事業承継における後継者不足の課題!M&Aを活用した解決策

後継者が決まらないまま年数だけが過ぎ、引退の時期を切り出せずにいる経営者は少なくありません。後継者不足は解決できない問題ではありません。親族以外への承継はすでに広がっており、選べる手段は増えています。

この記事では、事業承継における後継者不足の現状と背景、承継が止まる原因、放置した場合のリスク、M&Aを含む具体的な解決策を税理士が解説します。一読すれば、自社に残された選択肢と着手すべき順序を整理できるでしょう。

相続税

事業承継における後継者不足の現状

事業承継における後継者不足とは、経営者の高齢化や価値観の変化に伴い、自社の経営権を引き継ぐ後継者が決まっていないという課題を抱えた状況のことです。近年では不在率自体は改善傾向にあるものの、企業規模による格差が依然として存在するなどの課題が残されています。

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、2025年の後継者不在率は50.1%でした。前年から2.0ポイント低下し、7年連続で前年を下回っています。

一方、後継者が「いない」または「未定」の企業は、調査対象約27万社のうち13万8,000社にのぼります。企業規模で見ると差は大きく、大企業の24.9%に対し、中小企業は51.2%、小規模企業では57.3%です。

業種別(8業種)では、製造業が42.4%と最も低い水準でした。最も高いのは建設業の57.3%で、2011年以降の調査で初めて8業種すべてが60%を下回りました。より細かい中分類では、自動車ディーラーなどの「自動車・自転車小売」が62.3%で最も高くなっています。

改善は進んでいるものの、中小企業の半数が後継者を決めていません。

事業承継で後継者不足が深刻化している背景

後継者不足の背景には、親族内承継を前提としにくくなっていることや、経営者の高齢化によって承継準備に十分な時間を確保しにくいことがあります。それぞれ確認します。

  • 親族内承継だけでは後継者を確保しにくくなっている
  • 経営者の高齢化により引き継ぎの準備期間が不足している

親族内承継だけでは後継者を確保しにくくなっている

近年では、親族への承継のみが主流とはいえなくなってきています。同動向調査の2025年速報値によると、代表者交代のうち内部昇格が36.1%を占め、同族承継の32.3%を上回る結果となりました。

後継者候補の属性でも、非同族が41.0%と4年連続で最も多く、初めて40%を超えました。同族承継のうち「子ども」は29.7%で、前年から低下しています。

子どもがすでに別の職業やキャリアを築いているなど、親族内に適任者がいないケースもあります。そのため、後継者不足への対応では、親族内承継だけでなく、役員・従業員への承継やM&Aなども含めて早めに選択肢を検討することが重要です。

経営者の高齢化により引き継ぎの準備期間が不足している

事業承継では、後継者の選定や育成、株式・取引先の引き継ぎなどに一定の準備期間が必要です。経営者が高齢になってから承継を検討し始めると、十分な準備期間を確保できない場合があります。

帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」によると、2025年に休廃業・解散した企業の経営者の平均年齢は71.5歳で、過去最高を更新しました。最も多い年齢は76歳です。年代別では70代以上が63.7%を占め、80代以上は24.4%と過去10年で約2倍に増えました。

高齢になってから後継者探しを始めると、候補者の育成や取引先・従業員への引き継ぎに十分な時間を取れず、希望する事業承継を実現しにくくなる可能性があります。

また、準備が整わないまま経営者に相続が発生した場合にも注意が必要です。自社株は相続財産に含まれ、非上場株式は原則として相続税法や財産評価基本通達に基づいて評価されます。会社の利益や純資産などによっては評価額が高くなる一方、上場株式のように容易に換金できないため、相続税の納税資金が課題となることがあります。

相続税の申告と納付の期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わるまで自社株が複数の相続人の共有となった場合、原則として、その株式について権利を行使する者1人を定めて会社へ通知しなければ議決権等を行使できません。

後継者や自社株の承継方法を生前に決めていないと、相続後の経営判断に支障が生じる可能性があります。

相続税

事業承継で後継者不足を招く原因

後継者不足には、社会全体の構造的な背景だけでなく、各企業の承継準備や後継者選びに関する事情も影響します。ここでは、事業承継が進みにくくなる代表的な4つのケースを解説します。

原因起きている状態打開の方向
後継者が引き継ぎを拒否子どもが別の職業を選んでいる親族外や第三者へ対象を広げる
社内に候補がいない幹部を育てる仕組みがない早期の登用と権限の移譲
引退時期の先送り権限移譲の時期が不明確承継時期を決めて準備を逆算する
M&Aを検討していない選択肢として認識していない相談先を確保して情報を得る

