2022年5月6日2022年5月24日税務
法人税の利益に課せられる税率は?計算方法や申告方法を解説します
株式会社などの法人に利益が発生すれば法人税を納める必要があります。正確には会計上の「利益」ではなく税法上の「所得」に対して課税されるので、税法上の決まりに則って計算しなければいけません。法人税の申告に先立ち、おおよその金額が気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、法人税に課せられる税率や税額の計算方法を紹介します。また、法人税の申告・納税の仕方についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
法人税とは?税制度の内容とポイント
法人運営にはさまざまな税金が発生します。その代表例である法人税は、法人が事業活動で得た儲けに対して課せられる税金です。ここではまず、法人税の制度内容や税金の種類といった基本情報を解説します。
法人にかかる税金の種類
法人の儲けに課せられる税金は、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」の3つです。法人住民税や法人事業税は、「事業活動にあたっては各地の行政サービスを利用する」という観点から負担の義務が生じます。個人の所得税や住民税と同じような制度が、法人に対しても発生すると考えるとイメージしやすいでしょう。
なお、法人税は国税ですが、残り2つは地方税です。法人住民税は地方自治体に、法人事業税は各都道府県に納めます。
法人税の制度内容
法人税は、法人が「利益を得るための事業活動」によって得た所得に対してかかる税金です。直接税であるため、法人自らが申告・納税します。所得がない、あるいは赤字であれば、原則納税の義務はありません。
なお、中には法人税の課税対象とならない法人もあります。具体的には、「利益を得ることを目的としない法人・活動」と認定されていれば対象外です。具体例を以下にまとめました。
法人税が課される法人 | ・普通法人:株式会社、有限会社、医療法人、相互会社、労働組合、管理組合、合名会社、日本銀行 など ・協同組合等:生活協同組合、労働者協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、信用金庫 など |
---|---|
法人税が課されない法人 | ・公益法人等:社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人 など ・公共法人:地方公共団体、国立大学法人、国民金融公庫、日本年金機構、金融公庫、日本道路公団、日本放送協会 など ・人格のない社団:実行委員会、同窓会、研究会、PTA など |
所得と利益の違い
会社の儲けは会計上「利益」、税法上は「所得」と呼ばれます。法人税の計算式は「課税所得×税率」です。計算の際に用いるのは所得であって利益ではない点、注意しましょう。所得と利益の計算方法は以下の通りです。
・所得=益金-損金
・利益=収益-費用
一見同じように見えますが、儲けから差し引きできるものの内容や条件が異なるため、利益と所得が一致するとは限りません。このように、法人税は税法独特の考え方に基づいて計算するのが特徴です。
法人税の税率と軽減措置
法人税の計算時には、課税所得に対し定められた税率を乗じて計算します。税率は法人の規模や種類、所得金額に応じて異なるため国税庁のホームページなどで確認しましょう。なお、条件を満たす中小企業には軽減税率の特例措置があります。以下で詳しく解説します。
税率一覧表
法人税は、主に普通法人や協同組合などに課せられる税金です。ただし、資本金の額や適用除外事業者(過去3年間の平均所得金額が15億円を超える中小企業者)かどうかで税率が異なります。法人税の税率は以下の通りです。
対象 | 所得金額 | 法人税率 |
---|---|---|
資本金1億円超の普通法人 | – | 23.2% |
資本金1億円以下の普通法人など | 年800万円超の部分 | 23.2% |
年800万円以下の部分 | ・適用除外事業者:19% ・それ以外:15% |
|
協同組合 | 年800万円超の部分 | 19%(20%) |
年800万円以下の部分 | 15%(16%) | |
特定の医療法人 | 年800万円超の部分 | 19%(20%) |
年800万円以下の部分 | ・適用除外事業者:19%(20%) ・それ以外:15%(16%) |
※()は、協同組合等または特定の医療法人が連結親法人である場合の税率
(参考: 『国税庁 法人税の税率』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm)
なお、通常は法人税が課せられない法人であっても、事業活動の内容によっては課税対象となるケースもあるため注意が必要です。
中小企業の軽減措置
資本金1億円以下の普通法人は、条件に合致すれば中小企業の軽減措置が適用されます。軽減措置適用前の税率は23.2%、適用後は15~19%です。
【軽減措置の基本条件】
・資本金額が1億円以下であること
・資本もしくは出資を有していないこと
・資本金が5億円以上の法人との間に完全支配関係がないこと
なお、この軽減措置は2023年3月31日までに事業を開始した法人が対象です。対象期間以降に事業を開始した法人は原則対象外となるため気を付けましょう。
事例で確認!法人税の計算方法
