相続税の外国税額控除とは?計算方法・必要書類・税額未確定時の申告方法

海外の不動産や口座を相続し、現地から税金の案内を受け取った方もいるでしょう。日本でも相続税の課税対象になると知り、不安を感じていませんか。同じ財産に日本と外国の両方で課税されると、税負担が重くなる場合があります。

国外財産について外国で相続税に相当する税が課された場合は、一定の要件を満たせば「外国税額控除」により日本の相続税から差し引けます。ただし、外国で課された税額を全額控除できるとは限りません。

この記事では、相続税の外国税額控除の適用条件、計算方法、必要書類、税額が確定していない場合の申告方法を解説します。控除できるのは原則として「外国で課された相続税に相当する税額」と「控除限度額」のいずれか少ない金額です。

読み終えると、控除できる金額と申告期限までに必要な準備がわかります。

国際税務

相続税の外国税額控除とは?

外国税額控除は、国外財産について外国でも相続税に相当する税が課された場合に、日本の相続税から一定額を控除する制度です。

国外財産が日本の相続税の対象となり、同じ財産について外国でも相続税に相当する税が課されると、二重に税負担が生じる場合があります。外国税額控除は、二重課税を一定の範囲で調整するための制度です。対象となる税や控除額、申告方法などの概要は次のとおりです。

内容
対象国外財産について外国で課された相続税相当額
控除額外国税額と控除限度額のうち少ない額
申告相続税申告書第8表などを使用
相続税の申告期限原則、相続の開始を知った日の翌日から10か月

相続税の外国税額控除を使える条件

外国税額控除の適用の可否を判断する際は、日本での課税範囲、財産の所在地、外国で課された税の内容を確認します。

確認項目判断する内容
日本での課税国外財産も日本の相続税に含まれるか
財産の所在相続税法上、国外財産に当たるか
現地の税相続税に相当する税か

まず日本で課税される財産かを確認する

日本の相続税が国外財産にまで及ぶかどうか(無制限納税義務者となるか)は、被相続人および相続人の「住所の所在地」「日本国籍の有無」、ならびに「過去の国内居住歴」によって厳格に判定されます。

特に、日本国籍を有する人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していた場合は、原則として国外にあるすべての財産が日本の相続税の課税対象となります(いわゆる10年ルール)。したがって、海外に保有している不動産や預貯金であっても、日本で申告義務が生じるケースが大半を占める点に注意が必要です。

財産ごとの所在地を判定する

国内財産と国外財産の区分は、財産の種類に応じて判断します。

たとえば預金は、原則として預金を受け入れた営業所などの所在地が基準です。外国銀行でも、国内支店で受け入れた預金は国内財産となります。

有価証券は、種類や管理状況によって所在の判定方法が異なる場合があります。

現地で課された税の性質を確認する

控除の対象となるのは、国外財産について外国の法令により課された「相続税に相当する税」です。税の名称だけでなく、誰に、どの財産を対象として課税されるのかを確認する必要があります。

たとえば、日本では相続や遺贈で財産を取得した人をもとに相続税を計算します。一方、米国の連邦遺産税のように、亡くなった人の遺産を基準として課税する制度もあります。課税方式が異なる場合も、税の名称だけで判断せず、現地の制度内容を確認しましょう。

なお、所得に対する税や財産の登録に伴う税など、日本の相続税に相当しない税は対象外です。現地の弁護士や会計士への報酬も税ではないため、外国税額控除の対象にはなりません。

日米相続税条約が適用される場合

相続財産が米国に所在する場合や被相続人・相続人が米国に関係する場合は、「日米相続税条約」の規定を精査する必要があります。

同条約では、財産の所在地判定ルールが日本の国内法と一部異なる(債権や株式の所在判定など)ほか、日米双方で全世界財産課税を受けるようなケースにおける税額控除の配分計算(条約第5条に基づく按分控除など)について、日本の相続税法第20条の2(通常の外国税額控除)とは異なる特例的な調整方式が定められています。どちらの規定に依拠して控除を組み立てるかによって最終的な手残り額が変わるため、国際条約に精通した専門家による検証が欠かせません。

