オーストラリアに相続税はない?日本で課税される条件を4例で解説

オーストラリアで暮らす家族がいる場合、「相続時にどの国で税金がかかるのか」が気になる方も多いでしょう。

オーストラリアには、日本の相続税にあたる税金はありません。ただし、オーストラリアに相続税がないことと、日本で相続税がかからないことは別です。相続人や被相続人の住所・国籍・過去の日本居住歴によっては、オーストラリアにある財産も日本の相続税の対象になります。

また、オーストラリアでは、相続した財産を後に売却した場合や、一定の資産が非居住者へ移る場合に、キャピタルゲイン課税が生じることがあります。

この記事では、オーストラリア側の税金と、日本の相続税の課税範囲を分けて整理します。4つの事例をもとに、オーストラリアにある財産が日本の相続税の対象になるかを比較し、相続時に確認すべき税金と手続きの流れを解説します。

国際税務

オーストラリアに相続税はない?

オーストラリアには、居住者・非居住者を問わず相続税や遺産税はありません。連邦と各州の相続税・遺産税は、1970年代後半から1980年代にかけて廃止されました。現在は、相続した財産を受け取ったこと自体に相続税や遺産税はかかりません。

ただし、相続後に税金が生じる場合はあります。相続した財産を後に売却して利益が出た場合は、キャピタルゲイン税(CGT)の対象になることがあります。CGTとは、不動産や株式などの資産を売却した際の利益を所得に含めて課税する仕組みです。

相続した不動産の家賃や株式の配当も、原則として所得税の対象です。

また、被相続人(亡くなられた方)がオーストラリア居住者で、オーストラリア非居住者の相続人へ一定の資産が移る場合は、被相続人側でCGTが生じることがあります。オーストラリア側では、相続税そのものではなく、所得税やCGTの取扱いを確認することが重要です。

一方、日本の相続税は、日本の税法に基づいて別途判定します。オーストラリアに相続税がない場合でも、日本側で国外財産として課税対象になることがあります。

時期ごとに確認する税金は、次のとおりです。

時期オーストラリア側日本側
亡くなったとき相続税・遺産税なし。※非居住者へ一定の資産が移る場合は、被相続人側でCGTが生じることがある相続人・被相続人の住所や国籍などから、相続税の課税範囲を判定する
財産を引き継ぐとき財産を受け取ったこと自体には原則として課税されない日本の課税対象になる財産は、相続開始時の価額で評価し、原則として死亡日の為替相場で円換算する
相続後に持ち続けるとき不動産の家賃収入や株式の配当などは、所得税の対象になる場合がある日本の居住者は、国外所得も原則として課税対象。ただし、非永住者は、国外源泉所得のうち国内で支払われたもの、国内に送金されたものなどが課税対象
相続後に売るときキャピタルゲインが生じるとCGTの対象になる場合がある日本の課税対象となる場合は、譲渡所得などを計算

オーストラリアの財産に日本の相続税はかかる?

日本の相続税がかかるかは、財産の場所だけでは決まりません。相続人と被相続人の住所、国籍、過去の日本居住歴などを確認して判定します。

日本国籍の家族では、主に次の点を確認します。

  • 相続人が相続時に日本に住所を有しているか
  • 被相続人が死亡時に日本に住所を有しているか
  • 相続人・被相続人が日本国籍を有しているか
  • 相続開始前10年以内に日本国内の住所歴があるか
  • 取得する財産が日本国内財産か国外財産か

相続人が日本国内に住所を有する場合は、オーストラリアの不動産、預金、有価証券なども、原則として日本の相続税の課税対象になります。相続人が国外に住んでいる場合でも、被相続人の住所や過去の日本居住歴によって、国外財産まで課税対象になることがあります。

日本国籍の家族を例に、代表的な4つのパターンを比べると次のとおりです。

例 相続人の住所 被相続人の住所 日本国籍 相続開始前10年の住所歴 オーストラリア財産の日本での課税
①相続人だけ日本に住んでいる 日本 オーストラリア 相続人:あり 問わない 課税対象
②被相続人だけ日本に住んでいる オーストラリア 日本 相続人:あり 問わない 課税対象
③双方がオーストラリアへ移住して10年以内 オーストラリア オーストラリア 双方:あり 双方とも10年以内に日本の住所歴あり 課税対象
④双方がオーストラリアへ移住して10年超 オーストラリア オーストラリア 双方:あり 双方とも10年以内に日本の住所歴なし 原則対象外(日本国内の財産のみ課税)

