シンガポールは、インフラが整備されており、治安の良さや税務面での待遇など、さまざまな魅力があります。日本からの移住先としてシンガポールは人気が高いです。
しかし、日本と比べて物価が非常に高いなど、懸念点も少なくありません。
そこで本記事では、シンガポール移住のメリット・デメリットを解説します。特に取得が必須なビザの条件や、現実的な生活費なども紹介しているため、シンガポールの移住を検討されている方はぜひご覧ください。
※記事内の日本円換算は、2024年3月18日時点のものです。為替により変動しますのでご注意ください。
シンガポール移住を検討する上での基礎知識
シンガポールは人口592万人(2023年)であり、面積が734.3㎢と、東京都に近い小さな国です。比較的安全な都市が多く、教育・医療のレベルが高い特徴を持ちます。
暮らしやすいだけでなく、ビジネス展開しやすい国でもあります。税金が比較的安く、起業がしやすいなど、ビジネスパーソンにとっても人気の国です。
日本でもシンガポールに移住する人は多く、魅力的な国ですが、働くためにはビザが必要です。取得条件が厳しいものが多いため、注意しましょう。
シンガポール移住に必要なビザは5種類
シンガポールに移住するためにはビザが必要です。5種類のビザのうち、取得可能なものを選びましょう。
- EP(エンプロイメントパス)
- Sパス
- PEPビザ
- GIP(グローバルインベストメントプログラム)
- アントレパス
一部のビザには、家族の扶養が認められています。ただし「ビザの配偶者および21歳未満の独身の子」といった条件があるためご注意ください。
1.EP(エンプロイメントパス)
EPは専門職や管理職、経営者を対象としたビザです。
対象者 | 専門職、管理職、経営者、現地駐在員 |
---|---|
条件 | 5,000Sドル以上の月収(年齢により上下) |
有効期限 | 申し込み時:最長2年間 更新時:最長3年間 |
扶養家族ビザ | あり (申込者の月収が6,000Sドル以上) |
起業家のほか、シンガポール支社の駐在員、現地採用の日本人などが多く取得します。
2.Sパス
Sパスは一般的な会社員などを対象としており、比較的取得しやすいビザです。EPが取得できない場合でも、Sパスであれば取得できるといったケースが数多くあります。
対象者 | 駐在員、現地採用の日本人など |
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条件 | 3,150Sドル以上の月収(年齢により上下) |
有効期限 | 申し込み時:最長2年間 更新時:最長2年間 |
扶養家族ビザ | あり (申込者の月収が6,000Sドル以上) |
Sパスは企業が申請するものであり、企業によって発行可能枠が決まっています。業種ごと10〜15%の人数までしか発行できないため注意しましょう。
また、Sパス保有者がいる場合企業には、月額550〜650Sドルほどの雇用税がかかります。
3.PEP(パーソナライズエンプレイメントパス)
PEPは主に高収入の個人事業主が取得できるビザです。就労ビザなしで働けるほか、家族の申請可能、最大半年間無職でも滞在可能などのメリットがあります。
対象者 | 駐在員、現地採用の日本人など |
---|---|
条件 | 以下いずれかを満たす
|
有効期限 | 申し込み時:最長3年間 更新不可 |
扶養家族ビザ | なし |
ただし、期間は3年間までで延長ができない点に注意しましょう。
4.GIP(グローバルインベストメントプログラム)
GIPはシンガポールの永住権であり、事業家向けのものです。今回紹介する中で最も厳しい条件が課されています。
対象者 | 事業家 |
---|---|
条件 | 以下の条件を全て満たす
その他業種により追加条件あり |
有効期限 | なし |
扶養家族ビザ | あり(配偶者および21歳未満の独身の子) |
新生児には詳細な投資計画書が必要であり、5年以内の実行が求められるなど、申請だけでは終わらないことも特徴です。
また、永住権そのものに期限はありませんが、再入国許可証は更新が必要です。再入国許可証を更新せずに出国した際は永住権も消失するためご注意ください。
個人事業主や会社員では取得できないため、基本的には他のビザを更新して住むことになります。
5.アントレパス
シンガポールにて起業する際に申請できるパスで、起業家、革新家、投資家それぞれに条件があります。ビザ申請の際には事業計画を出すことも特徴です。
対象者 | シンガポール内で起業する外国人 |
---|---|
