2024年11月5日2024年11月5日相続・事業承継税務
相続税の税務調査を網羅解説!対象に選ばれやすい12個の特徴も紹介
相続税の申告が済んだと思ったのも束の間、税務調査がおこなわれることがあります。良いイメージがないため、税務調査自体が嫌だからとなんとか回避したい方も多いでしょう。
しかし、どのようにすれば回避できるのか、誰が選ばれているのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、相続税の税務調査について徹底的に解説していきます。基本的な知識から必要となる書類、流れや回避方法まで、網羅的に解説します。
「流れを知りたい」「回避したい」といった方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事の記載内容は2024年9月現在のものです。
目次
相続税の税務調査とは?
相続税の税務調査について、下記の内容をベースに解説します。
- 種類
- 内容
- 場所
- 割合
- 時期
それぞれの詳細を確認し、理解を深めましょう。
税務調査の種類
そもそも税務調査は、大きく2種類にわかれています。
任意調査 | 事前に税務署から連絡がある |
---|---|
強制調査 | 脱税の疑いがある納税者に裁判所の令状をもって行われる |
一般的には、任意調査が行われます。「任意」とついているものの、任意調査は受忍義務があるため、拒否したりすると、法律で定められた罰則がありますので注意しましょう。
正しく申告しているなら、テレビで見るようなマルサ(国税局査察部の職員)がいきなり突入してくるといった状況はほとんどなく、過度な心配は不要です。
税務調査の内容
申告した内容が正しいかどうかをチェックされます。
はじめに機械を使った調査から行われます。単純な計算ミスは自動的に判別されチェックされます。
次に亡くなった被相続人に遺産がどれぐらいあったかを推測します。
税務署は、被相続人の情報を事前に入手可能です。
- 被相続人の過去の所得
- 不動産の保有状況
- 固定資産税の課税状況
- 被相続人やその相続人の金融機関の情報
- 被相続人やその相続人の入出金履歴(過去5年~10年分)
あらかじめ調べた情報をベースに、相続税の申告が適切か判断します。
税務調査を行う場所
基本的に、被相続人が最後に住んでいた場所で行われます。相続人が複数いればほかの方を集めたり、税理士に立ち会ってもらったりします。
自ら立ち会うのが悪いわけではありませんが、税務調査を熟知している、税理士に立ち会ってもらったり、代理で進めてもらったりするのがおすすめです。
ただ、部屋を無理やり調べられたり、強引に立ち会いが進んだりすることはなく、過度な心配は不要です。
税務調査の割合は約15%
税務調査は、実施される方法によって大きく2つにわけられます。
実地調査 | 自宅や事務所に職員が直接来る調査 |
---|---|
簡易な接触 | 電話や文書での調査 |
令和4事務年度の相続税の申告数は150,858件です。さらに、「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査は8,196件、簡易な接触は15,004件でした。どちらも前年より数が増加しています。
参照
令和4年分相続税の申告事績の概要
令和4事務年度における相続税の調査等の状況
また、割合は次の計算式で求められます。
(実地調査+簡易な接触)/申告数×100
計算式に当てはめると「(8,196+15,004)/150,858×100」となり、割合は約15%だとわかります。
税務調査の時期は申告の翌年か2年後の8〜11月
税務調査は、申告の翌年か2年後の8月から11月頃に実施されます。というのも、この時期は決算処理をする法人が少ないうえに、個人事業主の確定申告とも時期がズレているからです。
3年目以降は、基本的に年数が経つと調査が実施される確率は低下します。
また、法定申告期限から5年経つと相続税は時効を迎えるため、その後は行われません。しかし、時効が5年だからと油断してはいけません。
不正行為が発覚すると時効は7年まで延長されます。不正行為はもってのほかですが、把握しておいてください。
税務調査でよく聞かれる質問
よく聞かれる質問は、次のとおりです。
- 被相続人はどのように財産を築いたか
- 被相続人の出身や職業、結婚の時期、趣味、月々の生活費など
- 配偶者の出身やの財産状況など
- 被相続人や相続人が取引のある金融機関と支店名(過去に使っていたものを含めて)
- 配偶者以外の相続人の職業など
- 被相続人の死亡直前の財産管理は誰が行なっていたか
- 生前に贈与を受けたことがあるか
上記の質問に回答しつつ、現物をみせながら調査は進みます。回答を用意していないと時間がかかり、調査が長引くかもしれません。
あらかじめ質問に対しての回答や現物を用意しておけば、スムーズに進められるでしょう。
相続税の税務調査に選ばれやすい人の特徴12選
