決算のタイミングが近づいてくると、法人税がどれくらいになるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
正確な金額を計算できず、モヤモヤされる方もいるでしょう。
そこでこの記事では、法人税がいくらになるのか、1,000万円と2,000万円の場合をそれぞれシミュレーションします。
また、法人税の計算方法や節税対策についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
法人税の計算方法は3ステップ
法人税の計算方法は、以下の3ステップにわかれています。
- 利益から所得を算出する
- 所得に対して法人税の実効税率をかけて均等割を足す
- 予定納付の金額分を差し引く
そもそも法人税の計算方法がわからない方は、ぜひ参考にしてみてください。
利益から所得を算出する
まずは、利益から所得を算出します。
- 利益:会計上の儲け。売上から経費を引いた金額
- 所得:法人税法上の儲け。利益に税務上の調整を加えた金額
所得に関しては、経費と認められないものを控除したり、収入と判断されるものを加えたりします。
利益から所得を算出する際は、決算書の税引前当期純利益を参照しましょう。
ただし、概ねの目安を計算するなら、利益と所得を同じだと考える方法もあります。
所得に対して法人税の実効税率をかけて均等割を足す
次に、所得に対して法人税の実効税率をかけて均等割を足してください。
法人で得た事業所得には、以下のようなさまざまな税金が発生します。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人事業税など
これらはそれぞれ税率が異なるため、一つずつ求めるのは手間がかかります。
そこで、これらの税金をまとめて計算を簡単にするために、所得に実効税率をかけて均等割を足すことで、だいたいの金額を求めます。
法人税等の金額=所得×実効税率+均等割
ただし、実効税率や均等割については自治体や所得によって変わってくるので、求められた金額はあくまでも目安だと認識しておきましょう。
なお、正確に計算をするのであれば、税理士への相談がおすすめです。
予定納付の金額分を差し引く
最後に、予定納付の金額分を差し引きます。これは、前期の法人税が一定額を超えて予定納税が発生する法人が対象です。
仮に、すでに予定納税が終わっているときは、先ほど計算した法人税等の金額から予定納税分を差し引けばおおよその納付額がわかるでしょう。
ちなみに、確定した税金額が予定納税額よりも小さいなら、差額が還付されることも覚えておいてください。
利益1,000万円の法人税は約269万円
以降では、利益1,000万円の場合の税金をざっくりとシミュレーションしてみました。
今回シミュレーションする税金は、以下の通りです。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人県民税
- 法人事業税
- 法人市民税
さらに、以下のような前提条件とします。
- 資本金:1,000万円以下
- 法人形態:株式会社
- 従業員数:50人以下
- 住所:京都市
それぞれの税金について詳しく見ていきましょう。
利益1,000万円の法人税は約166万円
法人税は、企業の活動によって得られた所得に対して課される税金のことです。利益1,000万円の場合は、約166万円です。
国税庁の「No.5759 法人税の税率」によれば、資本金1億円以下の法人は利益800万円以下の部分に15%、800万円を超える部分に23.2%の法人税が課されます。
つまり、利益1,000万円の場合の法人税は以下のように算出可能です。
- 800万円×15%=120万円
- 200万円×23.2%=46万4,000円
- 120万円+46万4,000円=166万4,000円
利益1,000万円の地方法人税は約17万円
地方法人税は、地方財源の偏りをなくして、納税額の地域格差を調整するために課される税金のことです。利益1,000万円の場合は、約17万円となります。
地方法人税は、以下の計算式で求められます。
地方法人税=法人税額×税率(10.3%)
今回のケースでいえば「166万4,000円×10.3%=171,392円」が地方法人税です。
利益1,000万円の法人県民税は約3万円
法人県民税は、県内に事務所または事業所がある法人などに課せられる税金です。利益1,000万円の場合は、約3万円となります。
法人県民税は、以下の計算式で求められます。
- 法人県民税=法人税割+均等割
- 法人税割=法人税額×税率
今回のケースなら「166万4,000円×1%+20,000円=36,640円」が法人県民税です。
