2022年6月24日2024年7月8日相続・事業承継税務
相続税対策13選!税金を可能な限り減らすためにできることを紹介
被相続人の遺産を引き継ぐにあたって、注意しなければならないのが相続税です。
相続税は、財産の金額・価値に応じて課せられる税金です。お金持ちか否かは関係なく、申告時に金額の大きさに驚かれる方も少なくありません。
しかし相続税は、生前の準備次第で大きな節税につながる可能性があります。よって、しっかりと対策をしておくことが求められます。
そこでこの記事では、相続税対策としてできることや具体的な13個の対策について紹介します。(本記事掲載内容は2024年4月時点の内容です。最新の情報については、公式サイトや最新のニュースをご確認くださいませ。)
目次
相続税対策に向けてできること
そもそも、相続税対策として何ができるのかを把握しておくことが大切です。把握しておくべきことや仕組みについて、詳しく確認していきましょう。
相続税の基礎控除額を把握する
相続税は、亡くなった人の財産を相続するにあたって、その合計金額が基礎控除額を超えると課税対象になります。
相続税における基礎控除の計算式
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数 |
例えば、夫と妻と子供3人の家族構成である場合。夫が亡くなった時における相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×4人=5,400万円」です。
つまり、財産の合計金額が5,400万円を下回るなら、相続税は発生しません。5,400万円を超えた分に対して課税されます。
相続財産を減らす
相続税の節税対策として、相続対象となる財産を減らすことは効果的です。
生前の間に財産の整理および処分を済ませておけば、課税対象となるトータルの財産を減らせます。
もし、基礎控除額を超えていたとしても、対策して範囲内に収められれば、相続税は課せられません。
なお、相続財産の中には、基礎控除額とは別に非課税枠が設けられているものもあります。こうした仕組みを駆使していけば、より効果的に財産を減らせるでしょう。
相続財産の評価額を下げる
相続財産における相続税の計算は「相続税評価額」を基準に決定されます。
例えば、下記のように財産の種類によって、評価の方法は異なります。
- 預貯金や投資信託といった金融商品:相続発生時の時価で評価
- 不動産:路線価や固定資産税評価額で評価
不動産の場合、一般的に預貯金よりも評価額が下がります。よって
預貯金から他の資産に組み替えれば、相続税評価額を低くでき、相続税の節税が期待できます。
納税資金を用意する
原則として、相続税は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内が申告期限で、現金一括払いとなります。よって、相続税の納税資金を準備しておく必要があります。
相続財産の内、金融資産が少ない場合に資金を用意する主な方法は、以下の通りです。
- 相続した不動産を売却して資金調達
- 銀行からの借り入れ
なお、現金の用意が難しい方で一定の要件を満たした場合には、最長20年での分割で納税する延納制度や相続した財産そのもので納付する物納制度を活用できます。
このような制度を駆使しながら、自分に合った納税方法を検討しましょう。
まず検討したい相続税対策10選
それでは、相続税対策としてまず検討したい方法を10個紹介します。
対策1.毎年110万円の財産がゼロ円で子や孫に相続できる暦年贈与を活用する
相続税対策として、もっともメジャーな方法は生前贈与です。
生前贈与の中に、暦年贈与と呼ばれる年間110万円の財産が非課税で子や孫に移せる方法があります。
基礎控除額の上限は、受贈者(贈与を受ける人)ごとに設けられています。1人あたり110万円以下であれば、受贈者に税金はかかりません。
例えば、孫が祖父と祖母からそれぞれ100万円ずつ贈与を受けた場合、合計は200万円なので、110万円を超えた90万円が贈与税の課税対象です。一方、祖父が孫4人に100万円ずつを贈与した場合、400万円全額が非課税になります。
ただし、法定相続人となる方に贈与を行った場合、タイミングによっては相続税の持ち戻しの対象となるため注意してください。
対策2.生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数まで)を活用する
被相続人が亡くなり、受け取った生命保険や損害保険の金額は、相続税の課税対象になります。ただし、非課税枠として「500万円×法定相続人の数」までは税金がかかりません。