実際に自社で納める法人税がどの程度なのか、シミュレーションしたいという方もいるでしょう。法人税の計算手順はシンプルで、大きく分類すると2ステップです。具体例を挙げながら解説します。
【手順1】課税所得を算出する
まず課税所得を確認しましょう。計算式は「課税所得=益金-損金」です。純粋な収益から益金・損金の確認をして所得を割り出す際の一連の作業を、税務調整といいます。
税務調整は、税収の確保と税の公平性を保つための作業です。税務調整時には会計上の利益から、「益金になるもの」と「損金にならないもの」を加算し、「益金にならないもの」と「損金になるもの」を減算します。
例)
・会計上の利益:700万円
・益金になるもの:100万円
・損金になるもの:50万円
・計算式:700万円+100万円-50万円=750万円(課税所得)
【手順2】税率を確認し計算する
課税所得を割り出したら、そこに法人税率をかけましょう。計算式は「法人税=課税所得×税率」です。例えば、資本金1億円以下の普通法人の課税所得が1,000万円だった場合は、1,000万円×23.2%=232万円となります。
税率は法人の種類や資本金額などによって設定されています。例えば、資本金が1億円以下の普通法人で、課税所得が800万円以下の場合は軽減税率が適用されます。
課税所得の算出時は益金・損金の対象項目に注意
法人税の計算時には税務調整として加算調整と減算調整をするため、益金と損金の対象項目・非対象項目を確認しておく必要があります。
加算調整 | ・益金算入:会計上の収益ではないが、税務上の益金に含まれるもの ・損金不算入:会計上の費用であるが、税務上の損金に含まれないもの |
---|---|
減算調整 | ・益金不算入:会計上の収益であるが、税務上の益金に含まれないもの ・損金算入:会計上の費用ではないが、税務上の損金に含まれるもの |
益金になるもの
益金とは、法人税法上で定められた収益のことです。例えば、債券の償還差益や株式投資の譲渡益、サービス提供に関わる収益などが該当します。
・資産の販売
・有償または無償による資産の譲渡
・有償または無償による役務の提供
・無償による資産の譲り受け
・その他の取引
上記は加算調整によって所得に含まれます。有償で提供したものに限らず、無償での提供でも益金が発生するため注意しましょう。
益金にならないもの
益金にならないものは、減算調整によって収益から差し引き可能です。例えば、次のものは益金の対象外です。
・受取配当金
・税金の還付金
・保有資産の評価益 など
なお、益金に含まれるものの、二重課税や不合理な益金になる対象は、一部だけが益金不算入となるケースもあります。
損金になるもの
損金とは法人税法上で定められた費用のことです。具体的には次のような費用です。
・商品の原価
・販売費や一般管理費(人件費、水道光熱費、家賃など)
・損失
事業を営む上で発生した費用や損失は損金として計上でき、収益から差し引きできます。ただし、意図的に課税所得を減少させるものや、決算日までに債務が確定していないものは原則認められていません。
損金にならないもの
通常、法人が事業活動をする際には、さまざまな費用がかかります。しかし、損金として認められないものがあります。
・役員報酬
・限度額を超えた寄付金
・交際費
・租税公課
・減価償却費の過大分 など
上記のような費用は加算調整によって所得に含まれます。例えば、収益100万円と役員報酬(損金にならないもの)が50万円ある場合の所得は、150万円です。
税務調整では、各法人によって損金の対象や認識にズレが生じることを防ぐために一定のルールを定めています。正しい所得を確認するためにも、益金・損金の内容をしっかりと把握しましょう。
法人税の申告方法や必要書類
ここでは法人税の確定申告の方法を紹介します。申告の流れや必要書類、納税方法といった基本情報を事前に確認しておくことで、スムーズに作業を進められるでしょう。
申告方法と流れ
法人税の申告までには時間がかかるため、決算が終了したら早めに申告作業を開始しましょう。法人税申告の流れと手順は以下の通りです。
1.決算手続き
2.税務調整
3.申告書の作成と必要書類の収集
4.申告書類の提出
5.税金の納付
確定申告先は、本店や本社といった主たる事業所の所在地管轄の税務署です。窓口に持参するほか、郵送、e-Taxでの申請も認められています。
申告に必要な書類
法人税の申告時には「決算報告書」「勘定科目内訳書」「適用額明細書」「事業概況説明書」の添付が必要です。詳細は法人や申告内容によって変わることがあるため、税務署や税理士に確認するとよいでしょう。
また、法人税申告書には一から十九までの別表があり、細かな書類を合わせると膨大な数になることがあります。
(参考: 『令和2年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和2年4月1日以後終了事業年度等又は連結事業年度等分)』/https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2020/01.htm)
3つの納税方法
法人税の納付は、以下の3つの方法から選択可能です。
・現金
金融機関や税務署窓口で納税できます。30万円未満の場合はコンビニでも納付可能です。
・クレジットカード
「国税クレジットお支払いサイト」を通してクレジット決済ができます。決済手数料がかかることや領収証の発行がない点に注意しましょう。
・電子納税
e-Taxやインターネットバンキングから納付できます。なお、e-Taxを利用する場合には、納付前に開始届出書の提出が必要です。
申告に遅れた場合はどうなる?
