不動産投資では、日本国内だけでなく海外の物件購入・経営による海外不動産投資も可能です。税金対策や利回りの面でメリットがあるため、「今後海外不動産投資に挑戦したい」と考える方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、海外不動産投資について具体的なメリット・デメリットを解説します。国内と海外における節税効果の違いも解説するため、国内での不動産投資とは異なる魅力を知るきっかけになるでしょう。後半では、国別の特徴も併せてご紹介します。
海外不動産投資で得られる3つのメリット
海外不動産投資で実感するメリットは、税金対策の効果や利回りの高さなどさまざまです。通貨の変動リスクを軽減できる点も、海外に目を向ける理由のひとつといえるでしょう。海外不動産投資において、魅力的なメリットを3つご紹介します。
【メリット1】節税効果を得られる
国内での不動産投資と同様、海外でも減価償却を活用できます。土地以外の不動産の価値が減少した分も減価償却費として扱うことが可能で、課税対象額を減額する仕組みです。ただし、減価償却が可能な期間は物件によって異なります。
赤字が発生した場合は、「損益通算」で他の所得からも差し引いて計上できます。このようなルールの活用は国を問わないため、日本国内での不動産投資と同じメリットといえるでしょう。
【メリット2】高い利回りが期待できる
不動産投資のリターンを左右するのは、物件の需要や経済成長の変化です。以下2つの種類に分けられる点を把握しておきましょう。
- インカムゲイン:家賃収入
- キャピタルゲイン:不動産の売買差益
例えば、人口増加が見込まれる国の場合、住居を必要とする方が増えるため、家賃収入の増加が期待できます。また、そのような国では、投資物件の需要拡大と経済成長によって不動産価格が上がることで売却益を得られる可能性も高まります。人口減少が懸念される日本に比べると、海外の方が空室リスクを避けやすいこともメリットといえるでしょう。
【メリット3】資産ポートフォリオの分散になる
日本国内のみの不動産投資で懸念されるのは、日本の不動産価格が暴落した場合に損失が集中することです。国内で複数のエリアに分けて不動産を所有していても、不動産価格の暴落が生じると、その影響を1点に受けることになります。
しかし、国内不動産投資と海外不動産投資を組み合わせた場合、日本国内で不動産価格が暴落しても海外不動産は影響を受けないため、万が一暴落しても負担を和らげられます。投資において重要な「分散投資」の方法として認識しておきましょう。
海外不動産投資で押さえておきたい4つのデメリット
海外不動産投資のメリットを活かすためには、デメリットの理解も大切です。情報収集の難しさやカントリーリスクなど、海外不動産投資特有のデメリットもあります。ローンを組む場合は融資の可否にも影響するため、リスクやデメリットはあらかじめ認識しておきましょう。特に注意したいポイントを4つご紹介します。
【デメリット1】不動産情報の取得が難しい
日本国内の不動産投資と異なるのは、情報収集の難易度です。リサーチしやすい国内での不動産投資に対し、土地勘がない海外では情報取得が困難なため難しく感じる方が多いかもしれません。言葉だけでなく、取引に関する習慣や法律にも相違点があります。
投資物件の下見に行く際の渡航費もかかるため、実際に足を運ぶ回数も限られてくるでしょう。不動産投資が初めての方にとっては、困難に感じやすい工程ともいえます。
【デメリット2】為替リスクがある
海外不動産投資では、家賃や売却代金を現地の通貨で受け取ります。もし、現地の通貨の価値が下がった場合、不動産投資で得られる家賃や売却代金が少なくなるため、損をする可能性があります。
反対に通貨の価値が上がった場合、想定よりも家賃や売却代金が多くなることで得をする可能性もあるため、一概に為替リスクが危険なものといいきれませんが、海外不動産投資特有のリスクとして覚えておきましょう。
【デメリット3】カントリーリスクがある
投資先の国になんらかの変化が発生したとき、不動産の価値が急激に下落する可能性があります。要因として挙げられるのは、以下の背景です。
- 国家経済の急激な悪化
- 通貨や株価の急激な下落
- 政権の交代など政治情勢の変化
- 紛争・内戦・テロの勃発
- 自然災害による大規模な被害
また海外不動産投資の場合、法律の改正や税制度の規制がリターンを悪化させることも考えられます。投資活動において不利な立場におかれたり、治安問題に巻き込まれたりといったリスクも把握しておきましょう。
【デメリット4】融資制限がある
日本と海外の金融機関を比較すると、海外の方が融資条件に厳しい基準を設けている傾向にあります。同様の融資条件を想定した場合、海外の金融機関からは融資が認められにくいと考えた方が良いでしょう。
日本より高い金利が設定されていることも多く、最終的な出費が増幅する可能性もあるため、ある程度の自己資金の確保も想定しておく必要があります。海外不動産投資では、土地や物件だけでなく、金融機関の選定も重要といえるでしょう。
日本国内と海外の不動産投資では節税効果が違う2つの理由