死亡保険金は、被保険者や契約者、受取人によって課される税金の種類が異なります。
被保険者 | 保険料の負担者 (契約者) |
受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人 | 配偶者 | 相続税 |
被相続人 | 配偶者 | 配偶者 | 所得税 |
被相続人 | 配偶者 | 子 | 贈与税 |
なお、所得税や贈与税においては「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が利用できない点に注意しましょう。
対策3.小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額する
被相続人の居住用であった宅地などに相続税が課せられると、被相続人が亡くなってから相続人が居住できなくなる可能性があります。
そこで、小規模宅地等の特例として、要件を満たした宅地は通常の評価額から一定割合の評価減を受けられます。
種類 | 使用例 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
特定居住用宅地等 | 戸建てや分譲マンションなどの自宅 | 330平方メートル | 80% |
貸付事業用宅地等 | 賃貸アパートやマンションなど事業で不動産貸付けをしている宅地 |
200平方メートル | 50% |
特定事業用宅地等 | 個人事務所など不動産貸付け以外の事業で使用している宅地 | 400平方メートル | 80% |
特定同族会社事業用宅地等 | 被相続人が経営する企業に貸していた宅地 | 400平方メートル | 80% |
最大で80%の減額が適用できますが、土地の用途次第では、上限面積や減額割合が異なる点に注意してください。
対策4.住宅取得等資金の非課税枠を活用する
住宅取得等資金の贈与税においても特例があります。
具体的には、18歳以上の子どもや孫へ住宅資金を援助するにあたって、一定金額を上限として非課税になる制度です。省エネ等住宅においては1,000万円、それ以外は500万円が上限となります。
住宅取得等資金の非課税枠を活用するには、贈与された年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を提出しなければなりません。
なお、住宅取得等資金の贈与に関しては、暦年贈与の基礎控除110万円などとの併用も可能です。
対策5.お墓や仏壇など非課税財産で上手く節税する
お墓や仏壇といった祭祀財産(位牌,墓碑,墓地など)は、相続税がかかりません。というのも、相続税法で「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝しているもの」は「相続税がかからない財産」として認められているからです。
生前に購入しておくことで、相続税対策になります。
ただし、被相続人が残した借金のような債務は遺産総額から差し引ける一方、非課税財産の債務は債務控除として認められません。
例えば、相続発生後に祭祀財産を購入した場合や購入したものの代金を支払っていないケースが当てはまります。
また、骨董(こっとう)品のような高価な財産は、非課税財産として認められない場合があります。
対策6.アパート・マンションの不動産経営で節税する
賃貸アパートやマンションの不動産経営は、効果的な相続税対策です。
賃貸アパートやマンションの不動産経営で得られる効果は、以下の3つです。
土地の評価減 | 土地は、大きさや形、高低差や利用状況などによって、評価額を下げられます。 土地に建てた家屋を第三者に貸し付ける「貸家建付地」の場合、自用地としての評価額から一定割合で評価額が減額されます。 (貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
建物の評価減 | 建物は固定資産税評価額が相続税評価額になります。 固定資産税評価額は時価の70%程度と言われています。 また、賃貸で空室が無い場合、さらに30%の評価減があります。 |
差し引ける控除の増加 | 賃貸マンションの建築に関連する金融機関からの借入金も、債務控除として遺産総額から差し引けます。 |
ただし、賃貸経営には空室リスクも伴います。入居率が下がると、賃貸割合の低下と評価減の効果も下がりますので注意してください。
対策7.養子縁組を活用して基礎控除額を増やす
