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第3回:【米国相続】カリフォルニア州の特例と包括的対策(リビングトラスト・共有名義)

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これまでの連載で資産ごとのプロベート回避策(TODDやPODなど)をご紹介してきました。最終回となる今回は対策をせずに亡くなってしまった場合の救済措置や、複数の資産をまとめて守る「リビングトラスト」などの応用編について解説します。


「第1回:【米国相続】プロベート(検認裁判)の基礎知識と不動産を守るTODD活用法」
「第2回:【米国相続】銀行口座・証券・LLC持分におけるプロベート回避術」

対策漏れでも諦めない!カリフォルニア州の少額特例

もし生前対策(TODDやPOD)を行わずに相続が発生してしまった場合でも資産額が一定額以下であれば、通常のプロベートよりも簡易な手続きで済む可能性があります。特に日本人の投資が多いカリフォルニア州の例を見てみましょう。

【少額遺産手続き(Small Estate Procedure)】

カリフォルニア州では、2025年4月1日以降の死亡の場合、遺産総額が208,850ドル以下の場合、以下の簡易手続きが利用できます。(3年後ごとにインフレ調整されるので金額の確認は必要です。)

  1. 宣誓供述書による方法(Small Estate Affidavit)
    裁判所を通さず、弁護士が作成した「宣誓供述書」を金融機関等に提出する方法です。主に銀行口座の解約などに使われますが不動産には利用できません。
  2. 請願書(Petition)による方法(Simplified Probate Procedures)
    裁判所に請願書を提出し、許可を得て遺産を取得する方法です。通常のプロベートに比べて期間も短く費用も抑えられます。不動産が含まれる場合でも利用可能です。

その他、2025年からの新ルールとして、自宅等の不動産も簡素化の対象が広がっているため、改正点等含めて、専門家への確認は必要です。

少額といっても日本円で3,000万円以上(為替レートによる)の枠があるため、銀行口座の残高回収などで使えるケースは少なくありません。ただし現地の銀行担当者との折衝は英語かつ専門的なやり取りになるため、個人の力だけで完結させるのは困難です。

米国相続対策の王道リビングトラスト

複数の不動産や金融資産を持っている場合、個別にTODDやPODを設定するのは管理が煩雑です。そこで活用されるのが「リビングトラスト(撤回可能信託)」です。

【リビングトラストの仕組み】

生前に自分の資産の名義をすべて信託名義に変更しておきます。ただし、日本の相続税法においては、米国で信託名義に変更されても、日本の個人(被相続人)所有資産として、課税対象になります。

  • 生前
    自分自身が受託者(Trustee)として今まで通り自由に資産を使えます。
  • 死後
    あらかじめ指定した承継受託者(Successor Trustee)が管理を引き継ぎ、受益者に資産を分配します。

【メリットとデメリット】

  • メリット
    プロベートを完全に回避できて手続きの内容も非公開(プライバシー保護)。TODD制度がない州の不動産にも有効です。また、第二受託者や第二受益者の設定も可能となります。
  • デメリット
    設定コストがかかるほかに、日本居住者の場合「誰を承継受託者にするか(英語ができて信頼できる米国居住者など)」という人選のハードルがあります。

夫婦で守るジョイント・テナンシー

不動産購入時における所有形態の工夫も有効です。「ジョイント・テナンシー(Joint Tenancy)」という形態で夫婦共有名義にすると「生存者権(Right of Survivorship)」が付与されます。 夫婦の片方が亡くなった際に自動的にもう一方に完全な所有権が移る仕組みで、プロベートを経る必要がありません。

【税務上の注意】 

ジョイント・テナンシーは便利ですが、購入資金の拠出割合と持分割合が異なると日本の税務上は贈与とみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。法的な回避策と税務的な影響は常にセットで検討する必要があります。

まとめ:現状の棚卸しとリスクの特定から着手を

米国相続の対策においてまず取り組むべきは正確に現状を把握することです。保有資産がどの州にあり、どのような名義・形態で管理されているかを整理し、個別のリスクを可視化することから始めてみましょう。

家族構成や資産規模によって最適な選択肢は異なるため、自身の状況に潜む課題を明確にすることが肝要です。

米国資産の承継には現地の州法やプロベート制度への適合など、高度な専門判断が求められます。法的な整合性と日米の税務上の影響を多角的にシミュレーションし、優先順位を付けて具体的な準備を進めていくことが、将来の混乱を未然に防ぎ、円滑な資産承継を実現するための第一歩です。

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