①は、被相続人である親が何十年も前に移住していても、相続人が日本に住んでいるため、相続人が取得するオーストラリア財産は日本の相続税の課税対象になります。➁は逆パターンですが、同様にオーストラリアの財産が日本の相続税の課税対象になります。

③は、双方がオーストラリアに住んでいても、相続人もしくは被相続人に相続開始前10年以内の日本での住所歴があるため、オーストラリア財産も課税対象です(なお日本国籍がない場合は判定が変わる可能性があります)。

④は、相続人と被相続人の双方が10年超にわたってオーストラリアに住み、日本国内の住所歴がない場合、オーストラリア財産は原則として日本の相続税の対象外となる可能性があります。ただし、日本国内の不動産や日本法人株式など、日本国内財産は引き続き日本の相続税の対象です。

また、④のようなケースでも、相続人の1人が日本に住んでいる場合、その相続人が取得するオーストラリア財産は①と同様に課税対象になります。相続人が複数いる場合は、相続人ごとに判定する必要があります。

ただし、住所や10年以内の住所歴だけで一律に判断できない場合もあります。

  • 住所は住民票の有無ではなく、生活の本拠がどこにあるかで判断します
  • 日本国籍者などが短期間(おおむね1年以内)の国外勤務をする場合は、日本に住所があるものとして扱われることがあります
  • 外国籍で一定の在留資格により日本に住む方には、別の判定ルールがあります
  • 被相続人が国外転出時課税の納税猶予を受けていた場合は、取扱いが異なることがあります

国を問わない判定の基本はこちらで解説しています。

【想定事例】シドニー在住の父から、日本在住の長男が相続したケース

父は25年前にオーストラリアへ移住し、長男は日本で暮らしています。例①に当たるため、長男が取得するオーストラリアの財産も日本の相続税の対象です。

項目金額
シドニーの自宅250万豪ドル(2億5,000万円)
オーストラリアの上場株式80万豪ドル(8,000万円)
オーストラリアの預金50万豪ドル(5,000万円)
課税価格の合計3億8,000万円
基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 1人)▲3,600万円
課税遺産総額3億4,400万円
相続税額(3億4,400万円 × 50% − 4,200万円)1億3,000万円

※1豪ドル=100円、法定相続人は長男1人、各財産の相続税評価額は上記金額と同額と仮定しています。債務・葬式費用はなく、各種税額控除や特例の適用もないものとした概算です。

このように、オーストラリアで相続税がかからなくても、日本では多額の相続税が生じる場合があります。国外財産が多い場合は、日本での申告や納税に必要な資金も早めに確認しておくことが重要です。

国際税務

オーストラリアの相続で生じる可能性がある税金

オーストラリアには相続税や遺産税はありません。ただし、相続に関連して、オーストラリアの所得税が問題になる場合があります。

主に確認したいのは、次の3つです。

  • キャピタルゲインにかかる所得税
  • Superannuationなどの死亡給付にかかる所得税
  • Superannuationは必ずしも遺言どおりに相続されるわけではない

キャピタルゲインにかかる所得税

キャピタルゲイン税(CGT)は、資産の売却などで生じた利益に対する課税です。オーストラリアでは、CGTという独立した税目があるわけではなく、キャピタルゲインを所得に含めて所得税を計算します。

相続で財産を受け取っただけであれば、原則として相続人側にCGTは生じません。相続に関連してCGTが問題になりやすいのは、主に次の2つの場面です。

場面課税される可能性がある人確認する内容
相続後に財産を売却した場合相続人、遺産管理人など取得費、売却額、主たる住居の特例、非居住者の取扱い
一定の資産が非居住者へ移る場合被相続人側CGT Event K3の該当有無、資産の種類、相続人の居住者区分

相続後に財産を売却した場合

相続した不動産や株式を後に売却して利益が出た場合、その利益がオーストラリアのCGTの対象になることがあります。

キャピタルゲインは、売却額から取得費などを差し引いて計算します。相続した資産の取得費は、被相続人がその資産をいつ取得したかなどによって変わります。

被相続人の取得時期相続人側の取得費の考え方
1985年9月20日以後に取得した資産原則として、被相続人の取得費を引き継ぐ
1985年9月20日より前に取得した資産原則として、死亡日の時価を基準にする

ただし、被相続人の自宅などには別の取扱いがあります。被相続人が死亡直前に主たる住居として使用しており、所得を生む目的で使用していなかった住宅などは、死亡から2年以内に売却すれば、CGTの全部または一部が免除される場合があります。

