不動産は、古くから富裕層に人気の投資先です。「富裕層が不動産投資をするのはなぜか」気になる方もいるのではないでしょうか。その理由は、税制面で金融資産にはないメリットがあること、レバレッジ効果を期待できることなどさまざまです。
ここでは、富裕層が不動産に投資する理由や不動産投資を成功させるポイント、おすすめの投資先について解説します。
富裕層とは?実態と現状
この記事での「富裕層」とは、純金融資産が5,000万円以上の方を指します。野村総合研究所の調査によると、富裕層の割合は全体の8.8%です。
階層(保有資産) | 世帯数(純金融資産の総額) | 全世帯に占める割合※ |
---|---|---|
超富裕層(5億円以上) | 9万(105兆円) | 0.2% |
富裕層(1億円以上5億円未満) | 139万5,000(259兆円) | 2.6% |
準富裕層(5,000万円以上1億円未満) | 325万4,000(258兆円) | 6.0% |
アッパーマス層(3,000万円以上5,000万円未満) | 726万3,000(332兆円) | 13.4% |
マス層(3,000万円未満) | 4,213万2,000(678兆円) | 77.8% |
※小数点第2位を四捨五入しています
同調査では、保有する純金融資産の金額別に世帯を5つの階層に分けています。純金融資産とは、金融資産から負債を引き算した残りの金額です。つまり、金融資産が1億円でも負債が5,000万円を超える場合、富裕層には含まれません。
(参考: 『野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計』/https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2023/cc/0301_1)
富裕層が不動産投資をするのはなぜ?
富裕層が不動産に注目するのは、「単純に高額資産だから」ではありません。節税効果や資産価値の安定性、投資効率の良さなど多くのメリットがあるからです。不動産投資のメリットを知ると「なぜ不動産投資なのか」について理解が深まります。
相続税を節税できる
富裕層は、相続対策として不動産に投資します。相続税は、相続した財産が高額なほど税金の負担が増える仕組みです。各財産の評価方法は、対象の資産によって異なります。
例えば、現金は時価で評価するため、100万円の現金を相続した場合の相続財産は100万円です。一方、土地は路線価や固定資産税評価額を基準に計算します。一般的に、路線価は時価の80%、固定資産税評価額は70%を目安に設定されているため、時価よりも評価が低くなる傾向です。
現金1億円を相続するよりも、1億円で購入した不動産を相続した方が税金の負担を抑えられるという訳です。また、土地の相続時は「小規模宅地の特例」が設けられており、特例が適用されると、さらに評価額が下がります。
価格変動リスクが低い
不動産は実際に存在する「物」に価値がある実物資産です。実物資産に対して、株式や債券といった有価証券は「金融資産」と呼ばれます。
市場で取引される金融資産は、発行する企業の業績や市場参加者の心理状態などによって資産価値が変動します。例えば、投資先の企業にとって悪いニュースが流れると「早く売却して損失を抑えよう」と考える投資家が増えるでしょう。株価などの下落によって売りが売りを呼び、さらに資産価値が下がります。
不動産の資産価値も、経済や需給の関係などさまざまな要因で変動します。しかし、金融資産のように、急激に大きく変動するケースは多くありません。
また、実物資産はインフレに強い資産です。インフレの局面において、資産を現金のみで保有するよりも資産価値の下落リスクを抑えられます。
レバレッジ効果を期待できる
レバレッジ効果とは「てこの原理」のことです。不動産投資においては、少額の自己資金とローンを併用して、より大きなリターンを得ることを指します。「借金をしてまで、なぜ不動産に投資するのか」と疑問を抱く方もいるかもしれません。しかし、ローンの活用は、投資効率を上げる手段のひとつです。
例えば、価格1,000万円と5,000万円の物件があったとしましょう。どちらも利回り3%であれば、後者のほうが多くの家賃収入を得られます。
物件価格 | 利回り3%で運用した場合の家賃収入(年間)※ |
---|---|
1,000万円 | 30万円 |
5,000万円 | 150万円 |
※物件価格×3%
手元に1,000万円の余剰資金があった場合、1,000万円の不動産に投資するよりも、4,000万円のローンを組んで投資したほうが、投資効率が高くなります。ローンを活用して資産を購入できる点は、不動産投資ならではのメリットです。
不労所得を得られる
家賃収入は、自分の労働力に関係なく得られる「不労所得」です。物件の管理には手間がかかりますが、管理会社へ委託できるため忙しい方でも続けられます。入居者がいる限り毎月安定して収入を得られるため、老後の備えとしても人気です。
早い段階で不動産に投資し、規模を大きくしていけば将来的に早期リタイアも視野に入ります。不動産投資は「ある程度まとまった自己資金があるものの、時間がない」「早期退職をして、自由に使える時間を増やしたい」という方にも向いています。