業種ごとの条件 | 起業家:政府系のベンチャーキャピタルなどから10万Sドルの融資を受けている、ビジネスインキュベーターの対象になっているなど 革新家:事業に関連する知的財産を保有しているなど 投資家:投資経験(大規模な成長に期待できる事業に関するもの) |
有効期限 | 申し込み時:最長1年間 更新時:最長2年間 |
扶養家族ビザ | なし |
業種が限られており、特殊なビザです。一般的にはEP、Sパスを優先して取得します。
※ビザの要件は法改正により随時変更されますのでご注意ください。具体的に検討される場合は、最新の情報の入手が必要です。
シンガポールに移住する9つのメリット
シンガポールに移住すると、主に9つのメリットがあります。
- 税金面での大きなメリットが得られる
- 街の治安が優れている
- インフラが整備されている
- 英語で会話ができる
- 高いレベルの医療サービスを受けられる
- 自然災害のリスクが少ない
- 高い教育レベルの中で学べる
- 起業しやすい
- 外食文化が発達している
1.税金面での大きなメリットが得られる
シンガポール移住における最大のメリットは、税金面で恩恵が得られることです。
例えば、所得税は日本と同じ累進課税制度ですが、シンガポールは最大24%、日本は最大45%(住民税と合わせると55%)と倍近い差があります。法人税率も17%と世界でトップクラスに低い特徴を持ちます。
また、住民税や相続税、贈与税に該当する税金がなく、各種優遇措置も充実していることから税金面で大きなメリットが得られます。
2.街の治安が優れている
街の治安がいいこともシンガポールのメリットです。街中に監視カメラが多く設置されており、治安の良さに定評があります。その治安のよさは日本と同等またはそれ以上といわれるほどです。
ただし、観光スポットや空港・レストランなど観光客が多いエリアではスリやひったくりなどが発生する可能性が高いため注意しましょう。また、地域によっては夜は危険といわれる街もあるため、現地の人に確認するのも重要です。
3.インフラが整備されている
シンガポールは、東京以上にインフラが整備されています。特に交通の便がよく、地下鉄やバスの路線は国内に張り巡らされており、日本円にして100円ほどで利用可能です。
自家用車が無くとも生活しやすいのは、移住者にとって大きなメリットになります。
4.英語で会話ができる
シンガポールの多くの地域では、英語で会話ができます。
シンガポールは他民族国家であり、中国語・マレー語・タミール語を母国語としている人が多い国です。しかし、共通語として英語を学んでいる方も多く、シンガポール国内では英語が通じる場面がほとんどです。
5.高いレベルの医療サービスを受けられる
シンガポールは医療先進国であり、レベルの高い医療サービスを受けられます。シンガポールの病院は法人化しており、適切な競争を行うことで高い医療サービスを提供可能な特徴を持ちます。
ただし、日本でいう社会保障に当たるものがないため、注意しなければなりません。シンガポールでは「CPF(強制加入の保険貯蓄制度)」などがあり、基本的に医療費は自分で支払う仕組みになっています。
6.自然災害のリスクが少ない
シンガポールは、自然災害のリスクが少ない点もメリットです。ユーラシアプレートの上にあるため、過去に直下型地震が起きた記録はなく、台風のルートからも離れており、津波も確認されていません。
また、気候も一年中高温多湿であり、変化が少ないことも特徴の一つです。スコールなどは起こり得ますが、災害による被害に発展することは稀です。
7.高い教育レベルの中で学べる
シンガポールは、教育レベルが高いことでも有名です。
英語能力テストであるTOFELの平均点は上位であり、2022年においては平均スコアが98点と高い記録を残しています。(日本の平均スコアは73点)
ETS「TOEFL iBT® Test and Score Date Summary 2021」
また、数学においても学力調査のTIMSSで1〜3位の常連国であるなどレベルが高く、教育環境が整っている国です。
特に小さなお子さんがいる場合は、学校生活の中で英語を身につけられるため、教育目的で移住する方も多くいます。
8.起業しやすい
シンガポールは法人の設立方法がシンプルな国として有名です。最低資本金は1S$から可能で、オンライン申請が可能、所要時間は平均1.5営業日といわれています。
法人税率の低さも含めて、シンガポールでの起業はメリットが大きくビジネスを目的として移住する方も多い現状です。
9.外食文化が発達している
