役員報酬から毎月所得税が天引きされ、会社で年末調整を受けていても、個人で確定申告が必要になる場合があります。会社の税務を顧問税理士に任せていても、役員個人の確定申告まで確認されているとは限りません。
申告の要否は、役員報酬の金額だけでは決まりません。賞与を含む給与の年間収入や兼任先からの報酬、自社から受け取る家賃による所得なども確認が必要です。
この記事では、役員報酬を受け取る方の確定申告と年末調整の要否をケース別に解説します。具体例をもとに、ご自身の状況と照らし合わせながら、確定申告が必要かどうかを確認しましょう。
役員報酬の確定申告が必要な4つのケース
役員報酬を受け取る方が確定申告を必要とする主な4つのケースを金額の計算方法とあわせて解説します。「収入」と「所得」の違いを理解することで、確定申告の要否を判断しやすくなります。
- 年間給与収入が2,000万円を超える場合
- 給与以外の所得が20万円を超える場合
- 年末調整されない給与などが20万円超の場合
- 同族会社から家賃などを受け取る場合
1. 年間給与収入が2,000万円を超える場合
1月から12月までの給与収入が2,000万円を超えると、原則として確定申告が必要です。
判定には、税金や社会保険料を引く前の額面金額を使います。手取り額ではありません。毎月の役員報酬に加えて賞与も含め、複数の会社から給与を受け取っている場合は、その給与も含めて確認します。
【例】A社長のケース
| 項目 | 金額 |
| 役員報酬(月150万円×12か月) | 1,800万円 |
| 役員賞与 | 300万円 |
| 年間給与収入 | 2,100万円 |
役員報酬の年額だけでは2,000万円以下ですが、賞与を含めると2,000万円を超えます。月額の役員報酬だけで判断すると、申告漏れにつながるおそれがあります。年間給与収入がちょうど2,000万円の場合は、「2,000万円を超える」には当たりません。ただし、ほかの3ケースに該当すれば確定申告が必要です。
2. 給与以外の所得が20万円を超える場合
1社から給与を受け取っており、その給与の全額が源泉徴収の対象となっている方は、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。ここでの「所得」は、原則として収入から必要経費を差し引いた金額です。家賃収入なら、管理費や減価償却費などの必要経費を差し引いた不動産所得で判定します。
減価償却費とは、建物などの取得費を耐用年数に応じて各年の必要経費に配分するものです。不動産所得や、講演料などによる雑所得は、所得金額を合計します。ただし、確定申告をしないことを選択した上場株式等の配当などは、20万円の判定に含めません。源泉徴収ありの特定口座で申告不要とした譲渡益も同様です。
たとえば、役員報酬1,500万円のAさんが、第三者に貸している所有マンションから年30万円の不動産所得を得ている場合、原則として確定申告が必要です。
3. 年末調整されない給与などが20万円超の場合
2社以上から給与を受け取り、その給与のすべてが源泉徴収の対象となっている方は、原則として次の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
- 年末調整されなかった給与の収入金額
- 給与所得・退職所得以外の所得金額
給与は「収入金額」、それ以外は「所得金額」で数える点に注意しましょう。
たとえば、主な会社で年末調整を受けながら、別の会社の役員も兼任しているBさんの場合、兼任先の役員報酬は月2万円で、年間24万円です。ほかに給与・退職所得以外の所得がなくても20万円を超えるため、原則として確定申告が必要です。
※給与の収入金額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の所得控除を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得・退職所得以外の所得も20万円以下の場合は、確定申告が不要となる例外があります。役員報酬が高額な方は、該当するか個別に確認が必要です。
4. 同族会社から家賃などを受け取る場合
同族会社の役員やその役員と一定の特殊な関係にある方が、その会社から貸付金の利子や家賃などを受け取る場合は、所得が20万円以下でも原則として確定申告が必要です。
同族会社とは、原則として上位3株主グループが持つ株式数や議決権などの割合が50%を超える会社です。株主グループには、その株主本人のほか、親族や一定の関係にある個人・法人などが含まれます。対象となる主な支払いは、次のとおりです。
- 会社に貸したお金の利子
- 個人で所有する不動産を会社に貸した家賃
- 機械などの資産を会社に貸した使用料
たとえば、個人所有の建物をC社に事務所として貸しているC社長の場合、年15万円の不動産所得があります。20万円以下でも、原則として確定申告が必要です。会社に貸したお金の元本が返済されるだけであれば、原則として所得には当たりません。所得として申告の対象になるのは利子であり、元本の返済とは区別します。
役員報酬の確定申告が必要ないケース
役員報酬を受け取っていても、確定申告が一律に必要になるわけではありません。
たとえば、1社から受け取る年間給与収入が2,000万円以下で年末調整を受けており、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です。
ただし、同族会社から家賃や貸付金の利子などを受け取る場合は、20万円以下でも原則として確定申告が必要です。また、医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の所得も原則として申告に含めます。
年末調整が済んでいるかだけではなく、給与以外の所得や複数の勤務先からの給与も含めて判断することが重要です。
役員報酬の年末調整は必要?