事業の引き継ぎを後継者が拒否する

親族に後継者候補がいても、必ずしも本人が会社を引き継ぐとは限りません。すでに別の職業でキャリアを築いている場合や、会社の将来性・経営責任への不安などから、承継を希望しないケースがあります。

断られた時点で、対象を親族外へ広げる判断が必要です。説得を続けるほど、他の選択肢を検討する時間が減ります。

経営を任せられる人材が育っていない

社内に候補がいない会社では、幹部を育てる仕組みが整っていない場合が多くあります。経営者が判断のすべてを担ってきた会社ほど、次の世代が育ちません。

数字を見る力、金融機関との交渉、取引先との関係づくりは、経験を積まなければ身につきません。役職を与えるだけでなく、判断の権限を渡す期間が必要です。

帝国データバンクの2025年調査では、後任代表者のうち「経営経験3年未満」が69.6%を占めました。一方、「業界経験10年以上」の人は83.9%にのぼります。業界経験は豊富でも、経営者としての経験が浅いまま代表者へ就任するケースが多いことがうかがえます。

経営者が引退時期を先送りして後継者の育成が進まない

経営者の引退時期や権限移譲の時期が不明確だと、後継者候補が経営経験を積む機会を作りにくくなる場合があります。いつ経営を任されるのかが見えなければ、候補者の側も準備を進められないためです。

現経営者が重要な判断を長期間担い続ければ、取引先や金融機関との関係も現経営者に集中したままとなり、承継後の経営に影響する可能性があります。

事業承継の選択肢としてM&Aを検討していない

社内に候補がいないまま、M&Aを検討していない会社もあります。売却を検討する段階に至っていない、相談先を知らないといった理由です。

同じ調査では、2025年速報値の代表者交代のうち、買収や出向を中心とする「M&Aほか」が20.6%を占め、初めて20%を超えました。第三者への承継はすでに一般的な手段です。

選択肢を知らないまま時間が過ぎれば、買い手が見つかる可能性も下がります。業績が落ち込んでからでは、条件のよい相手を探しにくくなります。

相談先の種類については、以下の記事をご覧ください。

後継者不足による事業承継の失敗が招くリスク

承継できなければ、雇用と技術の両方が失われます。廃業が及ぼす影響を解説します。

  • 黒字のまま会社の廃業を余儀なくされ従業員の雇用が失われる
  • 長年培った独自の技術やノウハウが失われる

黒字のまま会社の廃業を余儀なくされ従業員の雇用が失われる

後継者が見つからなければ、業績にかかわらず会社を閉じることになります。帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」によると、2025年の休廃業・解散は6万7,949件でした。前年の6万9,019件から1.6%減ったものの、過去10年では2番目に多い水準です。休廃業した企業の正社員は少なくとも9万3,272人にのぼり、2016年以降で最多を更新しました。

直前期の決算が黒字だった企業の割合は49.1%です。業績が悪くないまま会社を畳んだ企業が、およそ半数を占めます。

【シミュレーション:創業40年以上、経常利益が安定している法人】

  • 従業員: 35人
  • 直近の経常利益: 4,000万円
  • 経営者の年齢: 78歳
  • 後継者: 未定

廃業を選べば、35人が転職先を探さなければなりません。長年取引を続けてきた会社も、仕入先の切り替えを迫られます。

手取りの面でも差が生じます。会社を解散・清算して残余財産の分配を受ける場合、分配額のうち税務上の資本金等の額を超える部分は、原則としてみなし配当(配当所得)として総合課税の対象です。他の所得と合算されるため、所得が多い株主ほど負担が重くなりやすい仕組みです。

一方、株式を第三者へ譲渡する場合は、後述のとおり申告分離課税が適用されます。資産の売却代金から退職金の支払いと債務の返済を終えた後に手元へ残る金額は、経営者の想定を下回る場合があります。実際の税額は資本金等の額、取得費、株主構成などにより異なるため、個別の試算が欠かせません。

