2022年6月10日2023年4月6日税務

所得税の税率は?計算方法や税金を抑える方法を解説します

所得税とは、給与所得や事業所得といった所得に課せられる税金で、既定の範囲を超えている場合は確定申告が必要です。税額によっては手残りが変化するので「所得税の税率が知りたい」「税額がいくらになるか事前に確認しておきたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、所得税の税率や計算方法といった基本情報を紹介します。節税方法も解説するため、税負担を軽くしたい方は参考にしてみてください。

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一目で確認!所得税の税率

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所得税には、累進課税制度(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)が採用されています。ご自身の所得税の納税額を知る上では、税率について理解を深めることが大切です。最初に、所得税の税率と2015年から適用された税制改正について解説します。

所得税の税率は?

所得税の税率は、課税所得金額(所得金額から所得控除を差し引いた金額)に応じて7段階に分かれています。具体的な税率は以下の通りです。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円まで 5% 0円
195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

(参考: 『所得税の税率|国税庁』/
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)

所得税の税率改定

国の税制改正により、2015年1月1日以降の所得税から税率が変更されています。2014年までは税率は5%、10%、20%、23%、33%、40%の6段階で、4,000万円以上の45%の税率は設けられていませんでした。

税率改定により、4,000万円以上の高所得者の納税額が引き上げられたため、計算する際には注意が必要です。今後さらに税率が改定される場合には、納税額が大きく変わる可能性もあるため、ニュースなどをこまめに確認しましょう。

所得税の計算方法と手順

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所得税の計算は、税率をかけて終わりではありません。課税所得や所得控除の算出など、複雑な工程があるのが特徴です。ここでは、所得税の計算方法を手順に沿って解説します。所得や控除額の分かる資料を用意し、一緒に計算して流れをつかみましょう。

【手順1】課税所得を求める

雑所得や給与所得、事業所得など、総合課税の対象である全ての所得を合計した総所得金額から所得控除を差し引き、課税所得を求めます。条件に当てはまる所得控除があれば、利用するとよいでしょう。所得控除は以下の15種類です。

・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄附金控除
・障害者控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・扶養控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・基礎控除

【手順2】税率をかける

課税所得に税率をかけ、控除額を差し引きます。給与所得や事業所得だけでなく、他の所得を合計した所得全体に税率をかける点に注意しましょう。所得税の税率表は前述しているため、ご確認ください。

例えば、課税所得が800万円の場合、算出税額は800万円×23%-63万6,000円=120万4,000円です。

【手順3】税額控除を差し引く

要件に合致する税額控除があれば算出税額から差し引き、最終的な所得税額を求めます。主な税額控除の種類や内容は以下の通りです。

・配当控除
・外国税額控除
・寄附金特別控除
・住宅ローン控除
・認定住宅の新築等特別税額控除

税額控除は算出税額から直接差し引けるので、大きな節税効果が期待できます。ただし、税額控除を利用する際は全てのケースで申告義務が発生するため、申告を忘れないように気を付けましょう。

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復興特別所得税も課税される

東日本大震災からの復興の財源を確保するために、2013年から2037年までは追加で「復興特別所得税」が課せられるので注意しましょう。

復興特別所得税額は基準所得税額によって変動します。基準所得税額とは、所得税額から税額控除を差し引いたものです。課税所得が800万円の場合、算出税額は800万円×23%-63万6,000円=120万4,000円となります。ここから利用可能な税額控除を差し引いた額(基準所得税額)に税率2.1%を乗じて、復興特別所得税額が算出されます。

雑所得とは?雑所得の種類や内容

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「ネットオークションで大きな金額を稼いでいる」「副業を始めた」といったケースでは、受け取った収入が雑所得に該当する可能性があります。雑所得は他の所得区分に該当しない所得で、定義が広いため注意が必要です。まずは雑所得に含まれる所得の範囲や種類、類似する所得との違いについて理解を深めましょう。

雑所得の概要

会社から受け取る給与所得や事業で稼いだ事業所得、株式投資で得た配当所得と、所得の種類は多様です。10種類の所得区分のうち、他の9種類の所得区分に当てはまらない所得が雑所得に区分されます。区分の種類と内容は以下の通りです。

所得区分 内容
利子所得 預貯金や債券に発生する利子
配当所得 株式の配当など
不動産所得 賃貸物件の家賃収入など
事業所得 事業活動によって得た所得
給与所得 雇用主から受け取る給与
退職所得 退職により受け取る一時所得
山林所得 山林の譲渡時に発生する所得
譲渡所得 資産の譲渡により得た所得
一時所得 生命保険の一時金や福引の賞金など
雑所得 上記のいずれにも該当しない所得