相続税の税務調査に選ばれやすい方の特徴は、次のとおりです。
- 申告書に不備がある
- 相続額が大きい
- 相続財産に預貯金や現金とその入出金が多い
- 多額の借入金があるものの見合う相続財産がない
- 名義預金や暦年贈与が多くある
- 相続人名義の証券口座に残額が多くある
- 海外資産が多い
- 生前に不動産所得や株式譲渡などがあるものの申告額が少ない
- 家族の資産が多い
- 被相続人が上場企業の社長や重役、医師や弁護士である
- 税理士へ依頼せずに自分で相続税を申告書を作成した
- 無申告だった
自分に当てはまるかどうか考えながら、読み進めてみてください。
申告書に不備がある
申告書におかしな箇所があると、税務調査を受ける可能性が高まります。
申告書は、機械でスキャンし、おかしなところがないかチェックされます。もし不備が判明すると、調査対象としてピックアップされかねません。
しかし、知識のない方が一から申告書を作り、完璧に仕上げるのは至難の技です。自信のない方は、最初から専門家への相談も検討しましょう。
期限が近いからと焦らないように、時間には余裕を持って進めてください。
相続額が大きい
誤りが多くなる恐れがあり、目をつけられる場合があります。目安は2億円以上です。
また税務署は、富裕層に関する独自のリストを所有しているため、注意が必要です。
たとえば、高級車などの購入履歴、株式の取引履歴などをチェックして、KSKシステムに情報を蓄積しています。
KSKシステムは、国税の権限などを一元的に管理するシステムのことです。
対象者は一見ランダムのように感じるかもしれませんが、富裕層は独自のリストにより調査対象となりやすいことがあります。お金を持っている方こそ、専門家に頼るべきでしょう。
相続財産に預貯金や現金とその入出金が多い
相続の直前に現金の入出金が多いと、なんとか相続にかかる税金を少なくしたくて、財産を移動していたと怪しまれます。
現金は、わざわざ計算して価値を求める必要がなく明確にわかるため、調べるのに比較的手間や時間がかからず、税務署としても動きを追いやすいのが特徴です。
万が一、不正があると判断されれば、追加で課税されることもあります。
多額の借入金があるものの見合う相続財産がない
多額の借入金があるのに借入金額に相応な相続財産がないと、選ばれやすくなります。
たとえば、3億円の借り入れがあって、事業設備などの財産が見つからない事例などが該当します。
財産を正確に把握できておらず、申告漏れの可能性があり、税務署としても無視できません。
名義預金や暦年贈与が多くある
多額の名義預金、暦年贈与がある場合も気をつけてください。
名義預金 | 被相続人が配偶者や子ども、孫の名義で開設した口座 |
---|---|
暦年贈与 | 生前贈与の基礎控除110万円の枠を使って、生前長期間にわたり贈与を繰り返すこと |
名義預金は、名義が違ったとしても下記の場合は被相続人の財産だと判断されることがあります。
- そもそも被相続人が扱っている
- 名義人自らの意思でお金の出し入れができない
また、暦年贈与が毎年繰り返されていると、最初から多額の贈与をするつもりだったと判断されかねません。結果、調査の対象になることもあるでしょう。
相続人名義の証券口座に残額が多くある
「本当は被相続人の財産ではないか」と怪しまれて、調査が入ります。
とくに、収入からは想定できない残額が証券口座にあるときは、注意が必要です。
被相続人の口座だと判断されれば、追加で課税されることもあります。
海外資産が多い
かつて、国外であれば税務署もわからないだろうと、申告しない例がよくありました。
そのため、現在は国外に財産を所有している方を重点的な調査対象としています。
国外送金調書や国外財産調書の提出を義務付けるなど、制度面も厳しくなっており、国外に資産が多い方は調査を受ける可能性が高いでしょう。
生前に不動産所得や株式譲渡などがあるものの申告額が少ない
亡くなる前に不動産所得や株式譲渡があったが、なぜか申告額が少ないといったときも気をつけるべきです。
これは、実は収益があったのにもかかわらず、忘れていたり見逃したりした結果、申告されていないことがあるからです。申告額が正しいと証明する資料は必須で、怪しまれたときの準備をあらかじめしておくべきでしょう。
家族の資産が多い
収入に対して想定よりも家族の資産が多いと、調べられる場合があります。相続税を抑えるために、亡くなる前に贈与したと怪しまれるからです。
贈与税を納めるなど適切に処理していれば大丈夫でしょう。しかし、申告が漏れていたときは、追加で税金を納めなければいけません。
被相続人が上場企業の社長や重役、医師や弁護士である
被相続人が社会的に認められる地位、かつ高所得者である場合、税務署は入念なチェックを行います。たとえば、次の職種に該当する方は気をつけてください。
- 上場企業の社長、重役
- 医師
- 弁護士など
相続した財産が想定よりも少ないと、申告漏れや財産隠しを怪しまれ、調査が入ります。
