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海外不動産の減価償却は不可能?今後の出口戦略や節税対策とは

不動産を購入することでリターンを得る不動産投資は、国内のみならず海外の不動産を対象に運用する方法もあります。しかし、資産運用には税金が伴うものです。「海外不動産でも節税はできるのか」「減価償却費用を計上できるのか」といった疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、海外不動産における減価償却の可否や計算方法について解説します。海外不動産に投資する際の注意点や、すでに保有している場合の対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

海外確定申告

海外不動産投資とは

節税を目的として海外不動産の購入を検討中の方もいるでしょう。海外不動産投資はリターンを期待できるメリットがある一方、国内不動産と比較すると投資難易度が高いという懸念点もあります。

海外不動産投資を成功させるには、知識を深め必要に応じて適切な対応を取ることが大切です。ここでは、まず海外不動産投資の概要や節税の仕組みを紹介します。

海外不動産投資の概要

海外不動産投資とは、海外にあるマンションや戸建て住宅といった不動産に投資することです。不動産を売買してキャピタルゲインを得る、または、賃貸契約をして家賃収入を得るといった運用方法があります。

海外不動産投資のメリットは、日本での投資に比べ利回りが高い傾向にあり、リターンを期待できることです。また、日本だけでなくさまざまな地域に投資することで、リスク分散ができる点にも魅力があります。

海外不動産投資による節税の仕組み

不動産投資の節税で主に使用するのは、減価償却費用です。減価償却では、固定資産である不動産の購入費用を耐用年数で分割して経費計上します。かつて海外不動産投資による節税に人気があったのは、耐用年数の長い海外の不動産を日本の税制度に当てはめて計算することで、減価償却できる費用が大きくなるためです。

「本来、数十年かけて計上しなければならない費用が4年で計上できる」といったケースもあり、効率的な節税効果を見込めます。ただし、2020年の税制改正により、個人が投資する海外不動産の減価償却は不可となりました。不動産投資による節税を検討中の方は注意しましょう。

減価償却の概要と計算方法

減価償却の制度は、節税を目指す際に押さえておきたいポイントのひとつです。しかし、減価償却の仕組みは複雑であるため、会計に関する知識がない場合はイメージしにくい部分もあるでしょう。ここでは、減価償却の制度概要や計算方法を詳しく解説します。

減価償却の概要

減価償却とは、固定資産の購入にかかった費用を耐用年数にわたって分割し、費用計上する会計処理方法です。経年と共に価値が減少していく資産のみが減価償却の対象となります。減価償却できる資産と、できない資産の一例は以下の通りです。

減価償却できる資産建物、自動車、設備、機械装置(パソコンなど)、特許権、商標権、ソフトウェア など
減価償却できない資産土地、美術品、建設途中の資産 など

土地は時間の経過に伴い価値が変わることはないため、減価償却の対象になりません。不動産投資のキャッシュフローや予算を立てる際は注意しましょう。

減価償却の耐用年数

耐用年数とは固定資産を使用できる期間のことです。減価償却の計算に用いる法定耐用年数は国により異なります。日本の不動産における法定耐用年数の一例は以下の通りです。

・木造住宅:22年
・鉄筋鉄骨コンクリート造住宅:47年
・レンガ造り住宅:38年

日本での新築木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、アメリカでは27.5年に設定されています。また、ヨーロッパではレンガで作られた住宅も多く、築年数が100年や200年を超えるケースも少なくありません。そのため、耐用年数が決められていない国もあります。

減価償却の計算方法

減価償却費用の計算方法は、定額法か定率法の2パターンです。固定資産の種類によって、どちらの方法にするか選択できることもあれば、あらかじめ計算方法が決められているケースもあります。

【定額法】
定額法は、毎年同じ金額を計上する方法です。計算も会計処理もシンプルで、キャッシュフローの見通しを立てやすいというメリットがあります。

・計算式:固定資産の取得金額×定額法の償却率

【定率法】
定率法は、毎回一定率をかけて費用を計上する方法です。初めは計上できる金額が大きくなり、経年と共に減価償却費用が減少します。

・計算式:固定資産の未償却残高×定率法の償却率
・償却保証額に満たなくなったときの計算式:改定取得価額×改定償却率

海外確定申告

海外不動産の減価償却は法人のみ可

富裕層から人気の高かった海外不動産投資ですが、税制改正により2021年以降の確定申告では海外不動産の購入費用を減価償却できなくなりました。ただし、法人においては現在もなお減価償却費用の経費計上が可能です。なぜ、個人投資家には制限が設けられたのでしょうか。ここでは、税制改正の内容や改正に至った背景について解説します。

