利益が出ている企業の経営者にとって、税金対策は避けて通れない課題です。特に大きな設備投資を予定している場合、税負担をいかにコントロールするかで、その後の資金繰りが大きく変わります。
本記事では、税金の支払いを先送りにし、手元の現金を厚くする「特別償却」の仕組みを徹底解説。この記事を読むことで、特別償却の本質的なメリットや、税額控除との違い、そして自社に最適な選択をするための基準が明確になります。設備投資を単なる出費で終わらせず、会社の成長を加速させる戦略的投資に変えるための知識を手に入れましょう。
特別償却とは何か?利益を圧縮し現金を残す仕組みを解説
特別償却とは、特定の設備を購入した際、通常の減価償却費に加えて、取得価額の一定割合を初年度にまとめて経費(損金)にできる制度です。国が特定の政策を推進するために設けている制度であり、企業が設備投資をしやすくする目的があります。通常、数年かけて分割して計上する経費を、初年度に前倒しで計上できるため、その分の利益を大きく圧縮可能です。
例えば、1,000万円の機械を買い、30%の特別償却が認められる場合、通常の償却費とは別に300万円を初年度の経費に乗せられます。経費が増えれば、その分法人税等の支払額が減り、手元に残る現金が増えるという流れです。利益が大きく出ている年度に特別償却を利用することで、納税額を抑え、設備投資による資金流出を補う効果が期待できます。
特別償却と普通償却の違いを正しく把握する
特別償却と普通償却の最大の違いは、経費を計上するタイミングにあります。普通償却は、設備の耐用年数に応じて、毎年決まったルールで均等に、あるいは一定の割合で経費化していく方法です。対して特別償却は、初年度に経費を集中させる手法を指します。
注意が必要な点は、特別償却を使っても、最終的に経費にできる総額は変わらないという事実です。以下の表で、特別償却と普通償却の違いを整理しました。
| 項目 | 普通償却(通常のルール) | 特別償却(優遇制度) |
| 経費計上のタイミング | 耐用年数に応じて毎期計上 | 初年度に多額の計上が可能 |
| 初年度の節税効果 | 標準的 | 非常に高い |
| 翌期以降の経費額 | 安定している | 少なくなる |
| トータルの経費額 | 取得価額まで | 取得価額まで(不変) |
| 主な目的 | 適切な期間損益計算 | 投資の早期回収・資金繰り支援 |
特別償却は、税金の免除ではなく、あくまで課税の繰り延べ(先送り)であるという性質を理解しておくことが重要です。
経営者が知っておくべき特別償却のメリットとリスク
特別償却の最大のメリットは、投資資金を早期に回収できる点にあります。設備投資は多額の現金支出を伴います。特別償却によって初年度の税負担を大幅に軽減できれば、支払うはずだった税金を次の事業資金や借入金の返済に充てることが可能です。キャッシュフローの改善という点では、非常に強力な武器となります。
しかし、リスクも存在します。初年度に経費を多く計上することで2年目以降の経費が少なくなるのです。将来の利益が横ばい、あるいは増加する場合、2年目以降は逆に税負担が増える結果となります。目先の節税だけに目を奪われ、数年後の納税資金が不足するという事態は避けなければなりません。長期的な収支シミュレーションを行った上での適用が、賢明な判断と言えます。
中小企業投資促進税制:活用頻度の高い特別償却の代表例
多くの中小企業が利用しているのが「中小企業投資促進税制」です。この制度は、一定の新品の機械・装置や、ソフトウエアなどを国が指定する事業に導入するために取得した際に、取得価額の30%の特別償却を選択できるものです。適用されるのは資本金1億円以下などの中小企業者等に限られます。
実務において、この制度を活用するケースは非常に多いです。例えば最新のシステムを導入した際、この制度を適用することで導入初年度の税負担を軽くし、システム導入による一時的な資金負担を和らげる効果があります。要件を満たしているか、対象の設備がリストに含まれているかなど、事前の確認が不可欠です。
特別償却と税額控除はどちらを選ぶべきか?判断基準を伝授
設備投資の税制優遇には、特別償却の他に税額控除という選択肢が用意されているケースが多々あります。例えば中小企業投資促進税制では、資本金3,000万円以下の法人や個人事業主については取得価額の7%の税額控除が認められています。
税額控除は、算出された税金そのものから、取得価額の一定割合(例えば7%など)を直接差し引く制度です。どちらを選ぶべきかは、会社の経営状況によって異なります。なお、税額控除にはその年の法人税額の20%までという上限があるため、利益(税額)が少ない場合は控除しきれない点に注意が必要です。
【特別償却を選ぶべきケース】
今期のキャッシュフローを最優先したい場合です。一時的な利益が突出しており、今すぐ納税額を抑えて現金を確保したい時に有効です。
【税額控除を選ぶべきケース】
長期的な節税額を最大化したい場合です。税額控除は経費の前倒しではなく税金そのもののマイナスであるため、期間を通じたトータルの納税額は税額控除の方が少なくなります。
資金繰りに余裕があるならば、トータルで得をする税額控除を選ぶのが王道です。一方で、急成長中で投資資金が常に必要なフェーズであれば、特別償却による現金の確保が優先される場面もあります。
富裕層・経営者が陥りやすい節税の罠と具体的な回避策
節税になるからという理由だけで無理な設備投資を行うことは、本末転倒な結果を招きます。よくあるトラブルは、節税のために特別償却を適用したものの、翌期以降に利益がさらに増加し、経費がなくなった分、予想以上の高額な納税に苦しむというケースです。また、不要な設備を節税目的で購入し、手元の現金を枯渇させてしまう経営者も少なくありません。
節税を完結した目的ではなく、次なる一手を打つための有効な手段として活用しましょう。もし特別償却ではなく税額控除を選択していたら、その分支払うトータルの法人税は少なかったはずで、長い目で見た時にどちらがプラスになるかは非常に重要な観点です。
また、特別償却の適用により手元に残った現金を、預金口座へ眠らせておくのは大きな機会損失です。納税を先送りにした猶予期間を事業拡大の好機と捉え、確保した資金を設備への再投資や金融資産の運用に充てる戦略が重要と言えます。捻出したキャッシュが新たな利益を創出し、増えた利益をさらに強固に守り抜く。こうした循環の形成こそ、本質的な資産防衛に直結します。
具体的な事例として、ある製造業のクライアント様は、工場の機械更新時に特別償却を選択。確保した数百万円の現金を広告宣伝費に投入した結果、翌期の売上が大幅に向上し、懸念されていた2年目以降の税負担増も余裕を持ってカバーすることができました。
まとめ:特別償却を戦略的に活用し、会社を守り成長させる
特別償却は、設備投資を行う企業にとって、キャッシュフローを劇的に改善できる可能性を秘めた制度です。
- 初年度に経費を大きく計上し、納税額を抑えられる
- 税金の免除ではなく繰り延べである性質を理解する
- キャッシュフロー重視なら特別償却、トータルの節税なら税額控除を選ぶ
- 数年先を見据えた長期的な資金計画が不可欠
制度の適用には細かい要件があり、税制改正によって内容が変更されることもあります。また、貴社の現在の財務状況や将来の展望に照らして、本当に特別償却が最善の選択かどうかを見極めるには、専門的な知見による判断が欠かせません。
もし現状、固定資産の取得を検討されているようであれば、まずは活用できる税制が無いか、税制を活用するとして特別償却と税額控除とどちらがいいか、顧問税理士様と相談されることをお勧めします。一方で本来必要のない固定資産を取得することは経営を圧迫します。そのため、無理に決算対策をするのは避けて頂いた方がよいと考えております。
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