毎日多くの患者と向き合い、細かな治療に神経を注ぐ歯科クリニックの院長にとって、税負担やキャッシュフローは重要な経営課題です。
「自由診療の売上が伸びて利益が出たが、税金で手元資金が残らない」「老朽化したユニットの入れ替えや将来の医療法人の承継に向けた準備をしたい」と考えていても、日々の診療業務や歯科衛生士の採用やマネジメントに追われ、具体的な財務戦略を検討する時間を確保しにくい場合があります。
個人・法人の税務を支援してきた税理士法人ネイチャーが、歯科クリニックで検討される主な税務と資金繰り上の論点を踏まえ、税理士選びのポイントを解説します。
この記事を読むことで、現在の顧問税理士との良好な関係を保ちつつ、セカンドオピニオンを活用し、節税を含む税務・資金繰り対策を検討する際の考え方がわかります。
歯科クリニックが税理士を選ぶ際の3つのポイント
歯科業界特有の事情を深く理解し、中長期的な資金確保に向けて効果的な対策を提案できる専門家の基準を3つの視点から解説します。
院長がご自身の資産状況に合った最適なパートナーを見極めることで、将来の分院展開や事業の引き継ぎに向けた選択肢が大きく広がります。どのような視点で専門家を比較検討すべきか、具体的なポイントを確認していきましょう。
- インプラントなどの自由診療の会計と収益変動に対応できる
- 医療法人化とMS法人の必要性を切り分けて提案できる
- 法人・院長個人・相続を一体で検討できる
インプラントなどの自由診療の会計と収益変動に対応できる
歯科クリニックでは、社会保険診療等の非課税取引と、自由診療のうち消費税の課税対象となる取引を区分して処理する必要があります。矯正治療など長期間にわたる診療については、契約内容や役務の提供状況に応じて売上の計上時期を判断する必要があります。
月次決算をもとに自由診療の売上、設備投資、借入金返済、納税予定額を見通し、税引後のキャッシュフローを継続的に試算できるかを確認しましょう。
インプラントや矯正治療などの自由診療が増加すると、売上や利益が前年から大きく増え、所得税・法人税や消費税などの納税資金が増加する場合があります。 急激な増益に対しては、単に納付する税額を計算して終わるのではなく、将来の分院展開や大型の設備投資を見据えた資金計画が欠かせません。
急激な増益が見込まれる場合には、単に納税額を計算するだけでなく、設備投資の時期や利用できる税制、法人化の要否、役員報酬、将来の退職金・承継なども踏まえて、税引後のキャッシュフローを検討できる専門家を選ぶことが重要です。
医療法人化とMS法人の必要性を切り分けて提案できる
個人開業医から医療法人化(法人成り)のサポート実績や、歯科業界で活用されることのある「MS法人(メディカルサービス法人)」の設立および運用に精通しているかどうかが、専門家選びの重要な基準となります。
MS法人は、医療機関の周辺業務を担う株式会社などの通称です。医療機器や不動産の賃貸、事務業務の受託など を担うことがありますが、設立すれば自動的に節税できるものではありません。
たとえば、MS法人が設備を保有し、医療法人に貸与する形態を検討する場合があります。ただし、医療法人とMS法人との取引では、業務の実態や契約内容、対価の妥当性、関係事業者との取引に関する報告対象への該当性、医療機器の貸与業に関する許可・届出の要否などを確認する必要があります。
医療法人とMS法人を併用する場合は、各法人の事業目的や取引実態、管理コスト、資金負担および税引後キャッシュフローを個別に検証し、必要に応じて税理士や行政書士などの専門家に相談することが重要です。
法人・院長個人・相続をそれぞれ税理士に相談する
クリニックの経営が安定しており、多額の資産を保有されている院長の場合、法人に利益を残す対応だけでは資産形成や承継の目的に合わない場合があります。さらに踏み込んで、院長個人の資産形成に関する税務上の論点を整理しましょう。金融商品に関する具体的な投資助言等が必要な場合は、必要な登録を有する事業者と連携します。
