経営が軌道に乗り、事業ごとに会社を分ける分社化や子会社の設立を検討される経営者は少なくありません。しかし、グループ会社を持つと法人税の計算ルールが一変することをご存知でしょうか。会社を分ければ節税になるという漠然としたイメージだけで進めると、思わぬ税務調査の指摘や、税負担の増加を招く恐れがあります。
本記事では、100%親子会社に強制適用されるグループ法人税制から、任意で選べるグループ通算制度まで、実務経験豊富な税理士の視点で分かりやすく解説します。この記事を読むことで、グループ経営における税負担の正解が見え、会社の大切なキャッシュを守るための具体的な一歩が踏み出せるはずです。
グループ会社を持つと適用される2つの重要な税制
グループ経営における法人税を理解するには、まずグループ法人税制とグループ通算制度の2つを区別しなければなりません。多くの経営者がこの2つを混同していますが、性質は全く異なります。
前者のグループ法人税制は、資本関係が100%のグループであれば、届出の有無に関わらず自動的に適用されるルールです。これに対し、後者のグループ通算制度は、税務署に申請することでグループ全体の損益を合算できる選択制の仕組みを指します。
まずは自社がどの立ち位置にいるのかを把握することが、税務戦略のスタート地点となります。
強制適用されるグループ法人税制とは
100%の資本関係がある場合、グループ法人税制からは逃れられません。この制度は、グループを一つの経済体とみなし、内部での資産移転や利益調整による税金逃れを防ぐために作られました。
例えば、親会社から子会社へ帳簿価格と大きく離れた金額で資産を売却しても、その損益はグループ外へ出るまで繰り延べられます。意図しない利益操作と判定されないよう、この強制ルールの存在を常に意識しておく必要があります。
選択して活用するグループ通算制度の仕組み
グループ通算制度は、グループ内の赤字と黒字を相殺できる強力な節税ツールです。以前の連結納税制度が簡素化され、2022年から導入されたこの制度は、各法人が個別に申告しつつ、損益通算のみを行う形式を採っています。赤字の子会社がある場合、その損失を親会社の黒字とぶつけることで、グループ全体の法人税を即座に圧縮可能です。
導入にはメリットだけでなく事務負担の増加という側面もあるため、シミュレーションが欠かせません。
グループ経営で得られる3つの税務メリット
グループ会社を適切に管理すれば、単一法人では得られない大きな節税効果を享受できます。主なメリットは、利益の分散による税率の最適化、グループ内での赤字活用、そして受取配当金の非課税処理です。これらを組み合わせることで、グループ全体の内部留保を最大化できます。
具体的なメリットを整理した以下の表をご確認ください。
【グループ経営の主な税務メリット一覧】
| メリット項目 | 内容の概要 | 期待できる効果 |
| 損益通算 | グループ内の黒字と赤字を相殺 | 法人税額の直接的な減少 |
| 受取配当の 全額益金不算入 | 子会社から親会社への配当を非課税に | 資金移動時の税コストゼロ |
| 資産移転の 損益繰り延べ | 100%グループ間での資産売買損益を保留 | 移転時の課税を将来へ先送り |
損益通算によるキャッシュフローの改善
赤字会社を抱えている場合、グループ通算制度の利用価値は非常に高まります。例えば、新規事業を立ち上げたばかりの子会社が大きな赤字を出していても、本業が黒字であればその赤字をぶつけて納税額を減らせます。
単一法人のままであれば、赤字は将来の黒字まで持ち越す(繰越欠損金)しかありませんが、グループ通算なら今すぐの節税が可能です。手元の現金を残し、次の投資に回せるスピード感は大きな武器になるでしょう。
受取配当金の益金不算入による資金効率化
子会社に貯まった利益を親会社へ集める際、100%グループなら税金はかかりません。通常、他社からの配当には法人税が課されますが、完全支配関係にあるグループ間では、配当金は全額、益金不算入(利益としてカウントしない)となります。
このルールがあるおかげで、グループ内の資金移動で税金が目減りすることはありません。ホールディングス体制を構築し、効率的に資金を再配分する経営者にとって必須の知識です。
見落としがちなグループ会社経営のリスクと注意点
メリットばかりに目を向けていると、予期せぬ増税リスクに足元をすくわれます。特に注意すべきは中小企業の軽減税率の適用制限と、目に見えない寄附金認定のリスクです。これらは税務調査で非常に狙われやすいポイントと言えます。専門的な判断が分かれる部分ですので、慎重な検討が必要です。
軽減税率の適用制限という落とし穴
法人税には所得800万円まで15%という低い税率が適用される軽減税率がありますが、グループ経営ではこれが制限されます。原則として、資本金が5億円以上の法人(大法人)などが親会社である場合、その子会社には軽減税率は適用されません(※たとえ子会社の資本金が1億円以下であっても対象外となります)。
グループ通算制度を選択した場合には、年800万円の軽減枠をグループ全体で配分することになるなど、適用には複雑なルールが存在します。会社を増やせば増やすほど15%の枠が増えるという考えは、現在の税制では通用しません。
グループ間取引における寄附金認定のリスク
親会社と子会社の間で、相場よりも著しく低い(あるいは高い)価格で取引を行うと寄附金とみなされる恐れがあります。例えば、親会社が子会社に無利息で資金を貸し付けた場合、本来受け取るべき利息(認定利息)が親会社の利益として計上され、課税されるケースです。
さらに、子会社側でも受贈益が発生しますが、グループ法人税制下ではこれらが相殺されず、結果として納税額だけが増える事態になりかねません。身内だから安くしてあげようという温情が、税務上は命取りになるのです。
税理士が推奨するグループ税務戦略の進め方
健全なグループ経営を維持するには、場当たり的な対応ではなく長期的な税務シミュレーションが必要です。まずは現状の資本関係を整理し、グループ通算制度を導入すべきかどうかの判定を行ってください。また、国際税務が絡む場合はさらに難易度が上がるため、早期の専門家への相談を強くお勧めします。
定期的な税務シミュレーションの実施
グループ全体の利益構成は毎年変化するため、一度決めた方針がずっと最適であるとは限りません。子会社が黒字化したタイミングでグループ通算を離脱すべきか、あるいは合併して一つの法人にすべきか、出口戦略を含めた検討が重要です。毎年の決算前にグループ全体の着地予想を立て、最もキャッシュが残る手法を選択してください。
まとめ:グループ会社の法人税を最適化して強い経営基盤を
グループ会社を持つことは、攻めの経営において非常に有効な手段です。しかし、法人税のルールを正しく理解していなければ、本来払う必要のない税金を納めることになり、経営を圧迫してしまいます。強制適用されるグループ法人税制の枠組みを理解しつつ、任意適用のグループ通算制度を賢く使い分けることが、資産防衛の鍵となります。
「自社の場合はどの制度を使うのが一番得なのか?」と少しでも不安に感じられたら、ぜひ一度プロの視点を活用してください。複雑な税制を味方につけ、さらなる事業拡大と資産の最大化を目指しましょう。
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