個人所有の米国中古不動産投資についての税制改正後、昨今、資産保全や運用の一環として日本法人名義での米国不動産購入を選択されるケースが増加しています。
法人での所有は米国のプロベート(遺産検認手続)を回避できるなどのメリットがある一方で、個人所有とは異なる州法上の義務や資金回収時のハードルが存在します。この記事では日本法人が米国不動産を保有・売却する際に必ず押さえておくべき実務ポイントについて解説します。
州外会社としての事業者登録(Foreign Corporation)
米国では設立された州以外でビジネスを行う場合、たとえ米国内の別州の会社であっても当該州から見れば「州外会社(Foreign Corporation)」として扱われます。日本法人もこの州外会社に該当します。
日本法人が米国内で不動産を購入し賃貸等の事業活動を行う場合、物件が所在する州当局に対して事業者登録を行う義務が生じます。
- 登録の要件
多くの州では不動産の所有や賃貸経営、現地での従業員雇用などは事業を行っているとみなされ登録が必須となります。 - 申請手続
ニューヨーク州の「Application for Authority」やカリフォルニア州の「Statement of Designation by Foreign Corporation」など、州ごとに定められた申請書を提出します。提出時に日本法人の登記事項証明書(英訳付き)等の添付が求められるケースもあります。
定期的な報告義務と閉鎖手続
事業者登録は一度行えば終わりではありません。法人としてのコンプライアンスを維持するために以下の対応が求められます。
- 年次(または隔年)報告
多くの州で会社の基本情報の更新や報告書(Annual/Biennial Report)の提出が義務付けられています。提出が遅れるとペナルティ(追徴金)が発生する場合があるため、厳格な管理が必要です。代表者の変更等があれば更新時に報告を行います。 - 撤退時の閉鎖手続
不動産を売却し事業活動を終了する際は、放置せずに必ず登録抹消の手続き(Certificate of Surrender of Authority等)を行う必要があります。
売却時の資金拘束リスク(FIRPTA)
出口戦略(売却)において特に注意が必要なのが、「FIRPTA(外国投資家不動産税法)」による源泉徴収制度です。
外国法人(日本法人含む)が米国不動産を売却する場合、連邦の税制度として売買価格の15%(居住用10%等)が買主によって源泉徴収され、IRS(内国歳入庁)へ納付されます。また、州でも、別途源泉徴収がされる場合もあります。これらは、最終的な税額ではなくあくまで予納の性質を持ち、後日確定申告により清算します。
この源泉徴収税額は、売却額に対して課税されるため、売却益に対する本来の税額よりも多く徴収されていることが多く、確定申告を行うことで差額の還付を受けられます。しかし還付されるまでの期間は、その源泉徴収税額が、拘束される点に留意しましょう。
小切手が換金できない問題への対処法
IRSからの税金還付は通常は米ドル小切手(Check)で送られてきます。しかし現在、マネーロンダリング対策の強化等により、日本国内の多くの主要銀行では海外振り出しの法人宛小切手の換金・取立を停止しています。ただし、一部の銀行やそれまでの取引実績のある銀行では、個人宛で振り出された小切手の預入(取立、換金)を受け付けてくれるところもあります。
還付金を受け取ったものの日本で現金化できないというトラブルは非常に増えていますが法的な解決ルートも存在します。
米国弁護士の活用(CTA口座)
米国の弁護士は職務上「クライアント・トラスト・アカウント(CTA)」という預かり金口座を開設できることがあります。
解決策として信頼できる現地の弁護士に依頼し、以下のフローをとる方法が有効です。
- IRSからの還付小切手を弁護士が受領・CTAへ入金
- CTA内で現金化
- 弁護士から日本法人の口座へ国際送金
ただし、アメリカでも口座開設手続が厳格になってきているため、事前に預かり金口座の活用可能性について現地弁護士と相談し、銀行に照会して頂くことをお勧めします。米国不動産の管理・売却においては、税務だけでなく法務面での専門的なサポートが不可欠です。
まとめ:法人による米国不動産投資は出口戦略が重要
米国不動産投資のトレンドは個人から法人へとシフトしていますが、管理・売却時に求められる実務も高度化しています。特に、本記事で解説した州への事業者登録や還付小切手の換金問題は、日本の商慣習とは大きく異なります。事前に把握していないと想定外のコストや資金凍結トラブルに発展しかねません。
法人による米国不動産投資を成功させる鍵は、購入時の利回り計算だけでなく保有中・売却時の税務・法務リスクまで見据えた出口戦略の確立にあります。
物件所在州での登記状況や将来の売却代金・還付金を「どの口座で、どう受け取るか」という実務フローを再確認してみましょう。売却開始後では対処が間に合わないリスクも存在します。現在の管理体制が、最終的な資金回収までを確実に見据えたものになっているか、今一度セルフチェックを行うことが肝要です。
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