資産3億円。多くの人が目標とする一つの到達点であり、同時に「絶対に減らしたくない」という強いプレッシャーの始まりでもあります。インフレが進む中、現金のままでは資産が目減りする不安。かといって、リスクを取りすぎて失敗したくない。そんなジレンマを抱えていませんか?
多くの資産運用記事はどう増やすかに焦点を当てますが、3億円規模で本当に重要なのはそこではありません。最大の敵は市場の暴落よりも税金です。運用益にかかる税金、最終的に資産の半分近くを奪う相続税。税金という出口戦略を無視した運用は、必ず失敗します。
この記事は、富裕層の金融・相続を専門とする税理士の視点から、「3億円を守り抜き、賢く遺す」ための運用戦略を徹底解説します。税引き後リターンを最大化するポートフォリオと、不必要な手数料やリスクを避けるための具体的アドバイスをお届けします。読み終えた頃には、あなたの資産管理の不安は解消されているはずです。
資産3億円を持つ方のリアルな不安とは?
3億円の資産を築かれた方は、大きな成功を収められた方です。しかし、1億円の時とは質の異なる、重いプレッシャーを感じていらっしゃるのではないでしょうか。私たちが日々お会いするお客様(富裕層)の多くは、共通の不安を口にされます。
悩み①:増やすより減らしたくない防衛意識
3億円は、多くの人にとってゴールの金額です。ここから積極的にリスクを取り、5億、10億を目指したいという方(攻め)は少数派です。
それよりも、「この資産を絶対に減らさず、豊かな老後を過ごしたい」「次世代に確実に遺したい」という守りの意識が圧倒的に強くなります。
悩み②:インフレによる見えない目減りの恐怖
日本円の預金だけで資産を守ることは、リスクとなります。もし年間2%のインフレが続けば、3億円の価値は10年後には約2億4,600万円にまで目減りします。何もしないことが、資産を減らす行為になっているのです。
見えない目減りへの恐怖は、あなたを資産運用に向かわせる動機の一つでしょう。
悩み③:運用益と相続税、2つの税金が怖い
運用して利益が出れば、約20%の税金がかかります。
さらに深刻なのは、あなたが亡くなった時に発生する相続税です。3億円の資産があれば、法定相続人の数にもよりますが、数千万円から1億円近い相続税が発生する可能性があります。
せっかく運用で増やしても、出口(相続)でごっそり税金に取られては意味がありません。
悩み④:金融機関にカモにされることへの不信感
資産が3億円あると、銀行や証券会社から様々な営業を受けるでしょう。
「本当にこの商品は自分に合っているのか?」「高い手数料を取られるだけではないか?」といった金融機関への不信感は、賢明な資産家であるほど強く感じる不安です。
【シミュレーション】3億円あれば配当金生活(FIRE)は可能か?
「3億円あれば、仕事をやめて配当金だけで暮らせるのでは?」と考える方は多いでしょう。結論から言えば、堅実な運用を前提とすれば可能です。
現実的な利回りは年3%〜5%
3億円もの資産がある場合、ハイリスクな投資は不要です。守りを重視した債券や高配当株、インデックスファンドを組み合わせ、年率3%〜5%の利回りを目標とするのが王道です。
年間900万円(利回り3%)の現実的な生活レベル
仮に、3億円を年利3%(税引き前)で運用できた場合、年間の収益は900万円です。
月額にすると75万円、多くの方は現役時代と変わらないか、それ以上にゆとりのある生活を送ることが可能です。
注意点:手取りは税引き後で考える(約720万円)
900万円の利益が出ても、約20%(所得税・住民税)が税金として引かれます。
- 900万円 × 20.315% = 約183万円(税金)
- 手取り額:900万円 – 183万円 = 約717万円
生活費は、税引き後の金額(月額約60万円)で考える必要があります。シミュレーションは必ず手取り額で行ってください。
【税理士が警鐘】3億円の資産運用で絶対にやってはいけない3つの失敗例
