海外口座を相続したら?必要書類・解約・日本送金の流れを税理士が解説

相続手続きを進めるなかで、被相続人が海外の銀行口座を保有していたことが判明するケースがあります。

海外口座を相続する場合には、現地の金融機関で必要な手続きを確認するとともに、日本における相続税の申告が必要となるかについても確認することが大切です。

海外の金融機関とのやり取りでは、国内の相続手続きとは異なる書類の提出を求められることもあり、手続きに時間を要する場合があります。

この記事では、海外口座を相続した場合の口座情報の確認から、相続手続き、口座の解約、日本への送金までの一般的な流れについて解説します。また、必要となる主な書類や、日本の相続税を検討する際のポイントについてもご紹介します。

海外の金融機関での手続きに時間を要する場合もあるため、日本で相続税の申告が必要となる可能性がある場合には、海外での手続きと並行して、国内の申告についても早めに確認しておくとよいでしょう。

国際税務

海外口座を相続したらまずすべきこと

海外口座を相続した場合には、主に次の3つの手続きを確認しながら進めることになります。

相続人や相続分については、日本の法律が適用される場合があります。一方、海外口座の解約や名義変更などの手続きについては、現地の法令や金融機関の規定に基づいて対応することが一般的です。

手続き主な内容相手先
海外金融機関の手続き死亡の連絡、書類の提出、解約・払戻し海外の銀行
現地の法律上の手続きプロベートなど、裁判所を通す手続き現地の裁判所・弁護士
日本の税務手続き残高の評価、相続税の申告・納税税務署・税理士

日本の相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

海外口座の相続におけるプロベートとは?

プロベートとは、裁判所が関与し、遺産の管理や分配を進める手続きです。主に米国や英国など、英米法の国・地域で行われています。

手続きでは、遺言執行者や遺産管理人などが遺産を管理し、借金や税金を支払います。その後、残った財産を相続人や受遺者へ分配するのが一般的な流れです。

日本では、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で遺産の分け方を決められます。海外口座では、プロベートなどの手続きを経なければ払戻しを受けられない場合があるため、金融機関へ必要な手続きを確認しましょう。

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海外口座の相続手続きの2つのタイプ

海外口座の相続手続きは、プロベートなど裁判所を通す手続きが必要な場合と不要な場合があります。

国・地域だけでなく、口座の契約内容や残高などでも変わるため、先に確認しましょう。

プロベートが必要な手続き

英米法の国・地域では、プロベートが必要になる場合があります。ただし、同じ国でも口座の契約内容や残高などによって取扱いが異なるので注意が必要です。

手続きでは、裁判所への申立てや財産の一覧作成などが必要になる場合があります。手続きに時間を要することもあるため、早めの確認が重要です。必要に応じて、現地の弁護士などへ相談しながら進めましょう。

プロベートが必要ない手続き

国・地域の制度や口座の契約内容によっては、プロベートを経ず、相続を証明する書類などで手続きできる場合があります。

英米法の国・地域でも、プロベートを経ずに手続きできる場合の例は次のとおりです。

  • 生存者権付きの共同名義口座(JTWROSなど):生存しているもう一方の名義人に権利が移転する契約
  • 死亡時受取人指定口座(POD/TOD口座など):あらかじめ死亡時の受取人が登録されている口座
  • 少額遺産の手続き:預金残高が州や国の定める少額基準内にある場合

「米国の口座だから必ずプロベートが必要」とは限りません。州の法律や遺産額、口座の契約内容などによって必要な手続きは異なります。なお、こうした契約で現地の解約手続きが簡素化される場合でも、日本の相続税の申告対象から外れるわけではない点には注意が必要です。

海外口座の相続手続きの流れ

口座情報の確認から払い戻しまでの基本的な流れを説明します。国や銀行で手順が変わるため、銀行の指示に沿って進めましょう。

  • 口座情報を確認する
  • 海外の金融機関へ死亡を連絡する
  • プロベートの要否を確認する
  • 金融機関が指定する書類をそろえる
  • 海外口座の取扱いを決める