相続税では、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除や「500万円×法定相続人の数」が非課税になる死亡保険金など、法定相続人の数が多いほど非課税枠も増えます。
養子縁組は、法定相続人を増やすことで非課税枠を増やし、相続税額を減らす手法です。
相続税法上の法定相続人の数は、被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで認められています。増やした人数分、限度無しで控除額が増えるわけではない点に注意しましょう。
対策8.学校や公益団体に財産の寄付で非課税になる特例を受ける
お世話になった学校や地方公共団体など、教育や科学の振興に貢献している公益目的の法人へ寄付される方がここ数年間で増加しています。
こうした寄付を行うと、対象の財産にかかる相続税が非課税になる特例があります。
特例の適用要件を3つ、以下にまとめました。
- 寄付した財産が、相続または遺贈によって受け取った財産であること
- 相続税申告書の提出期限までに寄付すること
- 寄付先が「特定の公益法人」であること
ただし、上記の要件を満たさないと特例を受けられないため、注意してください。
対策9.結婚から20年以上経過しているならおしどり贈与で配偶者に贈与する
おしどり贈与とは「贈与税の配偶者控除」を指します。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭が贈与された場合、贈与税の基礎控除額110万円に加えて最高2,000万円まで控除できます。
ただし要件として、贈与を受けた人は翌年3月15日までに贈与された不動産(または贈与資金で購入した不動産)に居住しなければなりません。
また、同じ配偶者からの贈与は1回に限られます。制度の適用によって税額がゼロ円になっても、申告が必要である点に注意してください。
対策10.死亡退職金の非課税枠を活用する
死亡退職金には、非課税枠が設けられています。
- 死亡退職金における非課税枠の計算式
- 500万円×法定相続人の数
例えば、夫と妻、子供2人の家族構成だった場合。夫が亡くなると、死亡退職金の非課税枠は500万円×3人で、1,500万円になります。
税理士などの専門家に相談の上で実施したい相続税対策3選
続いて、相続税対策として有効ではあるものの、税理士をはじめとした専門家に相談したほうが良い対策を3つ紹介していきます。
対策1.贈与税の仮払いで相続税と精算する相続時精算課税制度を活用する
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母、または祖父母が18歳以上の子や孫に財産を贈与する場合、2,500万円を上限に贈与税が非課税になる制度を指します。
贈与税は、2,500万円を超える分において一律で20%課せられます。
ただし、この制度で贈与した財産は、贈与者が亡くなったときに相続財産の課税対象に加算されます。贈与税の代わりに相続税が課される点には注意してください。
なお2024年1月以降、法律の改正によって、相続時精算課税を活用した年110万円までの贈与に関しては相続時に持ち戻しされないというルールが追加されました。
年110万円までなら税金がかからないため、対策しやすくなるでしょう。
「一度選択すると暦年贈与に戻せない」「届出等の手間が煩雑」といったデメリットはありますので、税理士に相談しながら慎重に検討してください。
対策2.1,000万円まで非課税になる結婚・子育て資金を一括贈与する
子や孫に対する結婚や出産、子育ての資金として、一定額まで非課税で贈与できる制度に結婚・子育て資金贈与があります。
対象は、18歳〜50歳未満の人が、父母や祖父母といった直系尊属から受けた贈与です。
金銭などの中で1,000万円(結婚式などの費用は300万円)を上限として、贈与税が非課税になります。
ただし、下記3点には注意しなければなりません。
- 金融機関での手続きが求められる
- 50歳時の残高はその年の贈与税として課税対象になる
- 50歳満了時までに贈与者が亡くなると、残高は相続税の課税対象になる
このようなポイントを踏まえて、税理士に相談しながら進めてください。
対策3.1,500万円まで非課税になる教育資金を一括贈与する
教育資金贈与は、30歳未満の子や孫に対して父母や祖父母といった直系尊属が教育資金を贈与するときに、1,500万円まで非課税になる制度です。
ただし、習い事のような「学校など以外」に支払われる費用については、非課税枠1,500万円のうち500万円までしか利用できません。
また、この制度を利用するには、金融機関に一度資金を預ける必要があります。
