アメリカで買い物をした際、表示されている価格と支払金額が異なり、戸惑った経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
日本では消費税率が全国一律ですが、アメリカでは州や都市ごとに税率が異なり、また商品や取引内容によっては課税されないケースもあります。
本記事では、税理士の視点から、アメリカの消費税(Sales Tax)の基本的な仕組みについて整理して解説します。旅行時の買い物に関する注意点に加え、アメリカ向けにビジネスを行う場合に把握しておきたい税務上の考え方についても紹介します。
アメリカの消費税制度の基本 ― Sales Tax(売上税)についてアメリカでは、日本の消費税に相当する全国一律の税制度は設けられていません。一般的には、州や自治体がそれぞれ定める Sales Tax(売上税)が、商品やサービスの購入時に課されます。
日本では国が主体となって消費税を一律の税率で徴収していますが、アメリカでは連邦政府レベルでの消費税はなく、州ごと、さらに市や郡などの自治体ごとに税率や課税方法が定められています。そのため、購入する場所や内容によって、適用される税率が異なる場合があります。
州税と地方税の二階建て構造
アメリカでの買い物にかかる税金は、基本的に以下の計算式で成り立っています。
支払う税金 = 州税(State Tax) + 地方税(Local Tax)
たとえば、ある州の税率が4%だとしても、その中のある都市がさらに5%の税金を課している場合、合計で9%の税金を支払う必要があります。
同じ州内であっても、道路を一本挟んで隣の市に行くだけで税率が変わるケースも珍しくありません。ガイドブックで「この州は税金が安い」と書いてあっても、訪れる都市によっては意外と高くなる可能性があるため、注意が必要です。
【州別】アメリカの消費税率ランキングと傾向
税率が0%の州もあれば、合計で10%を超える地域もあります。州によって税負担は大きく変わります。
アメリカ全土の税率を把握するのは大変ですが、高い場所と安い場所の傾向を知っておくだけで、賢い買い物ができます。
消費税0%の州(オレゴン、デラウェア他)
アメリカにはSales Taxが一切かからないな州がいくつか存在します。これをNOMAD(ノマド)州と覚えると便利かもしれません。
- New Hampshire(ニューハンプシャー州)
- Oregon(オレゴン州)
- Montana(モンタナ州)
- Alaska(アラスカ州)※一部自治体で徴収あり
- Delaware(デラウェア州)
例えば、オレゴン州(ポートランドなど)は観光地としても知られており、州の Sales Tax が課されないことから、買い物のしやすさという点で注目されることがあります。
旅行中に高額な商品を購入する予定がある場合には、州ごとの税制の違いを踏まえて、訪問先の一つとして検討してみる方もいらっしゃいます。
税率が高い州と都市(NY、カリフォルニア他)
一方で、日本人がよく訪れる人気観光地は、税率が高い傾向にあります。
- カリフォルニア州(ロサンゼルス、サンフランシスコ)
州税に加え地方税が高く、合計で10%近くになる場所が多いです。 - ニューヨーク州(ニューヨーク市)
合計で約8.875%もの税金がかかります。 - ワシントン州(シアトル)
こちらも合計税率が10%を超える地域があり、全米でもトップクラスの高さです。
これらの地域で買い物をする際は、税金のコストもしっかり計算に入れる必要があります。
食料品や衣類は非課税?州ごとの特例ルール
州や自治体によっては、品目ごとに課税の扱いが異なる点も特徴の一つです。
多くの州では、スーパーで購入する未加工の食料品(野菜、肉、卵など)について、生活必需品として非課税または軽減措置の対象とされることがあります。一方で、レストランでの飲食や、すぐに食べられる総菜などについては、課税対象となる場合が一般的です。
また、ニューヨーク州やペンシルベニア州などでは、一定金額以下の衣類や靴に対して、非課税または税率が軽減される制度が設けられています。そのため、購入金額に応じた税負担の違いを意識する方もいます。
旅行者は免税(タックスリファンド)を受けられるのか
ヨーロッパとは異なり、アメリカでは原則として旅行者への税金払い戻しはありません。
基本的には「払い戻しなし」と考えよう
フランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国では、旅行者が支払ったVAT(付加価値税)を空港で手続きして取り戻すのが一般的です。しかし、アメリカには国としての消費税がないため、国レベルでの還付制度自体が存在しません。