雑所得に含まれる所得

雑所得は「公的年金等」と「それ以外」に区別されます。公的年金等に分類されるのは、厚生年金や国民年金、共済や確定給付企業年金です。保険会社の満期保険金は、年金受け取りを指定しているのであれば雑所得ですが、一時金として受け取るケースは一時所得になるので雑所得に含まれません。

また、公的年金以外の雑所得はさまざまな収入が含まれます。代表的な所得は以下の通りです。

・仮想通貨の利益
・FXで得た利益
・ネットショップで得た利益
・印税
・講演料
・原稿料
・太陽光発電の売電収入

雑所得と他の所得の違い

雑所得と似た所得に事業所得や一時所得があります。個人事業主としてネットショップを経営していたり原稿料や講演料で生計を立てていたりする場合、事業所得になるのか悩む方もいるかもしれません。開業届や青色申告承認申請書を提出している個人事業主であれば、事業所得として申告できます。

一方、所得区分が曖昧なケースは判断が難しく、概要や条件をしっかりと確認することが大事です。一般的に、事業所得や一時所得の条件に合致しないものは雑所得に含まれます。

・事業所得:農業、小売業、サービス業などの事業活動により得た所得
・一時所得:偶発的かつ、営利目的の活動から生じた所得以外の所得で、労務や資産の譲渡による対価に該当しないもの

発生する税金の種類

一定の金額以上の所得がある場合、所得税と住民税を納めなければなりません。雑所得は基本的に総合課税(一部分離課税)に分類され、分離課税に分類されない所得を合計して税額を求めます。

所得税は累進課税を採用しており、所得の金額に応じて税率も高くなるのが特徴です。一方、住民税の所得割にかかる税率は一律10%が基本となります。ただし、地方自治体によって税率が異なるケースもあるため、各自治体のホームページを確認しましょう。

雑所得はいくら?所得の求め方

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雑所得の金額によっては確定申告をしなければなりません。まずは雑所得として稼いだ金額を確認しましょう。ここでは、雑所得の計算方法を紹介します。所得から控除できる金額や経費の内容も併せて解説するため、計算する際の参考にしてみてください。

雑所得の計算方法

雑所得を求める計算式は、主に3パターンあります。雑所得の内容ごとの計算式は以下の通りです。

・公的年金等の雑所得=収入金額-公的年金等控除
・業務にかかる雑所得=収入金額-必要経費
・その他の雑所得=収入金額-必要経費

公的年金等の雑所得では定められた控除額を、年金以外の雑所得では必要経費を収入から差し引きます。収入=雑所得ではないので注意しましょう。

公的年金等の控除額

公的年金等の雑所得を求める際は、受け取った年金の金額から公的年金等控除を差し引きます。公的年金等の控除額は以下の通りです。なお、所得が年金のみ、または年金以外の所得が1,000万円以下の場合を記載しています。

受給者の年齢 受け取った年金額(A) 公的年金等控除
65歳未満 130万円以下 60万円
130万円超410万円以下 (A)×25%+27万5,000円
410万円超770万円以下 (A)×15%+68万5,000円
770万円超1,000万円以下 (A)×5%+145万5,000円
1,000万円超 195万5,000円
65歳以上 330万円以下 110万円
330万円超410万円以下 (A)×25%+27万5,000円
410万円超770万円以下 (A)×15%+68万5,000円
770万円超1,000万円以下 (A)×5%+145万5,000円
1,000万円超 195万5,000円

年金収入を1年間に150万円受け取った場合、65歳以上の方の控除額は110万円で、雑所得は150万円-110万円=40万円です。一方65歳未満であれば、控除額は150万円×25%+27万5,000円=65万円で、雑所得は150万円-65万円=85万円と計算します。

雑所得において認められる経費

副業のような事業活動で収入を得た際や仮想通貨の投資で利益が発生した場合、収入を得るにあたって必要な経費を収入から差し引きます。雑所得で経費に計上できるものの一例は以下の通りです。

・電気代
・通信費
・消耗品費
・外注費
・広告費

税務署に確認された際に証拠として提示できるよう、レシートや領収書はしっかりと保管しておきましょう。ただし、支出の100%を経費にできないこともあるため注意が必要です。例えば、プライベート用のスマホで副業もしている場合、使用割合に応じて按分して経費を求めます。

所得税を抑えるための節税方法

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所得税額は所得が増えるほど高くなるため、節税方法を活用することが大切です。ここでは、所得税を抑える方法を具体的に解説します。節税方法は所得控除や青色申告など複数あるので、うまく組み合わせて節税効果を高めましょう。

