「保有している金の価格が、買ったときより大きく上がっている。そろそろ利益を確定したいが、税金がいくら引かれて手元にいくら残るのかが分からない。」このようにお考えの方は少なくありません。
実は、金の税金は「いくらで売れたか」だけでは決まりません。売った金の種類、取得費、保有期間、そして売却した年の他の所得によって、納める税額は大きく変わるので注意が必要です。
この記事では、金地金や金貨、金製品、純金積立、金ETFに分けて、税金の計算方法を整理します。あわせて、確定申告が必要になる条件、相続した金の扱い、プラチナや銀の税金も解説します。売却前に確認すべき点が分かれば、売る時期や順番を落ち着いて検討できるようになるでしょう。
金の売却にかかる税金の種類
金を売ったときに関係する税金は、消費税と所得税・住民税です。このうち、手取り額を左右するのは所得税・住民税です。違いを順に整理します。
- 消費税
- 所得税・住民税
消費税
事業者から金を購入する場合、購入価格には消費税が含まれます。売却時も、買取価格に消費税相当額が含まれるのが一般的です。
ただし、事業者ではない個人が自分の財産を単発で売却した場合、その売却について消費税の申告・納付義務は通常生じません。買取価格に含まれる消費税相当額は、所得を計算する際には売却代金の一部として扱います。
所得税・住民税
売却して利益が出た場合、利益に所得税と復興特別所得税、住民税がかかります。
個人が金地金などを単発で売ったときの利益は、原則として譲渡所得になります。一方、営利を目的として継続的に売買している場合は、事業所得や雑所得と判断される可能性があるので注意が必要です。どの所得区分に当たるかで、計算方法も税率も変わります。
金の税金を売却物別に比較
売却対象を税務上の性質で分けると、次の4つに整理できます。ここでは判定の入口だけを示し、具体的な計算は次の章で解説します。
| 売却対象 | 最初に確認する項目 |
| 金地金・金貨 | 購入金額と保有期間 |
| アクセサリー・仏具 | 使用目的と1個・1組の価額 |
| 純金積立 | 金の所有関係と換金方法 |
| 金ETF | 上場商品か、利用している口座は何か |
同じ金価格を基準にする商品でも、現物資産と証券商品では税務上の入口が異なります。取引回数が多い場合は、売却対象に加えて取引の実態も確認します。
金を売却した際の税金の計算方法
現物の金と金融商品では、課税のしくみが異なります。まずは、売ったものがどれに当たるかを確認してください。商品ごとの計算手順を順に見ていきます。
- 金地金・金貨の計算方法
- 金製品の計算方法
- 純金積立の計算方法
- 金ETFの計算方法
- 金の売却損は商品ごとに取扱いが異なる
金地金・金貨の計算方法
金地金や金貨の税額を把握するには、売却益だけでなく、金を売る前の課税所得まで確認する必要があります。次の条件を使って計算します。
| 項目 | 金額・条件 |
| 売却価格 | 1,200万円 |
| 購入価格 | 600万円 |
| 売却時の手数料 | 20万円 |
| 売却前の課税所得 | 600万円 |
| 他の総合課税の譲渡所得 | なし |
購入価格と手数料から利益を求める
最初に、売却価格1,200万円から購入価格600万円と手数料20万円を差し引きます。この事例で生じる利益は580万円です。
「1,200万円 – 600万円 – 20万円 = 580万円」
購入時に直接かかった手数料は、取得費に含まれます。売却明細だけで計算せず、購入時の請求書や取引記録もあわせて確認してください。
保有期間に応じて課税対象額を分ける
次に、年間50万円の特別控除と保有期間を反映します。購入から売却までが5年以内なら、580万円から50万円を差し引いた530万円が課税対象です。
5年を超えて保有している場合は、控除後の金額をさらに2分の1にするため、課税対象額は265万円になります。
| 保有期間 | 課税対象額 |
| 5年以内 | 530万円 |
| 5年超 | 265万円 |
50万円の特別控除は、金だけに設けられた枠ではありません。同じ年に骨董品などを売って利益が出ている場合は、それらを含めて控除額を計算します。
売却前後の所得税額を比較する