「空港で手続きすれば戻ってくるはず」と期待して買い物をすると、後でがっかりすることになります。基本的にはアメリカでの買い物は払い戻しができない前提で計画を立てましょう。
例外的に還付が可能な州と手続き方法
例外として、テキサス州やルイジアナ州などごく一部の州では、海外旅行者向けの還付制度を独自に設けています。
ただし、以下の条件が厳しく設定されています。
- 指定された加盟店で購入すること
- 一定金額以上(例:税額で$10以上など)の購入であること
- 購入から30日以内に出国すること
- 商品とレシート(原本)を提示すること
手続き場所も空港だけでなく、指定のショッピングモール内のカウンターで行う必要がある場合も多いです。もしこれらの州に行く際は、事前にTax Refundのカウンター場所や条件を公式サイトで確認しておくと良いでしょう。
【ビジネス向け】越境ECや進出企業が知るべき税務リスク
アメリカに支店や拠点がない場合でも、取引内容や販売額などの条件によっては、現地で税務上の対応が求められるケースがあります。そのため、事前に制度の概要を把握しておくことが重要になります。
以下では、アメリカ向けに商品やサービスを提供している個人事業主や事業者の方を対象に、税務上の考え方や注意点について整理して解説します。
物理拠点がなくても課税されるエコノミックネクサス
以前は、「アメリカ国内にオフィスや倉庫などの物理的な拠点(ネクサス)がない場合には、州に対する納税義務は生じない」と考えられることが一般的でした。
しかし、2018年の連邦最高裁判決(サウスダコタ州対ウェイフェア事件)を受けて、Sales Tax の考え方は見直されています。
現在では、物理的な拠点がない場合でも、その州における売上額や取引件数が一定の基準を超えると、Sales Tax の徴収や申告が求められる仕組み(いわゆるエコノミック・ネクサス)を採用している州が多くなっています。
具体的な基準は州ごとに異なりますが、例えば「年間売上が一定額を超える場合」や「取引件数が一定数以上となる場合」に、税務上の対応が必要となるケースがあります。
AmazonやShopify販売での徴収・納税義務
Amazon の FBA を利用している場合でも、税務上の取扱いは販売形態によって異なります。
Amazon などのマーケットプレイスを通じた販売については、多くの州で「マーケットプレイス・ファシリテーター法」が適用され、プラットフォーム側が Sales Tax の徴収や納税を行う仕組みが整えられています。
一方で、自社サイト(Shopify など)での販売や、同法が適用されない取引については、事業者自身が登録や申告、納税を行う必要が生じる場合があります。
こうした対応を行わないまま取引を継続すると、後日、追加の税務対応が求められる可能性があります。そのため、アメリカ向けの売上が増えてきた段階で、国際税務に詳しい専門家に相談し、状況を整理しておくことが一つの考え方となります。
アメリカでの買い物やビジネスを行う際に押さえておきたいポイント
アメリカの消費税(Sales Tax)は、州や自治体ごとに異なる仕組みとなっており、取引の内容や場所によって取扱いが変わります。最後に、本記事で触れた主なポイントを整理します。
(1)アメリカには全国一律の消費税制度はありません
州税と地方税の組み合わせにより税率が決まるため、地域ごとに税負担が異なります。
(2)州によっては Sales Tax が課されない場合があります
オレゴン州やデラウェア州などでは州の Sales Tax がなく、購入場所を検討する際の参考要素の一つとなります。
(3)表示価格と支払額が異なることがあります
多くの場合、表示価格には税金が含まれておらず、会計時に税金が加算されます。
(4)旅行者向けの税金還付制度は限定的です
Sales Tax の還付が認められている州やケースは限られており、一般的には想定しにくい点といえます。
(5)ビジネスにおいては税務上の確認が重要です
アメリカに拠点がない場合でも、取引規模などによっては、Sales Tax に関する対応が必要となることがあります。
アメリカの税制は、日本とは異なる点が多いため、事前に基本的な仕組みを理解しておくことで、判断の参考になる情報を得ることができます。
旅行であれば買い物計画を立てる際の一助となり、ビジネスの場合には、将来的な対応を検討する材料となります。
アメリカ向けのビジネスや越境 EC に関する税務対応について不明点がある場合は、状況整理の一環として、専門家に相談するという選択肢も考えられます。事業内容に応じた対応を検討する際の参考としていただければ幸いです。
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