米国相続の相談先は?手続き別の相談先や必要資料を税理士が解説

親が長く保有してきた米国株や、米国の銀行口座。現地で暮らしていた親族の米国における年金や不動産。相続が起きたとき、誰に相談すればよいか迷う方は少なくありません。

日本の税理士に頼むのか、米国の税務専門家や弁護士を探すのか。必要な手続きに合わない相談先を選ぶと、手続きが進まなかったり、申告期限に間に合わなかったりするおそれがあります。

この記事では、米国が関係する国際相続の相談先を手続きごとに解説します。相談先を決めるための確認事項や、相談前に用意する資料もまとめました。

米国相続の相談先は、必要な手続きによって異なります。日本の相続税申告は日本の税理士、米国の遺産税申告は米国税務に詳しい専門家、プロベート(米国の裁判所手続き)は米国弁護士が主な相談先です。

読み終えると、自分に必要な手続きを整理し、最初に誰へ何を伝えればよいか判断しやすくなります。

国際税務

米国相続の相談先は手続きで変わる

米国相続における主な手続きと相談先を、以下の表にまとめました。

手続き主な相談先主な相談内容
日本の相続税申告日本の税理士課税範囲、財産評価、相続税申告
米国遺産税の申告米国税務の専門家連邦遺産税、州税、申告書
プロベート米国弁護士裁判所への申立て、遺産管理
米国口座の相続手続き(解約)米国金融機関名義変更、資産移管、解約、必要書類
相続人間の争い弁護士遺言書、遺産分割、法的手続き

1つの相続で、複数の専門家が同時に関わることも珍しくありません。

日本の相続税申告が必要な場合

日本で相続税申告が必要かわからないときは、日本の税理士に相談します。日本の相続税は、亡くなった方と相続人の住所や国籍などによって課税範囲が変わります。相続人が日本に住所を有する場合は、一定の例外を除き、米国の財産も課税対象です。海外に長く住む方がいる場合などは、課税範囲の判定が複雑になります。

米国遺産税の申告が必要な場合

米国側で遺産税申告が必要な場合は、米国税務に詳しい専門家へ相談します。米国の遺産税は、亡くなった方の財産の移転に対して課される税金です。

米国市民または米国遺産税上の米国居住者は、申告が必要な場合に「Form 706」を使用し、死亡時に米国市民でも米国遺産税上の米国居住者でもない方は、申告が必要な場合に「Form 706-NA」を使用します。日本の税理士が、米国側の専門家と連携して進めることもあります。

プロベートが必要な場合

プロベートとは、米国の裁判所が関わる遺産の管理手続きです。裁判所の監督のもとで、財産の整理や相続人への分配を進めます。プロベートが必要かどうかは、財産の所有名義や受取人指定、州の法律などによって異なります。州ごとの法律に従うため、該当する州の手続きに詳しい米国弁護士への相談が必要になる場合があります。

米国口座の相続手続きを行う場合

米国の銀行口座や証券口座を相続する際は、金融機関に名義変更や資産移管、解約などの手続きと必要書類を確認します。受取人の指定などがあれば、プロベートを経ずに手続きできる場合があります。一方、口座の名義や受取人指定、州法などによっては、遺産管理人の選任や裁判所手続きが必要です。裁判所の手続きが必要な際は、米国弁護士への相談も検討しましょう。

相続人間で争いがある場合

遺言書の有効性や遺産の分け方で争いがあれば、弁護士に相談します。税理士は税務申告や税務相談を担いますが、相続人間の争いに関する代理は弁護士の業務です。日本での遺産分割をめぐる紛争は日本の弁護士、米国の裁判所手続きや州法に関する問題は、該当する州の法律に詳しい米国弁護士が主な相談先となります。

米国相続の相談先を決める5つの確認事項

誰に相談すべきかは、関係者と米国資産の情報で決まります。5つの確認事項と各項目がどの手続きに関わるかを解説します。

  1. 亡くなった方の国籍や居住状況
  2. 相続人の属性
  3. 米国資産の種類
  4. 米国資産の所在州
  5. 死亡日からの経過期間

1. 亡くなった方の国籍や居住状況

最初に、亡くなった方の米国での身分を確認します。米国市民権や米国での生活の本拠(domicile)の有無が主な判断材料です。滞在期間の長さやグリーンカードの保有状況も確認しますが、それだけで生活の本拠が米国にあるとは判断されません。

米国市民または米国遺産税上の米国居住者は、遺産総額や過去の課税贈与額などが一定の基準を超える場合にForm 706の提出が必要です。2026年に亡くなった方の基礎控除額(basic exclusion amount)は1人あたり1,500万ドルです。

