2022年1月18日2022年2月24日

法人税を例を用いて分かりやすく解説|計算例や申告書作成の流れは?

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法人税とは、法人が事業活動で得た所得に対し課される税金です。個人の所得に対して所得税がかかるように、法人の所得にも法人税がかかります。では、どのくらい納める必要があるのか、具体的に知りたいという方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、法人税の仕組みについて例を用いながら分かりやすく解説します。法人税の基本的な知識が理解できる他、法人税申告書の作成手順も分かるような内容にまとめました。

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【基礎知識】法人税とは

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法人税とは、企業などの法人組織に対して国が課す税金です。所得が増えるほど税率が上がる所得税と異なり、法人税では法人が一事業年度で得た所得に対し一定の税率を課しています。ここでは、法人税の対象となる法人や法人税率、法人税の課税対象となる所得の考え方に焦点を当てました。

法人税が課される法人と課されない法人

法人税の納付が義務づけられる法人は、基本的に「利益の有無」で判断されます。普通法人や協同組合には法人税が課されますが、公共法人や公益法人、人格のない社団等には原則として課されません。ただし公益法人や人格のない社団等の場合、収益事業で得た所得に対しては法人税が課されます。

【法人税が課される法人】
・普通法人:協同組合等、人格のない社団等、公益法人等、公共法人以外の通常の営利目的で運営される法人です。株式会社や合名会社、合資会社、医療法人などが該当します。

・協同組合等:共通の目的のために集まった個人や中小企業がその目的を達成するために結成した組織です。農業協同組合や漁業協同組合などの協同組合の他、商店街振興組合や信用金庫なども該当します。

【収益事業から得た利益に対して法人税が課される法人】
・公益法人等:公益の向上を目的として運営される法人です。公益社団法人や公益財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人などが該当します。

・人格のない社団等:人や財産などが同じ目的のもとに集まってできた団体のうち、法人格がなく代表者や管理人の定めがある団体を言います。PTAや同窓会、同業者団体などです。

【法人税が課されない法人】
・公共法人:社会の公益のために事業を営んでいる法人です。地方公共団体や金融公庫、国立大学法人などが該当します。

法人税率一覧

法人税率は、法人の種類・資本金・所得金額により区分されます。それぞれの法人税率は、次の通りです。

・普通法人

資本金の金額 所得金額 開始事業年度ごとの法人税率
    平成28年4月以後 平成30年4月以後 平成31年4月以後
1億円以下 年800万円以下の部分 15% 15% 15% ※
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
1億円超 23.40% 23.20% 23.20%

※3年以内に所得金額の年平均額が15億円を超える法人等には、年800万円以下の部分について19%の税率が適用

・協同組合等

所得金額 開始事業年度ごとの法人税率
  平成28年4月以後 平成30年4月以後 平成31年4月以後
年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 19% 19% 19%

なお協同組合等が連結親法人に該当する場合は、年800万円以下の部分については16%、年800万円超の部分については20%の税率がそれぞれ適用

・公益法人等

区分 所得金額 開始事業年度ごとの法人税率
    平成28年4月以後 平成30年4月以後 平成31年4月以後
公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人、公益法人等とみなされるもの 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%
上記以外の公益法人等 年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 19% 19% 19%

・人格のない社団等

所得金額 開始事業年度ごとの法人税率
  平成28年4月以後 平成30年4月以後 平成31年4月以後
年800万円以下の部分 15% 15% 15%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20%

・特定の医療法人
特定の医療法人とは、医療法人のうち、医療の普及向上や社会福祉への貢献などに大きく貢献しており、公的に運営されていることを国税庁長官に承認された法人を指します。

所得金額 開始事業年度ごとの法人税率
  平成28年4月以後 平成30年4月以後 平成31年4月以後
年800万円以下の部分 15% 15% 15% ※
年800万円超の部分 19% 19% 19%

※適用除外事業者に該当する場合の税率は、年800万円以下の部分について19%(特定の医療法人が連結親法人である場合20%)

