医師は、高所得だから資産運用は必要ないと考えている方もいるかもしれません。
しかし資産運用は、急に病気やケガで働けなくなったときのために収入軸を増やせる、節税対策になる方法もあるといったメリットがあります。
この記事では、医師こそ資産運用をすべき理由と、おすすめの運用先を7つ紹介します。(本記事掲載内容は2024年7月時点の内容です。最新の情報については、公式サイトや最新のニュースをご確認ください。)
医師の資産運用事情
2017年8月3日にケアネットが医師を対象に行った調査によると、医師のうち約6割が金融資産保有額が3,000万円以下で、資産の内訳は以下の通りとなっています(資産の内訳については複数回答可)。
【医師の金融資産合計(負債を含まない)】
金融資産額 | 割合 |
---|---|
1,000万円未満 | 37% |
1,000~3,000万円 | 26% |
3,000~6,000万円 | 19% |
6,000~1億円 | 8% |
1~3億円 | 7% |
3~5億円 | 1% |
5億円以上 | 2% |
【医師の資産の内訳】
資産の項目 | 割合 |
---|---|
預貯金 | 79% |
生命保険・個人年金 | 33% |
株券 | 23.4% |
不動産 | 22.5% |
投資信託 | 16.6% |
外貨建て預貯金 | 14.5% |
国債・債券 | 8.3% |
金などの実物資産 | 7.4% |
その他 | 2.0% |
出典:ケアネット「金融資産について」のアンケートをもとに筆者作成
預貯金や生命保険・個人年金といった安全資産で運用している医師が多い中、株式や不動産、投資信託といったリスクがある資産に投資をしている割合も少なくないことがわかります。
医師が資産運用すべき5つの理由
一般的に医師は収入が高い傾向がありますが、資産運用を検討するべきです。その理由を5つ紹介します。
- 収入軸を増やせる
- 高所得者向けの投資を活用できる
- 節税対策で資産を残せる
- 退職後の生活資金確保につながる
- 職業上のリスクを緩和できる
収入軸を増やせる
医師の仕事は専門性が高く、業務経験を積むことで多くの患者が集中し、長時間労働を強いられる可能性があります。また人の命にかかわる仕事であり、精神的なストレスも大きくなります。これらの理由から医師は「いつまでこのまま働けるのだろうか・・」と不安を抱えてしまいがちです。
資産運用は資産を売買することで得られるキャピタルゲインだけでなく、資産を保有することで得られるインカムゲインという利益もあります。
資産運用によりこうした利益が得られれば、医師としての業務を少し減らしても一定の収入が得られます。業務時間や顧客数をある程度、自身でコントロールできるようになり、精神的なストレスが軽減されるでしょう。
高所得者向けの投資を活用できる
資産運用の中にはヘッジファンドのように、高所得者しか相手にしてもらえない代わりに投資パフォーマンスが高いものや、不動産投資のように高所得者が利用しやすいものがあります。
このように高所得者だからこそ有利な条件で利用できる金融商品も存在するため、医師は資産運用を積極的に活用したいところです。
節税対策で資産を残せる
資産運用の中には節税対策になるものもあり、活用することで税負担を軽減できる場合があります。所得税率は所得が多くなるにつれて段階的に高くなっていく仕組みのため、所得が高い医師は節税による軽減効果が高くなる傾向があります。
退職後の生活資金確保につながる
医師の中にはある程度の年齢になったら退職して、ゆとりある老後生活を送りたいと考える方もいるでしょう。しかし定年退職後の生活資金が確保できていなければ、やめたくてもやめられない可能性があります。
とくに個人事業主で開業医をしている期間が長い場合、将来受け取れる公的年金が少ない可能性があるため、積極的に資産運用を取り入れたほうが良いかも知れません。
職業上のリスクを緩和できる
医師は職業上、訴訟リスクなど特有のリスクを抱えており、自身のこれまでのキャリアが一転してしまう場合があります。万が一、医師の職を失ったり、収入が激減したりしたときのリスクを考慮して、資産運用に着手しておくと良いでしょう。
医師向け資産運用おすすめ7選
資産運用には多くの種類があります。そのうち医師向けのおすすめな資産運用を7つ紹介します。
- 株式投資
- 個人向け国債
- 投資信託
- 保険商品
- 確定拠出年金(iDeCo)