外食文化が発達しているのも、シンガポールのメリットです。シンガポールは共働きの家庭も多く、朝昼夜全て外食や買ってきたものを食べるといった文化が根付いています。
また、シンガポールは複数の国の民族が移住した歴史があるため、国内でも多国籍料理が楽しめることも嬉しいポイントです。
シンガポールに移住する3つのデメリット
一方、シンガポールに移住するデメリットもあります。
- 住居費をはじめ物価が高い
- ビザ取得のハードルが高い
- 日本よりも法律や規則が厳しい
1.住居費をはじめ物価が高い
シンガポールは物価が高いです。特に住居費(家賃)は高く、安いところでも日本円で約30万円以上かかります。
月額の固定費が高くなるため、相応の収入が必要になる点はデメリットといえます。単身での移住であればルームシェアの選択肢もありますが、家庭での移住ではそうもいきません。
2.ビザ取得のハードルが高い
ビザ取得のハードルが高い点もデメリットです。
基本的には会社単位で申し込むSビザやEPを利用して就労することになります。しかし、条件に最低月収が定められているなど、現実的に取得が難しい場合が多々あります。
移住を計画する前に、まず現実的にビザの取得が可能なのかを確認してから、行動を始めましょう。
3.日本よりも法律や規則が厳しい
シンガポールは法律や規則が厳しく、罰金の多い国です。
例えば、公共交通機関で飲食をすると約5万円、ゴミのポイ捨てをすると約10万円など、ルールと罰金がセットで定められていることが多々あります。
中にはガムを持ち込むだけで罰金が発生する施設もあるため、シンガポールに移住する際は法律・規則についてよく確認しておきましょう。
シンガポール移住後にかかる生活費の目安
シンガポール移住後にかかる生活費の目安を見ていきましょう。ここでは、夫婦と子ひとりの世帯を例にしています。
内訳 | 費用 |
---|---|
家賃 | 約30万円〜 |
光熱費 | 約2万円 |
食費 | 約10万円 |
学費 | 約15万円〜 |
交通費 | 約2万円 |
通信費(スマホ代など) | 約2万円 |
合計 | 約51万円〜 |
上記に交友費や娯楽代、英語のレッスン代などプラスで費用がかかることもあります。
シンガポール移住で節税できる?かからない税金一覧
シンガポールでかからない税金は、以下の通りです。
税金の種類 | 内容 |
---|---|
相続税 | 亡くなった時の財産にかかる税金 |
贈与税 | 生前に金銭や資産などを贈与した際にかかる税金 |
キャピタルゲイン課税 | 株式などの売却により出た利益にかかる税金 |
また、所得税や法人税の最高税率も日本と比べ低いため、節税に繋がるケースが多いという特徴を持ちます。
ただし、相続税については非常に複雑なため、場合によっては日本の相続税が適用されてしまうケースもあり、海外税務に詳しい専門家に確認が必要です。詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
海外資産にも相続税はかかる?知っておきたい課税のルールと節税の秘訣を紹介
シンガポール移住における税金面での相談ならネイチャーグループへ
シンガポールへ移住するにあたって、税務面でお悩みの方は、ネイチャーグループへご相談ください。
先述した通り、シンガポールは税金面のメリットが大きい国です。しかし、税金の知識とノウハウ無くしてその恩恵は受けられません。
ネイチャーグループでは、国外の税務コンサルティング及び申告サービスを行っております。国内外の各種専門家と連携しながら、最大限節税できる方法をお伝えします。
海外転勤や、海外での資産運用を考えていらっしゃる方にもコンサルティングいたしますので、国際的な税金に関するお悩みがありましたら、ぜひ無料相談をご利用ください。
まとめ:シンガポールの移住はメリットとデメリットの大きさで判断しよう
シンガポールの移住は、生活面やビジネス面、教育面で多くのメリットがあります。街の治安もよく、インフラも整備されているため車なしで生活が可能、自然災害のリスクが少ないなど住みやすい国です。
しかし、就労ビザのハードルが高い、家賃をはじめとした物価が高いなどデメリットもあります。節税に有利、人気の国など魅力あるシンガポールですが、現実的に移住可能かを一度確認することが重要です。
シンガポール移住の際には、正しい税金の知識・ノウハウによる処置が重要になります。出国前に一度専門家に相談し、節税効果を最大限にしてから移住を検討してください。
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