FBARという言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。「アメリカの税金の話だから自分には関係ない」と考える方もいるかもしれませんが、このFBARは日本に居住する方でも申告義務の対象となる可能性があります。
この記事では、国際税務の専門家がFBARの申告義務から具体的な手続き、申告を忘れていた場合の対処法まで、分かりやすく徹底解説します。
FBARとは?なぜ多くの日本人が対象になるのか
FBARとは、アメリカ国外にある金融口座の合計残高が年間で一度でも1万ドルを超えた場合、その情報をアメリカの財務省に報告する義務のことです。
アメリカ市民や永住権(グリーンカード)保持者である場合は、たとえ日本に住んでいても、日本の銀行や証券会社の口座もすべて報告の対象となります。この義務を知らないままでいると後に重い罰則が科される可能性があるため、注意が必要です。
FBAR(海外口座報告書)の申告義務を徹底解説
このセクションでは、FBARの申告義務があるかどうかを、一緒にチェックしていきましょう。
申告義務があるのは誰?対象者と判定基準
FBARの申告義務は、まず米国人等(米国市民、永住権保持者、税法上の居住者)であることが大前提です。
その上で、日本を含むアメリカ国外に金融口座を保有し、保有するすべての海外金融口座の合計残高が年間で一度でも1万ドルを超えた場合に申告義務が発生します。
この1万ドルという基準は、日本円の普通預金や証券口座といった複数の口座残高を合計して判断するため、多くの方が気付かないうちに該当しているのが実情です。
FBARで申告が必要な「海外金融口座」とは?
海外金融口座と聞くと、スイスの銀行口座などを想像するかもしれませんが、実はもっと身近なものが含まれます。
- 銀行口座: 普通預金、定期預金、当座預金など
- 証券口座: 株式、債券、投資信託などの保有口座
- その他: 投資ファンド、生命保険の現金価値、退職年金口座など
重要なのは、米国の納税義務者である場合は、日本の銀行にある円建ての口座も、すべて海外金融口座として申告の対象になるという点です。
申告の基準となる「合計1万ドル超え」の注意点
FBARの申告義務が発生するかどうかを判断する1万ドルという基準額には、重要な注意点があります。それは、年間を通じて一度でも、保有する全海外口座の合計残高が1万ドルを超えた瞬間に、その年の申告義務が確定するという点です。年末時点で1万ドルを下回っていても関係ありません。
例えば、年の初めの合計残高が8,000ドルでも、給与振込などで一時的に11,000ドルになった後、年末には9,000ドルに減っていたとします。この場合でも、年間で一度1万ドルの基準を超えているため、その年はFBARの申告義務が発生します。
また、日本円などの外貨建て口座は、その時点の為替レートで米ドルに換算して判断しなくてはなりません。
FBARの申告方法と期限:手続きの流れを分かりやすく
FBARは、税金の申告とは少し異なる手続きです。IRS(米国歳入庁)ではなく、FinCEN(米国金融犯罪取締ネットワーク)に直接報告します。
申告はオンラインで!FINCEN Form 114の提出方法
FBARの申告は、FinCEN Form 114という書類を、FinCENのウェブサイトからオンラインで電子提出するのが基本です。具体的な流れは以下の通りです。
ステップ | 作業内容 | ポイント |
---|---|---|
Step 1 | 公式サイトへアクセス | FinCENのBSA E-Filing Systemからオンラインフォームを開始します。 |
Step 2 | 必要情報の入力 | 保有する全海外口座の情報を入力します。<br>※複数の口座がある場合も、この1つのフォームにまとめて申告します。 |
Step 3 | 電子署名と提出 | 内容確認後、オンラインで提出。申告書の控えを必ずダウンロードして保管しましょう。 |
申告期限はいつまで?延長はできる?
