2023年3月10日2024年4月21日資産運用
海外赴任中も確定申告は必要?申告が必要になるケースと手続きの方法
海外赴任中でも日本で確定申告が必要なケースがあります。海外赴任の予定があり、日本での確定申告に不安を感じている方や自身に確定申告の必要があるか気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、確定申告の必要性や確定申告の方法を紹介します。年末調整や源泉徴収に関する注意点、スムーズに確定申告を済ませる方法も解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
日本の居住者となる場合は確定申告が必要
海外赴任者の日本での確定申告の有無を左右するのは「居住者」に該当するかどうかで、日本の居住者は確定申告をしなければなりません。居住者と非居住者の条件は以下の通りです。
・居住者:国内に住所を有する者、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人
・非居住者:居住者以外の個人
居住者は、原則国内外の全ての所得が確定申告の対象となります。ただし、居住者の中でも日本国籍を持たず非永住者に該当する方は、課税対象となる所得が異なるため注意が必要です。非永住者の定義と課税対象となる所得は以下のように定められています。
個人の区分 | 定義 | 対象となる所得 |
---|---|---|
非永住者 | ・日本国籍がない ・過去10年以内に日本国内に住所、あるいは居所を有していた期間が5年以下である個人 |
・国外源泉所得以外の所得 ・国外源泉所得のうち日本国内で支払われた所得 |
非永住者以外の居住者 | ・上記以外の個人 | ・全ての所得 |
(参考: 『国税庁 納税義務者となる個人』/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2010.htm)
非居住者でも海外赴任中に確定申告が必要な方
1年以上にわたって海外赴任するときは非居住者に該当しますが、一切課税されないわけではありません。非居住者でも国内源泉所得は確定申告が必要です。ここでは、申告が必要なケースの具体例を紹介します。自身がどのケースに該当するか確認する参考にしてみてください。
国内の資産を運用し所得を得た
日本国内に資産を保有する方が資産運用で所得を得た場合、その所得が課税対象となります。対象となる所得の一例は以下の通りです。
・国内法人の株式から得た利益
・公社債を貸付した際の貸付料
・供託金から発生する利子
・資金調達の際に発行する約束手形にかかる償還差益や発行差金 など
国内の資産を譲渡して所得を得た
日本国内の資産を譲渡して得た利益も課税対象です。海外赴任する際は長期赴任に伴い、自宅を売却することもあるでしょう。売却時に利益を得ると、譲渡所得に対して確定申告の義務が発生します。また、不動産の上に存する権利や国内施設の利用に対して発生する権利を譲渡した場合の所得も課税対象です。
国内に不動産を保有し所得を得た
日本国内に土地や自宅といった不動産を所有し、賃貸などで得た所得も確定申告の必要があります。海外赴任する方は、赴任中に限り自宅を他者に貸し出すケースが少なくありません。また、国内で不動産投資をしていて、賃料による不労所得を得た場合も課税対象です。
国内で一時所得を得た
日本国内の保険会社と契約した保険契約で、受け取った一時金も所得税の課税対象です。生命保険の満期金や解約により受け取る保険金が該当します。海外赴任する前に、自身の保険契約の内容を確認しましょう。国外滞在中に満期金や保険金を受け取る予定があれば、確定申告の準備をする必要があります。
海外赴任者の年末調整に関する2つの注意点
日本企業に勤めている方は年末調整を受けるケースがほとんどです。ただし、海外赴任者は年末調整の対象とならない場合があります。海外赴任者が年末調整の際に注意したいポイントは2つです。事前に確認し、対処法を考えましょう。
非居住者は原則年末調整の対象にならない
年末調整とは、月々の源泉徴収税額と確定した所得税額の過不足を清算する手続きです。会社は従業員の給与から毎月所得税を源泉徴収しているため、年末調整で本人に代わって調整手続きをします。
海外赴任をしていて非居住者に該当する方は、年末調整の対象外です。申告が必要な所得があれば、自身で確定申告をしなければなりません。一方、海外赴任期間が1年未満の方は居住者と見なされ、会社が年末調整を実施します。
出国時年末調整の必要がある場合も
1年の途中で出国や帰国をする場合、年末調整の対象となります。年末調整のスケジュールは以下の通りです。
・帰国者:帰国した日から年末までの給与を12月に年末調整する
・出国者:1月1日から出国までに支払われた給与を出国日までに年末調整する
出国に際して実施する年末調整を出国時年末調整といいます。なお、1年間の給与支給額が2,000万円を超える方は年末調整の対象外です。自身で確定申告をしましょう。
海外赴任者の源泉徴収税はどうなる?
