2024年11月26日2024年11月26日税金対策
法人保険は節税にならない!?2024年最新の状況や加入のメリットを紹介
「法人保険に、以前のような節税効果は期待できない」と聞いたことはないでしょうか。実際、節税対策のみを理由に加入するのは得策とはいえません。
「じゃあ法人保険には加入しなくてもいいの?」
「加入しても意味はない?」
このように思った方、決して意味がなくなったわけではありません。ほかにもさまざまな魅力があるため、状況によってはベストな選択肢にもなり得ます。
そこでこの記事では、法人保険の最新の状況や加入するメリットなどを詳しく解説します。本記事を読めば、法人保険のことが網羅的にわかるでしょう。
加入を検討している方や、魅力がわからなくなっている方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事の記載内容は2024年9月現在のものです。
目次
法人保険とは?
法人保険は、契約者あるいは保険料負担者を法人とした保険全般のことです。法人に関する保険の総称と理解していただくとわかりやすいかもしれません。
経営者などが怪我や病気などで働けなくなったり、亡くなったりすると、事業の継続に大きな影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、経営者が亡くなった結果、金融機関や取引先へ不安を与えてしまい、新規借り入れや取引の継続が困難になることもあるでしょう。結果、適切な運営ができず、最悪の場合倒産する可能性も否定できません。
保険に加入すれば、もし上記のようなトラブルが起きても、保険金を事業継続の資金に充てたり、債務の支払いに充てたりできます。
ちなみに、法人向けの保険はもちろん、個人向けの保険を法人名義で契約しても法人保険に該当します。
法人保険は3種類
法人保険は、大きく3種類に分けられます。
- 第一分野保険(生命保険)
- 第二分野保険(損害保険)
- 第三分野保険(その他の保険)
それぞれの詳細を確認しましょう。
第一分野保険(生命保険)
1つ目は、人の命や健康についてのリスクを対象とした第一分野の保険で、簡単にいうと生命保険です。主な第一分野の保険は、次の表のとおりです。
保険期間 | 死亡・高度障害の保険金 | 満期保険金 | 解約返戻金 | |
---|---|---|---|---|
定期保険 | 一定期間 | ◯ | × | △(契約した商品による) |
養老保険 | 一定期間 | ◯ | ◯ | ◯ |
終身保険 | 一生涯 | ◯ | × | ◯ |
定期保険は死亡、高度障害といった状態になると保険金を受け取れますが、基本的に貯蓄の機能はありません。そのため、貯蓄していけるようなものを考えているなら、向いていないでしょう。
一方養老保険は、満期保険金と死亡保険金が同額で、貯蓄性もあるのが特徴です。終身保険は一生涯保障が続くのが魅力ですが、満期保険金はありません。
第一分野の保険は、経営者などの死亡、高度障害に備えるために用いられます。また、貯蓄性のあるものを選んで、福利厚生のために使うこともあります。
それぞれ特徴や用途が異なるため、目的や状況に応じて選択する必要があるでしょう。
第二分野保険(損害保険)
2つ目は、予想外の事故や災害に備える第二分野の保険です。損害保険といえば想像できる方も多いのではないでしょうか。
たとえば、火災による建物や設備などへの損害や、第三者に損害を与えたときなどに活躍します。
主な第二分野の保険は、次のとおりです。
- 火災保険
- PL保険
- 賠償責任保険
- 業務災害保険など
掛け捨てのものが多いですが、満期保険金などを受け取れる商品もあります。目的や状況に合わせて選択するといいでしょう。
どれを選んでいいのかわからないときは、専門家への相談も検討してみてください。
第三分野保険(その他の保険)
3つ目は、第一分野の保険と第二分野の保険のどちらにも該当しない保険で、第三分野の保険と呼ばれます。
主な商品は次のとおりです。
- 医療保険
- がん保険
- 介護保険
- 傷害保険など
第一分野の保険と第二分野の保険の中間的な位置付けで、怪我や病気のリスクに備える保険です。掛け捨てだけではなく、満期保険金などを受け取れるものもあります。必要に応じて加入することで、大きなトラブルを防げます。
法人保険の節税効果は薄い
法人保険の節税効果が薄いといわれるのは、2019年10月と2021年3月の改正が関係しています。以前のままだと認識していて知らない状態だと、適切に保険を運用できません。
以前の節税効果が得られた仕組みを確認しつつ、なぜ効果が薄くなってしまったのか確認しましょう。
法人保険で節税効果が得られた仕組み
節税効果が得られたのは、次の仕組みがあったからです。
- 保険料の3分の1、2分の1、全額を損金算入できた(貯蓄性のあるもの)
- 解約返戻金として保険料の8割から10割以上を設定しているものがあった
高い返戻率かつ貯蓄性もありながら保険料の大半を損金算入できたため、税金が課されるタイミングを先送りする目的で保険が利用された背景があります。同時に、上記の特徴を活かした過剰な節税対策も見受けられていました。
