「決算が近いけれど、今年買った備品は一度に経費に落とせるのだろうか」と、頭を悩ませる経営者の方は非常に多いものです。即時償却と一括償却は、どちらも資産の購入費用を早期に経費化できる便利な制度ですが、適用条件や節税のインパクトは大きく異なります。
この記事では、資産運用のプロである税理士が、経営者の方が直面する今すぐ知りたい正解を、専門知識を優しく噛み砕きながら、分かりやすく紐解いていきます。最後まで読めば、会社のキャッシュを最も効果的に守る方法が明確になり、迷いなく決算対策を進められるはずです。
即時償却と一括償却の決定的な違いは経費にするスピード
即時償却と一括償却の最も大きな違いは、代金をいつ、どれくらい経費として計上できるかという期間の問題に集約されます。どちらも本来であれば何年もかけて少しずつ経費にするルールを、特別に短期間で処理することを認める制度です。
即時償却は買った年に全額を経費にできる
即時償却とは、購入した年度に費用の全額を一括で経費(損金)として計上する方法を指します。例えば、300万円のサーバーを3月に購入し、経営強化税制を活用して即時償却を選択したとしましょう。この場合、3月決算の会社であれば、300万円すべてを今期の経費に充てることが可能です。利益が大きく出ている年であれば、法人税の負担をダイレクトに抑える強力な武器となります。
一括償却は3年間で均等に経費化する仕組み
一括償却は、購入した金額を3年間にわたり、毎年3分の1ずつ均等に経費として計上していくルールとなります。先ほどの25万円の例(※一括償却は20万円未満が対象のため、ここでは18万円の資産と仮定します)で考えると、毎年6万円ずつを3年間に分けて経費化するイメージです。即時償却ほどの瞬発力はありませんが、数年間にわたって安定的に利益を圧縮できる特徴があります。
そのほかの経費算入に関するルール
30万円未満の減価償却資産(=「少額減価償却資産」)を年300万円まで一度に経費算入ができる、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」というルールがあり、一括償却資産の3年間での経費算入とよく比較されます。また令和8年4月1日以降は、経費算入可能な資産がひとつ当たり30万円未満から40万円未満に引きあがる予定になっています。
【比較表】金額別で見る償却ルールの使い分け
購入した資産の金額によって、使える制度は厳格に決まっています。以下の表を参考に、自社の購入品がどこに該当するかを確認してください。
| 取得価額 | 処理方法の選択肢 | 備考 |
| 10万円未満 | 消耗品費 (事業の用に供した時点で経費化) |
全ての企業が対象 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年均等に経費計上 | 3年均等償却が可能 (通常の減価償却も可能) |
| 30万円未満 | 少額減価償却資産として一度に経費計上 | 中小企業・個人事業主が対象で年300万円まで (通常の減価償却も可能) |
|
特例 |
中小企業経営強化税制を適用し、即時償却 (全額を当期に経費計上) |
税制を活用し初年度に全額を経費計上 (通常の減価償却+税額控除も可能) |
10万円未満:消耗品費として全額経費
1個あたりの金額が10万円未満であれば、難しい計算は必要ありません。購入したその日のうちに消耗品費などの科目で全額を経費として処理できます。これは節税の基本であり、最も手間がかからない方法です。
20万円未満:一括償却資産の選択が可能
金額が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産という選択肢が現れます。この制度の優れた点は、後述する償却資産税の対象外となる点です。会社の規模に関わらず利用できるため、大企業でもよく活用される手法となります。
30万円未満:中小企業なら一度に経費算入できる
青色申告をしている中小企業や個人事業主であれば、30万円未満の資産を一度に経費計上できる少額減価償却資産の特例が使えます。年間合計300万円までという上限はありますが、15万円や25万円といった高額な備品を一気に経費化できるメリットは計り知れません。
中小企業経営強化税制
一定の税制の活用により、初年度に全額を経費計上することが可能です。一点当たりの投資金額が数百万円を超えるような大規模な設備投資などで活用されます。
意外な落とし穴!償却資産税の有無でトータルコストが変わる
多くの経営者が、所得税や法人税の節税ばかりに目を奪われがちですが、忘れてはならないのが償却資産税という地方税の存在です。実は、どの償却方法を選ぶかによって、この税金の支払い額に差が出ます。
一括償却資産は償却資産税がかからない
一括償却資産として3年で償却するルートを選んだ場合、その資産に対して償却資産税は課税されません。固定資産税の一種であるこの税金は、通常、会社が保有する設備や備品に対して毎年かかります。一括償却を選ぶことで、法人税だけでなく償却資産税の負担も抑えられる点は見逃せません。
少額減価償却資産は課税対象になる点に注意
30万円未満の特例を使って経費算入した場合、その資産は償却資産税の課税対象になります。たとえ帳簿上の価値が1円になったとしても、地方自治体からは資産とみなされ、税金を請求される仕組みです。目先の法人税を減らすために30万円未満の特例を選んだ結果、数年間にわたる地方税の支払いでトータルコストが膨らむケースも珍しくありません。
「税理士が教えるどっちが得?」を判断する2つのシミュレーション
結局のところ、即時償却と一括償却、30万円未満の特例はどれを選ぶべきなのでしょうか。富裕層の税務を数多く手がけてきた経験から、判断の指針を3つのパターンに分けて示します。
今期の利益を圧縮してキャッシュを残したい場合
「今期はたまたま利益が出すぎてしまった」「新事業のために、今は手元の現金を1円でも多く残したい」という状況であれば、少額減価償却資産の特例を活用した経費計上がおすすめです。償却資産税の負担というデメリットはあるものの、法人税の支払いを即座に繰り延べる効果は非常に強力です。浮いた資金を再投資に回すことで、さらなる事業成長を狙う戦略が描けます。
3年間の安定した節税と事務負担の軽減を狙う場合
利益が数年間にわたって安定している、あるいは地方税の負担を徹底的に排除したい場合は、一括償却資産が賢い選択です。3年間に分けて経費化することで、利益の平準化が図れるだけでなく、償却資産税の負担額がない分トータルリターンが増えます。また償却資産税の申告からも除けるため、複雑な資産管理を簡略化したい経営者にとっても、一括償却は非常に使い勝手の良い制度と言えるでしょう。
中小企業経営強化税制による即時償却の活用
一括償却資産は、投資金額を1/3ずつしか計上できません。また少額減価償却資産の特例は年300万円までという縛りがあります。そのため、高利益体質の法人様ではそれぞれの制度を活用しても決算対策が追いつかない場合があります。
その場合は、中小企業経営強化税制を活用し即時償却を行うことで、数百万~数千万の経費を計上することが可能です。こちらは国が中小企業に事業投資を行っていただきたいという願いから設けられている税制です。
本税制を活用し、
- 初年度に数百万~数千万の経費を創出
- 数年間にわたり安定収入を獲得
といった事業投資を活用した対策をされている事例が、当社には多数ございます。
まとめ:最適な償却方法で賢く資産を守ろう
即時償却と一括償却、少額減価償却資産の特例は、どれも優れた節税手法ですが、その性質は対照的です。即時償却は瞬発力のある大幅な節税に向き、一括償却は地方税を含めたトータルでのコスト削減に向いています。
金額基準や会社の利益状況、そして将来のキャッシュフローを総合的に判断することが、真の資産防衛に繋がります。もし具体的に決算対策としてどのような手法があるのかをお知りになりたい場合は、ぜひ無料相談にお進みください。
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