所得税を減らせる可能性も
富裕層が不動産投資を始めると、本業にかかる所得税・住民税の節税効果を期待できます。これは「減価償却費」を利用した税金対策です。減価償却費とは、建物の購入価格を一定期間に分けて経費計上する会計処理です。会計上では「費用」ですが、実際に支出が発生する訳ではありません。
減価償却費を上手に活用すると、不動産所得で赤字が発生します。不動産所得の赤字は給与所得や事業所得と損益通算できるため、本業にかかる所得税・住民税を節税できます。損益通算とは、黒字と赤字を相殺することです。日本では、所得が高い方ほど税金の負担が増えるため、損益通算で本業の所得を圧縮すると税金の負担が軽くなります。
富裕層におすすめな不動産投資の種類
不動産投資の対象にはワンルームマンション、一戸建て、一棟アパートなど複数の種類があり、種類によってメリット・デメリットが異なります。投資効率を高めるために、ご自身に適した物件を選択しましょう。ここでは、富裕層向けの投資対象を3つ紹介します。
新築一棟物件
自己資金に余裕がある富裕層には、新築一棟物件をおすすめします。数億円規模の物件では、ローンを組んで購入するケースが一般的です。融資審査では、物件の収益性だけでなく個人の収入や資産背景も考慮される傾向にあるため、高額融資ほどハードルが高くなります。潤沢な資産を保有する富裕層ならではの投資先といえるでしょう。
一棟物件では複数戸の所有によって、家賃収入が途絶えるリスクを軽減できます。一方、地域の分散ができないため、周辺環境の変化による空室リスクに弱い点に注意が必要です。
【メリット】
・複数戸の所有で空室リスクを軽減できる
・築年数の古い物件よりも、老朽化による修繕コストを削減できる
・初期費用が高額なため、物件の競争率が下がる
【デメリット】
・ワンルームマンションや中古物件よりも、初期費用が高額
・周辺環境の変化による空室リスクがある
中古一棟物件
富裕層には、中古一棟物件もおすすめです。賃貸住宅向けの一棟物件には、マンションやアパートがあります。マンションは駅の近くなど好立地な物件が多く、賃貸需要が下がりにくい傾向です。
また、減価償却費を計上できる期間は「耐用年数」と呼ばれる年数で決まります。減価償却の期間が短いほど、1年間に計上できる減価償却費が高くなる仕組みです。一般的に、中古の木造アパートはマンションよりも耐用年数が短くなるため、短期で大きな節税効果を期待できます。
「中古」といっても築年数はさまざまです。築年数の古い不動産ほど老朽化が進んでいる可能性が高いため、物件選定時はご注意ください。
【メリット】
・マンションは好立地な物件が多い
・減価償却費の節税効果が大きい(特に木造アパート)
・新築一棟物件よりも初期費用を抑えられる
【デメリット】
・管理の手間がかかる
・老朽化リスクが高い
海外不動産
海外不動産投資には、先進国(アメリカ、オーストラリアなど)に投資する方法と新興国(東南アジア諸国)に投資する方法があります。
不動産投資の収入は入居者から支払われる家賃収入であるため、人口が増加傾向の国のほうが将来性を期待できます。日本では人口減少が社会問題化しているため、将来的に入居付けが厳しくなるかもしれません。
リスク分散のために海外不動産へ投資することも選択肢のひとつです。ただし、海外への投資は国内の不動産投資よりもリスクが高くなります。上級者または信頼できる相談相手がいる方向けの投資先といえるでしょう。
【メリット】
・日本以外にリスク分散できる
・国の経済成長や人口増加によって高利回りを期待できる
【デメリット】
・為替リスク
・カントリーリスク(政治不安、紛争など)
・日本の物件よりも情報が少ない
タワーマンションに投資する際のメリット・デメリット
「タワーマンション」は、富裕層に人気の高い不動産のひとつです。充実した設備にデザイン性の高い設計、そのような物件の高層階を所有することは、社会的ステータスの高さの象徴でもあります。また、節税効果が高い点も魅力です。
しかし、昨今は不動産投資家を取り巻く環境が変わりつつあります。ここでは、タワーマンションへ投資するメリット・デメリットについて、最新の動向を踏まえつつ解説しましょう。
メリット
タワーマンションへの投資は、相続税の節税効果が高いことで知られています。相続税の計算上、不動産は時価よりも低く評価される傾向にあり、納税の負担を軽減できるためです。特にタワーマンションの高層階は、時価と相続税評価額・固定資産税評価額の差が大きくなる傾向にあります。相続時に低く評価されれば、高い節税効果を期待できます。
また、不動産投資の物件選定において、賃貸需要の高さが重要です。タワーマンションは好立地で人気の高い物件も多く、資産価値が下がりにくいといえます。
デメリット
タワーマンション投資のデメリットは、維持費が高額になりやすいこと、税制改正による節税効果の縮小リスクがあることです。
マンションの維持費は、規模が大きいほど高額な傾向にあります。例えば、デザイン性が高く複雑な形状の建物は修繕の施工期間が長引き、費用がかさみます。充実した施設がある場合は、その分、メンテナンスも必要です。
また、タワーマンション投資による税金対策は、以前から公平性に欠けるとして問題視されています。2017年の税制改正では固定資産税の取り扱いが見直され、従来よりも高層階への負担が重くなりました。
