2023年4月12日2023年4月5日税務

法人税等調整額とは?勘定科目や仕訳方法を分かりやすく解説します

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法人税等調整額とは、会計処理の際に使用される勘定科目です。正しく法人税を算出するために欠かせないものであるため、会計処理をする際はしっかりと理解を深めておく必要があります。

経理担当の方の中には、法人税等調整額の正しい計算方法や会計処理方法を知りたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では法人税等調整額の計算方法や仕訳方法を紹介します。法人税等調整額の概要や注意点、法定実効税率といった関連する情報についても詳しく解説するため、ぜひ参考にしてみてください。

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法人税等調整額とは

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法人税とは、法人が営業活動により得た所得に対して発生する税金です。法人税を計算する際は会計帳簿などを基にしますが、会計上の利益と税務上の課税所得は異なる可能性があります。差額が生じている場合は会計処理によってズレを直さなければ、正しい金額を納税できません。

この差額を調整するのが法人税等調整額です。会計処理の際に使用する勘定科目のひとつで、金額差を調整する手続きを税効果会計といいます。なお、会計上の利益と税務上の所得に差異が発生しなければ法人税等調整額を使用する必要はありません。

法人税等調整額の対象科目は?

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会計上の利益と税務上の課税所得のズレは「差異」と呼ばれ、「一時差異」と「永久差異」の2種類に分けられます。ただし、どちらも法人税等調整額の対象になるわけではないため注意が必要です。ここでは、法人税等調整額の対象科目と対象外とされる科目について解説します。

対象となる科目

法人税等調整額の対象となる科目は一時差異です。一時差異とは、会計と税務の差異が一時的に発生しているだけの状態で、将来的に解消されるもののことをいいます。一時差異の一例は以下の通りです。

・減価償却費
・繰越欠損金
・貸倒引当金繰入超過額
・賞与引当金
・退職給付引当金 など

また、一時差異はさらに「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」の2種類に分けられます。将来減算一時差異は、法人税等調整額を適用して課税所得のズレを調整した際に所得から減額されるものです。一方、将来加算一時差異に該当する費用は、差異を解消させたときに所得に加算されます。

対象とならない科目

一時差異は、税務と会計の処理のタイミングが異なることで生じた差異です。そのため、時期がくれば差異が解消されます。一方「永久差異」とは、将来的に解消できる見込みのないズレのことです。ズレを調整する必要がないことから、法人税等調整額の対象に含まれません。永久差異に該当する費用には以下のようなものがあります。

・受取配当金の益金不算入
・損金算入限度超過額(寄付金や交際費など)
・役員賞与
・税金 など

どの費用が対象になるかを事前に確認してから税効果会計を施しましょう。全ての差異を計上してしまうと、正しく納税できなくなる恐れがあります。

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法人税等調整額の要となる法定実効税率

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法人税等調整額を計算する際に使用するのは、法定実効税率です。対象となる科目の金額に法定実効税率をかけて、会計処理で調整する金額を求めます。税効果会計の際に要となる税率であるため、事前に知識を深めておくことが大切です。

ここでは、法定実効税率の概要と、法人税等調整額と関係の深い「繰延税金資産」「繰延税金負債」について解説します。

法定実効税率

法定実効税率とは、「法人税」「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」「特別法人事業税」などの税率を使用して計算した実質的な税負担率です。税効果会計の際に使用する税率で、企業の資本金額や所得に応じて異なります。

【計算式】
実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率+特別法人事業税率) ÷(1+事業税率+特別法人事業税率)

繰延税金資産

繰延税金資産は、税効果会計の際によく適用される勘定科目です。繰延税金資産として計上できる費用には以下のようなものがあります。

・減価償却費
・賞与引当金
・貸倒引当金
・棚卸資産の評価減 など

将来的に返還される見込みのある費用が対象です。そのため、会計処理で課税所得から減額される「将来減算一時差異」と見なされます。

繰延税金負債

繰延税金負債は、将来的に納める必要がある税金の見積額のことです。以下のような費用は繰延税金負債として認められます。

・有価証券の評価益
・固定資産圧縮積立金
・特別償却準備金 など

繰延税金負債は該当する費用が少なく、限られているのが特徴です。繰延税金負債は会計上の利益を税務上の益金に合わせる際に使用します。

実効法人税率と表面法人税率の違い

表面法人税率とは、法令で規定されている税率のことです。表面法人税率と実効法人税率は、税率を利用する場面や計算方法に違いがあります。表面法人税率を使用するのは税額計算や申告の際です。一方の実効法人税率は、税効果会計の際に使用します。表面税率の計算式は以下の通りです。

【計算式】
表面税率=表面税率=法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率+特別法人事業税率

表面税率と実効税率には、計上される税金にも違いがあります。表面税率は事業税が損金に含まれません。そのため、表面税率よりも実効税率を使用した場合のほうが、課税所得が小さくなり税額も低くなる傾向があります。

実効法人税率を計算する際のポイント

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法人税等調整額を求める際は、まず実効法人税率を計算しましょう。計算する際は「法人の種類によって税額が異なる」「法人住民税率と法人事業税率は自治体により異なる」「今後法人税が変わる可能性がある」という点に注意が必要です。

ここでは、3つの注意点について詳しく解説します。事前にポイントを確認し、正しい税率を求めましょう。

法人税は法人の種類によって税額が異なる

法人に課される税金は「法人税(法人所得税)」「法人住民税」「法人事業税」「地方法人税」「特別法人事業税」の5種類です。そのうち「法人税」は国税で、所在地による税率の違いはないものの、法人の種類や資本金額、所得などによって税率が変わります。