なお特定の医療法人が連結親法人に該当する場合は、年800万円以下の部分については16%、年800万円超の部分については20%の税率がそれぞれ適用されます。

法人税の課税対象となる所得

法人税の金額は、一事業年度の所得に対し決められた法人税率を乗じて計算します。所得金額の計算式は、「所得金額=益金-損金」です。企業会計上の「利益=収益-費用」とは異なる点に注意しましょう。この違いは、目的の差です。

・企業会計の目的:企業の財政状況を正確に表すことで株主や債権者を保護する
・法人税法の目的:課税の公平を前提に政策上の配慮を取り入れる目的で金額調整をする

法人税法上の調整のために、「別段の定め」として「益金の算入・不算入」「損金の算入・不算入」が規定されています。

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法人税における益金・損金の例

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企業会計上の利益と法人税計算上の所得金額は、一致しないのが通常です。法人税法では益金・損金に算入するべきもの、不算入のものがそれぞれ細かく規定されています。ここでは、法人税法上の益金・損金に焦点を当てました。

益金の例

所得金額の計算上、「益金」として扱うものは、原則として次の取引による収益の額です。

取引の種類 具体例
資産の販売 商品の販売収入
有償による資産の譲渡 有価証券の譲渡収入
無償による資産の譲渡 資産の贈与
有償による役務の提供 サービスの提供による収入
無償による役務の提供 無利息の金銭貸付
無償による資産の譲受け 資産の受贈
その他の取引(資本等取引を除く) 損害賠償金など

企業会計上では収益として計上されるものの、法人税法上では益金として計上されないものがあります。益金に計上されないものは、次のような収益です。

・受取配当金
・資産の評価益
・還付法人税等

「受取配当金」は、支払った企業が支払時に法人税を納付しており、二重課税になるため益金には計上しません。

また、法人税を払い過ぎた場合に税金の還付を受けることがありますが、法人税等は損金においても不算入として扱われるので、益金にも算入されません。

損金の例

所得金額の計算上、「損金」として扱うものは、原則として次の取引にかかる費用の額です。

取引の種類 具体例
売上原価、完成工事原価などの原価 販売した商品などの売上原価、固定資産や有価証券の譲渡原価
販売費、一般管理費その他の費用の額 販売費、一般管理費、営業外費用などの諸費用
損失の額(資本等取引を除く) 特別損失など

企業会計上では費用として計上されるものの、法人税法上では損金として計上されないものがあります。損金に計上されないものは、主に次のような費用です。

・資産の評価損
・過大な役員報酬のうち一定額を超えたもの
・寄付金のうち一定額を超えたもの
・法人税等
・減価償却費のうち一定額を超えたもの
・貸倒引当金の繰入額のうち一定額を超えたもの

損金不算入の費用は、それぞれの項目において損金に算入できる金額などが細かく規定されています。資本金の額によって損金不算入となる額が異なることもありますので、法人税申告の際は税理士のサポートを受けるのがおすすめです。

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法人税の計算例

ここで次の事例を使って具体的な金額を挙げながら、法人税額の計算の流れを解説します。計算の流れをつかむことが目的なので、あえて端数の出ない金額にしております。

【事例】
・資本金1億円以下の普通法人
・企業会計上の利益額:695万円
・法人税の計算上益金に計上されないもの
受取配当金の益金不算入額:5万円
・法人税の計算上損金に計上されないもの
  貸倒引当金の繰入額のうち超過した額:10万円

上記の事例の場合の所得金額は、次の通りです。

・利益額695万円-受取配当金の益金不算入額5万円+貸倒引当金繰入超過額10万円=700万円

利益額から企業会計上では利益として計上されている受取配当金5万円を差し引きます。次に、企業会計上では費用として計上されている貸倒引当金繰入額のうち限度額を超えている部分をプラスしましょう。これは、法人税法上、差し引き過ぎた費用を戻すためです。

最後に法人税法上の調整を加えて算出した「所得金額」に、税率を乗じて法人税額を求めます。今回の事例の場合、資本金1億円以下の普通法人、かつ所得金額は800万円以下ですので、法人税率は15%です。