一方、被相続人や相続人がオーストラリアの税務上の非居住者である場合は、主たる住居の免除が制限されることがあります。また、オーストラリアの非居住者は、2012年5月8日以後の期間に対応するキャピタルゲインについて、50%のCGTディスカウントが制限される場合があります。

さらに、2026-27年度の豪州連邦予算および関連法案では、2027年7月1日以後に発生する一定のキャピタルゲインについて、従来の50%CGTディスカウントを、インフレに基づく控除と最低30%税率の仕組みに置き換える方針が示されています。もっとも、実際の適用関係は、今後の法制化や公表資料を確認する必要があります。

不動産売却時は15%の源泉徴収にも注意する

オーストラリアの一定の不動産を売却する場合は、外国居住者に関するキャピタルゲイン源泉徴収制度にも注意が必要です。

2025年1月1日以後の契約では、一定のオーストラリア不動産を売却する際、原則として買主が売却価額の15%を差し引き、ATOへ納付します。これは「売却益の15%」ではなく、「売却価額の15%」を基準にする制度です。

オーストラリア居住者である売主は、所定のクリアランス証明書を買主へ提示することで、通常は源泉徴収を回避できます。非居住者で、源泉徴収額が本来の税額より過大になる場合は、Variationの手続きを検討し、最終的にはオーストラリアの所得税申告で精算します。

たとえば、相続した不動産を200万豪ドルで売却する場合、一定の手続きを行わなければ、30万豪ドルが源泉徴収される可能性があります。実際の譲渡益が30万豪ドルより少なくても、源泉徴収額は売却価額を基準に計算されるため、売却時の資金繰りにも影響します。

日本居住者がオーストラリア不動産を売却し、日本でも課税対象になる場合は、日本側でも譲渡所得などの申告が必要になることがあります。日本では、相続した土地・建物などの取得費と取得時期を、原則として被相続人から引き継ぎます。

オーストラリアで所得税を負担し、日本でも同じ所得が課税対象になる場合は、日本で外国税額控除を適用できる可能性があります。適用要件や控除限度額は個別に確認が必要です。被相続人の購入契約書、改修費、売却費用などの記録は保管しておきましょう。

オーストラリア非居住者へ財産が移る場合|CGT Event K3

被相続人が死亡直前にオーストラリアの税務上の居住者で、財産を取得する相続人がオーストラリアの税務上の非居住者である場合は、CGT Event K3に注意が必要です。

CGT Event K3は、相続人が財産を売却していなくても、被相続人が死亡直前にその資産を時価で処分したものとして扱われる可能性がある制度です。

主に次の条件を満たす場合に問題となります。

  • 被相続人が死亡直前にオーストラリアの税務上の居住者である
  • 財産を取得する相続人がオーストラリアの税務上の非居住者である
  • 相続人が取得する財産が、Taxable Australian Propertyに該当しない

たとえば、オーストラリア在住の父から、日本在住の子がオーストラリアの上場株式を相続するケースです。上場株式がTaxable Australian Propertyに該当しない場合、父が死亡直前にその株式を時価で処分したものとして、オーストラリア側でCGTが生じる可能性があります。

一方、オーストラリア不動産のように、非居住者が保有してもオーストラリアでCGTの対象となる資産は、通常この取扱いの対象外です。

CGT Event K3に該当する場合、生じたキャピタルゲインは、原則として被相続人の死亡年の所得税申告に反映します。日本で相続税評価を行うだけでなく、オーストラリア側で死亡年の所得税申告が必要かも早めに確認しましょう。

日本在住の相続人は早めに確認する

オーストラリアに相続税がなくても、オーストラリア在住の親から日本在住の子へ上場株式などが移ることで、オーストラリア側にCGTが生じることがあります。

また、日本在住の相続人が相続後にオーストラリア不動産や株式を売却する場合は、オーストラリア側のCGTだけでなく、日本側の所得税、外国税額控除、為替換算も確認が必要です。

オーストラリア資産を相続する場合は、「相続時の日本の相続税」と「相続後・死亡時のオーストラリア所得税」を分けて整理しておきましょう。

Superannuationなどの死亡給付にかかる所得税

Superannuation(スーパーアニュエーション)は、オーストラリアの年金積立制度です。加入者が亡くなった場合、口座残高や保険金などが死亡給付として支払われることがあります。

死亡給付の税負担は、主に次の点で変わります。

  • 受取人が税法上の「death benefits dependant」に該当するか
  • 一時金で受け取るか、年金形式で受け取るか
  • 給付に非課税部分・課税部分が含まれるか
  • 課税部分が、課税済み要素か未課税要素か

