慶弔見舞金とは?相場・規程・経費になる条件・役員への支給も解説

会社で慶弔見舞金を支給するとき、金額に迷うことはありませんか。「社長や役員にも支給してよいのか」と悩む方も多いでしょう。

慶弔見舞金は、支給する相手や金額などによって税務上の扱いが変わります。支給方法によっては、福利厚生費として扱われない場合もあるため注意が必要です。

この記事では、慶弔見舞金の意味や相場、経費として扱うための条件を解説します。役員や取引先へ支給する場合の注意点も、税理士の視点でまとめました。自社で慶弔見舞金を支給する際の判断にお役立てください。

法人税

慶弔見舞金とは?

慶弔見舞金は、従業員のお祝いやお悔やみなどの際に、会社が支給するお金や品物です。結婚、出産、死亡、病気やけが、災害などが主な対象となります。

法律で一律に定められた制度ではなく、会社が任意に設ける福利厚生制度です。そのため、原則として制度を設ける義務はありません。規程を設ける場合は、対象者や支給条件、金額などの基準を明確にし、その基準に沿って運用することが重要です。

厚生労働省の平成19年(2007年)就労条件総合調査では、慶弔・災害見舞金の制度がある企業は94.5%でした(従業員30人以上の企業が対象)。労働政策研究・研修機構が厚生労働省の要請で2017年に実施した調査(10人以上の民間企業が対象)でも、慶弔見舞金制度がある企業は86.5%でした。いずれの調査でも、多くの企業で導入されている福利厚生制度です。

名称だけで税務上の扱いが決まるわけではありません。支給する相手や目的、金額、社内の基準などをもとに判断します。

慶弔見舞金の種類

代表的な6つの種類と金額の目安を紹介します。金額はあくまで参考例であり、法律上の上限ではありません。

  • 結婚祝い金
  • 出産祝い金
  • 本人死亡時の弔慰金
  • 家族死亡時の弔慰金
  • 傷病見舞金
  • 災害見舞金

結婚祝い金

従業員本人が結婚したときに支給するお金です。金額は1万〜5万円ほどが一つの目安となります。勤続年数などに応じて金額を分ける会社もあります。子どもの結婚まで対象にするかなど、支給条件は規程で明確にしておきましょう。

出産祝い金

従業員本人や配偶者が出産したときに支給するお金です。金額は1万〜3万円ほどが一つの目安となります。第2子以降の金額や夫婦ともに従業員の場合の扱いも決めておきます。夫婦それぞれに支給するか、世帯につき1回とするかを規程に明記しておくと運用しやすくなります。

本人死亡時の弔慰金

従業員本人が亡くなったとき、遺族に支給するお金です。金額は5万〜10万円ほどが一つの目安となります。勤続年数や役職、死亡原因などに応じて金額を定める場合もあります。死亡退職金を別途支給する場合は、弔慰金と区分して規程を整えておきましょう。なお、弔慰金が高額な場合は、一定額を超える部分が退職手当金等として相続税の対象になることがあります。

家族死亡時の弔慰金

従業員の家族が亡くなったときに支給するお金です。配偶者、子、父母、祖父母など、続柄に応じて金額を定める場合があります。一例として、配偶者は1万〜5万円、祖父母は5,000円〜1万円ほどが目安です。義父母などを対象に含めるかも、規程に明記しておきましょう。

傷病見舞金

従業員が病気やけがで療養したときに支給するお金です。金額は5,000円〜3万円ほどが一つの目安です。入院日数や休業期間などを支給条件にする会社もあります。対象となる傷病や必要な療養期間などを規程で定めておくと、判断基準が明確になります。

災害見舞金

従業員の住宅や家財が、地震や火災などで被害を受けたときに支給するお金です。全壊、半壊、一部損壊など、被害の程度に応じて金額を定めます。金額は1万〜10万円ほどを目安として設定する例があります。慶弔見舞金は、支給条件や金額について合理的な基準を設け、同じ条件の従業員には同じ基準を適用することが重要です。

法人税

慶弔見舞金は経費になる?

