40代では、教育費や住宅ローンなどの支出が重なる一方、老後資金の準備も視野に入ってきます。収入が増えていても、支出が多ければ金融資産を思うように増やせないケースも少なくありません。
この記事では、40代の資産運用を「目標資産額」「運用可能資産」「年間投資額」の3つに分けて整理する手順を税理士の視点から解説します。
一読すれば、商品を選ぶ前に確認したい金額や税金対策、年間の投資余力を考える方法が分かります。老後までの期間を生かすためにも、40代のうちに資産形成の計画を具体化しましょう。
40代の資産運用は何から始める?
40代の資産運用は、目標資産額を決め、現在の運用可能資産を確認し、年間投資額を算出するところから始めます。商品を選ぶ前に3つの金額を整理すると、家計に無理のない投資額を判断しやすくなります。
| 手順 | 内容 |
| ① 目標資産額 | 老後の支出見込額と公的年金などの収入見込額をもとに設定 |
| ② 運用可能資産 | 現在の金融資産から生活予備資金と予定支出を除いた額 |
| ③ 年間投資額 | 手取り収入から生活費・教育費・返済額などを差し引き、投資に回せる金額を設定 |
目標資産額と運用可能資産の差額を運用期間で割ると、年間投資額の目安を確認することが可能です。実際の投資額は、想定する運用収益や価格変動も踏まえて検討します。詳しい進め方は後ほど解説します。
40代からの資産運用が重要な理由
40代は、老後まで一定の運用期間を確保できる一方、教育費や住宅ローンなどの支出も重なりやすい時期です。ここでは、資産運用に取り組むべき理由を2つに分けて説明します。
- 老後資金の準備が本格的に必要になるため
- 収入から投資額を確保しやすくなるため
老後資金の準備が本格的に必要になるため
老齢基礎年金は原則65歳から受給できるため、40代には受給開始まで約16〜25年あります。老後に必要な生活費は世帯ごとに異なり、現在の金融資産や公的年金だけでは不足する場合もあります。
40代の「ねんきん定期便」に記載される年金額は、これまでの加入実績を基にした金額です。将来の年金見込額は「ねんきんネット」などで試算し、退職金や企業年金も含めて不足額を確認しましょう。
収入から投資額を確保しやすくなるため
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、40〜44歳の平均給与は516万円、45〜49歳は540万円です。全年代の平均478万円を上回り、50代にかけて平均給与は上昇しています。
収入が増えた分を家計の余力として確保できれば、投資額を増やせる可能性があります。 教育費や住宅ローンなどの支出も考慮し、手取り収入と家計の状況に合わせて無理のない投資額を設定しましょう。
40代から資産運用を始めても遅くない?
資産運用は40代から始めても遅くはありません。45歳を基準にすると、60歳まで15年、65歳まで20年の運用期間があります。
ただし、同じ目標額と終了時期なら、開始年齢が上がるほど毎月の必要投資額は増えます。45歳から60歳まで15年間、現在資産0円から年3%で運用できたと仮定すると、3,000万円を準備するための積立額は月約13.2万円です。
税金や手数料は考慮していません。目標額と期間を早めに設定し、必要な投資額を逆算しましょう。
40代の資産運用で目指すべき資産額の目安
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、40代の金融資産保有額は、二人以上世帯で中央値500万円、単身世帯で100万円です。平均値はそれぞれ1,486万円、859万円です。なお、金融資産には日常的な支払いに備えた預貯金は含まれません。
平均額や中央値をそのまま目標にせず、老後の生活費、公的年金の見込額、退職金、物価変動などを踏まえて必要額を算出することが大切です。老後も現在に近い生活水準を維持する場合、支出が多い世帯ほど必要な資金も大きくなります。
40代の資産運用で資産が増えない原因
高い収入があっても金融資産が増えない場合、支出や資金配分が影響している可能性があります。ここでは、代表的な2つの原因を整理します。
- 年収の増加に合わせて生活費が増えるため
- 引き出せない資金を増やしすぎるため
年収の増加に合わせて生活費が増えるため
手取りが増えても、住居費・教育費・車・交際費などの支出も増えれば、年間の投資可能額は伸びません。収入が増えた分をそのまま支出に回すと、資産形成に充てる資金を確保しにくくなります。
まず1年間の支出を項目別に把握し、見直せる固定費と、教育費など必要な支出を分けて整理しましょう。
引き出せない資金を増やしすぎるため