金地金や金貨の課税対象額は、給与や役員報酬などから計算した所得に加算されます。そのため、「530万円に何%を掛ける」という方法だけでは、正確な税額を求められません。
売却前の課税所得が600万円であるこの事例では、概算の追加税額は次のようになります。
| 保有期間 | 課税対象額 | 追加税額の概算 |
| 5年以内 | 530万円 | 約198万円 |
| 5年超 | 265万円 | 約86万円 |
所得税、復興特別所得税、住民税率10%を用いた概算です。所得控除や税額控除などによって実際の金額は変わります。同じ金を同じ価格で売っても、売却する年の所得によって手元に残る金額は異なります。
購入資料がなければ取得費を調べ直す
購入価格が分からない場合は、購入先の取引履歴、通帳の出金記録、保証書、当時の価格資料などを探します。相続した金であれば、被相続人が利用していた金融機関や保管場所の書類も確認してください。
購入時の領収書や取引明細等の客観的な証拠資料が一切見つからない場合、税法上、売却金額の5%を取得費とみなして計算する「概算取得費」の適用を余儀なくされるリスクがあります。金の価格が歴史的に高騰している現在、取得費を売却額の5%で計算すると、売却代金の95%相当額が課税対象の利益とみなされ、想定外に重い税負担が生じることになりかねません。
資料の散逸がある場合でも、当時の購入時期が特定できれば当時の相場チャートや銀行口座の出金履歴などを積み上げることで合理的な取得価額を立証できるケースもあるため、自己判断で処理せず事前に税理士等の専門家へ相談することが重要です。
金製品の計算方法
日常的に身につける指輪やネックレスなどの装飾品は、原則所得税法上の「生活用動産」に該当し、売却益は非課税とされています。
ただし、「1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石等」については生活用動産の非課税規定から除外され、金地金と同様に総合課税の譲渡所得として課税対象です。昨今の金相場の高騰により、購入当時は30万円未満であっても売却時の価額が30万円を超えている場合は課税対象となる点に注意が必要です。なお、純金製の仏具や置物など、実質的に資産保有・投資目的とみなされる物品については、原則として当初から生活用動産には該当しません。
純金積立の計算方法
純金積立の売却益は、契約内容や取引の実態によって所得区分が異なります。
いわゆる金定額購入システムで取得した金地金を売却した場合、営利目的で継続的に売買していると認められなければ、原則として譲渡所得です。継続的な売買の実態がある場合は、雑所得や事業所得となることがあります。
一方、一定の金投資口座や金貯蓄口座の利益は金融類似商品として20.315%の源泉分離課税となります。商品名だけで判断せず、契約内容を確認しましょう。
金ETFの計算方法
上場している金ETFの売却益は、原則として上場株式等の譲渡所得等に当たります。税率は20.315%の申告分離課税です。金地金に使える50万円の特別控除や、5年超の2分の1課税は利用できません。
金の売却損は商品ごとに取扱いが異なる
金地金や金製品を売って損失が出ても、給与所得などから自由に差し引けるわけではありません。ただし、同じ年に他の総合課税の譲渡益があれば、まとめて計算する過程で差し引かれます。
一方、金ETFの売却損は、一定の上場株式等の譲渡益との通算や繰越控除を利用できる場合があります。損失の扱いは、売った商品の種類ごとに確認が必要です。
金売却時の税金で確定申告が必要になる条件
申告の要否は、金から生じた所得金額を計算したあと、本人の給与収入や他の所得を加えて判断します。「売却代金がいくらか」だけでは決まりません。
- 金の所得が残らない場合
- 給与所得者も申告が必要な場合
金の所得が残らない場合
金地金などの譲渡益には、総合課税の譲渡所得に対する年間最高50万円の特別控除があります。金と他の対象資産を合わせた譲渡益が控除額以内なら、金の売却を理由とする課税対象額は残りません。
50万円と比較するのは売却代金ではなく、購入金額と売却費用を差し引いた利益です。具体的な算出方法は、前述の計算例をご確認ください。
