決算月が近づき、想定以上の利益に頭を抱えていませんか。「税金としてキャッシュが出ていくくらいなら、会社に必要なものを買って経費にしたい」と考えるのは、経営者として当然の判断です。
しかし、やみくもな買い物は資金繰りを悪化させるだけです。重要なのは、今すぐ全額経費になり、将来の収益や資産価値につながるものを選ぶこと。
本記事では、数多くの富裕層・経営者の税務コンサルティングを行ってきた税理士が、即時償却できる具体的なアイテムと、活用すべき税制特例を厳選して解説します。賢い支出で、会社のお金と未来を守りましょう。
※なお通常は即時償却とは税制上の優遇措置を活用して固定資産を100%経費算入をする場合を指しますが、本記事ではそのほかにも当期に経費計上が可能なものも含めて広い概念で「即時償却」が可能なものとしてご紹介します。
まず押さえるべき即時償却3つの基本ライン
経費化できる金額の基準を正しく理解することで、無駄のない買い物が可能になります。まずは金額ごとの基本ルールを整理しましょう。
10万円未満:全額経費(消耗品費)
もっとも判断が簡単なラインです。取得価額が10万円未満のものは、勘定科目を消耗品費として、購入した期に全額を経費計上可能です。
【対象】
文房具、安価なオフィスチェア、周辺機器など
【ポイント】
1単位当たりで判定するため、例えば椅子と机の応接セットは一式での価格で判定します。
10万円以上20万円未満:一括償却資産
20万円未満の資産は一括償却資産として処理が可能です。これは即時ではありませんが、3年間で均等に経費化できる制度です。固定資産税(償却資産税)の対象外となるメリットがあります。
【メリット】
申告の手間が少なく、償却資産税がかかりません。
【注意点】
3年かけて経費にするため、今期の利益圧縮効果は3分の1にとどまります。
30万円未満:少額減価償却資産の特例(本命)
中小企業にとっての即時償却の主役となる制度です。青色申告をしている中小企業であれば、30万円未満の資産を年間合計300万円まで、購入した期に一括で経費計上できます。また令和8年度税制改正では「30万円未満➡40万円未満」へと1単位あたりの判定で使われる価格が引き上げられました。改正時期は公表されていませんが、本税制の延長が令和8年4月1日に予定されておりますので、それ以降が対象になるのではないかと言われています。
【金額別・経費化ルールの比較表】
| 取得価額 | 制度名称 | 経費化のタイミング | 償却資産税 | 年間限度額 |
| 10万円未満 | 消耗品費 | 即時(全額) | 対象外 | なし |
| 10万〜20万円未満 | 一括償却資産 | 3年均等 | 対象外 | なし |
| 10万〜30万円未満 | 少額減価償却資産 | 即時(全額) | 対象 | 300万円 |
決算直前の節税では、30万円未満の商品をうまく組み合わせ、限度額300万円枠を有効活用するのが定石です。
【金額別】即時償却できるもの・おすすめリスト
具体的にどのようなものが対象になるのか、実務でよく選ばれるアイテムをピックアップしました。業務に必要であることが大前提となります。
30万円未満で買える高機能アイテム(少額減価償却資産)
30万円の枠があれば、かなりハイスペックな機材も射程圏内に入ります。従業員の生産性を上げるものに投資をするのがもっとも効果的です。
- 高性能パソコン
Macや高スペックPCなど。動画編集やデザイン業務を行わない部署でも、処理速度の向上は残業代削減につながります。 - エルゴノミクスチェア
アーロンチェアなどの高級オフィスチェア。健康経営の文脈でも説明がつきます。 - ウェブ会議用設備
防音ブースや高画質カメラ、大型モニターなど。 - 空気清浄機・業務用掃除機
オフィスの環境改善設備として。
【ポイントはセット価格の判定】
デスクトップパソコン本体とディスプレイをセットで購入した場合、合計額で判定されます。別々の時期、別々の伝票で購入し、それぞれ単独でも機能するものであれば、個別に判定できるケースがあります。
10万円未満で数を揃えるアイテム(消耗品費)
従業員全員分を買い替えるなど、数をまとめて購入する場合に適しています。
- PC周辺機器: モニター、キーボード、マウス。
- 業務用ソフト・ライセンス: 年払いのサブスクリプション費用など(短期前払費用の特例を活用)。