口座情報を確認する

最初に整理したい情報は、次のとおりです。

  • 銀行名、支店、口座番号、通貨、口座の種類
  • 銀行に登録された住所
  • 共同名義人や受取人指定の有無
  • 最後に取引した日

口座番号がわからない場合は、銀行からの郵便物やメール、取引明細を確認します。故人の確定申告書や国外財産調書の控えも、手がかりの一つです。

海外の金融機関へ死亡を連絡する

口座名義人が亡くなったことを電話やメール、書面など、銀行が指定する方法で伝えます。連絡の際は、担当部署、必要書類、原本の郵送の要否、提出方法、手続きにかかる期間を確認しましょう。

死亡の連絡後は、口座の取引が制限される場合があります。 自動引き落としがある場合は、あらかじめ内容を確認しておきましょう。

プロベートの要否を確認する

プロベートが必要かどうかは、銀行の担当部署に確認します。

判断には、国や州の法律、残高、受取人指定の有無、共同名義かどうかなどが関係します。プロベートが必要と言われた場合は、現地の弁護士への相談を検討しましょう。

金融機関が指定する書類をそろえる

銀行から届いた書類一覧をもとに、書類の取得、翻訳、認証を進めます。翻訳や認証の要否、手続きの順番は、提出先の指示で変わる場合があります。

死亡日時点の残高証明書を取得する

相続税の計算では、原則として相続開始日時点の預金残高をもとに評価します。

残高証明書では、残高と通貨を確認します。定期預金などは、相続開始日に解約した場合に受け取れる既経過利子についても確認しましょう。

死亡日前後の取引履歴もあわせて取り寄せると、残高や入出金を確認する資料として役立ちます。

相続関係を示す書類を用意する

銀行によって異なりますが、次のような書類を求められる場合があります。

  • 相続人の戸籍謄本
  • 死亡を証明する書類
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 相続人の本人確認書類(パスポートなど)

宣誓供述書(記載内容が事実であることを宣誓する書面)の提出を求められる場合もあります。

必要書類を翻訳する

翻訳の前に、銀行が指定する言語と翻訳者の条件を確認します。相続人自身による翻訳を受け付けない場合もあるため、事前の確認が必要です。 翻訳証明などが必要かどうかも確認しましょう。

指定された書類の認証を受ける

海外へ提出する書類では、提出先からアポスティーユ(日本の公文書を海外で使用するために外務省が付ける証明)や、提出先国の大使館・総領事館による領事認証を求められる場合があります。

遺産分割協議書などの私文書は、必要に応じて公証役場で認証を受けるなど、書類に応じた手続きを行います。

提出先によっては、外務省の公印確認や駐日大使館・総領事館の領事認証が必要になる場合があります。外務省へ証明を申請する公文書は、原則として発行日から3か月以内の原本が必要です。

海外口座の取扱いを決める

銀行が認める方法を確認したうえで、口座をどうするか決めます。

方法向いている場合確認すること
解約・払戻し日本で資金を使う予定がある送金方法、手数料
名義変更現地で口座を使い続けたい非居住者でも保有できるか

解約して払戻しを受ける

口座を解約し、残高を相続人などへ払い戻してもらいます。

プロベートが必要な場合は、遺言執行者や遺産管理人が財産を管理し、その後、相続人などへ分配するのが一般的です。

名義変更が可能か確認する

相続人名義への変更に対応するかどうかは、銀行ごとに異なります。

日本居住者による口座の保有を認めていない銀行もあります。名義変更の可否と条件を先に確認しましょう。

海外口座の相続で確認する税金

海外口座の相続で確認する税金は、日本の相続税、海外の税金、相続後の所得税の3つです。最初に、海外預金が日本の相続税の対象になるかを確かめましょう。

  • 日本の相続税
  • 海外の相続税等
  • 相続後の所得税

日本の相続税

海外預金が課税対象になるか、どのように評価するかを確認します。

海外預金が課税対象になるか確認する

日本に住む人が相続した場合、原則として海外預金も相続税の対象です。ただし、一時居住者に該当する場合などは取扱いが異なります。

故人や相続人が海外に住んでいた場合などは、双方の住所・国籍・過去の居住歴によって課税範囲が変わります。

死亡日のTTBで評価額を計算する

外貨預金は、原則として死亡日のTTBで円に換算します。TTB(対顧客直物電信買相場)とは、金融機関が外貨を買い取る際の相場です。

【シミュレーション】米ドル定期預金を相続した場合(数値は仮定)