2019年の保険商品に関するルール改正
法人保険の特徴を活かした過剰な節税対策は問題視され、2019年に保険商品に関する改正がおこなわれます。
具体的には、解約返戻率50%超の商品の課税方法を見直すと発表。改正後は、最高解約返戻率をベースに損金算入できる割合が決定されています。
区分 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
---|---|---|---|
最高解約返戻率50%超70%以下 | 保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで | 当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額 | 保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで |
最高解約返戻率70%超85%以下 | 当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額 | ||
最高解約返戻率85%超 |
保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が100分の70を超える期間がある場合には、その超えることとなる期間)の終了の日まで (注)上記の資産計上期間が5年未満となる場合には、保険期間の開始の日から、5年を経過する日まで(保険期間が10年未満の場合には、保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の50相当期間を経過する日まで)とする。 |
当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70(保険期間の開始の日から、10年を経過する日までは、100分の90)を乗じて計算した金額 | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間(資産計上期間がこの表の資産計上期間の欄に掲げる(注)に該当する場合には、当該(注)による資産計上期間)経過後から、保険期間の終了の日まで |
出典:第3節 保険料等|国税庁
最高解約返戻率の高いものほど、すぐに損金算入できる割合が小さいのが特徴です。日数が経つにつれて割合は大きくなりますが、目先の期間での節税効果は期待できなくなりました。
もし以前の認識のまま改正されたことを知らないと、想定どおりに処理できずに後悔するでしょう。
2021年の節税保険に関するルール改正
節税保険に関する改正が、2021年におこなわれました。
具体的には、低解約型逓増保険の契約者を法人から個人に切り替えることで、所得税を抑える手法である名義変更プランを撤廃するというものです。
名義変更プランは、契約の際に解約返戻金が低く設定されているのが特徴です。解約返戻金が低い間に名義を個人に変更し、高くなったタイミングで解約して個人で高いお金を受け取ります。
結果、受け取ったお金は一時所得とみなされ、税金を安く抑えられます。
しかし、2021年3月におこなわれた改正で、解約返戻金の評価額が低いままでは譲渡することができなくなったため、名義変更プランによる節税効果は期待できなくなりました。
課税繰り延べにも実質的な節税効果はない
課税繰り延べは、何らかの事情により納税を先延ばしにする行為です。毎月支払う保険料の一部を損金計上することで課税所得が減り、法人税を抑えられます。
しかし、将来的に受け取る保険金などは利益の一部として計上するので、受け取るときに法人税がかかります。
つまり、目先の税金は抑えられますが、いずれ法人税が課されることに変わりはないため、課税繰り延べに実質的な節税効果はありません。課税繰り延べに過度な期待はしないのが賢明でしょう。
法人保険に加入する節税以外のメリット
ここからは、節税以外のメリットを4つ紹介します。
- 経営者の万が一の備えができる
- 退職金の積み立てができる
- 事業承継や相続対策ができる
- 従業員の福利厚生を充実させられる
節税の効果は薄くても、さまざまな利点があります。「意味がない?」と感じている方は、それぞれの詳細をしっかり見ていきましょう。
経営者の万が一の備えができる
法人保険に入れば、経営者は万が一のときに備えられます。
たとえば死亡した場合、借入金が残り、事業資金が不足したら経営が困難になるでしょう。一度崩れたところから立て直すのは容易ではありません。
しかし、もし保険に入っていれば保険金によりしばらくの間の資金をカバーでき、経営に大きな影響を与えずに済みます。
また、突発的な災害や事故などに対応する保険に入っていれば、損害も抑えられるでしょう。どうしようもない事態に備えられるのは大きな魅力です。
退職金の積み立てができる
経営者の退職金は大きく2つあり、法人保険は積立に利用できます。
- 死亡退職金:亡くなった場合
- 勇退退職金:生きている間に勇退した場合
