グローバル化が進む昨今、相続人が海外に在住しているという状況も増えています。しかし、相続人が海外に在住している場合、そもそも相続はできるのでしょうか?
この記事では、相続人が海外に在住していても相続ができるのかについて詳しく解説します。また、必要書類や注意点なども解説するので、本記事を読めば相続人が海外に住んでいても安心して相続の手続きをできるようになるでしょう。
「相続人が海外在住だけど、どうすればいいの?」とお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事の記載内容は2025年1月現在のものです。
相続人が海外在住していても相続はできる
結論からお伝えすると、相続人が海外在住でも相続はできます。日本に住んでいるときとほぼ同様の手続き(全く同一ではありません)をすれば問題ありません。
たとえば、遺産相続では以下の点を確定させます。
- 相続人
- 遺産内容
- 相続金額
遺産相続で確定すべきことや手続きについては、海外でも日本に住んでいてもおおよそ同じです。一つずつ丁寧に進めていきましょう。
相続人が海外在住していても遺産分割協議は必要になる
海外在住でも、相続については特別に異なる取り扱いがされるわけではありません。そのため、仮に相続人が海外に住んでいたとしても、遺産分割協議は必要です。
遺産分割協議は、相続人同士で誰がどのように財産を引き継ぐのか打ち合わせをし、遺産分割協議書を作成する場です。必ず相続人全員で行わなければならず、海外に住む人がいるケースも例外ではありません。
相続人が海外在住している場合の手続きでやるべきこと
相続人が海外在住の場合の手続きでは、一般的に以下のような処理が必要です。
- 遺産分割協議書を作成する
- 遺産分割協議書の郵送、または一時帰国してもらう
- 印鑑証明書の代わりにサイン証明書を取得する
- 不動産の相続なら在留証明書を取得する
- 相続人が外国籍を取得しているなら相続証明書を用意する
- 遺言書があると手続きをスムーズに進められる
それぞれの詳細を見ていきましょう。
遺産分割協議書を作成する
通常遺言書がない場合、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議は、相続人全員の署名捺印が必要です。
遺産分割では、相続人は誰か、相続財産は何か、相続金額はいくらかといった重要なことを協議します。遺産分割協議書の作成を忘れないようにしましょう。
遺産分割協議書の郵送、または一時帰国してもらう
相続人が海外在住のケースでも、遺産分割協議書に署名捺印が必要ですが、なかなか一時帰国できない人もいるでしょう。そのような場合は、遺産分割協議書を郵送して対応することは可能ですが、海外は時間がかかるため、時間に余裕をもって対応することが必要です。。
印鑑証明書の代わりにサイン証明書を取得する
相続の手続きの際に印鑑証明書が必要になるケースがあります。しかし、海外に住んでいる人は印鑑証明書を取得できないこともあります。
そのようなケースでは、印鑑証明書の代わりにサイン証明書(署名証明書)を取得してもらいましょう。サイン証明書は、海外でサインが本物であることを証明するための書類です。
具体的には、現地の大使館や領事館に行き、担当官の前で遺産分割協議書にサインすると証明書が綴じ込まれ、サインが本人のものであると証明されます。これは、日本の印鑑証明書と同等の効力を持ちます。
不動産の相続なら在留証明書を取得する
海外居住の方が不動産の登記手続きをする際は、在留証明書が必要です。そのため、不動産を相続するなら在留証明書を取得してもらう必要があります。
在留証明書はサイン証明書同様、現地の大使館や領事館で発行可能です。不動産の相続が発生するなら、サイン証明書と同じタイミングで取得してもらうといいでしょう。
ただし、在留証明書の発行には以下のような条件を満たさなければいけません。
- 日本国籍があること
- 現地に3か月以上滞在しており、現在も居住していること
また、在留証明書の発行にはパスポートや賃貸契約書など、滞在期間と居住地がわかるものが必要ですが、事前に大使館等に問合せを行い、準備を整えて手続きを進めましょう。
相続人が外国籍を取得しているなら相続証明書を用意する
仮に海外に住む相続人が外国籍を取得しているなら、相続証明書の用意もしておきましょう。相続手続きでは、相続人だということを証明するために戸籍謄本の提出を求められるケースがあります。
しかし、外国籍なので日本に国籍がなく、戸籍謄本を取得できません。そこで戸籍謄本の代わりとして使うのが相続証明書です。
ただし、実際には相続証明書という名称の書類はなく、以下のようなものが該当します。
- 出生証明書
- 婚姻証明書
- 死亡証明書など
便宜上、相続証明書と呼ばれることがあると覚えておくといいでしょう。
遺言書があると手続きをスムーズに進められる
遺言書があると、遺言の内容にしたがってスムーズに相続の手続きを進められます。遺産分割協議書を郵送する必要もなく、手続きにかかる手間を軽減できるでしょう。
相続人が海外在住中に遺言書を作成するポイントは、以下の2つです。
- 遺言執行者を指定する
- 遺産分割の内容を工夫する
遺言執行者は、遺言に書かれている手続きを行うものを指しています。国内に住んでいる相続人を指定するといいでしょう。
