2022年5月25日2022年8月30日税務

知らないと損?サラリーマンができる所得税の節税対策

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サラリーマンの所得税は、毎月の給与から差し引かれています。給与明細を見て、思いのほか税金を納めていることに驚く方もいるのではないでしょうか。

所得税の各種控除の制度を利用すれば、給与の手取額を増やせる可能性があります。賢く節税をするためにも、所得税の制度を把握しましょう。

そこでこの記事では、サラリーマンが活用できる所得税の節税対策を紹介します。税金の制度のほか、節税対策としての不動産投資にも焦点を当てました。

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サラリーマンの所得税における8つの節税対策

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所得税は、所得金額から所得控除を差し引いて求めた課税所得に対し、税率を乗じて計算します。ここでは、サラリーマンが利用できる所得控除のほか、所得税から直接差し引ける税額控除などについても紹介します。

1.配偶者控除・扶養控除

配偶者がいる場合に受けられる所得控除として、配偶者控除や配偶者特別控除があります。ただし、その年の本人の所得金額が1,000万円を超える場合には適用されません。

配偶者の年間所得金額が48万円以下であれば、配偶者控除が適用されます。給与所得では所得金額を「給与収入-給与所得控除」で計算するので、給与所得控除55万円を考慮に入れ、配偶者の所得が103万円以下であれば適用されるということです。

  控除額
納税者本人の所得金額 配偶者が70歳未満 配偶者が70歳以上
900万円以下 38万円 48万円
900万円超~950万円以下 26万円 32万円
950万円超~1,000万円以下 13万円 16万円

 

配偶者特別控除では、配偶者の所得金額が48万円を超える場合でも、配偶者の所得金額に応じて一定額の所得控除が受けられる可能性があります。配偶者特別控除の控除額は、次の通りです。

  納税者本人の所得金額
配偶者の合計所得金額 900万円以下 900万円超
~950万円以下
950万円超
~1,000万円以下
48万円超~95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超~100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超~105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超~110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超~115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超~120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超~125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超~130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超~133万円以下 3万円 2万円 1万円


扶養控除は、配偶者以外で生計を一にする扶養親族がいる場合に適用が受けられます。扶養控除の適用を受ける場合、扶養親族の年間の所得金額が48万円以下でなければいけません。控除額は次の通りです。

扶養親族の条件 控除額
16歳以上 38万円
19歳以上23歳未満 63万円
70歳以上(同居以外) 48万円
70歳以上(同居) 58万円

2.ふるさと納税

ふるさと納税とは、都道府県や市区町村への寄付制度です。任意の自治体に寄付をすることで、出身地を応援したり災害などで困っている地域を支援したりできます。所得税や住民税の控除を受けられるほか、返礼品がもらえることもメリットです。

ふるさと納税による控除制度は税額控除と呼ばれ、一定額を所得税から直接控除できます。控除額の計算方法は、次の通りです。

・所得税からの控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率
※控除対象のふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限
・住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
※控除対象のふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限
・住民税からの控除額(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税率)

3.医療費控除

医療費控除とは、年間の医療費の合計額が一定額を超えた場合に適用できる所得控除です。納税者本人の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者や扶養親族のために支払った医療費も対象になります。

医療費控除額は、実際に支払った医療費から「保険金などで補てんされた金額」と「10万円」を差し引いた金額です。つまり、実質的に医療費が年間10万円を超えたときに利用できる控除だと言い換えられます。

また、医療費にまつわる所得控除の制度として、セルフメディケーション税制があります。セルフメディケーション税制とは、対象の一般用医薬品等の購入額が1年間で1万2,000円を超える場合に利用できる制度です。なお医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか選択できません。

年間の医療費は10万円を超えないものの、ドラッグストアなどで購入する一般用医薬品等の金額が1万2,000円を超える場合には、セルフメディケーション税制の利用を検討することをおすすめします。

4.生命保険料控除

所得控除のひとつである生命保険料控除の対象となる保険料は、生命保険料および介護医療保険料、個人年金保険料の3つです。契約年月日によって、控除額の計算方法が異なる点に注意しましょう。控除額の計算方法は、次の通りです。

新契約(平成24年1月1日以後に契約した生命保険、介護医療保険、個人年金保険)

年間の支払保険料 控除額の計算方法
2万円以下 支払保険料の全額
2万円超~4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超~8万円以下 支払保険料等×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

旧契約(平成23年12月31日以前に契約した生命保険、個人年金保険)