iDeCoの老齢給付金は原則60歳から受給します。また、保険は商品によって、中途解約時の解約返戻金が払込保険料を下回る場合があります。
教育費や住宅関連費用の支払時期を見積もり、近く使う資金を確保したうえで、長期間使わない資金を運用に回すことが重要です。資金が不足すると、相場の下落時に投資信託などを売却せざるを得ない可能性があります。
40代の資産運用で確認する3つの金額
資産運用の計画は、次の3つの金額を順に把握することで具体化できます。
- 目標資産額
- 現在の運用可能資産額
- 毎月の投資額
目標資産額
老後の月間生活費から必要総額を概算し、同じ期間に受け取る公的年金の見込総額や退職金などを差し引きます。たとえば、月40万円の生活費を65歳から90歳までの25年間確保する場合、単純計算では必要総額は1億2,000万円です。
年金や退職金などを差し引いた不足額を基に、物価上昇も考慮して目標額を設定します。
現在の運用可能資産額
現在の預貯金・投資信託・解約を前提にできる保険の解約返戻金などから、生活予備資金と、近く使う教育費や住宅関連費用を除きます。残った金額が、長期運用に回せる資金の目安です。
生活予備資金の必要額は、家族構成や収入の安定性などによって異なります。J-FLECの40代平均金融資産は、比較用の参考情報として扱いましょう。
毎月の投資額
手取り収入から生活費・返済額・教育費などを差し引き、無理なく継続できる金額を投資に回します。
目標資産額と現在の運用可能資産額の差を残りの運用年数で割ると、必要投資額の概算を確認することが可能です。実際には想定利回りや価格変動も踏まえて調整します。
40代の資産運用の方法を資金の目的別に選ぶ
金融商品は、利回りだけでなく、資金を使う時期や目的に合わせて選びます。使う時期と必要な保障を確認し、以下の役割別に整理しましょう。
| 資金の役割 | 使う時期 | 主な選択肢 | 主なリスク・注意点 |
| 近く使う資金 | 1〜3年以内 | 預貯金・個人向け国債 | インフレによる実質価値の低下・換金制限 |
| 使用時期が決まった資金 | 3〜10年程度 | 債券・定期預金など | 金利変動・信用リスク |
| 保障が必要な長期資金 | 10年以上 | 生命保険 | 途中解約による損失・為替変動など |
| 増やす長期資金 | 10年以上 | 投資信託・株式 | 価格変動リスク |
数年以内に使う資金は預貯金で確保する
生活予備資金と教育費・住宅関連費用など数年以内に必要な資金は、預貯金を中心に確保します。価格が変動する商品に投資すると、必要な時期に値下がりし、損失を確定して換金する可能性があるためです。換金しやすさを優先しましょう。個人向け国債は、原則として発行後1年間は中途換金できない点に注意が必要です。
使用時期が決まった資金は債券を検討する
満期が決まっている債券は、満期と資金を使う時期を合わせやすい商品です。ただし、満期前に売却する場合の価格変動や発行体の信用リスクがあります。外貨建て債券では為替変動にも注意が必要です。
保障が必要な長期資金は保険を検討する
死亡保障などが必要な場合、生命保険も選択肢になります。保障内容・資産形成・税制上の取扱いを一体で確認し、解約返戻金や資金を使える時期を確認しましょう。
商品によっては途中解約で払込保険料を下回る場合があり、外貨建て保険は為替変動の影響も受けます。
長期で増やす資金は投資信託を検討する
当面使う予定のない資金では、投資信託を使った長期・積立・分散投資も選択肢です。元本割れの可能性があり、信託報酬などの費用もかかります。期待する利回りだけでなく、手数料や投資対象、資産・地域の分散状況を確認しましょう。
45歳の資産運用ポートフォリオ例
たとえば「年収2,000万円・金融資産3,000万円・5年後に教育費ピーク・住宅ローン残高2,500万円」という45歳世帯をモデルケースとすると、以下のように資金の使途と時期に応じて3層に色分けして配分するのが合理的です。
- 短期資金(生活防衛資金:約600万円):普通預金を中心に確保し、緊急時の流動性を担保する
- 中期資金(教育費・繰上返済等:約1,000万円):5年以内に取り崩すため、元本割れリスクを避けて定期預金や個人向け国債などで保全する
- 長期資金(老後・資産形成:約1,400万円):15年以上の運用期間を確保できるため、NISAやiDeCoを活用した世界分散型の投資信託・株式等へ配分する
一度に全額をリスク資産に投入するのではなく、手元に残す安全資産の枠を明確にしたうえで運用比率を決定することが、相場急変時にも冷静に運用を継続するための重要なポイントとなります。
40代の資産運用では税制優遇を使い分ける
NISAとiDeCoは、税制上の取扱いと資金の使いやすさが異なります。それぞれの特徴を整理し、資金の目的に合わせて使い分けましょう。
