決算前には、固定資産台帳に記録されている設備が現在も稼働しているか確認しておきたいところです。すでに廃棄したものや長期間使用していないものが台帳に残っている場合があります。
固定資産除却損を損金算入するには、帳簿を修正するだけでなく、実際に廃棄した事実や有姿除却の要件を確認しなければなりません。
この記事では、固定資産除却損の要件から計算、仕訳、必要資料、決算前の手順まで解説します。売却と廃棄による資金への影響も比較し、固定資産を見直す際の判断材料を整理しましょう。
固定資産除却損とは?
事業で使用していた固定資産を廃棄すると、帳簿に残っている金額を損失として処理する場合があります。この損失が固定資産除却損です。
損失額を求める際の基礎になるのが帳簿価額です。取得価額1,000万円、減価償却累計額700万円なら、帳簿価額は300万円となります。廃材などに価値がある場合は、その金額も考慮して除却損を計算しましょう。
また、現物を残したまま処理する「有姿除却」という取扱いもあります。一定の要件を満たす場合に限られるため、単に使用していないだけの資産とは区別が必要です。固定資産除却損の損金算入では、実際の廃棄や使用状況など、処理の根拠を確認することが重要です。
| 現物の状態 | 代金 | 主な会計処理 | 計上する時期 | |
| 除却 | 事業での使用を終える | なし | 固定資産除却損 | 除却した事業年度 |
| 廃棄 | 解体・撤去する | なし(費用が生じる場合あり) | 固定資産除却損と処分費用 | 廃棄した事業年度 |
| 売却 | 買い手へ引き渡す | あり | 固定資産売却損または売却益 | 売却した事業年度 |
| 減損 | 保有を続ける | なし | 減損損失 | 減損を認識した事業年度 |
| 使用停止 | 保有を続ける | なし | 原則として資産のまま | 原則として計上しない |
会計上の減損損失は、税務上そのまま損金算入されるものではありません。有姿除却についても、使用廃止後の利用可能性などから要件を満たすか判断します。
固定資産除却損の対象となる固定資産
対象になるのは、基本的には固定資産台帳に載っている法人が所有する償却資産です。建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品が代表例になります。ソフトウェアなどの無形固定資産も対象です。
一方、土地は非減価償却資産であるため、物理的に滅失・廃棄される性質のものではなく、固定資産除却損の対象には含まれません(売却時に譲渡損益として認識されます)。また、商品や原材料の廃棄は「棚卸資産廃棄損」として計上するため、固定資産の除却とは区分して処理する必要があります。リース資産や少額の資産は、契約内容や取得時の会計・税務処理によって扱いが変わります。
固定資産除却損の損金算入の要件
固定資産除却損を損金算入できるかどうかは、除却等の事実に基づいて判断します。実際の廃棄、有姿除却、ソフトウェアの3つに分けて確認しましょう。
- 実際の廃棄は事業年度内に完了する
- 有姿除却は再使用の可能性で判定する
- ソフトウェアは利用廃止を明確にする
実際の廃棄は事業年度内に完了する
機械や車両などを解体、廃棄、撤去した場合は、その事実が生じた事業年度で処理します。基準になるのは処分を決めた日ではなく、原則として実際に廃棄した日です。そのため、決算日をまたぐ工事や引き取りには注意が必要です。
廃棄証明書やマニフェスト(産業廃棄物管理票)などは、廃棄の事実や時期を確認する資料になります。
有姿除却は再使用の可能性で判定する
現物が残っていても、一定の場合は有姿除却を検討できます。使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使用する可能性がないと認められる資産が対象です。特定製品専用の金型などで、生産中止により将来使用される可能性がほとんどないものも該当します。
この場合の金額は、帳簿価額から処分見込価額を差し引いて求めます。一時的な休止、予備設備、転用予定のある資産は、有姿除却に該当するか慎重な判定が必要です。
ソフトウェアは利用廃止を明確にする
自社利用のソフトウェアは、対象業務の廃止やシステム移行などにより、今後利用しないことが明らかな場合に除却できます。ハードウェアやOSの変更により、従来のソフトウェアを利用しなくなった場合も含まれます。
販売用の原本は、新製品の登場やバージョンアップなどにより、今後販売しないことが社内稟議書や販売流通業者への通知文書などで明らかな場合が対象です。利用頻度が下がっただけでは、利用廃止を示す事実として十分とはいえません。
固定資産除却損の決算前の手順
固定資産の確認は、実務上の目安として決算日の2〜3か月前に始めると余裕があります。次の順番で進めると、判断の抜けを防げます。