相続時の評価額についても、今後、見直される可能性があります。物件選定時は、最新の税制改正を踏まえて検討しましょう。
(参考: 『国土交通省 マンション政策の現状と課題』/https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001315032.pdf)
不動産投資で発生するリスク
不動産投資には、さまざまなリスクが潜んでいます。一般的なリスクと概要を以下の表にまとめました。
空室リスク | 入居者が見つからず、家賃収入を得られない |
---|---|
家賃滞納リスク | 入居者が家賃を滞納する |
自然災害リスク | 地震や火災で建物が損壊する |
金利上昇リスク | 金利上昇でローンの返済負担が増加する |
流動性リスク | 金融資産よりも現金化に時間がかかる |
老朽化リスク | 築年数が経つと修繕費が増大する、入居付けが難しくなる |
周辺環境の変化によるリスク | 近くの大学キャンパスや商業施設の閉鎖などにより、賃貸需要が下がる |
ただし、不動産投資のリスクは事前に対策を取ることで、ある程度コントロールできます。例えば、「家賃滞納リスク」には保証会社の利用や、入居審査を厳しくするといった対策があります。不動産投資による大きな失敗を防ぐためには、起こり得るリスクを事前に調査し、対策を取ることが重要です。
富裕層の不動産投資を成功させるポイント
不動産投資の基本は「第三者に部屋を貸して収入を得ること」であり、「入居者」がいて成り立つ投資です。金融資産への投資よりも事業性が強くなります。この点を踏まえて物件を選定することが大切です。ここでは、富裕層が不動産投資で成功するためのポイントを解説します。
個人的な趣向を反映しすぎない
自己資金に余裕がある方の中には、豪華な造りにする、個人的な趣味を反映させるなど「個性を生かしたい」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、不動産投資の目的は人に貸すことです。個性よりも万人受けするかどうかを重視することをおすすめします。投資対象として適切な物件へ投資したほうが、投資効率も上がります。
国土交通省の調査によると、民間賃貸住宅を選択した方が「住まいを決めた理由」の中で上位の項目は以下3つです。
・立地が良かったから
・家賃が適切だったから
・デザイン、広さ、設備などが良かったから
立地が良く、家賃が相場に対して適正など、多くの人が住みたいと思える物件を選定しましょう。
(参考: 『国土交通省 令和3年度 住宅市場動向調査報告書』/https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000173.html)
利回りだけで判断しない
利回りの高い物件が必ずしも「優良物件」とは限りません。利回りの計算や不動産流通の仕組みを考慮すると、むしろハイリスクな物件の可能性があります。
利回りは、物件の収益性を判断するための指標のひとつで、家賃収入÷物件価格×100で計算します。計算上、物件価格が相場に対して割安なほど利回りが高くなる仕組みです。「利回りが高い」「割安」と聞くと「お得」に感じる方もいるでしょう。
しかし、不動産流通の仕組み上、割安・好条件の物件がいつまでも売れ残っているケースは多くありません。不動産は、金融市場のようにすぐに一般公開されるものではなく、売主から相談を受けた不動産会社が自社の顧客や同業者へ、優先的に情報提供するケースがあるためです。
ある程度の資産を保有している富裕層であれば、必要以上に大きなリスクを取る必要はありません。物件選定時は、利回りの高さだけでなくリスクも考慮しましょう。
相談先を見極める
宅建業者であれば、市場で公開されている全国の物件を取り扱い可能です。ただし、富裕層向けに収益物件を販売した実績が豊富な会社は、多くありません。
富裕層が不動産投資を始める場合、不動産だけでなく、富裕層特有の悩みや資産背景を理解した上でアドバイスしてくれるところを探しましょう。不動産会社にこだわらず、資産運用のプロに相談することも選択肢のひとつです。
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不動産投資には多数のメリットがありますが、リスクも潜んでいます。初期費用が高額かつ専門知識も必要なため、プロへの相談がおすすめです。
また、不動産投資は相続対策として有効的な手段ですが、相続人同士の争いの元となるケースがあります。富裕層が不動産投資を始める際は、資産背景や収入、家族構成など総合的な観点からアドバイスしてくれる相談先を探しましょう。
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まとめ
不動産投資は、古くから富裕層に人気の投資手法です。節税、相続対策、レバレッジ効果など、多数のメリットを期待できます。とはいえ、さまざまなリスクも潜んでいるため、物件選定時は慎重な判断が必要です。
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