これから投資信託を始めたいと、悩まれている法人のオーナーの方は多いのではないでしょうか。「個人か法人のどちらで投資するのか良いのか」「法人で始めた方がお得なのか」など、気になるポイントは多いでしょう。
では実際に、法人の投資信託は節税対策として有効なのでしょうか。
本記事では、法人の投資信託による節税対策や得られるメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
法人の投資信託による節税対策3選
では早速、具体的な法人の投資信託による3つの節税対策をご紹介します。
- 法人の赤字と売却・運用益を相殺する
- 法人の黒字と売却・運用損を相殺する
- 分配金に受取配当等の益金不算入の適用を受ける
法人の赤字と売却・運用益を相殺する
法人で投資信託を行う場合、主に売却益と分配金で2つの利益が生まれます。
こうした投資信託で得られた利益は、法人の事業により発生した損失と相殺して計算ができます。
例えば、事業で200万円の赤字を計上し、投資信託の売却や運用をトータルして300万円の利益が得られたケースで考えてみましょう。
本業のマイナス200万円と投資信託のプラス300万円を相殺し、残る100万円に対して税金が計算されます。
本来300万円に対して課税されるものが3分の1にまで抑えられました。このように、法人の損益次第では、投資信託の運用益の一部を非課税にできる可能性があります。
なお本業が黒字の場合、投資信託の利益300万円も全額課税対象となるため、注意してください。
法人の黒字と売却・運用損を相殺する
一方、法人で行う投資信託で損失が発生した場合、本事業で得られる利益と相殺して税負担を軽減できます。
例えば、本業で800万円の利益があり、投資信託の売却や運用で200万円の損失が出たとしましょう。
この場合、800万円とマイナス200万円を相殺した600万円が課税対象となります。
本来負担すべきだった税額が軽減されるので、結果節税対策として取り入れられます。
分配金に益金不算入の適用を受ける
法人も個人と同様に、投資信託の保有で分配金を定期的に受け取ることができます。
この分配金も利益になりますが、受取配当等の益金不算入の対象である投資信託(外国株式指数連動型を除く特定株式投資信託)の場合、全額が課税対象になるわけではありません。分配金の20%相当額が益金不算入として課税所得から減算されることとなります。
そもそも、分配金は会社の利益剰余金から支払われるものであり、法人税を支払った後の利益が蓄積されたものを指します。よって、さらに税金がかかると1つの利益に対して二重に課税されかねません。
受取配当等の益金不算入の制度は、こうした二重課税を防止する役割があります。
法人で投資信託の節税効果以外のメリット
法人が投資信託によって得られる利益は、節税対策だけではありません。その他にも3つのメリットがあります。
- リスクをおさえながら運用益が見込める
- 発生した損失を翌年以降最大10年間繰り越せる
- 借入金での大きな運用もできる
リスクをおさえながら運用益が見込める
法人が投資信託を選ぶメリットとして、節税効果の他にリスクを抑えながら運用益が見込める点にあります。
まず、投資信託は資産を分散投資することができ、さまざまな資産クラスや業種に投資することができます。そのため、1つの銘柄や市場の変動によるリスクを緩和できるでしょう。
また、投資信託は一般的に流動性が高く、いつでも売買が可能です。よって、法人が資金を必要とする場合、投資信託の売却により比較的容易に資金を確保できます。
柔軟な資金繰りができるので、ローリスクで資産運用したい方は有力な投資になるでしょう。
発生した損失を翌年以降最大10年間繰り越せる
法人は、投資信託の売却や分配金によって損失が発生した場合でも、そのマイナス分は会社の損金として計上されます。
さらに法人税法によって、青色申告を行っている企業であれば計上した損失を翌年以降最大10年間にわたる繰り越しが認められています。
この制度を活用すれば、将来の利益が発生した際に損失を相殺し、10年にわたって長期的に税金の負担を軽減できるでしょう。
こうしたメリットの活用で、法人は効果的な資金運用を実現し、将来の成長や経営の安定につなげられます。
借入金での大きな運用もできる
また、投資信託は借入金での大きな運用が可能です。
法人は通常金融機関からの借入を活用して事業資金を調達することがありますが、この借入金を投資信託に活用できます。事業が好調なら、投資信託の運用益を最大化できるでしょう。
また、借入金を利用して投資信託を購入することで、自己資金の範囲を超える資金を運用できます。
これにより、投資金額が増えることで運用益も大きくなり、将来的なリターンも高まる可能性があります。
ただし、借入金を活用した投資にはリスクも伴いますので、慎重な計画と適切なリスク管理はしなければいけません。
法人は借入金の利用と投資信託の運用に関して、専門のアドバイザーと相談し、適切な戦略の構築が大切です。
法人で投資信託を行うデメリット
法人で投資信託を行うことはメリットだけではありません。
デメリットも知っておくことで、リスクを回避しながら活用することができます。
- 一般口座しか利用できない
- 税制上の優遇措置を適用できない
一般口座しか利用できない
法人が投資信託をする場合、一般口座しか利用できません。