- 固定資産台帳と現物の一覧を照合する
- 現場で稼働状況と設置場所を確認する
- 売却できる資産は査定額を取得する
- 売却、廃棄、有姿除却、継続保有を区分する
- 実際に廃棄する資産は事業年度内に処分を完了させる
- 証明資料を資産番号ごとに保存する
実際に廃棄する資産は、社内で処分を決めただけでは除却したことになりません。たとえば3月決算の会社が3月中に撤去の稟議を通しても、実際の撤去が4月になれば、原則として除却損は翌期の扱いになります。
一方、有姿除却は現物を廃棄しなくても、一定の要件を満たせば認められる場合があります。廃棄業者の作業日程や有姿除却の要件は、決算前に確認しておきましょう。
決算前の節税対策はこちらの記事で解説しています。
固定資産除却損の計算方法
固定資産除却損は、除却直前の帳簿価額を基に計算します。区分によって、差し引く金額が異なります。
| 計算式 | 差し引くもの | |
| 建物等の取壊し | 取壊し直前の帳簿価額 - 廃材等の見積額 | 廃材等の見積額 |
| 有姿除却 | 帳簿価額 - 処分見込価額 | 処分できる見込みの金額 |
| ソフトウェア | 帳簿価額 - 処分見込価額 | 処分見込価額がある場合のみ |
例えば、取得価額1,000万円、減価償却累計額700万円の機械(帳簿価額300万円)を廃棄し、スクラップ等の廃材見積額が30万円ある場合、差し引いた270万円が固定資産除却損となります。
このように、スクラップ等に売却可能な価値がある場合には、帳簿価額の全額を損失とするのではなく、処分見込価額を控除して除却損を算定しなければなりません。
固定資産除却損の仕訳方法
上記の機械(取得価額1,000万円、減価償却累計額700万円、帳簿価額300万円)を例に、代表的な仕訳を示します。
| ケース | 借方 | 貸方 | ||
| 通常の除却 (間接法) | 減価償却累計額 | 7,000,000円 | 機械装置 | 10,000,000円 |
| 固定資産除却損 | 3,000,000円 | |||
| 処分費用が発生する場合 | 固定資産除却損 | 200,000円 | 現金預金 | 200,000円 |
| 廃材に価値がある場合 | 減価償却累計額 | 7,000,000円 | 機械装置 | 10,000,000円 |
| 貯蔵品 | 300,000円 | |||
| 固定資産除却損 | 2,700,000円 | |||
| 直接法を採用している場合 | 固定資産除却損 | 3,000,000円 | 機械装置 | 3,000,000円 |
廃材に売却できる価値がある場合は、貯蔵品として資産計上する方法があります。
除却日までの減価償却費を計上する場合は、先に減価償却費を反映し、その後の帳簿価額を基に固定資産除却損を計上します。
固定資産除却損の資産別の注意点
資産の種類によって、確認する事実と残すべき資料が変わります。個別性の高い建物と一括償却資産は、続けて解説します。
| 資産 | 確認する点 | 主な資料の例 |
| 機械装置 | 稼働停止日撤去の完了日 | 撤去見積書マニフェスト写真 |
| 車両運搬具 | 使用終了日処分状況 | 登録事項等証明書買取査定書 |
| 工具器具備品 | 廃棄日数量管理番号 | 廃棄証明書台帳の明細 |
| 建物附属設備 | 工事範囲更新部分との区分 | 工事内訳書図面写真 |
建物の取壊しは取得目的で判断する
古家付きの土地を取得した際、当初から建物を取り壊して更地利用する意図が明らかな場合、税務上の取り扱いが大きく異なります。法人税基本通達7-3-6に基づき、取得後おおむね1年以内に解体工事に着手したようなケースでは、建物の未償却残高および解体・取壊し費用の全額が「土地の取得価額」に算入され、当期の損金(除却損)としては認められません。
一方、取得時に建物を利用する目的があった場合は、取得後の事情も含めて個別に判断する必要があります。
一括償却資産は残額を個別計上できない
取得価額10万円以上20万円未満の資産は、一定の要件を満たせば、まとめて3年間で損金算入する方法を選べます。一括償却資産は、途中で廃棄しても、その資産だけの残額を除却損として一時に損金算入できません。
原則として、選択した方法に従って3年間の損金算入を続けます。パソコンの入れ替えなどで注意したいポイントです。
固定資産除却損の資金への影響
除却損の金額と会社に残る現金は一致しません。売却代金と処分費用まで含めて比べることが大切です。
- 売却可能な資産は査定額を確認する
- 処分費用を含めて資金残高を比べる
売却可能な資産は査定額を確認する
廃棄する前に、中古市場や買取業者の査定額を確認しましょう。売却した場合は、売却代金と帳簿価額の差額から売却益または売却損を計算します。