法人税には申告期限があり、個人の確定申告時よりも厳格にチェックされる傾向が強いです。万が一申告期限に間に合わなかったり、申告内容に間違いがあったりした場合、追徴課税や社会的信頼の失墜といったペナルティを被る恐れがあります。
法人税の申告期限
法人税の申告期限は、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。3月末が決算の法人であれば、5月末日が申告期限となります。申告期日が土日や祝日と重なった際には、休み明けの平日が申告期限の最終日です。
なお、法人事業税や法人住民税の申告期限は、「課税事業年度」終了日翌日から2か月以内です。基本的には事業年度と同じですが、課税期間を短縮する場合は期限が異なります。
発生し得るペナルティ
申告期限に遅れるとペナルティが発生する可能性があります。例えば、「次年度から青色申告が取り消しになる」「社会的信用が落ちる」「追徴課税が発生する」といったものです。また、追徴課税には複数の種類があり、課される税金の種類や税率が異なります。
・無申告加算税
・重加算税
・延滞税
ただし、ペナルティの発生を恐れ、申告期限ギリギリに急いで申告書を作成するのも危うい行動といえます。納めるべき税金が少なかった場合にも、過少申告加算税という追徴課税が課せられます。
理由によっては猶予される場合も
しかるべき理由で申告期限に間に合わないときは、申告期限延長の申請をするのが得策です。以下のような理由がある場合、確定申告が猶予されることもあります。
・株主総会の開催が申告期限より後になった
・自然災害により被害を受けた
・連結法人の数が多い など
申告期限の延長は、適用を受けたい事業年度の末日までに税務署に申請しましょう。また、連携法人の申請期限は連結事業年度末日の翌日から45日以内です。
申請が認められれば申告期限を延長できますが、納税が遅れることに変わりはないため利子税が発生します。期限に遅れるよりはデメリットが少ないものの、申告期限を延長するメリットは特にありません。できるだけ申告期限に間に合うように、早めに申告準備を進めることが大切です。
法人税の申告相談はネイチャーグループで!
法人税の確定申告には必要書類が多く、税額の計算も複雑なため難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。プロに依頼することで、計算ミスや申告期限に間に合わないといったリスクを削減できます。
法人税について疑問や悩みがある方は、ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にご相談ください。税務の知識を蓄えた専門家が、税務相談から確定申告書の作成・提出までをトータルサポートいたします。
当グループの相談・案件実績は、年間2,000件、累計1万件です。国内外の税務や投資に関するさまざまなお悩みを解決してきました。豊富な知識や経験を生かし、幅広い観点からのサポートが可能です。お客様の不安や悩み、ご相談内容に合わせて丁寧にコンサルティングいたします。
まとめ
法人税は、法人が事業活動により得た儲けに対して発生する税金です。税率は法人の規模や種類、所得金額に応じて異なります。法人税が発生する事業年度は確定申告が必要になりますが、税務調整は複雑であるため、難しさを感じる方もいるかもしれません。
確定申告の悩みや法人税に関する気になることがあれば、お気軽にネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にご相談ください。豊富な専門知識を持った税務のプロが、お客様をサポートいたします。
ネイチャーグループは『富裕層の税金対策・資産運用相談』を
年間2,000件お答えしてる実績があります。
資産運用や税金対策は専門的な知識が必要で、「そもそも何をすればいいか分からない」方が多いと思います。
また、投資経験者の多くが不安や悩みを抱えているのも事実です。
そのような不安や悩みを解決するべく、経験豊富なコンサルタントがどんな相談内容にも丁寧にお答えします。
資産運用や税金対策についてお悩みなら、まず富裕層に熟知したネイチャーグループへご相談ください。
芦田ジェームズ 敏之
【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
◇◆ネイチャーグループの強み◇◆
・〈富裕層〉×〈富裕層をめざす方〉向けの資産運用/税金対策専門ファーム
・日本最大規模の富裕層向けコンサルティング
・国際的な専門家ネットワークTIAG®を活用し国際案件も対応可能
・税理士法人ならではの中立な立場での資産運用