私たちは税理士として、富裕層の資産運用の成功だけでなく、痛ましい失敗も数多く見てきました。3億円規模だからこそ陥る典型的な失敗例をご紹介します。
失敗例1:銀行窓口の「おすすめ」高手数料ファンドに飛びつく
これは最も多い失敗です。退職金などで3億円が銀行口座に入金されると、銀行の担当者から「特別なお客様へ」と個室に通され、おすすめの投資信託やラップ口座を勧められます。
ケーススタディ:A様・60代・事業売却
A様は、事業売却で得た3億円をメインバンクに預けていました。担当者から勧められた手数料の高い(販売手数料3%、信託報酬 年2%)ファンドを契約。数年後、運用成果は市場平均(インデックス)を大きく下回り、手数料だけで数百万円を失っていたことに気づきました。
銀行は販売が仕事であり、あなたの資産を守ることが仕事ではありません。彼らのおすすめは、彼らの利益になる商品である可能性を常に疑うべきです。
失敗例2:相続税対策を怠り、運用益が税金で消える
運用益(インカムゲイン・キャピタルゲイン)ばかりに目が行き、最終的な出口である相続を忘れているケースです。
ケーススタディ:B様・70代・元開業医
B様は運用が趣味で、3億円の資産を4億円に増やすことに成功。しかし、相続税対策は一切行っていませんでした。B様が亡くなった後、ご家族は4億円の資産に対し、約1億5,000万円という高額な相続税を現金で納める必要に迫られました。結局、増やしたはずの運用益の多くは税金で消え、ご家族は納税のために資産を切り売りする羽目に。
3億円規模の資産運用は、相続税対策と一体でなければ意味がありません。
失敗例3:国内の円資産に偏り、インフレ・円安で実質価値が暴落
「運用は怖いから」と、3億円のほとんどを日本円の預貯金や国内債券で保有しているケース。
これは一見安全に見えますが、近年の急激な円安とインフレで、実質的な価値(購買力)は大きく下落しています。海外旅行に行けば、昔の2倍近いお金がかかることを実感されているはずです。
資産を日本円という一つの通貨に集中させることは、極めてリスクの高い偏った投資なのです。
税理士視点で構築する守りのポートフォリオ(資産配分)
3億円を守りながら育てるには、どう資産を配分すべきでしょうか。IFAや証券会社とは異なる、税理士としての視点で解説します。
最重要:「税引き後リターン」で考える
私たちが目指すのは、表面的な利回り(グロス)ではありません。運用益の税金、そして将来の相続税まで全て差し引いた税引き後の手取り(ネットリターン)の最大化です。
コア(守り):米国債券・優良社債(ドル資産)
ポートフォリオの中核(コア)は、値動きが安定し、確実に利息を生む資産であるべきです。
- 米国債券(既発債): 世界で最も信頼性が高い資産の一つ。現在の金利水準であれば、年3〜5%の利回り(ドル建て)が期待できます。
- なぜドルか: 資産の多くを「円」で持つ日本人は、資産防衛のために「ドル」を持つことが必須です。円安・インフレ対策の基盤となります。
サテライト(攻め):全世界株式インデックス
資産を増やす役割(サテライト)も必要です。ただし、個別株で売買を繰り返すのは3億円規模の運用にふさわしくありません。
- 全世界株式インデックスファンド: 低コストで世界中の企業に分散投資できるファンド(例:eMAXIS Slim 全世界株式)で、世界経済の成長の恩恵を受けます。
オルタナティブ(分散):ヘッジファンド・実物不動産
3億円規模になると、株式や債券といった伝統的資産とは異なる値動きをする資産(オルタナティブ)を組み入れることを推奨します。
- ヘッジファンド: 市場が下がっても利益を追求する戦略(ロング・ショート戦略など)を取るファンド。下落相場でのクッション(緩衝材)になります。
- 実物不動産(国内・海外): インフレに強く、相続税評価額を圧縮できる(税対策になる)可能性があります。
なぜ3億円規模でオルタナティブが必要なのか?