帳簿価額300万円、査定額50万円、処分費用20万円の機械で比べます。実効税率を34%と仮定した単純な概算では、廃棄する場合、除却損300万円と処分費用20万円による税負担への影響額は約109万円です。支出20万円を考慮すると、資金面の効果は約89万円となります。
売却する場合、売却損250万円による税負担への影響額は約85万円です。さらに売却代金50万円が入るため、資金面の効果は約135万円となります。この例では、税負担への影響額は廃棄のほうが大きい一方、売却代金まで含めると売却のほうが資金面で有利です。
処分費用を含めて資金残高を比べる
撤去費、運搬費、解体費などの支出も判断材料に入れましょう。除却損を計上しても、支出が大きければ現預金は減ります。
実効税率や実際の税負担への影響は、法人の規模や所在地、所得状況などによって異なるので注意が必要です。繰越欠損金がある場合などは、損金が増えても当期の納税額が減らないことがあります。
固定資産の整理にあたっては、単に当期の損金算入による法人税等の軽減額だけに着目するのではなく、解体・運搬等の処分コスト、売却代金の入金見込み、さらには翌期以降の設備更新資金の確保まで見据えた、総合的なキャッシュフローの視点から意思決定を行うことが重要です。
固定資産除却損の証明に必要な資料
固定資産除却損の根拠として保存する資料は、処理の区分によって異なります。除却の事実や時期を確認できる資料をそろえておきましょう。
| 区分 | 保存する資料の例 |
| 実際の廃棄 | 廃棄証明書、マニフェスト、請求書、撤去前後の写真 |
| 有姿除却 | 社内稟議書、稼働停止記録、現物写真、処分見込価額の根拠 |
| ソフトウェア | システム移行記録、利用停止の通知、稟議書、契約解約書類 |
資料は、固定資産台帳の資産番号と結びつけて保存すると確認しやすくなります。資産名、管理番号、設置場所、取得価額、帳簿価額、処分日、処分業者などを照合します。固定資産台帳、現物の状況、仕訳、証憑を相互に確認できる状態にしておきましょう。
固定資産除却損に関するよくある質問
判断に迷いやすい3つの質問にお答えします。
- 帳簿価額が1円でも除却が必要ですか?
- 一時的に使用を停止した固定資産も有姿除却の対象になりますか?
- 固定資産台帳から削除するだけで固定資産除却損を計上できますか?
帳簿価額が1円でも除却が必要ですか?
税務上、減価償却資産は原則として1円まで償却できます。現在も使用している場合は、残存簿価として1円が残ります。廃棄した場合や使用を廃止した場合は、資産の状態に応じて処理します。損失額がわずかでも、固定資産台帳と実際の保有状況を合わせることが大切です。
一時的に使用を停止した固定資産も有姿除却の対象になりますか?
一時的に使用していないだけでは、原則として有姿除却の要件を満たしません。使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使用する可能性がないかを判断します。再稼働や転用の予定がある設備は、有姿除却の対象にならないのが基本です。
固定資産台帳から削除するだけで固定資産除却損を計上できますか?
固定資産台帳から削除するだけでは、税務上の除却損として損金算入できません。実際の廃棄や有姿除却の要件を満たす使用廃止などの事実が必要です。除却の事実や時期を確認できる資料も保存しておくことが重要です。
決算対策の相談なら税理士法人ネイチャー
固定資産除却損の判断には、台帳と現物の照合、処分日、当期の利益見込み、資金状況の確認が欠かせません。売却と廃棄のどちらが会社に多く資金を残せるかは、資産ごとに異なります。
決算対策で固定資産除却損を使おうとしても、うまく要件を充足しないなどのケースが考えられます。また、売却できるものをあえて廃棄したり、決算前に廃棄費用の相見積もりを取る時間がなく、結果的に高い費用を払って除却損を計上するようでは本末転倒ともいえます。
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まとめ:固定資産除却損は要件を確認して決算へ反映しよう
固定資産除却損は、実際の廃棄や有姿除却などの要件を満たす場合に損金算入できます。大切なのは、帳簿上の処理だけでなく、資産の使用状況や処分の事実を確認することです。処分日、使用状況、処分見込価額、除却の事実を確認できる資料を早めに確認しましょう。
あわせて売却代金と処分費用を含め、会社に残る資金で比較する視点も欠かせません。
決算対策は決算日が近いほど検討できる時間は限られます。もし固定資産除却損を計上せず、他の決算対策を選択肢に加えられたい場合は、税理士法人ネイチャーの無料相談をご利用ください。
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