今期の決算、予想以上に利益が出そうで「税金で資金が消えるのが怖い」と頭を抱えていませんか。
一生懸命稼いだ利益の約30%(実効税率)が法人税等として出ていく事実は、経営者にとって大きな痛みでしょう。しかし、「税金を払いたくない」という一心で、無駄なパソコンを買ったり、不要な保険に入ったりしていれば、会社は確実に弱体化します。
本当の節税とは税金をゼロにすることではありません。会社と個人の手元に残るトータルの現金を最大化することです。
本記事では、多くの富裕層クライアントの資産を守ってきた税理士の視点から、キャッシュアウト(支出)を伴わない節税を最優先とし、リスクとリターンが見合う手法だけを厳選して解説します。
読み終える頃には、今すぐ自社が取り組むべき対策の優先順位が明確になり、安心して決算を迎えられる準備が整うはずです。
法人の節税における「絶対ルール」:キャッシュを減らしてはいけない
多くの経営者が陥る最大のミス。まずはここから修正しましょう。節税には明確に良い節税と悪い節税が存在します。
節税貧乏の罠:「100万円使って30万円得する」は損である
「利益が100万円出そうだから、100万円の備品を買って利益を消そう」。この行動は、財務視点では間違いと言わざるを得ません。
日本の法人実効税率は約30〜34%です。100万円の利益に対して、本来払うべき税金は約30万円。つまり、何もしなければ手元に70万円の現金が残ります。
一方で、節税のために100万円を経費で使った場合、税金は0円になりますが、手元の現金も0円です(買った物が資産として価値を維持するなら別ですが、消耗品ならただの浪費です)。
「税金は減ったが、資金繰りが苦しい」という本末転倒な状態、いわゆる節税貧乏はこうして生まれます。会社を存続させる血液は利益ではなく現金であることを忘れてはいけません。
「課税の繰り延べ」と「永久節税」の違いを理解する
節税テクニックの多く(倒産防止共済やオペレーティングリースなど)は、税金を免除されるわけではなく、今年の支払いを将来に先送りしているだけです。これを課税の繰り延べと呼びます。
将来、解約して現金が戻ってきたタイミングで大きな利益が計上され、そこで課税されます。出口(解約時)に赤字や退職金などのぶつける経費を用意できなければ、単なる税金の後払いに終わるでしょう。
対して、役員社宅や旅費手当などは、支払った瞬間に経費になり、かつ将来課税されることもありません。これを「永久節税」と呼びます。まずはこの永久節税をやり切ることが最優先です。
【優先度S】お金を使わずに手取りを増やす「王道の節税」
キャッシュアウトを伴わない、あるいは会社から個人へ資金移転しながら経費にできる最強の手法を紹介します。
役員報酬の最適化と社会保険料削減のバランス
役員報酬は、期首から3ヶ月以内に決定しなければ変更できません。ここで重要な視点は、法人税だけでなく「個人の所得税・住民税・社会保険料」を含めたトータルコストです。
役員報酬を高くしすぎると、個人の税負担と社会保険料が激増します。あえて役員報酬を抑え、会社に利益を残して法人税(中小企業なら年800万円以下の利益部分は税率が低い)を払った方が、トータルでお金が残るケースも多々あります。シミュレーションを怠らないでください。
旅費規定(出張手当)の導入で非課税所得を作る
出張が多い社長であれば、今すぐ導入すべき制度です。出張旅費規定を作成し、日当(例:1日2万円など)を定めます。
- 法人のメリット: 支給した日当は全額経費(損金)になります。
- 個人のメリット: 日当は給与ではないため、所得税・住民税がかかりません。
つまり、無税で会社から個人へ現金を移転できる数少ない方法です。ただし、社会通念上妥当な金額設定(社長なら日当2〜3万円程度が一般的)が必要です。
未払金・未払費用の計上で今期の利益を圧縮する
決算日までにサービスの提供を受けているまたは支払義務が確定しているものであれば、実際の支払いが翌期であっても、今期の経費に計上できます。
- 従業員の給与(締め日以降の分)
- 社会保険料の会社負担分
- 水道光熱費、通信費
- クレジットカード利用分(未引き落とし分)
これらを漏れなく計上するだけで、数十万円単位の利益圧縮が可能です。現金を一切使わずにできる基本中の基本です。
【優先度A】生活費を経費に変える「資産防衛策」
個人の財布から支払っていた生活費の一部を、法人の経費に付け替える手法です。実質的な手取り収入アップに直結します。
役員社宅制度:家賃の50%以上を経費にする最強スキーム
個人名義で賃貸マンションに住んでいる場合、法人契約に切り替えるだけで大きな節税効果が生まれます。