年間の支払保険料 控除額の計算方法
2万5,000円以下 支払保険料の全額
2万5,000円超~5万円以下 支払保険料等×1/2+1万2,500円
5万円超~10万円以下 支払保険料等×1/4+2万5,000円
10万円超 一律5万円

なお、これらの生命保険料控除の控除限度額は12万円です。旧契約のみの場合には、10万円が限度額になります。

5.住宅ローン控除

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言い、住宅ローンによってマイホームを新築したり特定の改修工事をしたりした場合に適用できる税額控除です。一定の要件を満たすときは、住宅ローンの年末残高を基にして計算した金額を所得税額から控除できます。

なお住宅ローン控除については、令和4年度税制改正大綱により改正が行われました。これにより令和4年度以降に入居する場合、控除額が「年間ローン残高×1.0%」から「年間ローン残高×0.7%」に改正されます。

6.NISA(ニーサ)

NISAとは、毎年一定の金額の範囲内で購入した株式や投資信託について、その売却益や配当金などによって得た利益が非課税になる制度です。

NISAでは、「つみたてNISA」と「一般NISA」のいずれかひとつを選択しなければなりません。

つみたてNISAでは毎年40万円を上限に、非課税期間20年間で最大800万円の非課税投資枠を利用できます。長期投資に適したいくつかの投資信託の中から、自分の選んだものを毎月一定額、積み立てていく仕組みです。

一方の一般NISAは毎年120万円を上限に、非課税期間5年間で最大600万円の非課税投資枠が利用できます(2023年で終了し、新NISAに移行されます)。上場株式を含めた幅広い金融商品が対象となるため、たくさんの商品から自分好みの銘柄を選びたい人や株式の購入を考えている人に向いている制度だと言えるでしょう。

7.iDeCo(イデコ)

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で老後資金をつくるために行う任意加入の年金制度です。掛金・金融商品を自分で選択肢して運用する仕組みで、老後資金を効率的に準備するために活用できます。

大きな特徴は、「掛金の全額が所得控除の対象となる」「運用益を非課税で再投資できる」といった税制上のメリットです。

加入できるのは原則として日本在住の20歳以上60歳未満で、国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している人です。

8.給与所得の特定支出控除

給与所得の特定支出控除とは、給与収入のある人が通勤費や職務上必要な旅費、転勤に伴う転居費などの「特定支出」と認められる費用を個人で支払った場合に利用できる制度です。

その年の特定支出の合計額が一定の金額を超える場合は、超過部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引けます。なお、勤務先が証明した費用でなければ、特定支出控除として認められない点に注意しましょう。

こんな場合に活用できる!さらなる節税対策5選

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所得税の制度には、特定の状況で活用できるものがあります。ここでは、次の5つのシチュエーションで利用可能な節税対策に焦点を当てました。

・配偶者と死別または離婚した場合
・婚姻歴のない未婚の親である場合
・災害や盗難に遭った場合
・株取引で損失が発生した場合
・副業をしている場合

配偶者と死別または離婚した場合

配偶者と死別または離婚したことで、一定の要件を満たす「寡婦」となった場合は、所得控除額27万円の寡婦控除を利用できます。寡婦控除の適用を受けられるのは、次のいずれかの人です。

・配偶者と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族がいる合計所得金額が500万円以下の人
・配偶者と死別した後に婚姻をしていない、または配偶者の生死が明らかでない合計所得金額が500万円以下の人

寡「婦」控除なので、対象は女性に限られています。また結婚歴が必要である点に注意しましょう。

婚姻歴のない未婚の親である場合

婚姻歴のない未婚の親の場合は、「ひとり親控除」の適用により所得控除額35万円が適用されます。ひとり親控除の適用を受けるためには、原則として結婚していない人または配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件を全て満たさなければなりません。

・その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
・生計を一にする子がおり、その子について、総所得金額等が48万円以下で他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない
・合計所得金額が500万円以下

ひとり親控除は、男女問わず利用できます。寡婦控除と両方の適用要件を満たしていても、併用はできません。両方の適用要件を満たす場合には、ひとり親控除が適用されます。

災害や盗難に遭った場合

災害や盗難、横領によって一定の要件を満たす資産に損害を受けた場合は、「雑損控除」が適用できます。控除できる金額は、次の2つのうち多いほうの金額です。

・(損害金額+災害等に関連して支出した金額-保険金等の金額)-総所得金額等×10%
・(災害等に関連して支出した金額-保険金等の金額)-5万円

なお雑損控除の対象となるのは、家屋や家具など生活に通常必要な資産であり、事業用資産や骨董(こっとう)品などは含まれません。

株取引で損失が発生した場合

上場株式等で売却損が発生した場合は、申告分離課税を選択した人に限りその年の上場株式等の配当所得の金額と相殺できます。

申告分離課税を選択していない場合でも、上場株式等の取引で発生した売却損をその売却損が発生した年の翌年以後3年間にわたって、上場株式等の売却益や配当所得等との相殺が可能です。

