前回の記事「第1回:【米国相続】プロベート(検認裁判)の基礎知識と不動産を守るTODD活用法」では、米国不動産における相続対策(TODD)をご紹介しました。しかし米国投資を行っている方の多くは、不動産以外にも銀行口座や証券口座、現地法人(LLC)の持分を保有されています。対策を怠るとプロベート(裁判所による検認手続き)の対象となり、口座が凍結されてしまいかねません。この記事では金融資産と法人持分に関する回避策を解説します。
銀行口座を守るPOD
米国の銀行口座も、名義人が死亡すると凍結され、プロベートを経ないと引き出しができなくなります。これを防ぐのが「死亡時支払(Payable On Death、以下POD)」制度です。
【PODの仕組み】
銀行にあらかじめ受取人(Beneficiary)を登録しておくことで、口座名義人の死亡時に、プロベートを経ずに残高を受取人へ支払う制度です。不動産のTODDの銀行版と考えると分かりやすいでしょう。
【PODのポイント】
- 手続き
多くの銀行では所定のフォームを提出するだけで手続き完了です。US Bankなど一部の銀行では日本からの郵送手続きのみで完結する場合もありますが、今後日本居住者へのサポートが縮小、変更される可能性があるので要注意です。 - メリット
プロベートになると葬儀費用などにすぐには充てられませんが、POD設定があれば速やかに資金移動が可能です。 - 注意点(小切手問題)
受取人が日本居住者の場合は銀行によっては海外送金に対応せず、米ドル小切手(Check)での払い戻しとなるケースがあります。日本国内で米ドル小切手の換金は年々ハードルが上がっているため、事前に換金(取立)可能な銀行口座を確保しておくなどの準備が必要です。
証券口座を守るTOD
米国株などを管理する証券口座には「死亡時譲渡(Transfer On Death、以下TOD)」という制度があります。 銀行のPODとほぼ同じ仕組みで死亡時に対象の株式や債券を、指定した受益者に移転させられます。
日本人(米国非居住者)の証券口座は証券会社によっては、TODの設定を受け付けていないので注意が必要です。相続発生後に一時的に受益者名義の米国口座開設を求められるケースなどもあり、運用が厳格な場合があるため事前の確認が重要です。
現地法人(LLC)持分の懸念点
米国不動産投資において節税や責任限定のために「現地LLC(Limited Liability Company)」を設立して物件を購入するケースがあります。「法人の持分なので個人の相続と関係ない」と思われがちですがそれは誤解です。
【LLC持分(Membership Interest)は動産扱い 】
LLC自体は法人ですが持分(オーナーとしての権利)は個人の財産です。オーナーが亡くなれば持分に対して米国のプロベートが適用されるリスクがあります。
【Operating Agreement(運営契約書)の活用】
LLCの定款にあたるOperating Agreementの中に相続に関する条項を盛り込むことが有効です。「メンバー(オーナー)死亡時には、持分を〇〇に自動的に承継させる」といった規定を入れておくとプロベートを回避してスムーズな承継が可能になりえます。
既にLLCをお持ちの方もOperating Agreementの改定は可能ですので、一度内容を見直すことをお勧めします。
まとめ:資産ごとの凍結対策で完全防備を
銀行口座、証券、法人持分と、資産の種類によって適切な回避策は異なります。共通しているのは何も対策しなければ、すべてプロベートの対象になり得るという点です。 資産構成全体を俯瞰し法務と税務の両面からアプローチすることが、資産防衛の鍵となります。
米国資産の承継には、現地の州法や法人規定(Operating Agreement)への深い理解が不可欠です。法的な整合性と税務効率を両立させるため、客観的なリスク評価に基づいたシミュレーションを重ねていくことが、円滑な資産承継を実現するための重要なプロセスとなります。
「第3回:【米国相続】カリフォルニア州の特例と包括的対策(リビングトラスト・共有名義)」
資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。
お客様の保有資産をさらに増やすための最適な提案を数多くの選択肢からご提供します。
豊富な経験と、投資や税務の様々な視点から、お客様にあった税金対策を提案します。
相続税の不安やお悩みに、専門チームが最適な対策をご提案します。


