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5000万円の運用戦略【税理士が解説】資産防衛と税金で損しないポートフォリオ

5000万円というまとまった資金。退職金、相続、あるいは長年の貯蓄の集大成かもしれません。その大金を、とりあえず銀行の普通預金に置いている状態ではありませんか?

近年の物価上昇(インフレ)や円安を考えれば、何もしないことは資産価値が目減りしていくことを許容しているのと同じです。もし年2%のインフレが続けば、10年後、5000万円の購買力は実質約4100万円まで低下する計算になります。

しかし、焦って投資で失敗したという話も少なくありません。特に5000万円クラスの運用では、利益に対する税金を考慮しないと、手残りが大きく変わってしまうという落とし穴があります。

この記事では、富裕層の資産防衛と税務を専門とする税理士の視点から、5000万円を守りながら増やすための現実的な戦略、そして金融機関が教えてくれない税金で損をしないためのポートフォリオの考え方を徹底解説します。

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5000万円を「何もしない」が一番の失敗である理由

5000万円を銀行預金に置いたままにすることは、資産を目減りさせる非常に大きなリスクを負う行為です。

危険信号!インフレで現金の価値」は減り続ける

ニュースでインフレ(物価上昇)という言葉をよく耳にします。インフレとは、モノの値段が上がり、お金の価値が相対的に下がることです。

例えば、昨日まで100円で買えたパンが、インフレで102円になったとします。100円玉の価値は、パン1個分からパン1個未満に下がったわけです。

銀行の普通預金の金利は、金利のある世界へ戻ったとはいえ、現在0.2%程度(2025年時点)です。 5000万円を1年間預けても、利息は10万円(税引前)にしかなりません。

10年後、5000万円の購買力はいくらになるか?

もし日本政府と日銀が目標とする年率2%のインフレが続いた場合を考えてみましょう。

今の5000万円のモノを買う力(購買力)は、10年後には約4100万円分まで目減りします。

(計算式 : 5000万円 ÷ (1.02の10乗) ≒ 4101万円)

銀行に預けているだけで、実質的に10年間で約900万円の価値を失う計算です。投資には元本割れのリスクがありますが、何もしないことにもインフレによる実質的な元本割れのリスクがあるのです。

5000万円の運用で絶対に避けるべき3つの失敗パターン

5000万円という資産は準富裕層の入り口であり、判断ミスは致命傷になりかねません。特に初心者が陥る典型的な失敗が3つあります。

失敗1:一つの資産(例:特定の国や企業の株)に集中投資してしまう

「この株が将来伸びる」「この国が熱い」といった情報に煽られ、5000万円の多くを一つの投資先に注ぎ込むのは危険です。

過去、ITバブルの際、ある有名企業の株式に退職金をつぎ込み、その後株価が暴落して資産を9割失ったという相談を受けました。どれだけ有望に見えても、その企業が倒産すれば価値はゼロになります。これを集中投資のリスクと呼びます。

失敗2:銀行や証券会社の窓口でおすすめされるがまま高手数料の商品を買う

資金があることを知った金融機関の担当者から、「あなただけに」と勧められる商品には注意が必要です。

彼らが勧めるラップ口座やアクティブファンドは、販売手数料や信託報酬(管理費用)が非常に高く設定されているケースが多くあります。

運用が上手くいっても、利益の多くが手数料に消えてしまい、顧客の手元にはほとんど残らないという事態は珍しくありません。彼らは運用のプロであると同時に販売のプロであることを忘れてはいけません。

失敗3:【税理士が警鐘】利益確定時の税金を忘れている

これが最も重要かつ、見落とされがちなポイントです。

投資で利益(売却益や配当・分配金)が出ると、原則として約20%(20.315%)の税金がかかります。

100万円の利益が出ても、手元に残るのは約80万円です。

「手数料は高いが、リターンも高い」と宣伝される商品があります。しかし、手数料と税金の両方を支払った後、本当にインデックスファンド(下記で解説)の運用結果を上回っているか冷静に計算する必要があります。

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【最重要】5000万円の運用はNISA枠と課税口座で戦略を分けよ

5000万円の運用戦略を立てる上で、投資を非課税の場所と課税される場所の二階建てで考える必要があります。

まずは新NISAの非課税枠(1800万円)を埋める

2024年から始まった新NISAは、投資で得た利益が無期限で非課税になる、国が用意した最強の制度です。これを使わない手はありません。

5000万円のうち、まずは夫婦二人分(もし配偶者がいれば)のNISA枠、最大3600万円(1800万円×2人)を優先的に活用することを検討します。

ご自身の1800万円の枠を、まずはつみたて投資枠と成長投資枠で埋めていくのが基本戦略です。

本番は残りの3200万円の課税口座の運用戦略

問題は、NISA枠(1800万円)を使い切った後の、残りの3200万円です。

3200万円は課税口座(特定口座や一般口座)で運用されるため、そこから得られる利益には原則として約20%の税金がかかります。5000万円クラスの資産運用で真に差がつくのは、課税口座の運用効率をいかに高めるかという点です。

なぜ税効率(タックス・アウェアネス)が手取りを左右するのか

税効率(タックス・アウェアネス)とは、「税引き後の手取りリターンを最大化する」という考え方です。

例えば、課税口座で年5%のリターンが出たとします。

  • 5%の利益 × 税率20% = 1%(税金として引かれる)
  • 手取りリターン = 5% - 1% = 4%

もし、手数料が年1%かかる商品であれば、

  • 手取りリターン = 5% - 1%(手数料) - (5%-1%)× 20%(税金) = 3.2%

このように、課税口座では手数料と税金の両方を最小化する戦略が極めて重要になります。

税理士が教える税金で損しないポートフォリオの組み方

では、具体的にどう資産を配分(ポートフォリオ)すればよいでしょうか。基本は「コア・サテライト戦略」です。

ポートフォリオの基本:コア・サテライト戦略とは?