税法上の「death benefits dependant」には、配偶者、元配偶者、18歳未満の子、被相続人と相互依存関係にあった人、被相続人に経済的に依存していた人などが含まれます。

配偶者や18歳未満の子など、death benefits dependantに該当する人が死亡給付を一時金で受け取る場合、原則として豪州側では非課税です。

一方、独立した成人の子など、death benefits dependantに該当しない人が一時金で受け取る場合は、給付の内訳を確認します。非課税部分には税金がかかりませんが、課税部分には税金がかかることがあります。一般的には、課税済み要素には最大15%、未課税要素には最大30%の税率が適用されることがあり、受取人の状況によってはMedicare levyが加わる場合があります。

ただし、実際の税額は、死亡給付の内訳、受取方法、受取人の居住者区分、基金の種類などによって変わります。特に年金形式で受け取る場合は、一時金とは取扱いが異なるため、別途確認が必要です。

日本の相続税や所得税での取扱いも、Superannuationの契約内容、受取人指定、給付の内容、受取方法によって変わります。日本在住の相続人が受け取る場合は、オーストラリア側の課税関係と、日本側の相続税・所得税の両方を確認しましょう。

Superannuationは必ずしも遺言どおりに相続されるわけではない

Superannuationの死亡給付は、通常の預金や株式とは異なり、必ずしも被相続人の遺産に含まれて遺言どおりに分配されるわけではありません。

Superannuationの加入者は、生前に死亡給付の受取人を指定できる場合があります。受取人指定には、主に次のような種類があります。

指定方法主な内容
Binding nomination要件を満たしていれば、基金が原則として指定内容に従う
Non-binding nomination基金の判断材料にはなるが、基金が必ず従うとは限らない
Legal personal representativeの指定死亡給付を遺産に入れ、遺言や遺産分配の手続きに沿わせるために使われることがある

指定がない場合や、指定が有効でない場合には、Superannuation FundのTrusteeが、制度上受取可能な人の中から支払先を判断することがあります。

また、Superannuation制度上の受取可能な人と、税法上のdeath benefits dependantは必ずしも一致しません。

たとえば、Superannuation制度上は成人した子も受取人になり得ます。しかし、税法上は、18歳以上の子というだけでは、通常death benefits dependantには該当しません。被相続人に経済的に依存していたか、相互依存関係があったかなどを個別に確認する必要があります。

日本在住の子がオーストラリアのSuperannuationを受け取る場合は、次の3点を分けて確認しましょう。

  • 誰が受取人として指定されているか
  • オーストラリアで所得税がかかるか
  • 日本で相続税・所得税の対象になるか

Superannuationは、遺言、受取人指定、豪州税務、日本税務がそれぞれ関係するため、通常の預金や株式とは分けて確認することが重要です。

オーストラリアでは死亡前と死亡後で所得税の申告が分かれる

オーストラリアには相続税や遺産税はありません。ただし、相続が発生しても、オーストラリア側の税務申告が一切不要になるとは限りません。

被相続人が死亡するまでに得た所得については、被相続人本人の最終申告である「Date of death tax return」を提出する場合があります。たとえば、死亡日までに発生した給与、事業所得、家賃収入、配当、キャピタルゲインなどが確認対象になります。

一方、死亡後に遺産から生じた所得は、被相続人本人の所得とは分けて考えます。死亡後に遺産から家賃収入、配当、利息、キャピタルゲインなどが生じた場合は、遺産を一つの信託として扱い、「Deceased estate」のTrust tax returnが必要になる場合があります。

死亡後最初の3課税年度でも、遺産の純所得が一定額を超える場合、受益者が遺産の所得を受け取る権利を有している場合、受益者の中にオーストラリアの税務上の非居住者がいる場合などには、Trust tax returnが必要になることがあります。4年目以降は、遺産に所得やキャピタルゲインが生じれば、原則として申告が必要です。

そのため、日本在住の子がオーストラリア在住の親の遺産を相続する場合、「オーストラリアには相続税がないから現地で申告は不要」とは限りません。日本の相続税申告とあわせて、オーストラリア側でDate of death tax returnやDeceased estateのTrust tax returnが必要かも確認しましょう。

オーストラリアの相続税がなくても手続きは必要

オーストラリアで相続税の申告が不要でも、財産の名義変更や管理には現地の相続手続きが必要になる場合があります。

日本の相続税申告と並行して進めるために、次の点を確認しましょう。

  • プロベートが必要になる場合
  • 共同名義の不動産がある場合
  • 日本の申告期限が先に来る場合

プロベートが必要になる場合

プロベートとは、裁判所が遺言の有効性を確認し、遺言執行者に遺産を管理・処分する権限を認める手続きです。プロベートを経ることで、遺言執行者は金融機関や不動産登記などの手続きを進めやすくなります。