例えばその年に売却損が200万円発生した場合、翌年150万円の売却益が発生してもその売却益は相殺されるため、売却益に対する所得税はかかりません。相殺されなかった50万円(=200万円-150万円)は、さらに次の年に繰り越されます。

副業をしている場合

サラリーマンが副業をしている場合、事業所得の申告が必要な可能性があります。事業所得のある場合は、青色申告制度を利用します。

青色申告であれば特別控除65万円を適用できたり、副業で発生した損失を翌月に繰り越せたりと、多くの節税メリットを享受できるためです。

なお事業所得に該当する収入とは、「繰り返し、継続して、独立して行うもの」による収入です。これらの要件を満たさない原稿料やモデル料、オークションサイトで得た売却益などは、雑所得に該当します。

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サラリーマンは不動産投資で節税できる?

サラリーマンの節税対策として、不動産投資を検討される方もいるのではないでしょうか。節税に活用できる代表的な方法は、「減価償却費」という勘定科目です。

不動産投資のように多額の購入費用がかかるものは、購入初年度に全額経費計上するのではなく、「耐用年数」という不動産の構造等で異なる年数分に分けて経費計上できる仕組みがあります。つまり、購入2年目以降は実際の支出を伴わずとも経費が発生するため、収益を圧迫できます。

ただし、投資用不動産を短期間で売却する際は注意が必要です。減価償却をすると会計上の価値(簿価)が減るため、仮に5,000万円で購入した建物を1,000万円ずつ、5年間かけて減価償却したとき、5年目以降の簿価はなくなります。この不動産が購入価格と同じ5,000万円で売却できた場合、5,000万円に譲渡税率がかけられ、多額の譲渡税を納めなければなりません。

譲渡税率は資産の所有期間によって異なります。売却する際は、長期譲渡所得と見なされるタイミングで手放すのがよいでしょう。

区分 所得税 住民税 合計
長期譲渡所得(所有期間5年超) 15% 5% 20%
短期譲渡所得(所有期間5年以下) 30% 9% 39%

減価償却の使い方や譲渡のタイミングにかぎらず、動産投資による節税対策は事前に詳細なシミュレーションが必要です。不動産投資の際は、資産運用を専門とする税理士に相談することをおすすめします。

所得税の節税対策をする際の注意点

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せっかく節税対策に取り組んでも、税金の専門知識がないと思いがけない損をしてしまう場合があります。効果的な節税対策のために、事前に正しい知識を身に付けましょう。ここでは、所得税の節税対策の際に注意すべきポイントについて解説します。

過剰な節税対策で出費が増えないようにする

ふるさと納税による寄付額や住宅ローン控除の対象となる住宅購入金額が多額になるなど、節税を意識するあまり不要な出費が増えないように注意しましょう。支出を減らすための節税対策であり、適切な節税効果が見込めるものなのか慎重に検討する必要があります。

期限内に確定申告をする

住宅ローン控除を初めて利用する年や、株取引の譲渡損失の繰越控除を利用する場合など、適用を受ける制度によっては確定申告が必要です。確定申告をしない場合はそれらの制度を受けられず、節税効果も得られません。確定申告期間は、原則として2月16日から3月15日です。忘れずに手続きをしましょう。

また誤った申告により納めるべき税金が少なく税務署から指摘を受けた場合、追加で納付する税金と合わせ「過少申告加算税」を納めなければなりません。確定申告をする際は、間違いのないように注意しましょう。

節税対策としての資産運用はお任せください!

資産運用には専門知識が必要です。思わぬ損失を生まないためにも、節税対策としての資産運用はプロに任せることをおすすめします。

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不動産投資だけでなく有価証券投資や保険の見直しまで、一人一人に合った資産運用のご提案が可能です。税務アドバイスや資産運用といったトータルアドバイザリーを行いながら、資産形成をサポートします。

まとめ

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所得税の仕組みを理解することで、配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などの所得控除の他にも、ふるさと納税やNISAといった節税効果のある税金の制度を活用できるようになります。また所得金額によっては不動産投資などの資産運用も、検討してみるとよいでしょう。

ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)では、資産運用に関するご相談を受け付けています。「節税対策として資産運用を検討している」という方は、ぜひこの機会に一度お問い合わせください。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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