近年、資産運用の一環として米国に銀行口座や証券口座をお持ちになる方が増えています。しかし、口座名義人が亡くなった際の相続手続きについては、日本と大きく異なる法制度が存在することをご存じでしょうか。
今回は、米国資産の相続において避けて通れないプロベート(裁判所による遺産清算手続き)のリスクと、それを回避するための有効な手段であるPOD、TODについて解説します。
米国資産の相続につきまとうプロベートのリスク
もし、日本にお住まいの方が米国の銀行や証券会社に口座を残したまま亡くなった場合、その資産は米国の法律に基づきプロベート(Probate)という裁判所の手続きの対象となります。
これは「日本に住んでいるから関係ない」というわけにはいきません。資産が米国にある以上、現地の法手続きが適用されるのです。プロベートには以下の3つのデメリットがあり、遺族にとって大きな負担となります。
- 費用が高い:現地の弁護士費用や裁判費用がかさむ
- 期間が長い:手続き完了まで1年以上かかるケースも珍しくない
- プライバシーがない:裁判記録として資産内容や相続人情報が公開される
この間、口座は凍結され、遺族であっても資産を動かすことはできません。この事態を避けるために有効なのが、生前の手続きであるPODとTODです。
預金口座の凍結を防ぐPOD(Payable On Death)
POD(死亡時支払)とは、銀行口座(預金)に対して設定できる制度です。
あらかじめ受取人(Beneficiary)を指定しておくことで、名義人の死亡時にプロベートを経ることなく、銀行の手続だけで、指定した受取人へ預金をスムーズに承継させることができます。従って、基本的に「遺産分割協議」の対象外となります。
- 対象:銀行預金(Checking/Savingsなど)
- メリット:裁判所の手続き不要。受取人は家族以外も指定可能。
- 手続き:銀行所定のフォーム(POD Form)を提出するのみ。
証券口座の凍結を防ぐTOD(Transfer On Death)
TOD(死亡時譲渡)は、PODの証券口座版とお考えください。
株式や債券、投資信託などを保有している場合、TODを設定しておくことで、同様にプロベートを回避して受取人に資産を承継させることが可能です。
- 対象:株式、債券、投資信託などの証券口座
- 手続き:証券会社へ所定のフォームを提出。
米国で資産運用(IRA等)をされている場合、TODを設定していなければ、換金や移管のために非常に煩雑なプロベート手続きを余儀なくされます。
注意点:あくまで手続きの対策であり節税ではない
PODやTODを活用することで、プロベートという手続き上の負担は回避できますが、日米の相続税(遺産税)の課税対象であることに変わりはありません。
この制度は節税対策ではなく、あくまで資産凍結の回避や円満な資産承継のための手段であるとご認識ください。
まとめ:事前の準備が円満な相続の鍵
米国資産は、高い成長性が魅力である一方、相続時には国境を越えた複雑な手続きが発生します。ご自身に万が一のことがあった際、ご家族が困らないよう、PODやTODの設定状況を今一度ご確認ください。
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