資産全体をコア(中核)とサテライト(衛星)に分けて管理する手法です。

  • コア(資産の7〜8割): 資産防衛を目的とした、安定的・長期的な運用。
  • サテライト(資産の2〜3割): コアよりも高いリターンを狙う、積極的な運用。

5000万円であれば、3500万〜4000万円をコアに、1000万〜1500万円をサテライトに配分するイメージです。

コア(守り):税効率の高いインデックスファンド

コア部分に最適なのは、手数料(信託報酬)が極めて低いインデックスファンドです。

これは、日経平均株価やアメリカのS&P500といった市場平均に連動するよう設計された投資信託です。

例えば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やS&P500連動のファンドは、信託報酬が年0.1%以下と非常に低コストで運用できます。

税理士の視点からも、コスト(手数料)は、税金と同じくリターンを確実に蝕む要因であるため、コア運用では低コストを徹底することが合理的です。

サテライト(攻め):税務メリットも考慮した選択肢(REITなど)

サテライト部分では、インデックス以外の資産も検討します。

  • 個別企業の株式: 応援したい企業など。ただし集中投資は避ける。
  • REIT(不動産投資信託): 少額から不動産に分散投資できる商品。比較的高い分配金が期待できますが、分配金には税金がかかります。
  • 現物不動産(上級者向け): 5000万円全額ではなく、一部を頭金にアパート経営などを始める選択肢。家賃収入(不動産所得)は他の所得と合算(総合課税)されます。減価償却費などで税務上の赤字を作り、節税(損益通算)できる可能性がありますが、空室リスクや流動性の低さなど、専門的な知識が必要です。

【ケーススタディ】運用益で国民健康保険料が跳ね上がる人の共通点

税理士としてよく見る失敗例が確定申告による社会保険料の見落としです。

事例: 60歳で定年退職したAさん。退職金5000万円を運用し、年間100万円の利益が出ました。少しでも税金を取り戻そうと、安易に確定申告をしてしまいました。

罠(ここが重要): 特定口座(源泉徴収あり)で、申告不要制度を選んでいれば、利益は国民健康保険料の計算に含まれません(保険料は上がりません)。 しかし、Aさんのようにあえて確定申告をしてしまうと、その利益が所得として合算され、国民健康保険料の算定基準に含まれてしまいます。

結果: Aさんの翌年の国民健康保険料は、上限額近くまで跳ね上がってしまいました。わずかな還付金を得るために申告した結果、それ以上の保険料負担が発生してしまったのです。 運用益が出た際は、税金だけでなく社会保険料への影響も考慮し、「申告すべきか、しないべきか(申告不要)」を慎重に判断する必要があります。

 

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5000万円の運用先:主な選択肢と税理士の視点

運用を始める際の窓口となる選択肢を、税理士の視点で比較します。

相談先

メリット

税理士の視点(デメリット・注意点)

ネット証券

手数料が圧倒的に安い。

商品ラインナップが豊富。

全て自己判断。

税務的なアドバイスは得られない。

銀行・対面証券

担当者がつく安心感。

(ラップ口座など)

手数料が極めて高い傾向。

自社で売りたい商品を勧められがち。

不動産投資 レバレッジが効く。

インフレに強い。

税務メリット(減価償却)

流動性が低い(売れない)。

空室・金利上昇リスク。

IFA
(独立系アドバイザー)
中立的な立場で助言。

金融機関の枠を超えた提案。

担当者の実力差が大きい。

相談料や手数料の体系を確認する必要。

 

5000万円の運用で迷ったら誰に相談すべきか?

重要なのは、販売者と助言者の違いを理解することです。

銀行・証券会社(販売者)と税理士・IFA(助言者)の違い

  • 銀行・証券会社: 彼らの主な収益源は、金融商品を販売した際の手数料です。
  • 税理士・IFA: 彼らの主な収益源は、顧客からの相談料や顧問料です。

もちろん、全ての銀行員が悪いわけではありません。しかし、構造的に顧客の利益よりも自社の利益(手数料)を優先せざるを得ない場合があります。

5000万円という大切な資産の相談は、商品を売る必要がなく、かつ税金と社会保険まで含めた総合的なアドバイスができる専門家(=資産運用に強い税理士や、信頼できるIFA)に行うことを強く推奨します。

まとめ:5000万円の運用は税務戦略とセットで考える

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

「何もしない」は失敗: 5000万円を預金で寝かせると、インフレで実質価値が減っていく。

税金を無視しない: 投資の利益には約20%の税金がかかる。さらに社会保険料に影響するケースもある。

戦略を二階建てで: NISAの非課税枠(1800万円)と、残りの課税口座(3200万円)の戦略は明確に分ける。

税効率を重視: 課税口座では、手数料と税金をいかに抑えるかが手取りを最大化するカギ。

販売者より助言者に: 商品を売ることが目的でない、税務に強い専門家に相談する。

5000万円の資産運用は、単なるお金儲けではなく、資産防衛と税務戦略の掛け算です。この記事が、あなたの大切な資産を守り、賢く育てるための一助となれば幸いです。

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