税制改正の内容

2020年度の税制改正大綱にて、「国外の中古不動産物件から生じた償却費に対して、日本の減価償却制度を適用するのは合理的でない」との指摘を受け税制改正が施されました。2021年度以降は、海外不動産の減価償却費用を経費計上できなくなっています。

経費算入できなくなったのは減価償却費用のみであり、修繕費用や管理費用などは今でも経費計上が可能です。ただし、不動産の購入費用という最も高額な費用を経費計上できなくなったため、これまでのように大きな節税効果は期待できません。

税制改正の背景

減価償却に規制が加えられることとなったのには、日本の富裕層が節税を目的として海外不動産にこぞって投資したという背景があります。そのような行動を会計検査院と国税庁が問題視しはじめ、税制改正に至りました。

日本の資産家が海外の不動産を購入するということは、資産が海外に流出するということです。資産の国外流出を防ぎ日本国内に留めることは、日本経済の維持・成長にとって重要な意味を持ちます。

すでに海外不動産投資をしている場合の対処法は?

2021年度以降、海外不動産の減価償却が不可となったため、節税効果は大幅に減少しました。すでに海外不動産を所有している方の中には、どうすればよいか分からず悩んでいる方もいるでしょう。ここでは、海外不動産の活用方法や、節税できなくなったことへの対処法を紹介します。以下を確認しながら、売却するか保有し続けるか検討しましょう。

キャピタルゲインを得る

キャピタルゲインとは、購入時と売却時の差額によって得られる利益のことです。海外では不動産の耐用年数が長く設定されているだけあり、築年数が長くても価格が落ちにくいという特徴があります。

日本では少子化や経済成長が低迷している影響により、不動産価格の値上がりを期待しにくいのが現状です。しかし、海外には経済成長が著しい国や人口増加による好景気を見込める国も多く、不動産価格の高騰も期待できます。

家賃収入を得る

不動産を保有し続け、家賃収入を得るのも方法のひとつです。需要のある物件をしっかりと選んでいれば空室リスクが少なく、家賃収入によるリターンも得られます。

人口の減少や不動産の経年劣化に伴い需要が減ると、入居者確保のために家賃の金額を下げて対応しなければなりません。しかし、海外では人口が増加している国もあり、築年数の経過に伴う需要の減少も日本と比べて緩やかです。そのような国では安定的な資産運用も可能でしょう。

複数の不動産を保有する

日本での減価償却は不可能となったものの、海外の不動産所得同士であれば損益通算が利用できる可能性があります。損益通算とは、赤字所得と黒字所得を相殺する制度です。不動産投資がうまくいかず赤字所得が発生している方でも、その損失を無駄にすることなく活用できます。

ただし、日本に居住する方で一定額以上の所得がある場合、日本での確定申告も必要となる点には注意が必要です。複数の国で税務手続きが発生するため手間がかかります。

法人化する

2021年度の税制改正で減価償却が規制されることとなったのは、個人による不動産投資のみです。法人の保有する海外不動産は、今でも減価償却が可能です。節税効果をより大きくしたいと考えている方は、法人化も検討するとよいでしょう。

また、法人化することで、「経費計上できるものが増える」「納める税額が低くなるケースもある」「損失繰越の期間が最長10年になる」といったメリットもあります。一定額以上の不動産所得が発生している投資家の方に適した対処法です。

海外確定申告

海外不動産に投資をする3つの方法

海外不動産への投資には、節税以外にも複数のメリットがあります。キャピタルゲインや家賃収入といったリターンを期待できるため、減価償却の制度が利用できなくなった今でも、海外不動産に投資する方は少なくありません。ここでは、海外不動産に投資する際の具体的な方法を紹介します。

現地で物件を購入する

現地の不動産会社で物件を購入するのが主流です。海外の不動産会社に相談をして、物件の紹介や購入の手続きに進みます。現地の会社を利用するメリットは、選択できる物件の数が増えることです。日本の不動産会社では保有していないような物件を購入できる可能性もあります。