ただし、院長個人の資産を増やすことが、そのまま相続税対策になるわけではありません。相続財産の評価、遺産分割、納税資金、二次相続まで含めて検討する必要があります。
現実的には、歯科経営の顧問税理士と、院長個人の相続税対策や資産運用、両方に精通した税理士を見つけることは難しいため、得意分野ごとに税理士を使い分けることが重要になります。
歯科クリニックが税理士への依頼にかかる費用の目安
日常の顧問業務と個別コンサルティングにかかる費用の違いについて、費用の目安を一覧にしました。実際の費用は、事業規模、記帳代行の有無、訪問頻度、業務範囲などによって異なります。
費用の内訳や業務範囲の違いを事前に把握しておくことで、単なるコストとしてではなく「将来の資産を守るための投資」として専門家を活用できるようになります。
| 依頼内容 | 費用の目安 | 主な業務内容 |
| 顧問契約(月額) | 3万〜10万円/月 | 保険診療と自由診療の売上区分管理(窓口収入・診療報酬の処理)、窓口現金・レジの記帳指導、一般的な税務相談 |
| 決算申告料(年1回) | 10万〜40万円 | 所得税または法人税、消費税などの申告書作成、税務署への提出 |
| セカンドオピニオン・コンサルティング | 個別見積もり | MS法人の活用に関する税務上の検討、医療法人の承継に関する税務、院長個人の資産承継に関する税務相談など |
※上記は複数の税理士事務所の料金例を参考にした一般的な目安であり、税理士法人ネイチャーの料金表ではありません。
歯科クリニックが支払う費用は、依頼する業務範囲によって大きく異なります。毎月の窓口収入と入金の照合や診療報酬等の会計処理など、日常的な税務処理を依頼する顧問契約の場合、月額数万円からが一般的です。
しかし、医療法人の設立支援や高額資産に関するコンサルティング、持分の定めのある社団医療法人(いわゆる経過措置型医療法人)では、出資持分の評価や相続税、持分なし医療法人への移行など、特有の承継課題が生じることがあります。依頼する場合は、お客様ごとにオーダーメイドのご提案となるため個別見積もりとなります。
歯科クリニックが税理士に依頼するメリット
高度な財務戦略を専門家に依頼することで、院長が時間的にも経済的にも得られる具体的な恩恵を3つの視点から解説します。日々の診療で忙しい中では気づきにくい、法改正を踏まえた資金計画や、将来の設備投資・承継に向けた課題を整理しやすくなります。
- 歯科用医療機器に適用できる税制を確認する
- 本業である歯科の診療業務に専念できる
- 法人・院長個人の税引後資金を比較し相続や承継に備える
歯科用医療機器に適用できる税制を確認する
歯科経営に欠かせない高額な歯科用医療機器を導入する際は、高額な設備投資を決定する段階で、取得前に必要となる手続きの有無を含め、利用可能な税制を確認することが重要です。
取得価額500万円以上で所定の対象機器に該当する場合などは、医療用機器等の特別償却を検討できることがあります。ただし取得価額500万円以上の医療機器であっても、すべてが対象となるわけではなく、厚生労働大臣が指定する一定の医療機器などに該当する必要があります。 適用に当たっては、対象機器、取得価額、取得・供用時期などを制度ごとに確認する必要があります。
最新の法改正情報に精通した専門家を活用すれば、適用可能な制度を事前に確認できます。高額な設備投資を行っても、納税時期を含む設備投資後の資金繰りを見通しやすくなります。
本業である歯科の診療業務に専念できる
税務・財務資料の整理やシミュレーションを専門家に委ねることで、院長は本業である歯科の診療業務や、歯科衛生士やスタッフの採用・定着といった組織マネジメントに専念できます。
税制は毎年複雑に改正されるため、自力で情報を集めて判断しようとすれば本業の時間が大きく削られてしまいます。専門知識を要する税務・財務業務を専門家に相談することで、院長が診療やスタッフの採用・マネジメントなど、本来注力すべき業務に充てる時間を確保しやすくなります。
