定年を迎え、多くの方が退職金という人生最大級のまとまったお金を手にされます。その時、真っ先に頭に浮かぶのは「他の方は退職金を何に使っているんだろう?」ということではないでしょうか。
退職金の使い道ランキングは、あくまで参考情報に過ぎません。なぜなら、人それぞれ家族構成も、健康状態も、老後の目標も違うからです。他人のランキングを真似して、もし老後にお金が足りなくなったら、取り返しがつきません。
私は長年、税理士として多くの経営者や退職間近の方の資産運用、税金対策、そして相続の問題に携わってきました。その経験から断言できるのは、「退職金は増やすことより、まず減らさない戦略を徹底することが最も大切」ということです。
本記事では、一般的な退職金使い道ランキングを公開しつつ、老後の不安から解放され、自信をもって第二の人生をスタートさせるための絶対に失敗しない判断基準を分かりやすくお伝えします。
最新版:みんなが選ぶ退職金使い道ランキングと割合
多くの方が退職金を受け取った後、実際にお金を何に使っているのかを見てみましょう。このランキングは、世間一般の傾向を知るための参考としてください。
| ランキング | 使い道 | 概要 |
| 1位 | 老後の生活資金 | 老後の生活費や医療費、介護費用など、将来に備えて預貯金として残す。最も割合が高く、平均で半分以上を占めます。 |
| 2位 | 資産運用・投資 | NISAやiDeCo、投資信託などで、インフレに負けないように資金を増やすことを目指す。退職金専用の金融商品を選ぶ人もいます。 |
| 3位 | 住宅ローンの繰り上げ返済 | 定年後の収入減に備え、毎月の負担を軽くするために一括、または一部を繰り上げ返済する。 |
| 4位 | 旅行・趣味・自己投資 | 勤めている間はできなかった、海外旅行や豪華なクルーズ、新しい趣味や資格取得のための資金に充てる。 |
| 5位 | 子どもや孫への援助 | 孫の教育資金(学資保険)、子どもの住宅購入資金援助、結婚資金などの贈与にあてる。 |
多くの人が、まず老後の生活費として確保することを最優先にしていることが分かります。この事実は、やはり安心感の確保が最も重要な使い道であることを示しています。しかし、この確保の中身を具体的にどう計算し、どれくらい運用に回すかの判断こそが老後の安心を左右する重要なポイントです。
(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」)
失敗しないための第一歩:退職金で「絶対に確保すべき3つの資金」
退職金を手にしたら、まず考えるべきは、守りの資金を確保することです。これを怠ると、老後の生活そのものが立ち行かなくなります。
確保すべき守りの資金は、次の3つです。
| 資金の種類 | 目的・目安 | なぜ必要か(理由) |
| 1. 生活防衛資金(最低限の安心資金) | ・年金開始までの数年間の生活費 ・病気などに備えた生活費1〜2年分 |
退職直後の市場が不安定でも、生活費のために損切りをすることを避けるため。 |
| 2. 医療・介護の予備費 | ・最低でも300万〜500万円を目安 | 高齢になると医療・介護費は急増し、公的保険だけでは賄いきれない想定外の出費となるため。 |
| 3. 修繕・家電買い替え費用 | ・10年以内に発生する一時的な出費(自宅リフォーム、家電など) | 突発的な出費で生活資金が減るのを防ぐため。 |
この3つの資金を確保した後で、残ったお金を運用や消費に回す、という順番が鉄則です。
専門家が教える!退職金の税金対策と受け取り方
退職金で最も賢い使い道の一つは、税金を減らすことです。手取り額を増やす、最も確実でリスクのない方法だからです。
一時金と年金:どちらがお得?