不動産投資会社から購入する

日本の不動産仲介会社から購入するのも方法のひとつです。日本にいながら投資の相談や物件の紹介を受けられます。ただし、全ての不動産仲介会社が海外不動産投資に対応できるとは限りません。海外に拠点を持っている会社や、海外不動産に詳しい会社を選びましょう。

日本の不動産仲介会社を利用するメリットは、日本語で対応してもらえるため安心感があることです。物件のリスクや使用状況など、細かい部分までしっかりと確認できます。

REITを利用する

REITとは、投資家から集めた資金で、資産運用のプロが国内外の不動産に投資をする方法です。専門家が投資先や運用方法を決めてくれるため、初心者や知識が少なく不安を感じている方でも利用しやすいでしょう。

また、分散投資ができるのもREITの利点です。自身が購入した物件だけでなく、商業施設やマンション、戸建てといった複数の不動産に投資できます。また、投資する物件の国や地域、投資時期も分散可能です。ひとつの投資がうまくいかなくなった際に、大きな損失を被るリスクを軽減できます。

海外不動産投資をする際の注意点

海外の不動産に投資する際は、各種事務手続きが発生する点に注意が必要です。また、今後さらに税制度が変更になる可能性もあります。事前に注意点を確認し、適切な方法で資産を運用しましょう。ここでは、海外不動産投資を始める際に気を付けたいポイントを3つ紹介します。

税制改正にアンテナを張っておく

税制度は、時代の変化や経済状況に合わせて変化していくものです。現在は、個人による不動産購入時の減価償却費のみが経費計上不可となっていますが、今後さらに制度内容が変更になる可能性もあります。

例えば、修繕費や管理費なども経費計上できなくなったり、法人においても減価償却費の計上が不可となったりするかもしれません。海外不動産投資で資産運用するのであれば、毎年税制改正の内容をチェックしましょう。

現地の管理者とのやり取りは容易ではない

海外不動産を購入する際は、現地の不動産管理者と自身でやり取りをする必要があります。書類の記載やトラブルが発生したときの相談など、英語や現地語でのコミュニケーションに難しさを感じることもあるでしょう。

言語に不安がある方は、「日本語対応が可能なスタッフがいる会社を探す」「海外不動産を取り扱っている日本の会社を利用する」「海外不動産投資以外の資産運用方法を検討する」といった方法が適しています。

確定申告はかなり複雑

居住者・非居住者の判定や課税方法、所得の換算など、確定申告におけるフローがややこしいというのも注意点のひとつです。海外不動産投資の賃貸運用で発生した利益には所得税や住民税が課され、売却の際は譲渡所得税が課されます。こういった所得は、各国の基準に沿って確定申告をしなければなりません。

ただし、国ごとに申告義務者の条件が異なります。また、「居住者・非居住者に該当するか」「どの所得まで申告対象となるのか」「確定申告の期限や方法」といったように確認する項目は多く、複数の法律や税制度が絡むため想像以上に複雑です。

海外不動産投資に関する困りごとがあるときは、日本国内で国際税務が可能な税理士にサポートを依頼しましょう。

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海外不動産投資を始めたものの、減価償却による節税が困難になり、「思うように資産運用ができていない」という方もいるかもしれません。資産運用に関するお悩みは、ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)にご相談ください。

当グループは、税金対策・資産運用に特化した国内最大級のコンサルティングファームです。国際的な専門家ネットワークであるTIAGにも加入しています。日本国外の税務・会計サポートも可能です。海外の不動産投資にお困りの方や、税金対策・資産運用方法についてお悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

海外での不動産投資は、減価償却による節税効果が高く、富裕層から人気の高い資産運用方法でした。しかし現在は、税制改正により、個人の海外不動産投資には減価償却が適用されない仕組みになっています。海外に所有する不動産の扱いに困っている方や、効率的な資産運用方法を検討中の方は専門家に相談しましょう。

ネイチャーグループ(税理士法人ネイチャー、株式会社ネイチャーウェルスマネジメント)では、税金対策・資産運用に関するサポートが可能です。海外の確定申告やビザサポートといった、国際税務にも対応できます。オンラインやメール、電話でのご相談も承りますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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