経営者にとって長年育ててきた会社の株式は、大切な価値ある資産でしょう。しかしいざ譲渡を検討し始めると「非上場株式は時価が分からない」「多額の税金で手元にほとんど残らないのではないか」という不安を抱える方は少なくありません。
数多くの事業承継や資産管理をサポートしてきた税理士の経験から申し上げると、非上場株式の譲渡は状況により、大きな損失を発生させる可能性があります。 正しい知識をもって適切な準備を行いましょう。納める税金をコントロールできると、次世代へ繋ぐ資産を最大化できるのです。
本記事では、非上場株式の譲渡にかかる税金の基本から、計算を複雑にする株式評価の仕組み、リスク回避のポイントを分かりやすく整理しました。読み終えるころには、現状の不安が解消され、取るべき具体的なアクションが見えてきます。
非上場株式の譲渡にかかる税金と税率の仕組み
非上場株式を譲渡する際の税金は、誰が売り、誰が買うかという組み合わせによって大きく変わります。所得税か法人税か、配当とみなされるかによって、負担する税率に数倍の差が出るためです。具体的なパターンは以下の3つに整理されます。
- 個人が第三者(個人・法人)へ譲渡する場合
- 個人が自分の会社(発行会社)へ譲渡する場合
- 法人が譲渡する場合
1. 個人が第三者(個人・法人)へ譲渡する場合
最も一般的なケースで、売却益に対して「譲渡所得税」がかかります。他の所得(お給料など)とは分けて計算するルールのため、一律で20.315%(所得税・住民税など)の税率となります。
※ただしR8年税制改正により、R9年以降の株式譲渡においては所得が約3億円を超える場合、税負担が重くなる傾向にございます。
2. 個人が自分の会社(発行会社)へ譲渡する場合
会社に株を買い取ってもらう「自己株式の取得」にあたります。単なる売却ではなく配当を受け取ったとみなされる部分が生じます。他の所得と合算して税率が決まるため、最大で約55%という非常に高い税率が課される可能性があります。
3. 法人が譲渡する場合
会社が保有する株を売却した利益は、本業の利益とあわせて「法人税」の対象になります。会社の規模や利益の総額にもよりますが、約30%〜35%の実効税率(実際に負担する税率)が適用されるのが一般的です。
非上場株式の譲渡における税金パターン一覧
| 譲渡の組み合わせ | 発生する主な税金 | 税率の目安 |
| 個人から第三者(個人・法人)へ | 譲渡所得税(分離課税) | 20.315%(一定) |
| 個人から自社(発行会社)へ | 配当所得(総合課税) | 最大 約55%(累進) |
| 法人から譲渡 | 法人税 | 約30%〜35%(実効) |
売却先が自分の会社になるだけで税率が跳ね上がるリスクがあります。手残りを最大化するためには、事前にどのパターンに該当するかを慎重に確認しましょう。
非上場株式の譲渡で発生する税金の計算方法と取得費の重要性
個人から第三者へ売却する場合で、税金の対象となるのは売却代金の全額ではありません。売却代金から株式を手に入れるためにかかった費用などを差し引いた、利益(譲渡益)に対して課税されます。基本的な計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額(売値) - (取得費 + 譲渡費用)
重要なのが取得費の扱いです。取得費とは株式を購入した代金や手数料を指します。しかし創業から長い年月が経過している場合、当時の契約書や領収書が残っていないケースも少なくありません。取得費が証明できない場合は、売却価額の5%を取得費として計算する「概算取得費」を適用することになります。
概算取得費は実際の取得費よりも低くなることもあり、結果として税金が非常に高くなってしまいかねません。過去の資料を徹底的に探し出し、専門家のアドバイスを受けながら取得費を算定することが、手残りを増やす第一歩です。また逆に実際の取得費が概算取得費(5%)より低い場合は、概算取得費により申告することも認められます。
非上場株式の譲渡税金を左右する時価の評価方法を解説
非上場株式の譲渡において、複雑でトラブルになりやすいのが親族間等の間での売買における時価の算定です。親族間等の関係で譲渡をする場合、税法上の規定に従った評価額で売買をしないと、贈与があったものとみなされてしまい、贈与税が課税される可能性があります。評価方法は株式を取得する人によって大きく2つに分かれます。
| 評価方法 | 株式を取得する人 | 内容の概要 |
| 原則的評価方式 (所得税法等の規定により一定の調整) |
同族株主 (経営者やその親族など) |
会社の純資産や配当、利益をベースに計算する方法。評価額が高くなりやすい。 |
| 特例的評価方式 (配当還元方式) |
少数株主 (経営に影響力を持たない人) |
年間の配当金をもとに計算する方法。評価額は大幅に低くなる。 |
経営者が親族や後継者に譲渡する場合は、原則として評価額が高い「原則的評価方式」が適用されます。評価額を無視して根拠のない低い価格で売買を行うと、実際の時価との差額が贈与とみなされ、受け取った側に重い贈与税が課される可能性があります。「みなし贈与」と呼び、税務調査で厳しくチェックされるポイントの一つです。
例えば株価対策で従業員に「配当還元方式」による安い評価額で株式を譲ったとします。その後、従業員が退職するので株式を買い戻そうとしたとします。その場合は取得者が同族株主になりますので「原則的評価方式」により計算をした、非常に高額な価格で買い取らないといけなくなるリスクがあります。