FBARの申告期限は、暦年の翌年4月15日です。ただし、自動的に10月15日まで延長され、延長手続きは不要です。
FBAR申告を怠るとどうなる?知っておくべき罰則とペナルティ
「申告しなくてもバレないだろう」と考えるのは非常に危険です。アメリカはFATCA(ファトカ)という法律により、日本の金融機関からも口座情報を取得しています。つまり、あなたの口座情報は筒抜けになっているのです。
また、申告義務を怠った場合、故意か否かによって罰則の重さが大きく変わります。
悪意がなくてもペナルティの対象に!その理由とは
悪意がなかったとしても、申告漏れが発覚した場合、1万ドル(約150万円)までの民事罰が科される可能性があります。
なぜなら、FBARの申告義務は、知っておくべき義務とみなされ、知らなかったでは済まされないのです。意図的な申告漏れ(悪意)と過失による申告漏れの違い
申告漏れの罰則は、その行為が意図的だったかどうか(悪意の有無)によって、重さが全く異なります。当局は、口座の動きや本人の証言などから、これを厳しく判断します。
区分 | 定義 | 罰則(ペナルティ) |
---|---|---|
過失 | 申告義務を知らなかった、忘れていた、手続きを間違えたなど、意図的ではないケース | 最大1万ドル(+インフレ調整額)※2025年時点の調整額は$16,536 |
悪意 | 申告義務があることを知りながら、意図的に申告しなかったケース | 10万ドル(+インフレ調整額)または口座残高の50%のいずれか高い方※さらに刑事罰の可能性もあり |
【税理士が回答】FBARに関するよくある質問と落とし穴
ここからは、実際に私たちがお客様からよく受けるご質問と、実務で目にする落とし穴についてお答えします。
日本国内の銀行にある「ドル建て口座」は対象ですか?
はい、対象です。口座の通貨が何であるかに関わらず、アメリカ国外の金融機関に保有している口座はすべてFBARの対象です。日本円、ユーロ、ポンドなど、どの通貨の口座でも申告義務が生じます。
FBARを過去に申告し忘れていました。どうすればいいですか?
申告漏れに気づいても、決して放置しないでください。自ら自主的に申告を行うことで、罰則が大幅に軽減される、あるいは免除される可能性があります。主に以下の2つの救済手続きが用意されています。
手続きの名称 | 主な対象者 | 概要 |
---|---|---|
Delinquent FBAR Submission Procedures(延滞FBAR提出手続き) | FBARの申告のみを忘れていたが、所得の申告漏れはない方 | 過去のFBARのみを提出する、比較的簡易な手続き |
Streamlined Filing Compliance Procedures(簡易的コンプライアンス遵守手続き) | FBARの申告と、関連する所得の申告の両方を忘れていた方 | 過去数年分の税務申告とFBARをまとめて修正する手続き |
ただし、どちらの手続きを選択すべきか、また具体的な手続き方法については、ご自身の状況によって異なります。専門的な判断が必要になりますので、国際税務に詳しい税理士への相談を強くお勧めします。
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そう感じられた方は、私たち税理士法人ネイチャーにぜひご相談ください。
専門家への相談がおすすめな理由
FBAR申告は、米国の確定申告と密接に関わる場合もあり、専門的な知識が必要です。特に、申告漏れが発覚した場合の対応は、専門家でなければ正しい判断が難しいのが現状です。専門家に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 正しい手続きと安心の獲得: 複雑な手続きを代行し、正確な申告を実現します。
- 手間と時間の削減: 面倒な書類作成や計算から解放され、本業に集中できます。
- 罰則リスクの回避: 申告漏れによる高額な罰金リスクを最小限に抑えます。
税理士法人ネイチャーが選ばれる理由とサポート体制
私たちは、数多くのFBAR申告や、過去の申告漏れに関するご相談を解決に導いてきました。
当社の強み
FBARだけでなく、米国の確定申告、FATCA、相続税など、国際税務全般の専門知識を持つ税理士が在籍しています。
お客様の個別具体的な状況に合わせた、最適な解決策をご提案します。過去の申告漏れについても、最善の解決策を一緒に考えます。
FBAR申告だけでなく、日本の確定申告や相続・資産承継まで、トータルでサポート可能です。
初回無料相談: まずは状況を詳しくお聞かせください。
詳しくは当社のサービスページをご確認ください。
まとめ
FBARは、日本に住む米国市民やグリーンカード保持者にとって、非常に重要な申告義務です。1万ドルという低い基準額に達しただけで申告義務が発生し、怠ると厳しい罰則が科される可能性があります。
しかし、正しく申告すれば何も恐れることはありません。
「申告が必要かどうかわからない」「手続きが複雑で不安」という方は、一人で悩まずに、ぜひ一度私たちのような専門家にご相談ください。
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