投資する国によって違いを感じやすいのは、税金対策の効果です。国内の不動産投資と同様に減価償却は活用できますが、ルールが異なるため、結果的に得られる節税効果も変動します。国によって細かい違いが生じるため、アメリカを例に日本との差をチェックしてみましょう。建物比率と償却期間2つの観点から解説します。
建物比率が異なるため
減価償却の対象となるのは、購入した不動産のうち建物が占める部分です。庭や駐車場などは対象外として扱われるため、「全体の何割を建物が締めているか」が重要となります。日本で多く見られるのは、20%程度の建物比率です。
一方、アメリカは建物の面積が大きい傾向にあります。50%を超えることもあり、場合によっては80%の不動産購入も可能です。1億円の不動産を22年で償却する例を想定すると、簡単な計算では以下のような差が生じます。
日本(建物比率20%) | アメリカ(建物比率80%) | |
---|---|---|
減価償却の対象 | 2,000万円 | 8,000万円 |
1年当たりの償却費 | 約91万円 | 約364万円 |
減価償却の方法が異なるため
日本の法定耐用年数は、新築・中古、建物の構造によって異なるのが原則です。代表的なものでは、以下の年数が定められています。
新築 | 法定耐用年数を超えた中古物件 | |
---|---|---|
木造 | 22年 | 4年 |
RC造 | 47年 | 9年 |
例えば築年数22年の木造物件を購入した場合、償却可能な期間は4年です。一方、アメリカでは新築・中古いずれも27.5年にわたって償却できます。築年数に関係なく一定期間償却できる仕組みは、節税効果を高める上で有益な要素といえるでしょう。
2021年以降は減価償却費が計上できなくなる?
海外不動産投資においては、2019年12月に発表された「令和2年税制改正大綱」により、2021年以降減価償却の計上ルールを変更する旨が決定しました。2021年以降に赤字が発生した場合、海外不動産投資の減価償却費は経費として認められません。税金の還付対象を縮小する取り組みといわれています。
国内不動産投資の所得と海外不動産投資の損失分の減価償却費は損益通算できませんが、海外不動産投資の所得と損失の損益通算は可能です。。そのため、税制改正後も海外不動産投資内の損益通算による節税効果は期待できると考えられます。複雑な法改正であるため、税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談することをおすすめします。
海外不動産投資ができる国別のメリット・デメリット
海外で投資先を選定する際には、メリットの多い国に絞ることが大切です。競争率や政治的背景にリスクを抱えていないかを考慮した上で見極めましょう。
海外不動産投資を成功へと導くには、現地の不動産投資事情を調べてから投資に臨むことが重要です。ここからは、7つの国をピックアップしてメリットとデメリットをご紹介します。
不動産所有の規制がない「アメリカ」
治安や取引の面で安全性を求めるのであれば、主要先進国のアメリカがおすすめです。人口が激減する可能性は低く、場合によっては家賃の値上げも期待できます。ただし日本とアメリカでは10時間以上の時差があるため、コミュニケーションを円滑にとりにくい点には注意が必要です。
メリット | デメリット |
---|---|
・日本人の不動産投資でも規制が少ない ・人口増加率が高く需要の増加も見込める ・エリアによっては家賃の値上げも期待できる ・取引時のトラブルを避けやすい | ・時差が原因でコミュニケーションに不満を感じる可能性がある ・投資家の競争率が高い ・物件価格(購入費用)が高額 |
人口増加で不動産価値の上昇に期待できる「フィリピン」
人口増加による将来性を重視したい場合は、高い増加率を見せるフィリピンも適しています。国全体の平均年齢が低く、生産年齢人口が高いため経済成長も期待できるでしょう。一方、竣工(しゅんこう)リスクによるトラブルが発生する可能性もあるので注意が必要です。
メリット | デメリット |
---|---|
・人口増加率が高い ・平均年齢が低い ・人口密度が高い ・アジアではトップクラスの利回り | ・未完成のまま工事を終える可能性がある(竣工リスク) ・日本人(外国人)は土地を購入できない |
日本人が多く在住している「タイ」
日本との時差が2時間程度で短く、円滑なコミュニケーションをとりやすい点がタイの魅力です。現地に日本人が多く、管理会社を探しやすいのもメリットといえます。税金は抑えやすいものの、タイの銀行は金利が高い傾向にあるので負担を感じる可能性もあるでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・現地に日本人が多い ・時差が2時間でコミュニケーションも取りやすい ・日本よりもコストを抑えやすい | ・現地の金融機関は金利が高い ・政治や軍事面のリスクがある |
先進国入りを目指している「マレーシア」