会社が大家と契約して家賃を払い、役員から一定の家賃負担金を受け取ります。
税法の計算式(固定資産税評価額等に基づく)により算出しますが、一般的に家賃の50〜80%程度を会社の経費にできるケースが多いです。(※役員負担額は物件により大きく異なるため、必ず税理士による試算が必要です。一律10%負担でOKといった自己判断は危険です)
ただし、床面積が広い物件(マンションで99㎡超など)の場合は小規模住宅の扱いから外れ、経費算入割合が50%程度に下がることもあります。それでも、個人で借りるよりもメリットは絶大です。
社用車の活用:4年落ち中古車が選ばれる本当の理由
車が必要なビジネスであれば、新車ではなく4年落ちの中古車(ベンツやアルファードなど)が推奨されます。
通常、新車は6年かけて減価償却(経費化)しますが、4年落ちの中古車は定率法を使えば、最短1年で償却可能です。
ただし、減価償却は月割り計算です。期首(1ヶ月目)に購入すれば全額経費になりますが、決算月に購入しても1ヶ月分しか経費になりません。決算直前の駆け込み節税としては効果が薄い点に注意が必要です。
計画的に導入できれば、将来利益が出ない年に売却して益出しをする(売却益で赤字を埋める)など、利益調整の弁として非常に優秀です。
【優先度B】投資で利益を圧縮する「決算直前の対策」
決算まで残り1〜2ヶ月。どうしても利益を消したい場合に検討すべき項目です。
30万円未満の資産購入(少額減価償却資産)の活用法
青色申告をしている中小企業であれば、1個あたり30万円未満の備品(パソコン、応接セット、ソフトウェアなど)は、年間合計300万円まで、購入した期に全額即時償却(経費化)できます。
不要なものを買うのはNGですが、来期購入予定だったPCの入れ替えなどを前倒しするには最適な制度です。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)の正しい出口戦略
月額最高20万円(年240万円)、累計800万円まで積み立てられ、全額が経費になる国の制度です。40ヶ月以上納付すれば、解約時に元本が100%戻ってきます。
しかし、2024年10月の法改正により、解約後に再加入する場合、2年間は経費計上ができなくなりました。
これまでは「加入→解約→即再加入」を繰り返す節税ができましたが、今は本当に必要な時に解約するという長期的な視点が求められます。出口(解約時)に退職金を支払うタイミングを合わせるなど、計画性が必須です。
税理士が警告する「やってはいけない」NG節税と税務調査リスク
「知り合いの社長は大丈夫だった」という言葉ほど危険なものはありません。税務署は見ています。
無理な飲食費・交際費の計上はここを見られる
家族旅行の食事代、プライベートのゴルフ代などを交際費に入れていませんか。
税務調査では「誰と」「何の目的で」行ったかが厳しく追及されます。カレンダーの予定と領収書の日付、同席者の名前が一致しない場合、否認されるだけでなく、悪質とみなされれば重加算税の対象になります。
実態のないコンサルティングフィーへの送金
利益を圧縮するために、知人の会社やペーパーカンパニーに経営指導料などの名目で送金する行為。これは脱税です。
具体的な成果物(レポートなど)や、業務実態の履歴(メールや議事録)がなければ、確実に否認されます。
節税保険は本当に得か?解約時の課税リスク
かつて流行した全額損金保険は、現在の税制ではほぼ封じ込められています。現在販売されている保険の多くは、支払時は資産計上(経費にならない)の割合が高く、節税効果は限定的です。
実質返戻率が高いという営業トークに惑わされず、資金が長期間ロックされる流動性リスクを考慮してください。
まとめ:強い会社を作るための節税ロードマップ
節税は魔法ではありません。正しい知識に基づいた財務戦略です。
- まず意識を変える: 現金を減らす節税は極力避ける。
- 優先度Sを実行: 未払計上、旅費規定など、現金を残す策を完遂する。
- 優先度Aを検討: 社宅や社用車など、生活関連費を経費化する。
- 優先度Bで調整: どうしても利益が出る場合のみ、将来投資(少額資産など)を行う。
目先の税金に惑わされず、10年、20年と続く強い会社を作るために、賢い選択をしてください。もし、自社の状況に合わせた最適なシミュレーションや、旅費規定の作成方法に不安がある場合は、節税に強い専門家に一度相談することをお勧めします。
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