退職金の受け取り方は、一般的に一時金として一括で受け取るか、年金として分割で受け取るかを選べます。
| 受け取り方 | 税務上の扱い | メリット・特徴 |
| 退職一時金 | 退職所得 | ・退職所得控除という非常に大きな優遇措置が適用される。 ・勤続年数が長いほど税金がほとんどかからないケースが多い。 |
| 退職年金 | 雑所得 | ・公的年金等控除が適用される。 ・公的年金などと合算され、毎年少しずつ所得税・住民税がかかる。 |
【税理士としての結論】
ほとんどの場合、一時金として受け取る方が税制上、優遇されます。特に勤続年数が20年を超える方は、控除額が非常に大きくなるため、手取り額が年金で受け取るより多くなる可能性が高いです。ただし、会社の制度によって選べない場合や、退職後の資産状況によっては年金形式が有利になる場合もあるため、事前に確認が必要です。
退職所得控除の計算(簡易版)
一時金で受け取る場合の退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 (※80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年) |
例えば、勤続35年の場合、控除額は800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円にもなります。あなたの退職金がこの控除額以下であれば、税金はかかりません。
退職金を賢く増やす!50代・60代のための資産運用戦略
退職金は、今後何十年ものインフレリスク(物価上昇で、お金の価値が下がるリスク)から生活を守るために、適切に運用することが重要です。
退職金運用の鉄則は「時間分散」
退職金を一括で全額投資するのではなく、数年(3〜5年)に分けて毎月少しずつ投資を始める時間分散を徹底してください。
その理由は、退職直後にたまたま金融市場のピークだった場合、多額の含み損を抱え、不安で運用を続けられなくなるリスクを避けるためです。市場の動きに左右されず、冷静に投資を続けるための心の安定を確保できるでしょう。
活用すべき税制優遇制度(NISA・iDeCo)
退職金の一部を2024年以降始まった新しいNISA制度のつみたて投資枠や成長投資枠で運用しましょう。 投資の利益にかかる税金(約20%)が非課税なので、長期で運用を続けるほど大きな差が生まれます。
現役時代に積み立ててきたiDeCo(個人型確定拠出年金)は、60歳以降に受け取りを開始しますが、受け取り方は一時金か年金かを選択できます。 この時、会社の退職金とiDeCoの受け取り時期の調整(例:iDeCoを一時金で受け取る年を退職金の受取年から一定期間空ける)など、税制上の優遇枠である退職所得控除を最大限に活用できるタイミングを選ぶことが手取り額を大きく左右する賢い税金対策となるでしょう。
※ただし近年の税制改正で、受取年により手取りが増えるということは事例としては少なくなりつつあります。
知っておきたい:退職金と相続・国際税務の基礎知識
退職金を自分のためだけに使うだけでなく、次世代へ賢く資産を渡す視点も持っておきましょう。また、近年注目度が高まっている国際税務の知識も重要になってきます。
相続税対策としての生前贈与の活用
相続税の課税対象となる可能性が高い方は、退職金の一部を生前贈与で子どもや孫に計画的に渡すことを検討してください。
その理由は、贈与には年間110万円までの非課税枠(暦年贈与)があるからです。また、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の特例など、非課税で多額の資金を渡せる制度もあります。退職金でまとまった資金ができた今こそ、これらの制度を活用し、計画的な相続対策を始める絶好の機会です。
特に暦年贈与は、贈与を開始してから7年間は相続財産に足し戻されてしまうルールがあり、高齢になってからの贈与は無効になるリスクが高いです。一方、足し戻されないように対策する専門的な手法もございますので、ご興味がある場合はお問い合わせください。
海外移住を考える人のための国際税務の基礎
将来的に海外移住(リタイアメントビザなど)を検討されている方は、退職金を受け取る前と、移住前後の税務上の取り扱いを専門家にご相談ください。
その理由は、日本では一定以上の金融資産を持つ人が海外へ移住する場合は、出国税(国外転出時課税制度)がかかる可能性があるからです。また、移住先の国と日本の二重課税を防ぐための条約など、複雑な税務知識が必要です。退職金という大きな資金を動かす前に、国際的な税務に詳しい専門家へ相談することで、無駄な税金支出を回避できます。
まとめ:退職金の使い道は「安心」を買うことから始まる
本記事では、退職金の使い道ランキングと、税理士としての専門的な視点から絶対に失敗しない3つの鉄則をお伝えしました。
退職金の最も賢い使い道とは、豪華な旅行でも、ハイリターンの投資でもありません。それは、老後の人生を、お金の不安なく、心穏やかに過ごすための安心を買うことです。
その安心を手に入れるためには、
- 守りの資金(生活防衛費、医療・介護費)を最優先で確保すること。
- 税金対策(一時金受取、NISA・iDeCo活用)で確実に手取り額を増やすこと。
- 資産運用は時間分散でリスクを抑えながら行うこと。
これら3つの鉄則を守ることが不可欠です。
退職金は、これからの人生を豊かにするための貴重な資金です。「判断を誤りたくない」「自分の老後資金が本当にこれで足りるのか不安だ」とお考えでしたら、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。私たちは、長年の経験と税務・金融の深い専門知識に基づき、あなたとご家族の状況に合わせた老後資金ロードマップ作成をサポートし、ゴールまで伴走いたします。
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