- 不動産投資
- 太陽光発電投資
株式投資
企業の株式を購入して、値上がり益や配当金を狙う資産運用です。資産運用の中では比較的ハイリスク・ハイリターンに分類されます。特に配当金は、年に1度、四半期に1度など株式を保有している企業から定期的に受け取れるため、安定した収入が期待できます。
ただし企業業績や企業の方針で、かならず配当金が定期的に受け取れるとは限りません。場合によっては減額されるケースもあるため、注意が必要です。
個人向け国債
国や自治体といった発行体が資金を借りるときに発行する有価証券を債券と言います。このうち国が発行しているものが国債です。国債を購入すると、その国にお金を貸していることになり、投資家は期間中定期的に利息が受け取れます。
満期(償還日)を迎えると償還日に額面金額が投資家に返還(償還)されます。個人向け国債は、国が後ろ盾となっている金融商品です。そのため、比較的リスクが少ない商品ですが、リターンも小さい傾向があります。
投資信託
投資信託は、投資資金を預けて投資のプロに投資をお任せできる金融商品です。資産運用は1つの銘柄、1つの資産で運用するよりも、値動きの特徴が異なる資産・銘柄に分散投資をしたほうが、リスクを抑えて安定したリターンが得られる傾向があります。
しかし本業で忙しい医師が個別の銘柄や資産の特徴を勉強して、自身の判断で選ぶのは難しいかもしれません。投資信託であれば、資産を預けるだけで投資のプロが分散投資を行ってくれます。
また投資信託の値上がり益だけでなく、分配金という利益があるため安定したリターンが期待できます。ただし分配金も運用状況によって、必ず支払われるわけではありません。
保険商品
医療法人として加入すると、法人税の支払いを一定額まで繰り延べながら退職金準備ができます。
また個人事業主や勤務医が生命保険に加入をすると、自身の万が一の保障を準備しながら「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つの控除で最大年間12万円の所得控除が受けられます。
その他、相続・事業承継対策や財務対策など、さまざまな用途に応用できるのが保険商品の特徴です。
確定拠出年金(iDeCo)
iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金の愛称です。iDeCoはあらかじめ金融機関が用意した商品の中から選んで、自身で運用をする制度を指します。iDeCo口座で運用をすれば、掛金が全額所得控除となるだけでなく運用益に税金がかからない、退職時も税制優遇が受けられるメリットがあります。
ただしiDeCoの掛金は60歳まで引き出しができない点に注意が必要です。そのためiDeCoは老後の資産形成を重視したい医師に向いている制度といえます。
なお勤務先で企業型確定拠出年金が用意されている勤務医の場合でも、2022年10月からiDeCoに加入しやすくなっています。
不動産投資
不動産投資は不動産を購入して他人に貸し出し、賃料を得る投資方法です。入居者がいる限り安定した家賃収入が得られるため、副収入、あるいは老後の公的年金の上乗せ収入が作れます。
また不動産投資は購入代金を数年に分けて経費すれば課税所得を抑えられるため、節税効果が期待できるでしょう。勤務医でも給与所得と不動産所得の損失を通算すれば、税金の還付を受けられるため節税が可能です。
太陽光発電投資
太陽光パネルを設置することで太陽エネルギーを電力に変換し、発電した電力を電力会社に売却(売電)して収益を得る投資方法です。国が定めた価格で買い取ってくれるため、安定した利益が得られます。
ただし買取価格が徐々に低下傾向にある点には注意が必要です。
資産運用で成功する医師の特徴
どの資産運用もリターンが狙えるものの、リスクもゼロではないため失敗してしまう可能性もあります。資産運用で成功する医師の特徴を5つ紹介します。
- 投資の目的が明確になっている
- ハイリスク・ハイリターンを避ける
- 根拠のある投資をする
- 継続的に情報収集している
- 専門家に相談している
投資の目的が明確になっている
大きなリターンを狙える資産運用は、値動きが大きいため大きく元本割れする局面がある、一方、元本割れリスクが少ない資産運用はリターンも小さいという特徴があります。
目的が明確になっていないと、必要以上にハイリスク・ハイリターンの資産運用で元本を減らしてしまったり、資産運用をしたもののまったく目標額に届かなかったりすることが起こり得ます。