項目金額
死亡日時点の残高60万ドル
死亡日までの既経過利息(税相当額控除後)3,000ドル
合計60万3,000ドル
死亡日のTTB1ドル = 145円
相続税評価額8,743万5,000円

※預貯金は、原則として死亡日時点の残高と、同日に解約した場合に受け取れる既経過利息から源泉徴収されるべき税額相当額を差し引いた金額との合計額で評価します。海外預金は、現地の課税制度などを踏まえた個別の確認が必要です。

海外の相続税等

海外に所在する財産を相続した場合、現地で相続税等の課税や申告が生じることがあります。そのため、現地での申告・納税の要否とあわせて、日本の相続税における取り扱いについても確認が必要です。

現地で申告が必要か確認する

相続に関する税金の制度や申告義務者、申告期限などは、国や地域によって異なります。

例えば米国の遺産税は、遺産の移転に対して課される税金です。被相続人が米国の非居住者かつ非米国市民である場合には、原則として米国内に所在する一定の財産が課税対象となりますが、銀行預金など、財産の種類によっては対象とならない場合もあります。

実際の申告・納税の要否については、財産の種類や被相続人の居住状況などによって異なるため、必要に応じて現地の専門家への確認を検討します。

外国税額控除の対象税額を確認する

海外にある相続財産について、外国で相続税に相当する税金が課された場合には、一定の要件のもと、日本の相続税額から外国で課された税額の一部を控除できる場合があります(外国税額控除)。

外国税額控除には限度額があり、外国で納付した税額の全額を控除できるとは限りません。適用を検討する際には、現地での申告書や納税を確認できる書類などを保管しておくことが大切です。

相続後の所得税

相続後に生じた利益には、所得税がかかる場合があります。

円へ交換した場合は為替差損益を確認する

相続によって取得した外貨預金を日本円に両替(円転)した場合、為替レートの変動によって為替差益が生じることがあります。この為替差益は、原則として雑所得(総合課税)の対象となります。

また、日本円への両替だけでなく、相続した外貨を使用して海外株式や不動産などを購入した場合にも、外貨を使用した時点で為替差損益を認識することがあります。

実際の申告の要否や所得金額の計算については、外貨の取得時期や取得価額、そのほかの所得の状況などを踏まえて確認する必要があります。

死亡後の利息にかかる所得税を確認する

相続後に海外預金から生じた利息は、相続人の利子所得として課税対象になる場合があります。

国外で支払われる預金利子は、日本で源泉徴収されない場合があるため、確定申告の要否を確認しましょう。

海外口座の相続資金を日本で受け取る手順

日本の受取銀行への相談から、着金後の記録保管までを説明します。送金の前に日本側の準備を整えておくと、着金後の確認がスムーズです。

  • 日本の受取銀行へ事前に相談する
  • 受取口座の通貨を決める
  • 日本の銀行へ示す相続資料を準備する
  • 高額送金の報告手続きを確認する
  • 代表相続人が受け取る場合は記録を残す

日本の受取銀行へ事前に相談する

海外の金融機関から日本の銀行口座へ送金する場合には、あらかじめ受取銀行に必要な情報や手続きを確認しておくとよいでしょう。

主な確認事項として、次のようなものがあります。

  • 受け取りが可能な通貨
  • SWIFT・BICコード(銀行などを識別する国際的なコード)
  • 支店の英文住所
  • 口座名義の英文表記
  • マイナンバーの届出状況
  • 送金目的や資金の内容を確認するために必要となる書類

海外からの送金を受け取る際には、金融機関からマイナンバー等の届出や、送金目的・資金の内容を確認するための資料の提出を求められることがあります。

特に相続に伴う送金の場合には、相続によって取得した資金であることを確認できる書類などが必要となることもあるため、送金前に受取銀行へ確認しておくと手続きを進めやすくなります。

また、海外の金融機関から小切手(Check)による払戻しを案内されることがあります。日本の金融機関では、外国小切手の取立てを取り扱っていない場合が多く、小切手を受け取る前に日本側の金融機関へ確認することが大切です。