法人・院長個人の税引後資金を比較し相続や承継に備える
個人開業か医療法人かによって、院長が受け取る資金の税務上の扱いは異なります。医療法人では役員報酬を設定できますが、法人税上の損金に算入するには、定期同額給与や事前確定届出給与等の要件を満たし、かつ不相当に高額でないことが必要です。
役員報酬や法人内部に残す資金、将来の役員退職金、借入金返済、院長個人の資産形成を比較し、法人と個人を合わせた税引後キャッシュフローを検討しましょう。特に多額の資産を保有する院長の場合は、法人と個人を分けて考えるのではなく、相続・事業承継まで含めて税引後の資金を一体的に検討することが重要です。
歯科クリニックが税理士に依頼する注意点
専門家に相談する際、ミスマッチや将来的なトラブルを防ぐために必ず依頼前に確認しておきたい注意点を2つ解説します。目先の数字だけにとらわれて経営の全体像を見誤ると、良かれと思って行った対策が逆にクリニックの手元資金を圧迫する恐れもあります。
- 日常の会計・申告と専門的なコンサルティングでは契約範囲が異なる
- 医療法人化・事業承継などは契約範囲外の場合がある
日常の会計・申告と専門的なコンサルティングでは契約範囲が異なる
税理士事務所によって、記帳・申告、医療法人化、設備投資、相続・事業承継など、得意分野や契約範囲は異なります。
現在の顧問税理士との契約を継続しながら、特定の論点について別の専門家からセカンドオピニオンを受ける方法もあります。ただし、誰が申告書の作成・提出や税務署対応を担当するのか、どこまで資料を共有するのか、追加報酬が発生するのかなど、役割分担を事前に明確にしておきましょう。
日常の会計処理と、設備投資・相続・承継に関する助言では、求められる経験や専門性が異なります。
医療法人化・事業承継などは契約範囲外の場合がある
現在の顧問契約でどこまでの相談が可能か、事前に契約内容を確認しておくことも欠かせません。事業承継支援などが顧問契約に含まれていない場合、別途契約や追加報酬が必要になったり、希望する期限までに対応できなかったりする可能性があります。
日常の記帳業務は現在の専門家に任せたまま継続し、足りない高度な対策の提案部分のみを、セカンドオピニオンとして別の専門家にスポットで依頼するという切り分けが有力な選択肢の一つです。
歯科クリニックの対策なら税理士法人ネイチャー
日々の診療技術が進化する中、歯科クリニックの院長やご一族の大切な財産を長期的に守り抜くためには、単なる決算申告の枠を超えた「全体最適の財務戦略」が求められます。
税理士法人ネイチャーでは歯科クリニックの会計顧問業務は承っておりません。当社はコンサルティングを専門業務とさせていただいており、歯科クリニックの決算対策や相続対策、院長先生個人の所得税対策などに特化をしたコンサルティング提案を実施しております。現在の顧問税理士とは良好な関係を継続していただきながら、税対策に特化したセカンドオピニオンとして弊社をご活用ください。
法人と院長個人の税務、資産形成、相続・承継について、現在の状況や将来の希望を整理したうえで、検討すべき論点をご案内します。ぜひご相談ください。
まとめ:歯科クリニックの悩みは税理士に相談しよう
歯科クリニックの院長が手元資金を効率的に残すためには、自院の複雑な収益状況を深く理解し、的確な提案ができる専門家の存在が不可欠です。
必要に応じて、現在の顧問契約を継続しながらセカンドオピニオンを利用する方法も検討してください。その場合は、現在の顧問税理士との業務分担や、申告内容に関する責任の所在を整理したうえで進めることが重要です。
当法人は歯科クリニックの院長に向けた無料相談を実施しております。現在の資産状況や将来のご希望を伺い、状況に応じた検討方法をご案内いたします。
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