例えば、資本金額が1億円以上の普通法人は「23.2%」、資本金額が1億円以下の場合「所得800万円以上は23.2%」「所得800万円以下は15.0%」です。協同組合や公益法人など、法人の種類によっても税率に違いがあります。自社の税率が何%になっているかを事前に確認しましょう。

法人住民税率と法人事業税率は自治体によりさまざま

法人住民税や法人事業税は地方税です。事業所のある自治体において「サービスを利用する費用を支払うこと」を目的として納税します。

法人住民税を構成するのは、「法人税割」と「均等割」です。法人税割は所得から算出した法人税額に住民税率をかけたものであり、均等割は資本金額や従業員数などに応じて決められます。同じ税率を用いている自治体が多いものの、一般的な数値と異なる税率を定めているケースもあるため事前の確認が必要です。

法人税が変わる可能性がある

税率や税金の制度内容は、時代の流れや社会情勢の変容に合わせて見直されるものです。これまでにも以下のように推移してきました。

年度 平成24年度 平成27年度 平成28年度 平成30年度
法人税率
(基本税率)
25.50% 23.90% 23.40% 23.20%

現在までは昭和59年をピークに少しずつ税率が下がってきていますが、今後社会情勢が変われば、税率が上がる可能性は否定できません。毎年同じ税率であるとは限らないため、最新の情報をチェックしてから計算しましょう。

(参考: 『財務省 法人課税に関する基本的な資料』/https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c01.htm)

法人税等調整額の計算方法と仕訳方法

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会計上の利益と税務上の課税所得が合わないときは、法人税等調整額を使用して会計処理をする必要があります。しかし、具体的にはどのように計算・仕訳をすればよいのでしょうか。ここでは、計算方法とシミュレーション、仕訳方法について詳しく解説します。

計算方法とシミュレーション

法人税等調整額の対象となるのは将来加算一時差異または、将来減算一時差異のみです。将来的にお金が戻ってくる繰延税金資産は「将来減算一時差異×法定実効税率」で、繰延税金負債に計上する金額は「将来加算一時差異×法定実効税率」で計算します。

例えば、減価償却費が500万円、繰越欠損金が200万円あったとしましょう。また、税務上では200万円しか計上できておらず、実効税率は35%あったとします。この場合の繰延税金資産金額は、(500万円+200万円-200万円)×35%=175万円です。また、繰延税金負債を計算する際も同じように、将来加算一時差異の金額に実効法人税率をかけて計算します。

仕訳方法と勘定科目

税効果会計で使用する勘定科目は主に「法人税等調整額」と「繰延税金資産」、「繰延税金負債」の3種類です。会計処理を施す際は、以下のように仕訳できます。

【繰延税金資産】
・繰延税金資産が100万円だった場合

借方 貸方
繰延税金資産 1,000,000 法人税等調整額 1,000,000

【繰延税金負債】
・繰延税金負債が30万円だった場合

借方 貸方
法人税等調整額 300,000 繰延税金負債 300,000

繰延税金資産を借方に、繰延税金負債を貸方に計上することで会計のズレが生じるため、法人税等調整額を用いて調整しましょう。

法人税等調整額に関する注意点

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法人税等調整額は税効果会計の際に使用する勘定科目です。会計上の利益と税務上の所得を等しくするために利用するもので利便性の高い勘定科目ですが、取り扱う際には注意が必要です。法人税等調整額を乱用すると、ペナルティが与えられる恐れがあります。

あくまでズレを直す行為に過ぎない

会計上の利益と税務上の所得のズレを調整することで、まるで現金が入ってきたかのように感じてしまう方もいるでしょう。しかし、差異を直したからといって実際に利益が出るわけではありません。あくまで、会計処理上の誤差を直すだけです。実際に現金が入ってきたり出て行ったりするものではないため、誤解しないように気を付けましょう。

意図的に金額を操作するとペナルティが発生する

法人税等調整額は会計処理をする際の勘定科目の一種です。「法人税を安くしたい」と思えば、いくらでも計上できます。しかし、簡単に計上できるからといって実情に伴わない会計処理を施すのは避けるのが無難です。

意図的な操作があったことが税務調査で発覚すれば、ペナルティが発生する恐れがあります。ペナルティの内容は重加算税や延滞税、過少申告税などの追徴税を課されるケースがほとんどです。ただし、あまりにも悪質性が高く脱税と見なされると、罰金や懲役刑を受ける可能性があります。

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まとめ

法人税等調整額は、会計上の利益と税務上の課税所得の金額差を調整する勘定科目のことです。差異が発生している期間が一時的なもので、将来的に解消される見込みのある「一時差異」のみが法人税等調整額の対象となります。

法人税等調整額を計算する際に用いるのは実効法人税率ですが、企業の資本金額や所得に応じて税率が異なります。計算式も複雑なため、計算に難しさを感じる方は多いでしょう。

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芦田ジェームズ 敏之

芦田ジェームズ 敏之

【代表プロフィール】
資産規模100億円を超えるクライアントの案件を数多く抱えてきた異彩を放つ経歴から、「富裕層を熟知した税理士」として多数メディアに取り上げられている。培った知識、経験、技量を活かし、富裕層のみならず幅広いお客様に税金対策・資産運用をご提案している。
また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。

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