日本国内での取立てが難しい場合には、海外の金融機関に電信送金(Wire Transfer)による受取りが可能か確認することも一つの方法です。

受取口座の通貨を決める

為替相場、手数料、資金の使い道を踏まえて、受け取る通貨を決めます。

外貨のまま受け取る

送金と同じ通貨の外貨預金口座を指定します。

円に換える時期を後から選べますが、円に換えるまでは為替相場の変動で円換算額が上下します。受取手数料と、円に換えるときの為替手数料を確認しましょう。

日本円で受け取る

外貨で送金された資金を円預金口座で受け取る場合は金融機関所定の為替相場によって日本円に換算されることがあります。

外貨預金口座を保有していない場合でも受け取れることがありますが、対応する通貨や換算方法、手数料などは金融機関によって異なります。送金前に、受取銀行へ確認しておくとよいでしょう。

日本の銀行へ示す相続資料を準備する

海外からの送金を受け取る際には、金融機関から送金の目的や資金の内容について確認を求められることがあります。

相続によって取得した資金であることを確認できる資料として、死亡証明書、遺産分割協議書、プロベート関係書類、海外口座の解約明細などが必要となる場合があります。

また、国外から受領する送金額が100万円を超える場合には、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出されます。

高額送金の報告手続きを確認する

海外から3,000万円相当額を超える資金を受け取る場合には、外為法に基づく「支払又は支払の受領に関する報告書」の提出が必要になる場合があります。

日本の銀行を経由して受け取る場合、個別に報告する場合の提出期限は、原則として書面による報告では取引実行日から10日以内、オンラインによる報告では20日以内とされています。提出の要否や方法は、受取銀行へ確認しましょう。

代表相続人が受け取る場合は記録を残す

代表相続人の口座で受け取り、ほかの相続人へ分配する場合は、資金の流れがわかる記録を残しておくとよいでしょう。

例えば、遺産分割協議書、海外からの送金明細、各相続人への分配記録などが考えられます。これらの資料を整理しておくことで、海外から受け取った資金と、遺産分割に基づいて各相続人へ分配した金額との関係を確認しやすくなります。

海外口座の相続における注意点

海外の手続きが長引いた場合と、遺産分割がまとまらない場合の対応を説明します。どちらの場合も、日本の相続税申告の準備は期限を基準に進めましょう。

  • 海外口座の相続手続きは長期化する場合がある
  • 口座解約を待たずに相続税の申告準備を進める

海外口座の相続手続きは長期化する場合がある

海外口座の相続は、銀行とのやり取り、翻訳、認証など工程が多く、時間がかかる場合があります。

銀行からの返信に時間がかかることもあるため、死亡の連絡と書類の準備を早めに始めましょう。

口座解約を待たずに相続税の申告準備を進める

海外口座の解約を待ってから申告の準備を始めると、期限に間に合わないおそれがあります。相続税は原則として申告期限までに金銭で納付するため、国内の納税資金も確認しておきましょう。

【想定事例】解約後に申告を考えていたケース

故人は香港の銀行に約1億円相当の外貨預金を保有しており、相続人である長男は口座を解約してから申告を行う予定でした。

しかし、現地での手続きが難航して申告期限の直前まで残高証明書が届かず、財産評価に必要な資料がそろわないばかりか、納税資金も国内の預金から急きょ工面する事態に陥りました。

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税理士法人ネイチャーでは、海外資産を含む相続税申告のご相談に対応しています。

日本の相続税の課税範囲、外貨預金の評価、外国税額控除など、海外口座の相続に伴う税務についてご相談いただけます。申告期限を踏まえ、必要な手続きを早めに整理することが大切です。

現地の法的手続きについては、必要に応じて現地の専門家への確認もご検討ください。初回面談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

まとめ:海外口座の相続は10か月の申告期限を確認して進めよう

海外口座を相続したら、現地の手続きを進めながら、日本の相続税申告が必要か確認しましょう。

海外の銀行の手続きが終わっていなくても、それを理由に日本の相続税の申告期限が自動的に延びるわけではありません。申告が必要な場合は、死亡日時点の残高証明書など、必要な資料を早めに準備しましょう。

税理士法人ネイチャーでは、海外口座を含む相続税申告について、初回無料でご相談を承っています。進め方に迷ったときは、お気軽にお問い合わせください。

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