参照:法人事業税|京都府
利益1,000万円の法人事業税は約67万円
法人事業税は、文字通り法人が行っている事業に対して課される税金です。利益1,000万円の場合は、約67万円となります。
法人事業税は、計算式は以下の通りです。
法人事業税=事業税所得割+特別法人事業税
今回のケースでは事業税所得割について、400万円までの部分に3.5%、さらに400万円の部分に5.3%、残りの200万円の部分に7%の税金が課されます。
つまり、事業課税所得割は「400万円×3.5%+400万円×5.3%+200万円×7%=492,000円」です。
また、特別法人事業税は「事業税所得割×税率」で求められるので「492,000円×37%=182,040円」となります。
そして、492,000円と182,040円を足した合計674,040円が法人事業税です。
参照:法人事業税|京都府
利益1,000万円の法人市民税は約14万円
法人市民税は、市内に事務所あるいは事業所がある法人などに課せられる税金です。利益1,000万円の場合は、約14万円となります。
法人市民税は、以下の計算式で求められます。
法人市民税=法人税額×税率+均等割
今回のケースでいえば「166万4,000円×6%+50,000円=149,840円」が法人市民税です。
参照:法人市民税|京都市
利益2,000万円の法人税は約637万円
利益1,000万円の場合と同じ条件で、利益2,000万円の場合もシミュレーションしていきます。
各税金の詳細を見ていきましょう。
利益2,000万円の法人税は約398万円
利益2,000万円の場合法人税は約398万円で、具体的な計算方法は以下の通りです。
- 800万円×15%=120万円
- 1,200万円×23.2%=278万4,000円
- 120万円+278万4,000円=398万4,000円
利益1,000万円のときと異なるのは、税率23.2%が課される金額が大きくなっている点です。そのため、法人税額は2倍以上になりました。
利益2,000万円の地方法人税は約41万円
利益2,000万円の場合、地方法人税は約41万円です。具体的な計算方法は以下の通りです。
398万4,000円×10.3%=410,352円
利益1,000万円のとき同様、法人税額×税率で算出しています。
利益2,000万円の法人県民税は約5万円
利益2,000万円の場合、地方県民税は約5万円です。具体的な計算方法は以下の通りです。
398万4,000円×1%+20,000円=59,840円
利益1,000万円のとき同様、法人税割+均等割で算出しています。
参照:法人事業税|京都府
利益2,000万円の法人事業税は約163万円
利益2,000万円の場合、法人事業税は約163万円です。まず、事業税所得割の計算を見てみましょう。
- 400万円×3.5%=14万円
- 400万円×5.3%=212,000円
- 1,200万円×7%=84万円
- 14万円+21万2,000円+84万円=1,192,000円
次に、特別法人事業税の計算は以下の通りです。
119万2,000円×37%=441,040円
事業税所得割と特別法人事業税を足した合計163万3,040円が法人事業税です。
参照:法人事業税|京都府
利益2,000万円の法人市民税は約28万円
利益2,000万円の場合、法人市民税は約28万円です。具体的な計算方法は以下の通りです。
398万4,000円×6%+50,000円=289,040円
利益1,000万円のとき同様、法人税額に税率をかけたものに均等割を足して算出しています。
参照:法人市民税|京都市
消費税は法人税と算出方法が異なるので注意
法人の消費税は、取引に対して課税される税金です。国税の消費税と地方勢の地方消費税を総称して消費税と呼ばれています。
そして、消費税は法人税と算出方法が異なるため、注意が必要です。具体的には、以下のような計算式で求められます。
消費税=課税売上高(税抜)×税率-課税仕入高(税抜)×税率
買い手から受け取った消費税から経費などで支払った消費税額分を引いた金額を納めます。
混同しないように注意してください。
利益2,000万の法人に効果的な節税対策
利益2,000万円の法人に効果的な節税対策は、以下の7つです。
- 少額減価償却資産の特例を活用する
- 不要な在庫を処分する
- 設備投資や修繕を前倒しで行う
- オペレーティングリースを取り入れる
- 決算賞与を支給する
- 賃上げ促進税制を活用する
- 企業版ふるさと納税を利用する
「税の負担をなるべく抑えたい」「自社に効果的な節税対策を知りたい」という場合は、ぜひ参考にしてみてください。
少額減価償却資産の特例を活用する