死亡退職金は、死亡保険金が会社に支払われたのち、遺族へ支給されます。一方で勇退退職金は、法人が契約している保険を解約して会社に解約返戻金が支払われた後に、経営者に支給されます。
退職金を用意したいなら、法人保険の活用も検討しましょう。
事業承継や相続対策ができる
事業承継や相続対策ができるのも魅力の1つです。
事業承継の際は、後継者に対して贈与税や相続税といった税金が発生します。ただ、保険に加入していれば、経営者が生きている間に解約し、返戻金を納税に充てられるため安心です。
また、万が一死亡したときも死亡保険金が支払われます。相続税の対象ですが「500万円×法定相続人の数」は非課税です。
さらに、納税資金に充てたり、遺留分対策金として活用したりとさまざまな選択肢があります。そのため、将来のことを考えるなら、検討してみてください。
従業員の福利厚生を充実させられる
法人保険の中には、入院費用の補填など福利厚生につながる保障がついているものがあります。そのため、加入することで従業員の福利厚生を充実させられます。
また、すべての社員が対象となるような加入なら、保険料を損金計上でき、節税効果も得られるでしょう。
ただし、認められないケースもあるため、詳しくは専門知識の豊富なプロに相談してみてください。わからないまま進めると、結局節税効果を得られなかったといった状況になりかねません。
法人保険に加入するデメリット
魅力の多い法人保険ですが、以下3つのようなデメリットも存在します。
- キャッシュ・フローの悪化につながる
- タイミング次第で解約返戻金が払込保険料を下回る
- 国税庁や金融庁の規制が強化される可能性がある
把握していないと、契約後に想像とは異なると後悔する可能性があります。事前に目を通しておきましょう。
キャッシュ・フローの悪化につながる
キャッシュ・フローは、現金の流れのことです。もし悪化すると、将来への投資が困難になったり、倒産する可能性が上がったりします。
仮に、毎月支払う保険料が高いと、キャッシュ・フローの悪化につながります。結果、会社を守るはずが、法人保険への加入が会社の首を絞めるといったことにもなりかねません。
タイミング次第で解約返戻金が払込保険料を下回る
タイミング次第では、解約返戻金が払込保険料を下回ることがある点には注意が必要です。
貯蓄性のある商品なら解約すると返戻金を受け取れますが、返戻率は一律ではなく、解約のタイミングにより異なります。
解約までの期間が長いほど、返戻率は高くなるのが一般的です。
そのため、期間が短いと払込保険料の方が高くなってしまうことが多いでしょう。好きなタイミングでの解約は損する可能性があるため、注意する必要があります。
国税庁や金融庁の規制が強化される可能性がある
国税庁や金融庁の規制が強化される可能性があることもデメリットでしょう。実際、2019年や2021年の改正では制約が増えました。
そのため、今後も保険料の損金計上に関する規制が厳しくなる可能性は否定できません。
ただし、節税目的だけの加入ならメリットは小さいですが、ほかの利点を考えると加入する価値は十分にあります。
しっかりと制度を理解し、自分たちの目的や状況に合わせて判断しましょう。
法人保険の相談ならネイチャーグループにお任せ
法人保険には節税以外にさまざまな魅力があります。
しかし、加入するためには、単に専門的な知識が必要なだけではなく、改正にも都度対応していかなければいけません。
自分だけで進めた結果、キャッシュ・フローが悪化した、損金計上がうまくできなかったといったトラブルを招くこともあるでしょう。会社を守るために入ったはずが、運営の妨げになる恐れもあるのです。
そのため、法人保険を検討する場合は専門家へ相談してみてください。
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\節税効果をより高める方法とは?/
まとめ:法人保険の加入には節税以外にさまざまなメリットがある
法人保険は、法人が契約する保険で、大きく3種類に分けられます。
2019年、2021年の改正により節税効果は薄いですが、万が一に備えられる、退職金の積み立てができる、福利厚生を充実させられるといった多数のメリットがあります。
しかし、一部デメリットも存在します。何も考えずに契約すると、キャッシュ・フローの悪化を招き、最悪の場合倒産する可能性も出てくるでしょう。
そのため、法人保険の加入を検討しているならプロへ相談すべきです。
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また、Mastercard®️最上位クラスで、富裕層を多く抱えるクレジットカードLUXURY CARDの 「ラグジュアリーカード・オフィシャルアンバサダー」に就任。日米税理士ライセンス保有。東京大学EMP・英国国立オックスフォード大学ELP修了。紺綬褒章受章。
現在は代表税理士を務める傍ら、英国国立ウェールズ大学経営大学院に在学中(MBA取得予定)。
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