従業員に一定の基準で支給し、金額が社会通念上相当(世間一般から見て常識的な範囲)であれば、福利厚生費として経費にできる可能性があります。

ただし、支給する相手や目的によって税務上の扱いが変わります。

支給先主な勘定科目主な確認事項
従業員・家族福利厚生費支給基準・金額
役員福利厚生費・役員給与支給基準・金額
取引先交際費等支給目的・相手との関係

従業員への支給は福利厚生費

従業員やその家族への祝い金、香典、見舞金は、一定の基準に従って支給することで、福利厚生費として扱える場合があります。契約社員やパートを対象に含めるかなど、支給対象や条件は規程で明確にしておきましょう。特定の従業員だけを優遇するような支給は、給与として課税される可能性があります。

役員への高額支給は役員給与になり得る

役員への慶弔見舞金も、社会通念上相当な金額であれば、給与として課税されない場合があります。ただし、社会通念上相当な金額を超える部分は、役員給与として扱われる可能性があります。

役員給与に該当した場合、定期同額給与や事前確定届出給与などの要件を満たさなければ、原則として法人の損金には算入できません。

過去の国税不服審判所の裁決(平成14年6月13日裁決)に、次の事例があります。同族会社が会長の複数回の入院について、保険会社から入院給付金を受け取り、会社は規程に基づき給付金の半額にあたる約400万円を見舞金として会長へ支給しました。

国税不服審判所は、類似法人の支給状況などを検討し、この事例では入院1回あたり5万円を社会通念上相当な金額の上限と判断し、5万円を超える部分を会長への役員賞与としました。

規程があっても、支給額が社会通念上相当かどうかは別に判断されます。法人が受け取った保険金の額を基準に、そのまま見舞金を設定できるとは限りません。

なお、5万円は当時の類似法人の状況などをもとにした個別事例の判断です。税法上の一律の上限額ではありません。

役員への見舞金が給与として扱われる場合は、役員個人にも所得税などが課税され、会社には源泉徴収が必要になることがあります。源泉所得税を期限までに納付しなかった場合は、不納付加算税などが課される可能性もあります。

取引先への支給は交際費

取引先への香典や祝い金は、原則として福利厚生費ではなく、交際費等に該当します。交際費等は、法人の規模などによって損金算入できる金額に一定のルールがあります。

同じ香典でも、相手が従業員か取引先かで税務上の扱いが変わります。

一方、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程で支出する災害見舞金は、交際費等に該当せず、損金に算入できます。

慶弔見舞金で確認する税金

受け取った従業員の所得税と、会社側の消費税の扱いを解説します。慶弔見舞金は、金額や支給方法によって税務上の扱いが変わります。

  • 相当な金額なら所得税は原則非課税
  • 支給方法で消費税の扱いが変わる

相当な金額なら所得税は原則非課税

雇用契約などに基づく結婚や出産の祝い金は、原則として給与とされます。ただし、受け取る人の地位などに照らして社会通念上相当な金額であれば、所得税は課税されません。

香典や災害などの見舞金も、社会通念上相当な金額であれば非課税です。金額が社会通念上相当な範囲を超える場合は、給与として所得税が課税される可能性があります。給与として扱われる場合は、原則として会社による源泉徴収が必要です。

支給方法で消費税の扱いが変わる

現金の祝い金や見舞金は、商品やサービスの対価として支払うものではありません。そのため、消費税の課税対象外です。

一方、会社が品物を購入して渡す場合、その購入代金は、適格請求書(インボイス)の保存などの要件を満たせば、仕入税額控除(納める消費税から、仕入れなどで支払った消費税を差し引く仕組み)の対象になる場合があります。

商品券は、その購入自体が消費税の非課税取引となるため、原則として購入時には仕入税額控除の対象になりません。現金、品物、商品券では消費税の扱いが異なるため、それぞれ区分して処理しましょう。

慶弔見舞金を支給するメリット

慶弔見舞金には、従業員を支える福利厚生としてのメリットがあります。税務上の扱いとは分けて、制度を設けるメリットを確認します。

  • 福利厚生を充実させられる
  • 従業員の負担を軽減できる

福利厚生を充実させられる

結婚や出産、傷病、災害などの際に、会社として従業員を支援できる点がメリットです。福利厚生の充実は、従業員が安心して働ける環境づくりや人材の定着につながります。採用活動でも、求職者に示せる福利厚生の一つです。

従業員の負担を軽減できる

結婚や葬儀、入院、被災などでは、まとまった支出が生じる場合があります。会社から慶弔見舞金を支給することで、従業員の経済的な負担を軽減できます。特に傷病や災害など、予期しにくい事態が生じた際の支援として活用できます。