- NISAで運用益を非課税にする
- iDeCoで掛金の所得控除を受ける
NISAで運用益を非課税にする
現行NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて年間360万円まで投資できます。非課税保有限度額は取得価額ベースで1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円が上限です。
非課税保有期間は無期限で、売却した商品の取得価額分は翌年以降に再利用できます。
ただし、年間投資枠に上乗せされるわけではなく、NISAへの投資額は所得控除の対象にもなりません。
iDeCoで掛金の所得控除を受ける
iDeCoは、加入者が支払った掛金の全額が所得控除の対象となり、運用益も運用中は非課税となる私的年金制度です。
2026年12月1日から、会社員など第2号被保険者は企業年金等と合わせて月6.2万円、自営業者など第1号被保険者は国民年金基金等と合わせて月7.5万円に拠出限度額が引き上げられる予定です。
ただし、原則として60歳まで途中で資金を引き出せない流動性リスクがあるほか、受取時には一時金であれば退職所得、年金形式であれば雑所得として課税対象となります。特に会社の退職金や役員退職金の支給が重なる場合、退職所得控除の重複排除(みなし勤続年数ルール等)により想定以上の税負担が生じる恐れがあるため、拠出時だけでなく受取時の出口戦略まで見据えたシミュレーションが不可欠です。
40代の資産運用に所得税対策を組み合わせる
資産運用の選択肢の中には、実物資産もあります。例えば不動産を活用した資産運用であれば、家賃収入といった運用益に加え、減価償却費を通じて一時的に所得税対策の効果が副作用として生じることがあります。
高所得な方にとっては、所得税を対策しながら資産運用を行うことは効果的な選択肢となりえます。
40代の資産運用で押さえるべきポイント
長期の資産運用を継続するために、次の4点を意識します。
- 資金の使用時期から運用期間を決める
- 許容できる損失額から資産配分を決める
- 複数の資産へ分散する
- 資産配分を定期的に見直す
資金の使用時期から運用期間を決める
教育費・住宅関連費用など、支払時期が決まっている資金は、値動きの大きい商品に回さないことが基本です。使用時期が近づいた資金は、預貯金など値動きが小さく換金しやすい資産へ段階的に移すことを検討しましょう。
許容できる損失額から資産配分を決める
「株式比率は100-年齢」といった画一的な公式にとらわれず、年間のキャッシュフロー余力や保有資産、今後のライフイベントを踏まえて実質的なリスク許容度を測定します。「一時的にポートフォリオが20〜30%下落した場合でも、日々の生活や教育費の支払いに一切支障が出ないか」を具体的なマイナス金額で試算しておくことで、市場急変時の狼狽売りを防ぎ、長期投資を完遂できる資産配分を構築できます。
複数の資産へ分散する
投資先を一つの商品や地域に集中させず、値動きの異なる資産へ分散します。国内外の株式や債券、金融商品以外の実物資産など、性格の異なる資産を組み合わせることで、特定の資産や地域の値動きによる影響を抑えやすくなります。
資産配分を定期的に見直す
価格変動により、当初の資産配分は少しずつ変化します。年1回程度を目安に、資産配分を確認して必要に応じて調整しましょう。大きな支出や収入の変化など、家計の状況が変わったときには、目標とする資産配分自体の見直しも必要です。
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40代の資産運用では、金融商品の選定だけでなく、実物資産の活用や、所得・保有資産・将来の支出・税負担をまとめて確認する必要があります。特に、年収は高いものの資産が思うように増えていない方は、所得税対策の適用可否と運用計画を検討し、税引後の手取りを踏まえて投資額を設計することが重要です。
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まとめ:40代の資産運用は目標額から逆算して始めよう
40代の資産運用は、商品選びの前に「目標資産額」「運用可能資産」「年間投資額」の3つを確認するところから始めます。資金の使用時期に応じて預貯金・債券・保険・投資信託などを使い分け、NISAやiDeCoも目的に応じて活用しましょう。
所得控除などで税負担が軽減された場合は、その分を投資に回す方法もあります。税引後の手取りや将来の支出、資金を使う時期まで含めて計画することが、40代の資産形成では重要です。
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