海外赴任者の給与や賞与は、源泉徴収されるケースとされないケースがあります。実際にどのような場合に源泉徴収されるのでしょうか。ここでは、海外赴任者における源泉徴収の必要性や源泉徴収されるケースについて解説します。
源泉徴収の必要性
源泉徴収とは、1年間の所得に対して課される税金を給与からあらかじめ差し引く手続きです。差し引いた税金は年末調整の後、会社が従業員に代わって納めます。
居住者に該当する海外赴任者の場合、国内外のどこで得た所得でも源泉徴収の対象です。一方、海外滞在期間が1年以上の非居住者の国内源泉所得に対しては、基本的に源泉徴収が必要ありません。ただし、中には源泉徴収が必要な所得も存在します。
日本出張で源泉徴収されるケースも
1年以上海外赴任をする非居住者の方が、日本に出張で戻ってくることもあるでしょう。その際に支払われる給与は、国内源泉所得です。日本に滞在していた期間の給与に対し、20.42%の税率をかけて源泉徴収されます。
ただし、日本への出張期間が1か月に満たないケースでは、源泉徴収の義務は発生しません。また、居住者の場合、日本への出張か帰国かにかかわらず源泉徴収されます。
役員の海外出張では源泉徴収が発生する
役員が海外赴任する際は、従業員のケースと源泉徴収の取り扱い方が異なるため注意が必要です。会社役員が海外赴任で支払われた報酬は国内源泉所得と見なされ、全ての報酬の20.42%が源泉徴収されます。
ただし、使用人として勤務して得た給与は国内源泉所得になりません。現地でどのような働き方をするかによって、源泉徴収の有無が決まります。
海外赴任中の方が確定申告をする方法
非居住者に該当する方で、所得税の申告・納税の義務がある方は確定申告をしましょう。ここでは、「納税管理人を選出する方法」と「自身で確定申告をする方法」の2つの手続き方法を紹介します。手続きを進める際の参考にしてみてください。
納税管理人を選出する場合
納税管理人とは、税務に関する手続きを代行する方です。出国までに「納税管理人」の届出書を提出すれば、納税管理人が確定申告時期に所得税の申告・納税をします。
海外赴任中の方が手続きのために一時帰国をする必要がないのがメリットです。納税管理人に所得や家族の状況を報告すれば、自身でやらなければならない手続きはほとんどないため、手軽に申告・納税ができるでしょう。
自身で確定申告する場合
納税管理人がいない場合、「1月1日から出国時までの所得」について出国前に確定申告した上で、「1月1日から出国時までの所得と出国後から12月31日までの国内源泉所得の合計」を翌年の確定申告時期に申告・納税しなければなりません。納税管理人の届け出をせずに出国前に確定申告をしなかった場合、加算税や延滞税が課される恐れがあります。
また、海外赴任中の非居住者でも国内源泉所得がある年は確定申告が必要です。非居住者はe-Taxを利用できない点に注意しましょう。
確定申告以外で税金の申告が必要となるケース
所得税の確定申告以外にも税金の申告が必要なケースは以下の通りです。
・相続税が発生したとき
・贈与税が発生したとき
・住民税の納税義務が発生したとき
・不動産の固定資産税が発生したとき
税金の申告や納税の義務が発生した場合、それぞれ申告が必要ですが、手続きのたびに帰国するのは現実的ではありません。納税管理人の届け出をしておけば、税務手続きの代行を依頼できます。
ただし、手続きごとに「納税管理人届出書」が必要な点に注意しましょう。例えば、「所得税以外に相続税の申告もお願いしたい」というときは別の届出書を提出します。自身が海外赴任する際にどのような税金が発生するか事前に確認することが大切です。
納税管理人を通して確定申告する際の手順
納税管理人を選出すると、所得税や相続税、贈与税の申告業務を依頼できます。自身で申告する手間や時間を削減できるため、海外赴任する方にとってメリットの多い制度です。ここでは、納税管理人に確定申告を依頼する方法を手順に沿って解説します。
手順1.納税管理人を誰にするか決める
まずは、納税管理人を選出しましょう。納税管理人に必要な資格はなく、日本国内に居住する方であれば誰でも納税管理人に指名できます。個人や法人といった決まりもありません。
ただし、確定申告書の作成や税務相談は税理士の独占業務です。申告書の受け取りや提出以外に作成もお願いしたい方は税理士に依頼するとよいでしょう。適切な申告ができるだけでなく、税金対策に関するアドバイスを受けられるのがメリットです。
手順2.納税管理人届出書を提出する
納税管理人を決めたら、税務代行を依頼する手続きをしましょう。所得税の場合、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出します。相続税や贈与税といった他の税金の申告も依頼する際は、税の種類ごとの届出書が必要です。
また、納税管理を依頼する税金の種類によって届出書の提出先が異なります。それぞれの提出先は以下の通りです。
・所得税:日本国内の税務署
・相続税:被相続人の住所を管轄する税務署
・贈与税:受贈者の住所を管轄する税務署
税金の申告準備はできていますか?税務に関するご相談はネイチャーグループへ
海外赴任者でも所定の基準を満たす所得は日本で確定申告が必要です。ただし、海外からの税務手続きに難しさを感じることもあるでしょう。納税管理人を選出すれば、申告がスムーズに進みます。申告書の作成や税務相談を依頼したい方は、税理士を納税管理人に指名しましょう。
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まとめ
日本の居住者に該当する海外赴任者は、全ての所得が確定申告の対象です。一方、非居住者はケースによって確定申告の必要性が異なります。海外からの確定申告に難しさを感じる方は納税管理人を選出しましょう。
納税管理人は、日本国内に居住する方であれば誰を選出しても問題ありません。しかし、申告書の作成や税務相談もお願いしたい場合、税務のプロである税理士に依頼するのが得策です。
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また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
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