一方、米国市民でも米国遺産税上の米国居住者でもない方は、原則として米国内所在財産と一定の過去の課税贈与額などの合計が6万ドルを超えるとForm 706-NAの提出が必要です。ただし、6万ドルは申告要否の基準であり、税額の計算では日米相続税条約による特例なども確認する必要があります。

2. 相続人の属性

日本の相続税が米国の財産まで課税対象とするかは、相続人と亡くなった方の住所や国籍、過去の居住状況などによって異なります。

相続人が海外に住む場合は、日本国籍の有無や相続開始前10年以内の国内居住歴に加え、亡くなった方の国籍や居住状況も確認しましょう。

3. 米国資産の種類

相続する米国資産は、種類ごとに整理します。米国株、米国不動産、銀行口座、証券口座、生命保険、事業持分(米国の会社への出資)などです。種類によって、評価に使う資料や必要な手続きが変わります。特に株式は、原則として発行会社が米国法人かどうかによって、米国遺産税上の所在を判定します。

米国不動産は、現地の鑑定評価が必要になることがあります。米国の銀行預金は、米国での事業に関連して使用されていないなど一定の場合、Form 706-NA上の米国内所在財産に含まれません。

4. 米国資産の所在州

米国不動産については所在地の州を確認し、銀行口座や証券口座については、口座名義や受取人指定、保有資産の内容を整理しましょう。州によっては、独自の遺産税や相続税がかかる場合があります。

プロベートの管轄は、亡くなった方の居住地や財産の所在地などによって決まります。複数の州に不動産がある場合は、複数の州で裁判所手続きが必要になることもあります。

5. 死亡日からの経過期間

相談の際は、亡くなった日からの経過期間を必ず伝えましょう。日本の相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。提出が必要な場合、Form 706-NAの申告期限は原則として死亡日から9か月以内です。Form 4768により原則6か月の申告期限延長を申請できますが、納税期限を延長するには別途申請が必要です。

米国側の申告期限が、日本より先に来ることがあります。資料がすべてそろうまで待たず、早めに相談を始めましょう。

日本に住む父(日本国籍・米国市民権なし、米国遺産税上の非居住者)が亡くなり、米国の証券口座に米国法人が発行した株式を保有していたケースを想定します。

  • 米国株の評価額:約1億5,000万円(1ドル150円で約100万ドル)
  • 相続人:日本に住む長男
  • 長男は、米国株を売って日本の相続税を払う予定でした
時期主な対応
死亡直後証券会社へ連絡し、必要書類を確認
早い段階日米の申告要否を判定し、資料を収集
9か月以内Form 706-NAを提出(必要な場合)
10か月以内日本の相続税を申告・納付
米国側の手続き中必要に応じて米国内国歳入庁(IRS)へ移転証明書を請求し、名義変更などを進める

米国市民でも米国遺産税上の米国居住者でもない方の遺産では、米国資産の移転にあたり、IRSの移転証明書が必要になる場合があります。ただし、米国で適法に選任され、職務を行う遺産管理人が管理する財産については不要です。

Form 706-NAの提出義務がある場合は、申告書の提出とは別に移転証明書を請求し、IRSによる審査や納税状況の確認を経て発行されます。一方、申告義務がない場合は、IRSが提出資料を確認し、移転証明書は不要で発行しない旨の通知を行う取扱いです。必要な手続きが完了するまで、米国株の移転・売却が制限される場合があります。

米国株の売却代金を日本の納税資金にあてる場合は、相続税の納期限までに換金できない可能性も考慮する必要があります。日本と米国の手続きを並行して進め、納税資金の準備方法も早めに検討しましょう。

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米国相続に強い税理士を選ぶ4つの確認事項

米国相続に詳しい税理士を選ぶ際は、米国側の申告への対応範囲や現地専門家との連携体制を確認することが重要です。依頼前に確認したい4つの項目を紹介します。

  1. 米国相続の対応実績
  2. Form 706-NAの担当者
  3. 州税申告の対応範囲
  4. 米国弁護士への連絡範囲

1. 米国相続の対応実績

対応件数だけでなく、自分の案件に近い経験があるかを確認します。具体的には、次のような質問をしてみましょう。

  • 米国株や米国の証券口座の相続を担当したことはありますか
  • 米国不動産の相続を担当したことはありますか
  • Form 706-NAの対象となる相続を担当したことはありますか

2. Form 706-NAの担当者

米国遺産税の申告では、Form 706またはForm 706-NAの提出要否の判定、申告書の作成・提出、IRSへの対応について、それぞれの担当者を確認します。

申告書への署名は原則として遺産の執行者(executor:遺言執行者や遺産管理人)が行います。ただし、米国内で適法に選任され、活動しているexecutorがいない場合は、財産を占有・管理する者が申告義務者となることがあります。