- 防災用品: ヘルメット、非常食、蓄電池など。
- ユニフォーム・作業着: 社名入りのものなど。
中古資産の活用(4年落ちの中古車など)
即時ではありませんが、極めて短い期間で償却できるものとして中古資産は見逃せません。
特に4年落ち以上の中古車(普通乗用車)は、法定耐用年数を経過しているため、定率法を使えば購入初年度に全額(または大部分)を経費計上できる可能性があります。
- 4年落ち以上の社用車
営業車として活用できる高級車など。 - メリット
車両は市場価値が残るため、将来売却して現金化しやすい(資産の保全)。 - 注意点
期首に購入すれば全額落ちますが、期末購入の場合は月割り計算になります。決算月ギリギリの購入では効果が薄い点に注意しましょう。
数百万~数千万円規模を一発償却!中小企業経営強化税制
30万円や300万円の枠では足りないという高収益企業におすすめなのが、国の認定を受けた設備投資を行うことで適用できる「中小企業経営強化税制」です。
要件を満たせば、数千万円の機械装置であっても即時償却(100%経費化)が可能になります。
対象となる主な設備
単なる買い替えではなく生産性が向上するなどの要件が必要です。
- 機械装置
1台160万円以上(製造ラインの機械など)。 - 工具・器具備品
1台30万円以上(測定工具、検査機器など)。 - ソフトウェア
70万円以上(顧客管理システム、AI搭載ツールなど)。
活用の流れと注意点
工業会からの証明書取得や、経済産業局への計画申請など、手続きは複雑です。しかし、初年度に多額の投資金額を即時償却できる効果は絶大といえます。
- メーカー等から証明書を入手
- 経営力向上計画を作成し、国に申請・認定を受ける
- 設備を取得し、事業に使用する
- 税務申告で即時償却を選択
【アドバイス】
計画認定には時間がかかります(通常は2ヶ月ほどかかるとお考え下さい)。決算まであと1週間という状況では間に合いません。また決算対策を行いながら、安定収益を確保するご提案について、様々な事例を当社は保有しております。来期以降の大きな利益予測がある場合は、早めに専門家にご相談いただき、準備を進めるのが賢明です。
即時償却を行う際の注意点とリスク
節税は魅力的ですが、やり方を間違えると税務調査で否認されたり、経営を圧迫したりするリスクがあります。
キャッシュフローの悪化
重要な視点は、税金を払うのが嫌だからと不要なものを買い、手元の現金がなくなっては本末転倒になることです。税金は利益の約30%(実効税率)ですが、経費を使うとキャッシュは100%出ていきます。
投資した資金が、将来それ以上の利益を生むかという投資対効果(ROI)の視点を忘れないようにしましょう。
事業関連性の証明
「社長の個人的な趣味ではないか?」と疑われやすいものは要注意です。
- 高額な絵画・美術品
1点100万円未満であれば減価償却資産になりますが、即時償却(30万円未満の特例)を適用するには、金額要件を満たした上で、オフィスや応接室に飾るなど、事業との関連性が必須です。相当に事業と関連していないと経費計上は難しいとお考えいただいた方が無難です。 - 車両
スポーツカーなど、趣味性の高い車両は疑われやすいため注意が必要です。
適用期限の確認
少額減価償却資産の特例や中小企業経営強化税制は、恒久的な法律ではなく期限付きの措置法です。2年ごとの税制改正で延長されることが多いですが、いつ廃止・縮小されるか分かりません。常に最新の税制改正情報を確認する必要があります。
まとめ:賢い即時償却で強い財務を作る
即時償却できるものは、単なる事務用品から、戦略的な大型設備まで多岐にわたります。
【本記事の要点】
- 30万円未満
少額減価償却資産の特例で年間300万円まで即時経費化。 - 生産性向上
高スペックPCや快適なオフィス家具など、社員への投資がおすすめ。 - 大型投資
中小企業経営強化税制を使えば、数千万円単位の即時償却も可能。 - 基本原則
キャッシュフローを重視し、事業の成長につながる投資を行うこと。
もしこのような制度を活用した決算対策手法について、今期の対策手法をお知りになりたい場合は、資産運用と税務の専門家である税理士法人ネイチャーに一度ご相談ください。
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