給与所得者も申告が必要な場合
給与収入が2,000万円以下で、1か所から給与を受け、その給与について源泉徴収や年末調整が行われている方は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です。ただし、金以外に副業や不動産などの所得があれば、それらを含めて判定しなくてはなりません。
給与収入が2,000万円を超える方や別の理由で確定申告をする方は、20万円以下でも金から生じた所得を申告に含めます。所得税の申告を省略できても、住民税の手続きが必要になる場合があります。
金売却時の税金に関する確定申告の流れ
金の所得金額を計算したあとは、取引を裏付ける資料をそろえ、所得区分に応じて申告書へ反映します。
- 売買記録を取引ごとにそろえる
- 所得金額を申告書へ反映する
- 期限までに申告と納付を済ませる
売買記録を取引ごとにそろえる
購入明細、保証書、売却明細、通帳、手数料の領収書を用意します。複数回購入している場合は、購入日と購入金額を取引ごとに対応させます。純金積立や金ETFでは、金融機関が発行した取引報告書も確認しましょう。
所得金額を申告書へ反映する
現物の金は、計算した金額を該当する譲渡所得の欄へ記載します。金ETFなど証券口座で取引した商品は、口座区分や年間取引報告書に沿って処理します。商品によって使用する明細書が異なるため、現物取引と証券取引を混在させないようにしましょう。
期限までに申告と納付を済ませる
申告書は、売却した年の翌年に提出します。e-Taxを利用する場合も、計算の根拠となった売買資料は保存してください。申告後に購入金額の確認を求められたとき、取得費を説明する資料になります。
金の税金対策を売却前に検討する
金を売る時期は、税金だけでなく、価格変動や資金の使用目的も含めて決めます。比較するのは、保有期間と売却年です。
- 5年を超える売却日を確認する
- 所得と資金需要から売却年を選ぶ
5年を超える売却日を確認する
購入から5年を超えるかによって、金地金などの課税対象額は変わります。売却予定日が区分の境目に近い場合は、購入日を資料で確かめたうえで、日付を変えた場合の手取りを比較します。
ただし、売却を先送りすれば有利になるとは限りません。待機中の価格下落や、必要な資金を確保できない影響も考慮する必要があります。
所得と資金需要から売却年を選ぶ
総合課税となる金の所得は、その年の給与や役員報酬、事業所得、不動産所得などと合算されます。これらの所得が年によって変動する場合は、金の売却年を変えたときの税額差を確認します。
複数の金を保有している方は、すべてを同時に売る場合と、必要資金に合わせて売る場合の手取りを比較してください。
相続した金の売却にかかる税金
相続した金を売却するときは、「相続時の価額」「被相続人の購入価格」「被相続人が購入した日」を分けて確認します。たとえば、次の金を相続後に売ったケースで考えてみます。
| 確認項目 | 金額・時期 |
| 被相続人の購入価格 | 300万円 |
| 被相続人の保有期間 | 15年 |
| 相続税申告時の評価額 | 1,200万円 |
| 相続人の売却価格 | 1,500万円 |
| 売却時の手数料 | 20万円 |
このケースでは、相続税申告に使った1,200万円をそのまま売却時の取得費にはできません。
相続税評価額と購入価格を分ける
相続税評価額は、相続財産としていくら計上するかを決める金額です。一方、売却益の計算では、原則として被相続人が金を購入したときの金額を使用します。
上のケースでは、売却価格1,500万円から購入価格300万円と手数料20万円を差し引くため、売却益は1,180万円です。
「1,500万円 – 300万円 – 20万円 = 1,180万円」
相続税評価額の1,200万円を取得費として計算すると、売却益を280万円と誤って計算することになります。相続税申告書だけでなく、被相続人の購入明細や通帳も確認してください。
被相続人の購入日から保有期間を数える
相続人が金を受け取った日は、短期・長期を分ける起点にはなりません。原則として、被相続人が購入した日から売却日までを通算します。