米国側の申告書作成などは、外部の米国専門家が担当します。税理士が外部の専門家と連携するときは、日本側の連絡窓口も確認しましょう。担当範囲があいまいなままだと、申告準備が遅れたり、日米で資料の確認漏れが起きたりするおそれがあります。

3. 州税申告の対応範囲

連邦の遺産税だけでなく、州の申告が必要かも確認します。該当する州の申告まで対応できるか、現地の専門家との連携が必要かを質問しましょう。対応範囲外の場合は、適切な専門家を紹介してもらえるかも確認します。紹介先への報酬が別契約になるかどうかも、契約前に確認しておくと安心です。

4. 米国弁護士への連絡範囲

プロベートが必要なときに、税理士が米国弁護士とどう関わるかを確認します。紹介だけなのか、資料の共有や進捗確認まで対応するのかを聞きましょう。担当範囲が明確であれば、相続人が専門家同士の連絡を取り次ぐ負担を抑えやすくなります。

米国相続の相談前に準備する資料

相談前に資料を整理すると、必要な手続きと相談先を判断しやすくなります。米国相続では、米国での身分や資産の所在地がわかる資料が特に重要です。

資料主な確認内容
死亡証明書死亡日、死亡地、住所
国籍・居住関係資料国籍、米国市民権、グリーンカード、居住歴
相続人関係資料続柄、国籍、現在の住所、過去の居住歴
米国資産一覧種類、所在地、名義、概算額
口座関係資料金融機関名、残高、受取人指定
不動産関係資料所在地、権利関係、評価資料
遺言書遺産の分け方、遺言執行者
信託書類信託財産、受託者、受益者
米国税務書類過去の申告書、IRSからの通知
手続き関係資料金融機関や専門家との連絡記録

英文の書類は、まず原文のまま共有し、翻訳が必要か相談先に確認しましょう。

米国相続の相談先に関するよくある質問

相談先を探している段階でよくある質問に回答します。

  • 米国相続は日本の税理士だけで対応できますか?
  • 米国資産が少額でも米国相続の相談はできますか?
  • 米国相続は相続発生前でも相談できますか?
  • 米国相続は書類がそろう前でも相談できますか?

米国相続は日本の税理士だけで対応できますか?

日本の相続税申告のみで完結する場合は、日本の税理士だけで対応できることがあります。

一方、米国で遺産税申告やプロベートが必要な場合は、手続きの内容に応じて米国税務の専門家や米国弁護士への相談・連携を検討しましょう。

米国資産が少額でも米国相続の相談はできますか?

相談できます。日本の財産を含めた相続税の課税関係と、米国側で必要な申告や手続きの有無をあわせて確認します。

米国相続は相続発生前でも相談できますか?

相談できます。米国資産の名義、受取人指定、遺言書、信託書類を生前に確認しておくと、相続後に必要となる手続きを整理しやすくなります。

米国相続は書類がそろう前でも相談できますか?

相談できます。死亡日、関係者の国籍や住所、米国資産の概要がわかれば、必要な手続きの整理を始めることが可能です。不足している資料は、初回相談のあとで確認していきます。

米国相続の相談なら税理士法人ネイチャー

米国相続では、日本の相続税だけでなく、米国で必要となる申告や名義変更なども確認する必要があります。どの専門家に相談すべきか判断できない段階でも、早めに手続きを整理することが重要です。

税理士法人ネイチャーでは、日本の相続税申告をはじめ、米国資産の評価や米国側で必要となる手続きの整理についてご相談を承っています。米国で申告や法的手続きが必要な場合は、必要に応じて当社が窓口となり米国の専門家と連携して対応します。

また顧問税理士様がおられる場合でも現在の関係を維持したまま、米国相続のみをご相談いただくことも可能です。相続税だけでなく、米国資産の保有や承継を含めて資産全体を整理したい方もご相談ください。

また、申告が期限内に出来ておらず既に税務調査の通知が来ている場合でも、サポートをさせていただけます。当社は英語対応が可能なため、お客様と現地の英語しか通じない弁護士の間をサポートさせていただく場合もあります。初回面談は無料です。必要な手続きや相談先がわからない段階でも、お気軽にお問い合わせください。

まとめ:米国相続は手続きに合う専門家へ相談しよう

米国が関係する国際相続の相談先は、必要な手続きによって異なります。日本の相続税申告は日本の税理士、米国で遺産税申告が必要な場合は米国税務に詳しい専門家へ相談します。
プロベートが必要な場合は、米国弁護士が主な相談先です。

相談前に、亡くなった方の国籍や米国での居住状況、相続人の住所、米国資産の種類や所在地、死亡日を整理しましょう。米国側の申告期限が日本より先に来る場合もあるため、早めの相談をおすすめします。

税理士法人ネイチャーでは、日本の相続税申告を中心に、米国側で必要な手続きの整理をお手伝いしています。初回面談は無料です。米国資産の相続でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

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