マレーシアは、1990年に入ってから高い経済成長率を見せています。2020年には先進国入りを目指している背景もあり、平均所得が上昇すれば家賃の値上げによる収入の向上も期待できるでしょう。ただし、実際に運用がスタートするまでに長期間を要する場合もあります。スムーズに進まない場合、1年程度かかる可能性も考慮しておきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・1990年代から高い経済成長率を記録している ・先進国入りを目指している ・物価が安い | ・不動産購入の外国人規制が厳しい ・工事完了や登記手続き完了までの期間が長い傾向にある ・不動産の売れ残りも問題視されている |
物件の資産性が高い「オーストラリア」
投資資金を多く用意できるのであれば、別荘地として人気のオーストラリアもおすすめです。季節は違うものの、時差が約1時間と短い点も魅力といえます。永住権の有無によって投資できる範囲が異なるという点に注意しましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・別荘地が多く物件の資産性が高い ・日本人の多いエリアも多数ある ・FIRB(外国投資審議会)の許可を得ると新築も購入可能 ・永住権があればFIRBの許可が不要 | ・物件価格が高い傾向にある ・他の海外不動産投資に比べて利回りが低い |
少ない元手でも利回り重視で運用できる「イギリス」
アメリカやオーストラリアのように大規模な不動産を購入するのが不安な場合は、イギリスの不動産投資が向いています。留学生や現地学生向けのコンドミニアムであれば、比較的少ない資金でも不動産投資が始めやすいのが魅力です。
メリット | デメリット |
---|---|
・人口が増加し続けている ・不動産の価値が上昇傾向にある ・一室単価が安いコンドミニアムも多い | ・購入時は現地の弁護士に依頼する必要がある ・EU離脱による経済の落ち込みが懸念されている |
永住権の獲得ができる「ポルトガル」
「将来的には海外で生活したい」といった希望がある場合は、永住権の獲得が可能なポルトガルもおすすめです。金額や期間に条件はあるものの、一定条件を満たせば永住権を得られます。ホテルの需要も高まっているため、幅広い選択肢から検討できるでしょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・一定額以上の物件購入で永住権を獲得できる ・2013年以降の経済成長が期待されている | ・東南アジアに比べて投資効率が下がりやすい |
海外不動産投資を始める3つの方法
海外不動産投資を始めるといっても、どのように始めればいいのか分からない方も多いと思います。
海外不動産投資を始める方法は全部で3つありますが、それぞれメリットとデメリットが異なるため、違いを理解した上で選ぶことが重要です。
日本の不動産会社で購入する
海外の不動産は、日本の不動産会社を通して購入することも可能です。。現地の不動産会社から購入する場合、言葉が理解できずトラブルに発展する可能性がありますが、日本の不動産会社であれば言葉の壁を気にせず取引できます。
そのため、海外での取引に不安を感じる場合は、海外不動産投資を専門とする日本の不動産会社から購入するという方法が最適といえるでしょう。
日本の不動産会社で購入する際は、まず不動産会社をいくつかピックアップし、セミナーや相談会に参加します。
投資先を海外に限定したセミナーや相談会に参加すれば、専門的な情報を得られるだけでなく、各不動産会社の善し悪しを見極めやすくなるでしょう。
現地の不動産会社から購入する
現地の言葉が堪能で海外での取引に抵抗がない場合は、実際に現地に足を運んで不動産を購入するという方法が挙げられます。不動産取引では専門用語が多く使われるため、言語に不安がある場合は、日本語でのサポートが可能な不動産会社を選ぶことをおすすめします。
海外は税制や法律が日本とは異なるため、何も知らずに現地の不動産を購入すると、後でトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。トラブルを未然に防ぐためにも、現地の税制や法律などの知識を身につけた上で取引に臨みましょう。
専門家に相談する
海外不動産投資で有益な結果を実現するには、さまざまな知識が必要です。投資に関する理解が浅いと感じる場合は、ファイナンシャルプランナーや海外不動産投資を専門とする不動産会社などの専門家に相談してみましょう。
海外不動産投資に精通している方のアドバイスを得られれば、リスクの対策を練ったり計画を見直したりすることによって、安定した収入の確保に一歩近づけるようになります。
法律関係の知識は、日本での不動産投資と同様海外においても重要です。これらに詳しい専門家からアドバイスを受けることは、海外不動産投資を成功へと導く上で必要不可欠といえるでしょう。
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まとめ
海外不動産投資では、人口減少によって需要が低下する日本よりも安定した収入の確保が期待できます。しかし、融資制限や為替リスク、カントリーリスクなどのデメリットも伴うため、リスク管理を徹底して臨むことが重要です。
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