会社が成長し、本社以外の場所に支店や営業所を設立することは喜ばしいステップです。
しかし、いざ拠点を構えるとなると「税金はどこに払えばいいのか」「手続きが倍になるのではないか」という不安が頭をよぎるかもしれません。拠点の税務を正しく理解していないと、意図せぬ申告漏れや、無駄な税負担を招く恐れがあるので注意が必要です。
本記事では、プロの税理士が本社以外の拠点に関する法人税・地方税の仕組みを平易に解説します。
最後まで読むことで、多拠点展開に伴う税務リスクを完全に排除し、経営に集中できる環境を整える方法が分かります。
本社以外の拠点を作ると法人税はどう変わる?まずは基本を整理
法人税そのものの納付先は変わりませんが、地方税については拠点の数だけ申告が必要になります。日本の税制において、国に納める国税と、自治体に納める地方税でルールの適用範囲が異なるからです。
東京に本社があり、大阪に営業所を新設した場合を考えてください。法人税(国税)は東京の税務署へまとめて納めます。対して、法人住民税と法人事業税は、東京と大阪の両方の自治体へ納める義務が生じます。
本社以外の拠点を持つ際は税金の種類によって納付先が分かれるという大原則を覚えてきましょう。
法人税(国税)は本店の所在地で一括納付がルール
法人税(国税)の申告は、原則として本店の所在地を管轄する税務署に対して行います。
全国に何十箇所の支店があっても、利益を一括して計算し、本店の窓口一つで完結できる仕組みです。このルールがあるおかげで、国税に関する事務負担は拠点が増えても劇的には増加しません。
まずは国への税金は本社でまとめるとシンプルに捉えて問題ありません。
注意が必要なのは法人住民税と法人事業税
一方、法人住民税と法人事業税は事業所が存在する都道府県と市町村の両方に対して個別に申告しなければなりません。(※東京23区のみ事業所がある場合など、例外もあります)
地方税は、その地域で行われる行政サービスの対価という側面があるため、利益をそれぞれの地域へ配分する考え方を採用しています。
事務所の形態が営業所であっても出張所であっても、実態として事業が行われていれば対象となります。
【重要】赤字でもかかる均等割に注意
地方税には均等割という仕組みがあり、利益が出ていなくても、拠点ごとに年間約7万円〜(規模による)の納税が必要です。むやみに拠点を増やすと固定費が増加するため注意してください。
支店を出した後に地方自治体への届出を忘れると、後に延滞税などのペナルティを課される可能性があるため注意が必要です。
本社以外の拠点へ税金を分ける按分計算の仕組みと注意点
地方税を各自治体に納める際は、利益を分けるための按分(あんぶん)計算という作業が必要不可欠です。各拠点の影響度に応じて、公平に税金を割り振らなくてはなりません。
具体的な計算では従業者数を基準にします。例えば全従業員が10人で、本社に6人、支店に4人いる場合、利益を6対4の割合で分けて、それぞれの自治体の税率を掛け合わせます。
従業員一人あたりの負担額を算出するようなイメージを持つと、理解がスムーズでしょう。
従業員数と設置月数が計算の鍵を握る
按分計算を正確に行うためには、従業員数だけでなくその拠点が稼働していた月数も考慮しなければなりません。年度の途中で支店を出した場合、12ヶ月分を丸ごと計算に含めるのは不公平です。
「月末時点の従業員数 × 稼働月数 ÷ 12」といった計算式を用いて、月割計算を行います。端数の処理一つで納付額が変わることもあるため、この計算は非常に繊細な作業といえます。
申告漏れが招く重加算税のリスクを回避する
拠点の存在を把握していながら意図的に申告を怠ったとみなされると、厳しい罰則が待っています。税務当局は不動産の登記情報や社会保険の加入状況から、支店の存在を容易に把握できます。
万が一、悪質と判断されれば、本来の税額に加えて35%以上の重加算税が課される事態にもなりかねません。無用なリスクを背負わないためにも、拠点を新設した際は速やかに専門家へ相談し、適切な届出を済ませることが経営者の責務です。
税理士が教える!本社以外の拠点を活用した財務戦略
拠点を増やす行為は、単なる業務拡大だけでなく、賢い財務戦略の構築チャンスでもあります。拠点の配置や資本金の額を工夫することで、会社全体の税負担を最適化できる可能性があるからです。
多拠点展開を単なるコストと捉えるか、節税の武器に変えるかで、数年後の手残りキャッシュに大きな差が生まれます。
外形標準課税を意識した資本金の設計
資本金が1億円を超える企業には、利益の有無に関わらず課税される外形標準課税が適用されます。拠点が増えて事業規模が大きくなると、この資本金の壁をどうクリアするかが極めて重要になります。
事業所数が多い会社ほど、外形標準課税による付加価値割や資本割の負担が重くのしかかる傾向があります。増資を検討する際などは、拠点の数と将来の税負担を天秤にかけたシミュレーションが欠かせません。
多拠点展開を機に見直すべき資産運用と節税スキーム
拠点が分散すると、それぞれの拠点に関連する経費計上の仕方も多様化します。例えば、支店長のための社宅制度や、拠点ごとの福利厚生費の活用など、節税の選択肢が広がります。
これらを会社全体の資産運用と組み合わせることで、強固な財務体質を作り上げることが可能です。
複雑な複数拠点の税務をスムーズに完結させる方法
拠点が2つ、3つと増えていくと、アナログな管理では限界が訪れます。各自治体から送られてくる納付書を管理し、期限までに支払う作業だけでも膨大な工数を奪われるからです。
管理不足による支払い遅延は、会社の社会的信用を損なうことにも繋がりかねません。多拠点経営こそ、ITツールと専門家を賢く使い、仕組みで解決するべき領域です。
クラウド会計と専門家の連携で管理コストを削減
最新のクラウド会計ソフトを導入すれば、拠点ごとの売上や経費をリアルタイムで集計できます。さらに、税務の専門家とデータを共有することで、按分計算や地方税の申告を自動化・効率化することが可能です。
テクノロジーの力を借りることで、拠点がいくら増えても、管理コストを一定以下に抑え続けることができます。
税務調査で狙われやすい拠点間取引の透明性
拠点が増えると、税務調査において拠点間の経費付け替えがないか厳しくチェックされます。特定の拠点の赤字を埋めるために、不自然な取引を発生させていないか、当局は目を光らせているのです。
こうした疑いを持たれないためには、論理的で透明性の高い会計処理が求められます。日頃から専門家のチェックを受けることで、いつ調査が来ても動じないクリーンな経営が実現します。
まとめ:本社以外の税務を最適化して事業成長を加速させよう
本社以外の拠点を持つことは、企業が次のステージへ進んだ証です。法人税(国税)は本社でまとめ、地方税は各拠点へ正しく按分する。この基本を徹底した上で、戦略的な税務対策を行うことが、持続可能な成長のカギとなります。
多拠点の税務管理は、拠点数が増えるほど指数関数的に複雑さを増していきます。少しでも不安を感じたり、管理に限界を感じたりした際は、ぜひ一度、税理士法人ネイチャーへご相談ください。
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