※金額と人数は説明のための仮定です。

長年培った独自の技術やノウハウが失われる

廃業で失われるのは雇用だけではありません。長年かけて築いた技術や顧客との関係も、引き継がれなければ途絶えます。

特定の加工技術、独自の製法、地域での信用は、決算書に載らない資産です。同じ調査では、2025年の休廃業・解散で消えた売上高の合計は2兆4,909億円でした。

自社にしかできない仕事があるほど、代わりを探せない取引先が困ります。技術が評価される会社なら、M&Aで買い手が見つかる可能性も高まります。

後継者不足の事業承継を解決する有効な選択肢

親族に候補がいなくても、承継の手段は残されています。社内への承継とM&Aという2つの選択肢を解説します。

  • 優秀な従業員を役員へ昇格させて会社の経営権を移譲する
  • 第三者企業へのM&Aで会社と従業員の雇用を残す

優秀な従業員を役員へ昇格させて会社の経営権を移譲する

社内の幹部へ引き継ぐ方法は、最も多い承継の形です。事業を理解している人材へ渡せるため、引き継ぎ後の混乱も起きにくくなります。

課題は資金です。後継者が個人で株式を買い取るには、評価額に見合う資金を用意しなければなりません。長年黒字を続けてきた会社では、株式の評価額が数億円に達する場合もあります。

金融機関からの借入れ、持株会社の活用、段階的な株式の移転といった方法を組み合わせて設計します。借入金の個人保証を後継者が引き継げるかどうかも、早い段階で金融機関に確認してください。

持株会社を使った承継は、以下の記事で解説しています。

第三者企業へのM&Aで会社と従業員の雇用を残す

親族にも社内にも候補がいない場合、M&Aが現実的な解決策になります。従業員の雇用と取引先との関係を残したまま、事業を続けられるためです。経営者にとっては、株式の譲渡対価で引退後の資金を確保できます。

個人が非上場株式(一般株式等)を譲渡した場合、譲渡収入から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対し、原則として20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の申告分離課税が適用されます。取得費が不明な場合の取扱いや株式譲渡と事業譲渡で課税関係が変わる点にも留意が必要です。

買い手が見つかるかどうかは、業績と技術の評価で決まります。利益が出ているうちに動けば、条件の交渉でも有利になります。ただし、希望する条件の相手が見つかるとは限りません。譲渡後の従業員の処遇や社名の扱いは買い手の方針に左右されるため、雇用の維持や経営者保証の解除について、契約前に書面で確認してください。

M&Aによる承継の進め方と税務はこちらで解説しています。

後継者不足による事業承継の相談は税理士法人ネイチャーへ

後継者が決まっていない段階でも、承継の準備は始められます。自社株の評価額と株主構成がわかれば、社内への承継とM&Aのどちらが現実的かを比べられるためです。

事業承継は、株式の移転だけで完結しません。譲渡対価や退職金として受け取った資金をどう配分し、どう管理するかまで含めて、はじめて全体像が見えます。運用の判断を金融機関に、税務の判断を税理士にと切り離すと、税引後の手取りや将来の相続まで見通した設計になりにくくなります。資産運用と税金対策は、一体で検討することが重要です。

税理士法人ネイチャーは、自社株の評価や承継方法ごとの手取りの試算、実績のあるM&A会社のご紹介、譲渡後の資産配分と管理まで、法人と個人の両面からサポートします。お気軽にお問い合わせください。

まとめ:事業承継の後継者不足はM&Aを活用して解決する

後継者不在率は7年連続で改善していますが、中小企業では51.2%、小規模企業では57.3%と依然として高い水準です。背景には、親族が承継を選ばなくなった変化と経営者の高齢化があります。

承継の形はすでに変わりました。2025年の速報値では内部昇格が同族承継を上回り、「M&Aほか」も20.6%と初めて20%を超えています。親族に候補がいないという理由だけで、廃業を選ぶ必要はありません。

判断の出発点は、自社株の評価額と株主構成の確認です。金額がわかれば、社内の幹部へ渡す場合の資金の壁も、M&Aで見込める手取りも比べられます。業績が安定しているうちに動けば、選べる手段は多く残るでしょう。

税理士法人ネイチャーでは、後継者不在の段階からのご相談を承っており、自社株の評価から、承継後の資産運用と税務までを一体で検討したいというご要望にも対応しています。直近の決算書と株主名簿をご用意いただければ、現状の整理からお手伝いします。まずはぜひ無料相談にお申し込みください。

相続税
お客様の目的にあわせたネイチャーグループのサービス
無料相談

資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。

\Amazonギフトカード1万円分プレゼント!/

無料相談に申し込む
資産運用

お客様の保有資産をさらに増やすための最適な提案を数多くの選択肢からご提供します。

税金対策

豊富な経験と、投資や税務の様々な視点から、お客様にあった税金対策を提案します。

相続税対策

相続税の不安やお悩みに、専門チームが最適な対策をご提案します。

\Amazonギフトカード1万円分プレゼント!/
所得税の無料個別相談
\売り込み・営業は一切なし/
法人税対策の無料相談