上のケースでは、相続してから売却までが1年以内でも、被相続人の保有期間が15年あるため、5年超の長期譲渡所得として計算します。他に総合課税の譲渡所得がない場合、課税対象額は次のとおりです。
「(1,180万円 – 50万円) ÷ 2 = 565万円」
相続直後の売却だから短期譲渡所得になるとは限りません。購入日が分かる資料は、購入価格の確認とあわせて探す必要があります。
取得費加算を売却期限から確認する
相続税を納めた方が相続した金を売却する場合、相続税額の一部を取得費へ加算できることがあります。適用できれば、金の売却益が小さくなり、所得税等の負担を抑えられる可能性があります。
売却期限は、原則として相続税の申告期限の翌日から3年以内です。一般的な相続税の申告期限を前提にすると、相続開始からおおむね3年10か月以内になります。
ただし、納めた相続税の全額を加算できるわけではありません。取得費へ加算できる金額は、相続税額や取得した財産の価額などから計算します。制度の利用には確定申告も必要になるため、売却後ではなく期限内に売るかを決める段階で確認してください。
金以外の貴金属にかかる税金
プラチナや銀の利益計算では、購入金額、売却費用、保有期間を確認します。金との違いとして押さえたいのは、主に支払調書と生活用動産の判定です。
- プラチナ地金
- 銀地金
- 貴金属製品
プラチナ地金
プラチナ地金は、個人が保有資産を売る場合、金地金と同様の流れで所得を計算します。特徴は、金地金等の売買を業とする事業者がプラチナ地金などを買い取り、200万円を超える対価を支払う場合、原則として支払調書の提出対象になることです。
銀地金
銀地金は、法定の「金地金等の譲渡の対価の支払調書」の対象には含まれません。ただし、支払調書の提出対象外であることは、利益が非課税になることを意味しません。申告要否は、売却価格ではなく計算後の所得から判断します。
貴金属製品
ジュエリーや装飾品は、生活用動産に該当するかを用途と価額から判定します。1個または1組の価額が30万円を超える貴金属は、生活用動産の非課税から除かれます。
金の税金に関するよくある質問
金の税金に関わるよくある質問をまとめました。
- 金100gを売ると税金はいくら?
- 支払調書が提出されると課税される?
- 法人名義の金はどう計算する?
金100gを売ると税金はいくら?
重量だけでは算出できません。購入金額、売却費用、保有期間、売却年の所得を計算例へ当てはめる必要があります。
支払調書が提出されると課税される?
支払調書は、買取業者から税務署へ取引内容を知らせる書類です。提出の有無によって税額が決まるわけではありません。課税の有無は、売却によって生じた所得から判定します。
法人名義の金はどう計算する?
法人が所有する金の売却損益は、法人所得の計算に含めます。個人向けの特別控除や保有期間による2分の1計算は適用されません。
金の税金相談なら税理士法人ネイチャー
金を売るか保有し続けるかを判断するには、価格の見通しだけでなく、売却後に残る金額まで比べる必要があります。特に、購入記録が残っていない場合や複数の金地金をまとめて換金する場合、相続した金を売る場合は、申告前の確認事項が増えます。
売却で得た資金については、納税分を確保したうえで、今後の生活資金や資産運用へどのように配分するかを考えることも大切です。また、金の売却時の所得税対策についても検討が必要です。金の売却後の資産設計を検討される方は、税理士法人ネイチャーの初回無料相談をご利用ください。
まとめ:金の税金は種類によって異なる
金を売却するときは、最初に現物・金製品・積立・ETFのどれに当たるかを確認します。次に購入資料をそろえ、利益と保有期間を反映して所得金額を計算します。
金の売却による手残り額は、売却対象の性質(地金・製品・証券)や保有期間だけでなく、売却した年の役員報酬、退職所得、不動産の譲渡損益など、個人の総合的な所得水準によって大きく左右されます。
まとまった金資産の現金化を検討する際は、売却タイミングを年度で分散させる手法や相続税の取得費加算の活用も含め、事前に税引後キャッシュフローを試算しておきましょう。
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