役員も、条件を満たせば会社で年末調整を受けます。社長や一人社長も基本的な扱いは同じです。
| 確認項目 | 年末調整の対象となる主な条件 |
| 扶養控除等申告書の提出 | 年末調整を行う会社に提出している |
| 年末の勤務状況 | 年末まで在籍している(年の途中の退職は原則対象外) |
| 給与の年額 | 1年間に支払うことが確定した給与の総額が2,000万円以下 |
| 居住地 | 原則として日本の居住者である |
扶養控除等申告書(正式名称は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」)とは、扶養親族などの情報を勤務先に申告する書類です。
扶養親族がいない方も、原則として提出します。2社以上から給与を受ける場合、提出できるのは主たる給与を受ける1社です。提出していない会社の給与は「従たる給与」となり、原則として年末調整の対象外です。
年末調整の対象となる役員については、本人が確定申告を予定している場合でも、原則として会社が年末調整を行わなくてはなりません。
年末調整の対象となる役員については、会社が年末調整を行います。年末調整を受けた方も、給与以外の所得などによって確定申告が必要になる場合があります。年末調整の対象かどうかと、個人の確定申告の要否は分けて確認しましょう。
役員報酬の確定申告の注意点
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税や控除の扱いで確認したい点があります。「申告不要」の意味を正しく押さえておきましょう。
- 申告不要でも住民税の申告を確認する
- 年末調整で受けられない控除を確認する
申告不要でも住民税の申告を確認する
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合があります。20万円以下の所得を申告不要とするルールは、所得税の取り扱いです。
たとえば、1社から給与を受け取る役員に、第三者へ貸している駐車場などから、給与以外の所得が年10万円あるとします。所得税の確定申告をしない場合でも、原則として住民税の申告が必要です。
「申告不要」は、所得が非課税になるという意味ではありません。申告手続きの要否と、住民税が課税されるかどうかは分けて考えます。住民税の申告先は、お住まいの市区町村です。
年末調整で受けられない控除を確認する
年末調整では受けられない控除を適用するため、確定申告をする場合があります。代表的なものは、医療費控除や寄附金控除、雑損控除です。寄附金控除には、ふるさと納税も含まれます。
控除を受けるために確定申告をする場合は、20万円以下の所得も原則として申告に含めます。
ただし、確定申告不要制度を選べる上場株式等の配当などは、申告しない選択も可能です。申告するかどうかによって、所得税や住民税などに影響する場合があります。
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役員報酬に家賃や運用益が加わると、個人の年間の税負担を把握しにくくなります。会社の処理は顧問税理士が行っていても、個人の所得全体まで確認する機会は限られます。
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税務面と資産運用の両方を踏まえ、納税後に資産形成へ回せる金額も含めて検討可能です。
まとめ:役員報酬の確定申告は給与収入などで判断しよう
役員報酬の確定申告は、役員だから一律に必要となるものではありません。年間給与収入、給与以外の所得、複数の給与、同族会社からの収入の4点を確認して判断します。年末調整を受けた方も、個人の所得や収入の状況を毎年確認しましょう。
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