ふるさと納税を利用する

所得控除のひとつに、「ふるさと納税」があります。ふるさと納税は、全国から応援したい自治体を選び寄付することで、寄附金控除を利用できる制度です。控除額は自己負担額2,000円を超える部分となり、一定の上限があります。

例えば2万円を寄付した場合には、2万円-2,000円=1万8,000円が控除額です。控除により所得税や住民税を節税できるほか、返礼品を受け取れるため、控除額や返礼品などを確認した上で利用しましょう。

生命保険や地震保険を活用する

生命保険や地震保険の保険料を支払っている方であれば、生命保険料控除や地震保険料控除を利用できます。

生命保険料控除は、契約締結日が2011年12月31日以前か2012年1月1日以降かで控除額が異なるので注意が必要です。例えば2011年12月31日以前の控除額は最高10万円で、2012年1月1日以降の控除額は最高12万円となります。地震保険料控除の控除額は最高5万円です。

扶養控除や医療費控除を活用する

扶養控除は、16歳以上の親や子どもといった扶養親族がいる場合に利用できる制度です。扶養親族と生計を一にしていることや、年間の合計所得が48万円以下などの要件を満たす必要があります。控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なります。

医療費控除は1月1日~12月31日の間でご自身とその他の親族の医療費が一定額を超える場合に、最高200万円まで控除できる制度です。

青色申告をする

確定申告時に青色申告を選択することで、最大65万円の控除を受けられます。家族を従業員にした場合には給与を全額経費にできたり、経費計上のルールが緩くなったりと、経費にできる金額が増えるのも大きなメリットです。

一方で白色申告の魅力は、簡易帳簿で済むことや、青色申告よりも申告手続きが簡単な点にあります。ただし青色申告のような節税効果は期待できません。

確定申告が必要な場合の申告方法

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税額控除を利用する方や雑所得が20万円を超える会社員は確定申告をしなければなりません。一方、雑所得があっても、確定申告が不要なケースもあります。確定申告には期限があり、添付書類も必要なため事前に確認しておくことが大切です。ここでは、確定申告の必要性や申告方法を紹介します。

申告方法と期限

申告場所は住所地管轄の税務署で、前年の1月1日~12月31日における所得を申告します。申告書を作成し、添付書類をそろえて提出しましょう。提出方法は以下の4つのパターンがあります。

・税務署の窓口に持参する
・e-Taxで電子申請する
・税務署の時間外収集箱へ投函する
・書類を郵送する

郵送する場合、基本的には住所管轄の税務署ではなく専担部署(センター)へ送ります。申告期限は原則2月16日~3月15日です。ただし、還付を受けるときは対象となる年の翌年1月1日から5年間申告できます。

確定申告に必要な書類

確定申告に必要な申告書は、税務署の窓口や国税庁のホームページから入手できます。申告書はAとBの2種類で、申告書Aは給与所得者、それ以外は申告書Bを使用するのが一般的です。申告書以外にも以下の書類が必要となります。書類に不備があると期限に間に合わない恐れがあるため、申告までに全てそろえましょう。

【共通】
・マイナンバーカードまたは通知カード
・本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
・銀行の口座情報が分かるもの(還付の場合)
・所得を証明できるもの
・所得控除や税額控除を受けるための書類
・源泉徴収票

【ケースに応じて必要となる書類】
・青色申告決算書
・収支内訳書
・領収書やレシート

確定申告が不要なケース

雑所得があっても確定申告が不要なケースもあります。例えば、公的年金等の金額が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の年金受給者は確定申告が不要です。

また、年末調整をした方で雑所得の合計が20万円以下のケースも申告義務はありません。ただし、「年収が2,000万円を超えている」「年末調整を受けていない」「税額控除を利用する」といった場合、確定申告の義務が発生するので注意しましょう。

確定申告しなかった場合

確定申告が必要な方が申告しないと、税務調査によって無申告であることが発覚し、ペナルティが発生する恐れがあります。延滞税や無申告加算税、重加算税が課される場合があるため、注意しましょう。

所得税の申告義務がない場合でも、住民税の申告が必要なケースがあります。また、確定申告により税金を多く納め過ぎていたことが発覚した場合、税金が還付されます。申告の必要があるか判断に迷っている方は、専門家に相談すると安心です。

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まとめ

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給与所得や事業所得といった所得が発生している場合、所得税を納める必要があります。所得が増えるほど所得税額は高くなるため、計算方法や節税方法を理解し、少しでも税負担を軽くすることが大切です。

所得に関する疑問や質問がある方は、ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にご相談ください。累計1万件を超えるご相談や案件により培ったノウハウに基づいて、確定申告の書類作成から税務相談まで全面的にサポートします。

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芦田ジェームズ 敏之

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【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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