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相続税の外国税額控除の計算方法

外国税額控除の計算では、日本の相続税額、外国税額、国外財産の価額を用います。

  • 外国税額控除前の相続税額を求める
  • 外国税額はTTSを用いて円換算する
  • 控除限度額は取得者ごとに求める

外国税額控除前の相続税額を求める

外国税額控除より先に、次の税額控除を反映します。

  1. 暦年課税分の贈与税額控除
  2. 配偶者の税額軽減
  3. 未成年者控除
  4. 障害者控除
  5. 相次相続控除

これらを適用した結果、相続税額が0円になれば、外国税額控除でさらに差し引く税額はありません。

外国税額はTTSを用いて円換算する

外貨建てで課された外国税額を邦貨(日本円)換算する際は、原則として「その外国税額を納付すべき日における取引金融機関の対顧客直物電信売相場(TTS)」を採用します(国内から外国へ送金して納付した場合は、送金が著しく遅れない限り送金日のTTSも選択可能)。

「相続財産そのものの円換算レート(原則として死亡日のTTB)」と「外国税額の換算レート(納付日のTTS)」では、参照する為替レートの種別(買相場か売相場か)も適用日も明確に異なるという点に注意が必要です。為替レートの適用誤りは控除税額の算定ミスに直結するため、証憑となる為替相場表を確実に保管しておきましょう。

控除限度額は取得者ごとに求める

外国税額控除では、外国で課された税額をそのまま全額控除できるとは限りません。日本で控除できる金額には、取得者ごとに限度額があります。

「控除限度額 = 外国税額控除前の相続税額 × 在外財産の価額 ÷ 課税価格の計算の基礎となった取得財産の価額」

在外財産に対応する債務がある場合は、その債務を控除した後の価額を用います。円換算した外国税額と控除限度額を比較し、少ない方が実際の控除額です。

たとえば、外国税額が2,000万円、控除限度額が1,500万円なら、控除できるのは1,500万円です。限度額を超えた500万円を他の相続人の相続税から差し引いたり、将来へ繰り越したりすることはできません。

国外不動産を1人が相続したケース

【想定事例】長男が米国の賃貸不動産を相続したとします。

課税価格の計算の基礎となる取得財産が3億円、国外不動産が1億円、外国税額控除前の相続税額が4,500万円の場合は、次の計算になります。

「4,500万円 × 1億円 ÷ 3億円 = 1,500万円」

控除限度額は1,500万円です。

※計算方法を示すため、条件を簡略化しています。

兄弟がそれぞれ国外財産を相続したケース

【想定事例】長男が米国不動産、次男がシンガポール預金(相続税に相当する税なし)を相続したとします。

長男次男
課税価格の計算の基礎となる取得財産2億円1億円
対象となる国外財産8,000万円5,000万円
外国税額控除前の相続税額3,000万円1,500万円
控除限度額1,200万円750万円
外国税額1,500万円0円
控除できる金額1,200万円0円

外国税額控除は相続人ごとに計算するため、長男の未控除額300万円を次男の相続税から差し引くことはできません。

※制度を理解するための簡略化した事例です。

相続税の外国税額控除に必要な書類

外国税額控除の申告では、第8表に加え、外国で課税された税額や国外財産の価額、為替換算の根拠を確認できる資料を準備します。税額だけでなく、どの財産に対して課税されたのかを確認できる状態にしておくことが重要です。

  • 第8表で外国税額控除額を計算する
  • 外国での課税内容がわかる資料をそろえる
  • 国外財産の価額を確認できる資料を残す

第8表で外国税額控除額を計算する

日本の相続税申告において外国税額控除を適用する際は、「相続税申告書 第8表(外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書)」を使用します。

第8表において、外国税額の円換算額、在外財産の価額、および相続人ごとの控除限度額を計算し、算出した控除額を第8の8表に転記したうえで、申告書第1表(各人の税額控除欄)へ転記・反映させます。なお、相続が発生した年分(2026年に開始した相続であれば令和8年分用)に適合した申告様式を用いなくてはなりません。

外国での課税内容がわかる資料をそろえる

外国税額控除では、外国で相続税に相当する税が課された事実とその税額を確認できる資料が必要です。現地の申告書、納税通知書、税額計算書、納付状況がわかる書類などを整理します。