また、遺産分割の内容を工夫しておくのもおすすめです。たとえば、海外に住む人が不動産を引き継ぐとき、在留証明書の取得が必要ですが、手に入れるには手間がかかります。
そのため、遺言書内で不動産は国内在住の人に相続させて預貯金を海外在住者に相続させるといった工夫をするなど、手続きがよりスムーズに行えるように作成を進めましょう。
相続人が海外在住しているケースでの注意点
相続人が海外在住しているケースでは、以下の5点に注意してください。
- 必要書類の用意ややりとりに時間がかかる
- 相続のトラブルが起きやすくなる
- 現金の相続をすると手続きが煩雑になる
- 海外在住の相続人も相続税申告が必要になる
- 二重課税に注意する
必要書類の用意ややりとりに時間がかかる
相続人が海外に住んでいると、サイン証明書あるいは在留証明書、そのどちらもが必要になるケースがあります。一時的に帰国する目処がないのであれば、必要な書類は郵送しなければなりません。
しかし、書類の用意ややり取りには時間がかかります。たとえば、国際郵便の配達に要する時間は、EMSは2〜4日、航空便は3〜6日、船便なら1〜3か月です。コロナ後は配送により時間がかかる傾向があります。
そのため、時間には余裕をもって進めないと、申告期限に間に合わないといったことも考えられます。
相続のトラブルが起きやすくなる
国内に住んでいる人のみが相続するケースでは、相続人同士が直接、顔を合わせて話し合うことは難しくありません。しかし、海外に住んでいる人が相続人である場合、時差や通信環境の問題で円滑な話し合いができない可能性があります。
その結果、意思の疎通がしにくく、トラブルが起きやすくなるでしょう。相続人に海外在住者がいるケースは、より丁寧に、お互いしっかりと意思疎通を確認しながら話し合いを進める必要があります。
現金の相続をすると手続きが煩雑になる
相続人が海外にいる状態で現金を相続すると、手続きが煩雑になることがあります。たとえば、国内口座を未開設の場合は、現金を海外へ送金しなければなりません。
しかし、国内金融機関では、マネー・ロンダリングやテロへの資金供給の対策として、海外送金を行う際に厳しい制限が設けられています。金融機関によっては、戸籍謄本の提示を求められたり、振込金額を制限されたりすることもあります。
海外在住の相続人も相続税申告が必要になる
海外在住の相続人であっても、被相続人が日本在住であったり、日本に資産がある場合等は、日本で相続税の申告が必要になるケースがあります。海外だからといって申告しないと、無申告でペナルティを受ける可能性もあるので注意が必要です。
また、日本居住の被相続人が保有していた財産は、原則国内だけではなく海外の財産も課税対象です。
ただし、被相続人および相続人の双方が10年以上海外に住んでいるケースでは、被相続人の国内財産のみが課税対象となることもありますが、専門家に確認が必要です。
二重課税に注意する
日本の相続税の資産に、海外の資産が含まれる場合は、二重課税にも注意しなければなりません。
たとえば、アメリカには米国遺産税とそれぞれの州の法律にもとづいた税があります。そのため、遺産相続に際して国内で相続税を納付したとしても、アメリカの法律にしたがって二重に税金を納めなければならないことがあります。
ただし、外国税額控除の手続きをすれば、二重課税を回避可能です。外国税額控除を適用するときは専門的な知識が必要ですので、専門家へ相談してください。
相続人が海外在住しているケースでの税金相談ならネイチャーグループ
相続人が海外に住んでいる場合、相続手続きは複雑化し、時間も手間もかかります。しかし、相続税の申告期限は相続開始から10か月以内と定められているので、スムーズに手続きをしなければ間に合わないかもしれません。
トラブルを防ぐためには、早めに専門家への相談を検討しましょう。
私たちネイチャーグループは、資産運用と税務に特化した日本最大級のコンサルファームです。海外の税務に精通したアドバイザーも多数在籍しているため、安心してご相談いただけます。
相続人が海外にいると、必要書類の用意ややりとりに時間がかかったり、相続のトラブルが起きやすくなったりと心配ごとが尽きません。相続人が海外に住むケースでの税金問題は、ネイチャーグループへご相談ください。
\相続税の手続きをスムーズに進める方法とは?/
まとめ:相続人が海外在住していても相続はできる!手続きを早めにしよう
相続人が海外在住者でも、相続は可能です。ただし、遺産分割協議書を作成したり、サイン証明書を取得してもらったりと、手続きに際してやるべきことが数多くあります。
加えて、書類の郵送に時間がかかったり、二重課税に気をつけなければならなかったりと、留意しなければならない点も存在します。
そのため、相続人が海外在住のケースは専門家への相談がおすすめです。ネイチャーグループは年間2,000件以上、累計で1万件以上の相談実績があり、豊富な経験からあなたに最適なご提案をいたします。
相続人が海外在住者で相続が生じる可能性がある、すでに生じているといった場合は、申告期限なども考慮して早めにネイチャーグループへお問い合わせください。
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