資産運用をするときは、投資の目的を明確にしましょう。
この投資は老後資金、もう一方は子どもの教育資金など目的を複数に分けて、それぞれ目的に合った投資方法を選ぶという方法もあります。
ハイリスク・ハイリターンを避ける
どの資産で資産運用をしようか選んでいると、どうしてもハイリターンの商品に目が行きがちになります。しかしハイリターンの商品は、大きなリスクを抱える可能性が高いため、リターンばかりに気を取られていると失敗してしまいます。
資産運用は、自身の投資経験や資産状況、投資の目的などからリスク許容度を確認してから、資産を選ぶようにしましょう。
根拠のある投資をする
投資はギャンブルのようなものと言われることがあります。確かに投資で100%確実に増やせる方法はありません。しかし経済指標やテクニカル指標などを分析して適切な時期に売買すれば、元本割れリスクを軽減させることができます。
投資がギャンブルと感じる方は、闇雲に売買をする「ギャンブルのような投資」をしている傾向があります。
投資は根拠を持って行うようにしてください。
投資について分析をする時間がない方は、複数の資産に分散して投資をする分散投資、積み立て投資で購入時期を分散させる「ドルコスト平均法」、長期投資などを活用すればリスク・リターンを抑える運用が可能です。
継続的に情報収集している
常に成長し続ける投資商品はありません。トレンドが変わったり、制度が変わって従来のような運用ができなくなったりする可能性もあるでしょう。そのため資産運用は、資産を投じれば終わりではなく、関連する情報やトレンドを常に収集しておくことが大切です。
専門家に相談している
医師は日常業務で忙しいため、資産運用を始めても情報収集や資金管理を怠ってしまい「気が付いたら資産が大幅に減少していた・・」ということが起こり得ます。管理が難しい方、あるいはそもそもどのような資産運用が自身に合っているかわからない方は、専門家に相談しましょう。
医師の資産形成3ステップ
医師が具体的に資産形成を始めるには、どうしたら良いのでしょうか?3つのステップに分けて紹介します。
- ライフプランを組み立てる
- 資産の全体像を見える化する
- 資産運用先を決定する
ステップ1.ライフプランを組み立てる
ライフプランとは、自身の人生を設計することを指します。人生の中で住宅購入や教育費、老後資金など大きなお金がかかる出来事のことを「ライフイベント」と言いますが、毎月の収入で普段の生活は問題なく送れても、こうしたライフイベントの資金準備が不足する可能性があります。
実際にライフプランを作成して、自身にはどのようなライフイベントが起こり得るのか、あるいは、どのようなライフイベントを送りたいのかを明確にすることで、投資の目的を決めましょう。
投資の目的が決まっていないと、ハイリスク・ハイリターンの資産運用方法を選んでしまい、必要以上に自身の資産を危険にさらすことになってしまいます。
ステップ2.資産の全体像を見える化する
すでに加入している生命保険や預貯金、不動産などがすでにあるのに、同じような投資商品を選んでしまうと、重複してしまう可能性があります。ライフプランを組み立てたら、自身の資産の全体像を見える化して、すでに保有している資産がないか確認しましょう。
例えば、老後資金の場合、定期的に送られてくる「ねんきん定期便」から、将来うけとれる公的年金の概算が確認できます。これを踏まえずに資産運用をすると、必要以上の金額をリスクがある投資に回してしまうかもしれません。
ステップ3.資産運用先を決定する
資産の全体像を見える化して、カバーできていない資産があれば運用商品として取り入れていきましょう。
また資産運用を始めたら、定期的に運用状況をチェックすることも大切です。
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まとめ:医師こそ資産運用して将来に備えよう
医師は高所得ですが人の命を預かる仕事のため精神的なストレスが大きく、万が一のことが起こると働けなくなるため、収入が途絶えたときのリスクを考えておく必要があります。
高所得者向けの金融商品や、高所得者のほうが有利に運用できる可能性もあるため、医師こそ資産運用をして将来の不安を解消しましょう。
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