効果的な節税対策として、少額減価償却資産の特例を活用する方法があります。この制度を活用することにより、減価償却資産を購入した際に全額を損金算入できます。
ただし、取得価額が30万円未満のものが対象という制約もあるため、注意が必要です。
また、特例を活用する際は、以下の条件を満たしていなければなりません。
- 従業員500人以下
- 資本金1億円以下
- 青色申告の提出
ソフトウェアや商標権といった無形の固定資産も対象ですので、見落とさないように気をつけましょう。
不要な在庫を処分する
節税効果を得られる方法として、不要な在庫を処分する方法があります。
需要が減ったものや古くなったものなど、価値が下がった商品を処分することで在庫評価損を計上でき、課税所得を減少させられます。
しかし、証明書類の添付など所定の手続きをしないまま処分すると、税務署から指摘を受ける可能性があるため、注意が必要です。
必要に応じて、税務の専門家から助言を受けると安心できるでしょう。
設備投資や修繕を前倒しで行う
設備投資や修繕を前倒しで行うのも効果的です。
例えば、機械や車などの設備投資を行うと、減価償却費を経費として計上できるので、税負担の軽減を期待できます。
さらに、設備投資を行えば補助金の申請ができる可能性があります。具体的には、ものづくり補助金やIT導入補助金といった制度が挙げられます。
ただし、補助金制度はそれぞれ条件が異なるので、事前に適用条件などをチェックしておくことをおすすめします。
オペレーティングリースを取り入れる
オペレーティングリースとは、企業に必要な設備あるいは機器といったものを自社で用意するのではなく、リース会社から借りて利用する手法のことです。
そして、オペレーティングリースを取り入れることでそのリース料を経費計上でき、結果法人税の負担軽減を実現できます。
また、リース契約が終われば最新の設備に切り替えることも可能ですので、技術面の進歩にも柔軟に対応できるでしょう。
決算賞与を支給する
決算が終わった時点で、臨時で支給するボーナスである決算賞与の支給もよいでしょう。
支給方法に関する条件は、以下の通りです。
- あらかじめ支給額を従業員別に確定して通知する
- 実際の支給は決算の翌日から1か月以内にする
- 支給される金額は未払金として経費計上する
決算賞与は節税効果を得ながら、従業員のモチベーションアップにもつながるので検討したい手法の一つです。
賃上げ促進税制を活用する
賃上げ促進税制は、貴重な人材という資産に対する投資を行ったことを評価し、税金面で優遇される制度です。
具体的には、従業員の給与を前年度から一定以上増やすなどすると、税額控除を受けられます。
また、単に税金面でのメリットを得られるだけではありません。従業員のモチベーションアップ、生産性の向上にもつながるため、賃上げによるコストの増加を相殺できる可能性もあります。
企業版ふるさと納税を利用する
企業版ふるさと納税も有効な節税対策の一つです。企業版ふるさと納税では、地方自治体に寄付をすることで、法人税の控除が受けられます。
さらに、企業版ふるさと納税を利用することで、地域活性化や社会貢献につながり、法人のイメージを良い方向に高められる可能性があります。
節税だけではなく、法人のブランディングにも利用できるのが、企業版ふるさと納税の魅力です。
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利益2,000万円となると、法人税の負担が非常に大きくなります。そのため、節税対策は考えたほうがよいでしょう。
しかし、節税対策の種類は多く、どれが自社に適しているか判断するのは容易ではないです。さらにいえば、適切な対策を行っていなければ税務署から指摘されかねません。
そこで、専門家への相談がとても大切です。
私たちネイチャーグループは、税務と資産運用に特化した日本最大級のコンサルティングファームであり、実績も十分です。実際、年間2,000件、累計で1万件の相談を受けています。
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まとめ:利益2,000万円の法人なら適切な節税対策を
法人税は、大きく3つのステップで求められます。おおよその金額をシミュレーションしておけば、気持ちにゆとりができるでしょう。
また、計算だけで導き出すだけでなく、利益が2,000万円を超える法人なら適切な節税対策も併せて考えておくべきです。
どの節税対策に取り組めばいいのかわからない場合は、本記事で紹介した手法を参考にする、もしくは専門家への相談も検討してみてください。
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