オルタナティブ投資は、最低投資金額が数千万円〜1億円と高額なものが多く、一般の投資家には手が出せません。
しかし、3億円の資産があれば、専門的な金融商品へのアクセスが可能になります。資産全体の安定性を高めるために、富裕層専門のアドバイザー(IFAやプライベートバンク)を通じて、ポートフォリオの5%〜10%程度組み入れることを検討すべきです。
運用と税金対策は必ずセットで行う
ポートフォリオを組むと同時に、税金対策を実行します。
運用益の税金:NISA、特定口座(源泉徴収あり)の使い分け
- NISA(新NISA): 運用益が非課税になる最強の制度です。ご夫婦で満額(生涯1,800万円×2人)を優先的に活用します。
- 特定口座(源泉徴収あり): NISA枠を超える運用は、特定口座を使います。利益から自動で税金が引かれるため、確定申告が原則不要となり、手間がかかりません。
相続税の対策:生前贈与、生命保険の非課税枠
運用と並行して相続の準備を始めます。
- 生前贈与: 年間110万円までの暦年贈与は非課税です。お子様やお孫様へ、早めに資産を移転し始めます。(ただし、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため注意)
- 生命保険の活用: 生命保険には「500万円 × 法定相続人の数」という強力な相続税の非課税枠があります。この枠を使い切る保険に加入することは、最も簡単で効果的な相続税対策の一つです。
【富裕層向け】資産管理法人(プライベートカンパニー)の活用
3億円を超える金融資産があり、不動産や自社株などもお持ちの場合、資産管理法人(プライベートカンパニーを設立する選択肢が出てきます。
個人の金融所得(税率約20%)や不動産所得(最大55%)を、法人に移すことで税率をコントロールしたり、家族を役員にして所得を分散したり、将来の相続をスムーズにしたりと、非常に高度な税務戦略が可能になります。
専門的な知識が必要なため、必ず富裕層の法人設立に強い税理士にご相談ください。
3億円の資産運用、誰に相談すべきか?【専門家の本音】
「この戦略を、誰と実行すればいいのか?」これが最後の疑問です。
銀行・証券会社(販売側)の限界
彼らは金融商品の販売が目的です。相続まで考慮した最適なポートフォリオを組むことよりも、自社の手数料が高い商品を売るインセンティブが働きます。あくまで商品の買い場と割り切るべきです。
IFA(独立系アドバイザー)のメリット・デメリット
特定の金融機関に属さず、中立的な立場でアドバイス(と金融商品仲介)を行う専門家です。
- メリット: 幅広い商品からあなたに合ったものを提案してくれる可能性が高いです。
- デメリット: IFAも金融商品仲介の手数料で成り立つビジネスモデルが多いため、本当に中立か見極めが必要です。また、IFAに税務や相続の深い知識があるとは限りません。
プライベートバンクは「3億円」をどう扱うか?
日系・外資系のプライベートバンク(PB)は、富裕層専門のサービスです。
3億円という金額は、多くのPBで「最低ライン」〜「標準的な顧客層」として扱われます。手厚いサービスは期待できますが、口座管理手数料などが高額になるケースもあります。IFAと同様、相続税対策まで精通しているかは担当者次第です。
税理士(特に相続に強い)をパートナーにすべき理由
私たち税理士は、金融商品を販売しません。だからこそ、100%あなたの側に立った中立的なアドバイスが可能です。
3億円規模の資産運用で最も重要なのは、金融(運用)と税務(相続)の連携です。
運用は信頼できるIFAやPBに任せるとしても、戦略が「税務上、不利になっていないか?」「相続税対策として最適か?」を監視・ジャッジする監督役が必要です。
まずは富裕層の資産承継に強い税理士に相談し、資産全体の健康診断(現状把握と相続税シミュレーション)を行うこと。そして、税理士と連携できる優秀なIFAやPBを紹介してもらう。
これが、3億円の資産を守るための最強の布陣だと考えます。
まとめ:3億円の資産運用は税務と相続の視点から始める
3億円の資産運用は、守」のフェーズです。最大の敵は、市場の変動ではなく税金です。
- 生活の目標設定: まずは税引き後の利回りで、いくらあれば安心して暮らせるかシミュレーションする。
- ポートフォリオ構築: 円預金のまま放置せず、インフレと円安に勝つためドル資産(債券)と全世界株式に分散する。
- 税金対策の実行: NISA、生前贈与、生命保険の非課税枠など、今すぐできる税金対策を実行する。
- パートナー選定: 金融商品を売る人ではなく、あなたの資産全体を守る人をパートナーに選ぶ。
資産運用は運用と税務が両輪です。あなたの資産を守り抜き、次の世代へ賢く引き継ぐために、まずはご自身の資産状況と相続税がいくらかかるのか、専門家の目線で把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
資産運用や税金対策についてどんな不安や疑問もコンサルタントが丁寧にお答えします。
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