非上場株式の譲渡時の税金で最も警戒すべきみなし贈与のリスク
親族間での事業承継や役員への譲渡を行う際「お世話になったから安く譲りたい」と考えるのは自然な感情です。しかし税務の世界では善意が仇となることがあります。親族などの個人間で時価(税法上の評価額)よりも著しく低い価格で譲渡が行われた場合、税務署は差額分はあげたのと同じと判断します。
例えば時価1億円の株式を1,000万円で譲渡した場合、買い手側は差額の9,000万円に対して贈与税が課されるのです。(※法人が絡む取引の場合は、所得税や法人税の対象となり、さらに複雑な課税リスクが生じます)贈与税の税率は所得税よりも高いため、想定外のキャッシュアウトを強いられることになります。
みなし贈与のリスクを避けるためには、事前に税法に基づく正確な株価算定を行い、税務署に説明可能な根拠を用意しておくことが不可欠です。譲渡前に会社の資産状況を整理し、一時的に株価を下げるような対策を講じることも有効な戦略となります。高度な専門知識と、長期的な視点でのプランニングが必要です。
非上場株式の譲渡で税金を抑えて手残りを最大化する節税の工夫
最終的な手残りを大きくできるかは事前の準備次第です。富裕層の資産管理に精通した立場から、検討すべきポイントをいくつか紹介します。
1. 役員退職金の活用
株式を譲渡する前に役員退職金を支給することで、会社の純資産を減らし、株価(評価額)を下げる効果が期待できます。退職金自体も税制面で優遇されているため、非常に効率的な資金移転となります。
2. 配当政策の見直し
類似業種比準方式という評価法を用いている場合、配当金額を抑えることで株価を抑制できる場合があります。
3. 資産の組み換え
不動産などの保有資産の状況によっても株価は変動します。譲渡の数年前から計画的に資産構成を見直すことで、最適なタイミングでの譲渡が可能です。
非上場株式の譲渡は単発のイベントではなく、人生を通じた資産設計の一部として捉えるべきです。
非上場株式の譲渡税金と国際税務における出国税の注意点
近年、海外移住を検討される経営者も増えていますが、非上場株式を保有したまま出国する際には細心の注意が必要です。
1億円以上の有価証券等(株式や投資信託など)を持つ個人が日本を離れる際、「実際には売却していなくても、出国時に株式を売却したものとみなして課税する」という「国外転出時課税(出国税)」の制度が存在します。
含み益に対して課税されるため、手元に売却代金(現金)がない状態で多額の納税義務が生じるという、非常に厳しいルールです。一定のケースに当てはまれば納税を猶予する規定も活用できますが、手続きを忘れてしまうと多額の納税を求められる可能性があります。海外への進出や移住を視野に入れている場合は、出国のかなり前から税務シミュレーションを行っておかなければなりません。
非上場株式の譲渡税金対策において専門家選びが成否を分ける理由
非上場株式の評価には絶対の正解がなく、依頼する税理士の知見によって納税額や税務リスクが変わります。
相続や事業承継に不慣れな税理士だと、市場価格がない株式の値を決める際、利用可能な評価減の特例を見落とす可能性があるのです。本来払う必要のない税金を背負うリスクが生じます。
譲渡の成功には計算だけでなく、税務署の視点から「なぜこの価格なのか」という論理を構築できる税理士の存在が不可欠です。親族間での安すぎる譲渡は税務署からみなし贈与と判定され、多額の追徴課税を招くケースも少なくありません。
事前のシミュレーションを徹底し、将来のリスクまで見越したアドバイスを受けることが、大切な資産を守る最短ルートとなります。
税金のご相談は税理士法人ネイチャーへお任せください
非上場株式の譲渡における税金対策はタイミングが成否を分けます。事前の準備なしに手続きを進めると、想定外の課税を招く恐れがあるためです。弊社では精緻な株価算定に基づき、お客様の手残りを最大化するプランをご提案します。
また株価算定は顧問税理士様が行い、当社にて結果的に株価が引き下がる、本業を守るためも積極投資手法など、対策提案のみをお伝えさせていただくことも可能です。
税務署の指摘を未然に防ぎ、スムーズな資産承継を実現するために、まずは一度現状をお聞かせください。プロの視点であなたの理想とする出口戦略を全力でバックアップいたします。
まとめ:非上場株式の譲渡税金を最適化し理想の出口戦略を
非上場株式の譲渡における税金について、重要なポイントをまとめました。
- 税率は一律20.315%だが、計算の鍵は取得費と時価評価にある。
- みなし贈与のリスクを避けるため、税法に則った正確な株価算定が必須。
- 退職金の活用や資産組み換えなど、事前の準備で手残りを最大化できる。
- 国外転出時課税など、国外出国時のリスク管理も欠かせない。
株式譲渡は経営者にとって一生に一度の大きな節目です。大切な局面で知識不足による損失や、税務調査への怯えを抱える必要はありません。
現状で少しでも「自分の会社の株価はいくらだろう?」「どのような方法が一番手残りが増えるのか?」と疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度税理士法人ネイチャーへご相談ください。
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