遺言がない場合や、遺言で有効な執行者が定められていない場合などは、遺産管理人に権限を与える「Letters of Administration」の手続きが必要になることがあります。

プロベートやLetters of Administrationが必要かどうかは、州・準州、財産の種類、金額、金融機関の方針によって異なります。少額の預金などでは不要な場合もありますが、単独名義の不動産や、各共有者が持分を個別に所有する「Tenancy in Common」の持分がある場合は、通常、現地で手続きが必要になります。

日本で作成した遺言書があっても、オーストラリアでは別途手続きが必要になる場合があります。オーストラリアに不動産や金融資産がある場合は、現地専門家や金融機関に手続きの要否を確認しましょう。もし、現地の専門家のご紹介が必要な場合は、お気軽に当社にお問い合わせください。

共同名義の不動産がある場合

オーストラリアの共同名義には、主に「Joint Tenancy」と「Tenancy in Common」があります。

共同所有の形主な特徴相続手続きへの影響
Joint Tenancy生存者取得権のある共同所有。亡くなった共有者の権利は、原則として生存する共同所有者へ移るプロベートを経ずに名義変更できる場合がある
Tenancy in Common各共有者の持分が独立している共有。亡くなった方の持分は遺産に含まれる遺言やプロベートなどの相続手続きの対象になりやすい

Joint Tenancyでは、亡くなった共有者の権利が原則として生存する共同所有者へ移るため、その不動産についてはプロベートを経ずに名義変更できる場合があります。

ただし、現地の手続きでプロベートが不要だからといって、日本の相続税の対象から外れるとは限りません。Joint Tenancyによって生存共有者へ無償で移転した権利も、日本の相続税法上の課税対象となる場合があります。

国税庁は、米国ハワイ州の合有不動産について、生存者が無償で取得した被相続人の合有不動産権相当額を相続税の課税対象とする考え方を示しています。オーストラリア不動産についても、所有形態、取得経緯、資金負担、現地法上の権利関係を確認したうえで、日本の課税関係を判断する必要があります。

日本の申告期限が先に来る場合

日本の相続税の申告期限は、相続の開始を知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月です。オーストラリアのプロベートや名義変更手続きが長引いても、日本の申告期限は原則として延びません。

そのため、オーストラリアの手続きの完了を待たず、日本の相続税申告の準備も並行して進める必要があります。

オーストラリアにある外貨建ての財産は、相続開始時の価額を確認し、原則として納税義務者の取引金融機関が公表する相続開始日の最終TTB、またはこれに準ずる相場で円換算します。銀行や証券会社には、死亡日時点の残高や評価額を確認できる資料を依頼しましょう。

遺産分割が日本の申告期限までにまとまらない場合でも、原則として法定相続分などに従って取得したものとして計算し、期限内に申告・納税します。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を後から適用する予定がある場合は、当初申告に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておく必要があります。

オーストラリア資産がある相続では、現地手続き、日本の申告期限、財産評価、為替換算を同時に管理することが重要です。

オーストラリア財産の相続税申告なら税理士法人ネイチャー

海外資産の相続では、日本の相続税だけでなく、現地での手続きや資産の名義変更、相続後の資産管理まで含めて考えることが重要です。税務と手続きを別々に判断すると、税引後に残る資産や今後の運用方針まで含めた全体像を把握しにくくなる場合があります。

税理士法人ネイチャーでは、オーストラリアにある不動産・預金・有価証券などについて、日本の相続税の課税対象となるかの判定から、財産評価、豪ドルから円への換算、相続税申告までご相談いただけます。専門家とチームを組んで全力でサポートをいたします。

海外資産を含む相続について整理したい方は、税理士法人ネイチャーへご相談ください。

まとめ:オーストラリアに相続税はなくても日本で課税される場合がある

オーストラリアに相続税はありません。

ただし、日本の相続税は、相続人・被相続人の住所や国籍、相続開始前10年以内の日本での住所歴などを基に別途判定します。オーストラリア側でも、CGTや死亡給付にかかる税金、プロベートなどの確認が必要です。

財産の種類ごとに資料を整理し、日本の申告期限を見すえて早めに準備を進めましょう。判定に迷う場合は、ぜひ一度お問い合わせください。

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