なお、贈与者が管理契約終了前に死亡した時点で管理残額があった場合、受贈者の年齢や状況によっては、受贈者が贈与者から相続または遺贈でその金額を得たものとされます。さらに、受贈者が贈与者の子ども以外で直系卑属の場合(孫など)には、相続税額の2割加算対象となります。
加えて、令和5年4月1日以降の取得分において、贈与者の相続財産が5億円を超える場合、受贈者が23歳未満や学校に在籍している場合でも口座残高が相続税の対象になるので注意してください。
相続税対策を実施する前に知らないと危険な注意点
相続税対策は、実践すれば大きな節税効果が期待できます。しかし、知らないと危険なポイントもいくつかあります。
ここからは、相続税対策で知らないと危険な注意点を3つ紹介します。
生前贈与でも死亡直前だと相続税の対象になる
生前贈与においても、亡くなる7年以内のものに関しては、相続税の対象になります。というのも、「駆け込み贈与」による相続税逃れを防止するためです。
これまでは、亡くなる前3年以内の贈与が対象でした。しかし、2023年の税制改正により、亡くなる前7年以内に延長されています。
2024年1月の贈与から適用されるため、その期間は段階的に延びていきます。
よって、生前贈与を行うのであれば早い段階で済ませておく方がよいでしょう。
とはいえ、相続財産への持ち戻しの対象は、相続人や受遺者への生前贈与になります。相続人・受遺者に該当しない孫への生前贈与は対象になりません。
つまり、亡くなる直前に「孫の将来を考えてお金を残したい」と暦年課税制度で110万円以内の贈与をしたとしても、贈与税や相続税は発生しないのです。
名義預金は相続財産として扱われる
被相続人が資金を出しており、被相続人の財産と認められる場合、被相続人名義の財産でなくても相続税の課税対象となります。
贈与には、贈る側と受け取る側の双方の同意がなければいけません。親は贈与のつもりでも、子に知らせずに名義預金をしていた場合、親の財産として相続時に相続税が課されます。
なお、名義預金と見なされないためには、下記3つの対策を取りましょう。
- 贈与契約書を作る
- 被相続人の印鑑と相続人名義の預金の届出印は別のものを使う
- 届出印や通帳、キャッシュカードは名義人が管理する
相続税対策において、名義預金の知識もおさえておいてください。
相続税対策に向けた税理士の選び方
相続税対策をするなら、税務の専門家である税理士への相談がおすすめです。とはいえ、税理士なら誰でもいいわけではありません。
税理士を選ぶときに確認したいポイントは、以下の5つです。
- 相続税に関する知識・ノウハウが豊富にある
- 試算が正確にできる
- 二次相続を考慮できる
- 税務調査対策ができる
- 生命保険にも精通している
- 不動産の処分や登記変更など、他の不動産業や士業との提携がある
上記の観点から税理士を比較検討して選んでみてください。
相続税対策に関するよくある質問
では、相続税対策に関するよくある質問を紹介します。
相続税対策が必要な人を教えてください
相続税対策が必要な人は、以下の計算式を用いて算出できる基礎控除額を超える人です。
3,000万円+600万円×法定相続人の人数
例えば、夫と妻と子供2人の家族構成である場合。夫が亡くなった時における相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」です。
このケースで考えると、4,800万円を超えるなら、相続税対策が必要になります。
相続税対策はいくらからが目安になりますか?
相続税の基礎控除額は、基本的に3,600万円が最低金額となります。
よって、相続財産の総額が3,600万円以下なら相続税はかかりません。
条件によっても変動しますが、3,600万円以上を基準として把握しておきましょう。
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まとめ:相続税対策を徹底して少しでも多く手残りを増やそう
相続税は、対策をしているかいないかで、後々の人生に大きな影響を与える税金です。しっかりと対策しておかなければいけません。
相続税対策としてできることはたくさんあります。この記事で紹介した13個の対策から、自身ができる対策について相談しながら取り組みやすいものから取り入れてみましょう。
相続税対策は、早めのうちに取り組まなければ後悔しかねません。「自分はまだ大丈夫だろう」と楽観視せず、将来に向けた節税対策を検討してみてください。
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