慶弔見舞金の申請方法

慶弔見舞金の申請は、一般的に4つの手順で進めます。支給の事実や金額を確認できる記録を残しておくことも重要です。

  • 従業員が申請書を提出する
  • 支給事由の証明書類を確認する
  • 会社が決裁して支給する
  • 会社が支給記録を保存する

従業員が申請書を提出する

従業員は、支給の理由や発生日、対象者との関係などを申請書に記入します。申請書は、総務や人事などの担当部署へ提出してもらいます。申請期限も規程で決めておくと、運用しやすくなるでしょう。

支給事由の証明書類を確認する

会社は、結婚や出産、死亡、傷病、災害などの支給事由を確認します。必要に応じて、支給事由を確認できる書類の提出を求めましょう。書類を求める場合は、従業員の個人情報に配慮し、支給の確認に必要な範囲にとどめます。

会社が決裁して支給する

担当者は、慶弔見舞金規程の支給条件に該当するか、支給額が規程に沿っているかを確認します。社内の承認を経て、現金や振込で支給します。給与と一緒に振り込む場合は、給与明細で慶弔見舞金と給与を区分しておきましょう。

会社が支給記録を保存する

慶弔見舞金は、通常の取引と違って、支給先から領収書を受け取らないのが一般的です。そのため、申請書や決裁記録、振込記録など、支給の事実を確認できる資料を保存しておきましょう。

いつ、誰に、どのような理由で、いくら支給したかを確認できる状態にしておくことが重要です。

慶弔見舞金を支給する際の注意点

制度を適切に運用するためのポイントを3つ解説します。規程を整備したうえで、支給基準を適切に運用し、金額を社会通念上相当な範囲にすることが重要です。

  • 支給前に規程を整備する
  • 支給基準を公平に適用する
  • 社会通念上相当な金額にする

支給前に規程を整備する

対象者、支給する場面、金額、申請期限、承認者などを決めましょう。決めた内容は、「慶弔見舞金規程」として書面にまとめます。

規程は、支給基準や金額の根拠を示す資料の一つになります。規程を作るだけでなく、定めた基準に沿って運用することも重要です。

支給基準を公平に適用する

同じ支給条件に該当する従業員には、原則として同じ基準を適用しましょう。役職や勤続年数などで金額に差を設ける場合は、あらかじめ規程に基準を定めておきます。

合理的な理由なく特定の従業員だけを優遇すると、福利厚生費としての扱いが問題となる可能性があります。

社会通念上相当な金額にする

規程に定めた金額であっても、税務上そのまま認められるとは限りません。支給の目的や受給者の地位などを踏まえ、社会通念上相当な金額であることが重要です。

高額な慶弔見舞金を支給する場合は、金額を決めた根拠を確認しておきましょう。

法人税対策なら税理士法人ネイチャー

慶弔見舞金を支給する際は、社内規程や支給額だけでなく、役員給与に該当する可能性や法人税・所得税への影響も確認する必要があります。決算時の税務対応では、一つの項目だけで判断せず、複数の選択肢を比較することが重要です。

税理士法人ネイチャーでは、現在の顧問税理士との関係を維持したまま、法人の決算対策や経営者個人の所得税対策など、必要な分野についてスポットでご相談いただけます。顧問税理士の変更を前提とせず、専門的な税務課題についてセカンドオピニオンとして活用できる点が特徴です。

税務だけでなく資産運用も扱っているため、法人と経営者個人の税負担や資産全体を踏まえて検討できます。税務と資産運用を別々に判断せず、全体を整理したうえで選択肢を比較したい方にも対応しています。

初回面談は無料です。現在の顧問税理士に相談しながら、別の視点からも税務対策を検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。

まとめ:慶弔見舞金は支給先別に経費を判断しよう

慶弔見舞金は、支給先や目的によって税務上の扱いが異なります。従業員への支給は、一定の基準に基づき、社会通念上相当な金額であることが重要です。

役員への高額な支給や取引先への支給は、従業員への支給とは税務上の扱いが異なる場合があります。支給する相手や目的、金額、社内規程、支給記録を確認したうえで処理しましょう。

税理士法人ネイチャーでは、現在の顧問税理士との関係はそのままに、法人の決算対策や経営者個人の所得税対策をご相談いただけます。初回面談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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