・所得金額700万円×法人税率15%=105万円

以上から、この事例では105万円が納付すべき法人税です。

法人税申告書の作成手順例

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法人税の申告には法人税申告書の作成が必須です。法人税申告書には多くの別表がある上に、申告に伴い用意しなければならない資料も多く、不慣れな方にとっては難しく感じるかもしれません。

誤った申告をしてしまうと過少申告加算税などのペナルティーが課される可能性があります。正しく申告できるか不安な方や、申告するための時間がない方は、税理士に依頼するのもひとつの手です。ここでは、正しい申告をするために必要な法人税申告書の作成手順をまとめました。

法人税申告書に添付する書類

法人税申告書に添付する必要のある書類は、次の4つです。これらの書類は、申告書が決算内容に基づき正しく作成されていることの根拠として添付する必要があります。

・決算報告書:貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などから構成されます。
・勘定科目内訳書:預金や売掛金、買掛金などの勘定科目ごとに、内訳を記載します。
・事業概況書:業務・業況などをまとめた書類です。法人名や納税地、事業内容、従業員数、主要科目などを記載します。
・適用額明細書:法人が「法人税関係特別措置」の適用を受ける場合に必要です。適用されると法人税額や所得金額を減額できます。

決算報告書を作成するには?

決算報告書は、日頃から帳簿に記録してきたデータをもとに作成します。法人税申告の際に作成される決算報告書には、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」が必要です。その他にもお金の流れを確認するための「キャッシュフロー計算書」を付ける場合があります。

法人税申告書には多くの別表がある

法人税申告書には、一から十九までの多くの別表があります。別表二以降の書類や付表などは、別表一に記載する法人税額が適正に計算できているかを示すために必要なものです。

法人税申告書に必要な申告書類の数は、明細書や届出書などを合わせると100種類以上にのぼります。これらの多くの書類の中から企業の決算内容に合わせ、必要な書類を提出しなければなりません。

別表名 概要
別表一 各事業年度の所得に係る申告書
別表二 同族会社等の判定に関する明細書
別表三 特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書
別表四 所得の金額の計算に関する明細書
別表五 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
別表六 所得税額の控除に関する明細書
別表七 欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書
別表八 受取配当等の益金不算入に関する明細書
別表九 保険会社の契約者配当の損金算入に関する明細書
別表十 沖縄の認定法人の所得の特別控除に関する明細書
別表十一 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書
別表十二 海外投資等損失準備金の損金算入に関する明細書
別表十三 国庫補助金等、工事負担金及び賦課金で取得した固定資産等の圧縮額等の損金算入に関する明細書
別表十四 民事再生等評価換えによる資産の評価損益に関する明細書
別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書
別表十六 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
別表十七 国外支配株主等に係る負債の利子等の損金算入に関する明細書
別表十八

法人税法第七十一条第一項の規定による予定申告書

地方法人税法第十六条第一項の規定による予定申告書

別表十九 退職年金等積立金に係る申告書-退職年金業務等を行う法人の分

(参考: 『令和2年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和2年4月1日以後終了事業年度等又は連結事業年度等分)』/https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2020/01.htm)

法人税申告書作成の基本的な流れ

1.別表六以降を完成させます。
2.別表六以降の情報と決算書の内容を、別表四「所得の金額の計算に関する明細書」にまとめます。
3.別表七「欠損金又は災害損失金の損金算入等に関する明細書」を記入します。
4.別表五(一) 「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」を記入し、法人税確定のため別表一を作成します。
5.別表五(一)と別表五(二)に確定した税額を記入します。
6.最後に、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」に株主構成を記入します。

なお法人の決算状況によって、これら以外の別表を作成しなければならない可能性がありますので注意しましょう。

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まとめ

法人税は、法人が収益を目的とする事業活動を行うことによって得た所得に対し課税される税金です。法人税の課税対象となる所得は、「所得金額=益金-損金」の計算式で求めます。

法人税の申告には、正確に記録された帳簿から作成する決算書が必要です。決算書の他にも必要な書類は多くありますので、正しい申告ができるか不安に思われる方もいるのではないでしょうか。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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