個人で投資信託をする場合、一般口座と特定口座の2種類から選択できます。特定口座を選択すると、証券会社が取引による損益をまとめた年間取引報告書を代行で作成してくれます。
しかし、法人は特定口座を開設できないため、自分で作成しなければなりません。
こうした作業の負担が増えるのは、法人で投資信託をするデメリットでしょう。
税制上の優遇措置を適用できない
法人が投資信託を行う場合、税制上の優遇措置を適用できません。
一般的に、個人が投資信託を行う場合には、特定口座やNISA(少額投資非課税制度)などの税制上の優遇措置を受けられます。
しかし、法人が投資信託を行う場合には、これらの税制上の優遇措置は適用されません。
法人には法人税制が適用されるため、投資による利益が発生した場合、非課税枠の適用等はありません。
このように、個人では受けられる税制上の優遇措置を適用できないことから、法人の投資信託は資金の運用によるリスクや税金の負担を考慮して行う必要があります。
法人で投資信託を購入する際の注意点
では、法人で投資信託を購入するにあたっての注意点を4つ紹介します。注意点を把握してスムーズな取引につなげましょう。
- 節税を意識し過ぎず必要な資産を購入する
- 保有による含み益が課税対象になる可能性がある
- 節税の実施は融資には不利になる可能性がある
- 本業が赤字の場合は慎重に検討する
節税を意識し過ぎず必要な資産を購入する
節税は法人が投資活動を行う上で重要な要素です。とはいえ、節税を追求するあまり、投資信託の選択やポートフォリオの構築において、リスクが大きな選択はおすすめしません。
法人が投資信託を購入する際には、まず投資目的やリスク許容度を明確にし、必要な資産を購入することが重要です。
適切なポートフォリオを構築するためには、資産の分散や適切なリターンとリスクのバランスを考慮しましょう。
十分な余剰資金を確保し、さまざまなトラブルを想定した運用を心がけてください。
保有による含み益が課税対象になる可能性がある
投資信託は、短期的に売買を行う目的で購入・保有する場合、毎年決算期末に時価評価して計上しなければなりません。
もしそこで取得単価よりも高くなっていて、含み益が生じた場合、そのプラス分は課税対象になります。
「売却していないから利益は出ていないだろう」と何もしていないと、気づかぬうちに評価益の計上漏れになりかねません。
投資信託は、保有しているだけでも、課税対象となる可能性があるので注意してください。
節税の実施は融資には不利になる可能性がある
融資を積極的に受けたいと考えている法人のオーナーなら、過度な節税対策は控えましょう。というのも、節税目的で過剰に投資をすれば、資金が手元に残らず融資の審査上不利になるからです。
金融機関は、法人の信用力や財務状況を評価して融資の判断をします。そこで過度な節税対策によって財務状況が変化すれば、信用力の低下につながるかもしれません。
もちろん、財務の健全性をアピールできる範囲での節税は問題ありませんが、融資を検討しているならバランスを保ちましょう。
本業が赤字の場合は慎重に検討する
法人は、本業が赤字の場合は投資信託で得られた利益と損益通算できます。課税対象となる所得を減らせるでしょう。
しかし、そもそも本事業が赤字の状態で、本当に投資をするべきなのか慎重に考えるべきです。
原因が判明していてすぐにでも改善できる事象なら問題ないでしょう。しかし、長期的に赤字が続いているなら、本事業の立て直しが最優先事項になるはずです。
もし事業が赤字の場合は、無理して投資信託を始めようとせず、まずは事業の抜本的な見直しを図りましょう。
投資信託は法人と個人どちらで行うべき?
では果たして、投資信託は法人と個人どちらで行うべきなのでしょうか。
実は、それぞれに良いところと悪いところがあります。よって、一概にどちらが良いとは言えません。よって、メリットが大きいと思った方を選ぶと良いでしょう。
それぞれの違いについて下記にまとめました。
法人 | 個人 | |
---|---|---|
税率 | 約23~35%※ | 20.315% |
開設口座 | 一般口座 | 一般口座・特定口座 |
損失の繰り越し | 10年間 | 3年間 |
投資信託用の借り入れ | ○ | × |
※実効税率
法人と個人とで比較してみると、それぞれに良さがあることが分かりました。
法人の場合、投資信託に対する税率が高い一方、損失の繰り越し年数が10年と多い特徴があります。このことから「繰越損失がある場合」「本事業が好調な場合」に投資信託を利用すると、より良い運用が行えるでしょう。
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まとめ:法人は投資信託などの節税対策を慎重に検討しよう
法人の投資信託は節税効果や運用益の獲得、損失繰り越しなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、過度な節税対策や無理な投資は、あまりおすすめしません。資金状況や目的に合わせた最適な投資の選択が大切です。
ネイチャーグループでは、お客様の要望や目的、資金繰り状況など、さまざまな要素を加味して最適な投資提案をさせていただきます。
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