税理士へ依頼せずに自分で相続税の申告書を作成した
税の専門家である税理士が作った申告書は、問題になることも少ないでしょう。
一方自分で作成したものは誤りがないとは言い切れず、その誤りが原因で税務調査の対象に選ばれる可能性も出てきます。
選ばれる確率を下げたいなら、税理士に作成およびチェックしてもらうのがおすすめです。
無申告だった
相続する財産の総額が基礎控除の範囲に収まっていれば、税金はかかりません。そのため、正確に計算したうえで無申告なら大丈夫でしょう。
しかし、申告すべきだったのに無申告だった場合は、当然ですが税務調査の対象です。
税務署は過去の所得税の申告などから、財産の状況を把握しています。申告しなければ対象から外されるといったことはないため、注意してください。
相続税で税務調査されないための回避方法
意識すべきことは、次の5つです。
- 申告を正確にする
- 相続税申告に強い税理士に依頼する
- 被相続人の財産を把握する
- 生前贈与したら証拠を残す
- 相続関連のやりとりは形に残しておく
それぞれの詳細を確認しましょう。
申告を正確にする
まずは、申告を正確にしてください。
間違っていると、わざとかどうかは関係なく調査される可能性が高まります。計算に誤りはないか何度も検算し、慎重にチェックしてください。
相続税申告に強い税理士に依頼する
税の専門家の中でも、相続税に特化した税理士を選べば適切に処理を進めてくれるため、調査を回避できる可能性が高まります。
また、万が一対象になったとしても税理士が代理で対応してくれることがあり、心強く、心理面での負担も軽減できるでしょう。もしものときに備えるといった意味でも、税理士への依頼はおすすめです。
被相続人の財産を把握する
相続財産の一覧を作るのがおすすめです。
現預金、土地といった財産をしっかり把握すれば申告漏れなどを防げるため、調査を回避できる可能性が高まります。
生前からコミュニケーションを取り、財産を把握したり、一覧を作って共有したりするのがおすすめです。
生前贈与したら証拠を残す
相続税対策として知られる生前贈与は、証拠を残すのがおすすめです。
たとえば、手渡しではなく銀行振込など記録が残るものを選択してください。贈与の証明ができないと、財産の行方がわからず、税務署は不信感を抱きます。
結果、税務調査の対象になってしまうでしょう。詳しくは、専門家へ相談するのがおすすめです。
相続関連のやりとりは形に残しておく
相続について話し合うとき、口約束だけで終わらせてしまう方もいるでしょう。ただ、口約束だけだと後々トラブルになる恐れがあり、書面などに残すのがおすすめです。
また、相続に関する記録は、後々証拠にも使えます。税務署から怪しまれたときのことも考えて、書面やデータに残すといいでしょう。
相続税の税務調査の流れ
実際に調査を受ける際は、一般的に税務署から連絡が入ります。本人もしくは担当の税理士あてに連絡があり、日時と場所を決定します。
当日は、午前中にヒアリングを行い、冒頭でも紹介した被相続人に関した質問がされるため、あらかじめある程度回答を用意するとスムーズでしょう。
ヒアリングが終わると、夕方まで通帳などの現物や財産の保管場所をチェックします。基本的には1日、状況によっては2日間で終わります。
そして、調査結果の連絡があり、申告内容に誤りがないと判断されれば終了です。
ただし、誤りがあったときは修正申告書を提出します。修正申告書を確認後、税務署員より延滞税や過少申告加算税などの連絡があり、支払いを終えれば調査は完了です。
相続税の税務調査で必要な書類と準備
必要となる主な書類は、次のとおりです。
- 相続税申告で使った資料の原本一式
- 被相続人の預貯金通帳の原本一式
- 相続人の預貯金通帳の原本一式
- 相続人が所有している土地の権利証、不動産を購入したときの資料
- 相続人の認印、実印
書類が整ったら、申告書の内容に誤りがないかあらためてチェックしてください。不安な方は、税理士への相談がおすすめです。
また、申告書の内容の確認に加えて、財産の見落としも再度チェックします。とくに、タンス預金や他人へ貸し出したまま未返済のお金などは忘れがちなので、気をつけてください。
書類が整い、申告書の内容と財産の確認ができれば、準備は完了です。落ち着いて当日を迎えましょう。
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まとめ:相続税で税務調査にならないようにしっかりと申告しよう
相続税の申告は、専門的な知識が必要です。誤りがあると税務調査が行われることがあり、対応には時間や手間もかかります。
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また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
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