとよいでしょう。証人として立ち合いを依頼すると、別途費用が発生するケースがあります。遺言書作成に必要な情報の収集や税金に関する相談も可能です。二次相続や相続税対策といったトータルサポートを受けたいときにも役立つでしょう。
信託銀行の報酬相場
遺言書の作成から財産の管理まで総合的に依頼したいときは、「信託銀行」のサービスを利用するという選択肢があります。
依頼先 | 報酬の相場(合計) |
---|---|
A銀行 | 30万円前後 |
B銀行 | 80万円前後 |
C銀行 | 100万円以上 |
報酬相場は他の依頼先に比べると高額な傾向です。プランによっては100万円を上回り、依頼先の規定や契約内容によって数十万円の差が生じます。他の専門家とは手続きの手順が異なるため、以下の流れを押さえておくと安心です。
・公正証書遺言作成に関する相談
・遺言書に記載する内容の確定と申し込み
・契約を交わした後、相続開始通知者を指定
・作成した公正証書遺言を保管
・定期的な照会や内容の変更
ケース別解説|作成する遺言書はどの種類がよい?
自分に向いている遺言書の種類が分からない方は、それぞれの特徴を踏まえた上でメリットの有無を基準に決めるとよいでしょう。コストや形式不備のリスクといった複数の観点から見極めることが大切です。ここでは、遺言書の種類ごとに向いているケースをチェックしましょう。
自筆証書遺言が向いているケース
遺言書の作成費用を抑えたい方や内容を頻繁に変更したい方は、自筆証書遺言が向いています。作成に関して費用がほとんどかからないため、他の方法に比べて自由度が高く、自らの意思を反映しやすいためです。ただし、専門家のサポートがないと、形式不備により無効になるリスクがあります。
・遺言書作成のコストを削減したい
・偽造や変造をされるリスクがない
・遺産相続に関する専門的な知識がある
・自分の好きなタイミングで気軽に内容を変更したい
公正証書遺言が向いているケース
形式不備により無効になることを避けたい方にとって、公正証書遺言はメリットが多い方法です。公証人が遺言の内容を正しい形式で書いてくれるため、作成から保管まで安心して任せられるでしょう。偽造や紛失のリスク軽減にも役立ちます。
・自分で作成するのは自信がない
・紛失や偽造のリスクに不安を感じる
・遺言書の作成で失敗したくない(無効のリスクを避けたい)
・公証人と証人に遺言書の内容を知られても問題ない
秘密証書遺言が向いているケース
「遺言書の内容は知られたくないが、存在は証明したい」という場合、秘密証書遺言を選択してもよいでしょう。ただし、遺言書は自分で作成するため、形式不備による無効のリスクがあります。他の2種類に比べると利用する方は少数ですが、内容を共有したくない方にとっては魅力的な方法といえるでしょう。
・遺言書の内容を誰にも知られたくない
・遺言書の存在を証明したい
・遺言書をパソコンで作成したい
・公正証書遺言よりもコストを抑えたい
・遺産相続や遺言書に関する専門的な知識がある
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まとめ
遺言書を作成する際は、遺言書の種類や専門家への依頼内容によってさまざまな費用が必要です。自筆証書遺言のようにほぼ無料で作成できる方法もありますが、専門家のアドバイスがないと無効になるリスクがあります。無駄なコストを少しでも抑えるためにも、書類の交付手数料や法的な規定がある公証人手数料だけでなく、司法書士や税理士といった専門家の報酬相場も把握しておきましょう。
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現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
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