外国語の書類については、内容を確認できるよう必要に応じて日本語訳も用意します。外貨建ての税額を円換算した場合は、適用日、通貨、金融機関などがわかる為替レートの資料も保存しておきましょう。

国外財産の価額を確認できる資料を残す

外国税額控除の限度額は、国外財産の価額を使って計算します。そのため、不動産は評価根拠となる資料、預金や有価証券は残高証明書などを整理しておかなくてはなりません。

国外財産に対応する債務を控除する場合は、借入金残高や債務の内容を確認できる資料も保存します。申告後に計算根拠を確認できるよう、評価資料と税額資料を対応させて整理しておくと安心です。

相続税の外国税額控除で税額が未確定の場合

外国側の申告や課税手続きに時間がかかり、日本の相続税の申告期限までに外国税額が確定しない場合があります。ただし、外国側の税額が未確定でも、日本の相続税の申告期限が自動的に延長されるわけではありません。

  • 日本の申告期限を先に確認する
  • 外国税額確定後の手続きを確認する
  • 外国側で減額された場合も日本への影響を見る

日本の申告期限を先に確認する

日本の相続税は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。外国側の手続きが終わっていない場合でも、この期限を基準に日本の申告準備を進めなくてはなりません。

外国税額がまだ確定していない場合は、外国側の課税状況を確認したうえで、日本の申告期限時点で外国税額控除をどのように扱うかを判断します。外国の課税方式や税額の確定時期によって取扱いが異なる可能性があるため、申告前に専門家へ確認することが重要です。

外国税額確定後の手続きを確認する

当初の日本での申告後に現地での外国税額が確定・納付された場合、その確定した税額をもとに「更正の請求」を行うことで、外国税額控除を後から適用し、納めすぎた日本の相続税の還付を受けることができます。

なお、更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内ですが、後発的な事由による場合は、その事実が生じた日の翌日から2か月または4か月以内と短くなるため、期限の管理が重要です。

外国側で減額された場合も日本への影響を見る

一方、現地当局への異議申し立てや税務調査等により、一度納付した外国税額が後から減額・還付された場合には、日本側で適用していた控除可能額も減少します。

その結果、日本の相続税に不足が生じることになるため、速やかに「修正申告」を行って差額本税を納付します。

相続税の外国税額控除に関するよくある質問

外国税額控除で迷いやすい3つのケースを確認します。

  • 日本の相続税が0円でも外国税は還付される?
  • 国内財産への外国税も外国税額控除の対象になる?
  • 外国税を納付前でも外国税額控除は使える?

日本の相続税が0円でも外国税は還付される?

外国税額控除によって、外国で課された税が日本から還付されることはありません。日本の相続税から一定額を差し引く制度であり、控除後の相続税額は0円が下限です。

国内財産への外国税も外国税額控除の対象になる?

外国税額控除は、国外財産が対象です。外国で課税されたという事実だけでは、適用対象とはなりません。

外国税を納付前でも外国税額控除は使える?

納付前であることだけで、直ちに対象外になるわけではありません。外国で相続税に相当する税が「課された」場合を対象としています。

ただし、税額自体が未確定の場合は、日本での申告方法について個別に確認が必要です。

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国際相続では、日本の相続税だけでなく、外国で課される税の内容や財産の所在地、為替換算まで確認する必要があります。特に外国税額控除は、現地の税が日本の相続税に相当するか、どの金額まで控除できるかを個別に判断しなければなりません。

税理士法人ネイチャーでは、国際相続を含む国際税務に対応しています。日本と外国の課税関係を整理し、海外資産の相続がある場合の日本の相続税申告書の作成や、外国税額控除の適用可否を確認できます。初回のご相談は無料です。

まとめ:相続税の外国税額控除は少ない方の金額を控除する

相続税の外国税額控除では、国外財産について外国で相続税に相当する税が課された場合に、外国税額と控除限度額のうち少ない金額を日本の相続税から差し引きます。

適用にあたっては、日本での課税範囲、財産の所在地、外国で課された税の内容を確認することが重要です。外国税額が日本の申告期限までに確定しない場合もあるため、現地の手続きと日本の申告期限を並行して管理する必要があります。

国際相続は、財産の所在国や現地制度によって取扱いが異なります。外国税額控除の適用や申告方法に迷う場合は、税理士法人ネイチャーの無料相談をご利用ください。

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