グリーンカード保持者に相続税はかかる?日米の課税範囲・申告書類・注意点を解説

米国に暮らし、日本にも不動産や預金をお持ちの方は、「自分に万一のことがあれば、日米のどちらで税金がかかるのか」と不安に感じることもあるでしょう。日本の親から財産を相続した場合、米国への申告が必要なのか迷うケースもあります。

グリーンカード保持者の相続では、日本と米国の課税関係をそれぞれ確認する必要があります。特に米国遺産税では、グリーンカードの有無だけでなく、被相続人のドミサイル(生活の本拠)などを基に課税範囲が判定されるので注意が必要です。

この記事では、グリーンカード保持者が財産を相続する場合と保持者本人が亡くなる場合を、代表的な状況に分けて整理します。日米の課税範囲、提出書類、申告期限に加え、ドミサイルの判定に使う資料を整理します。

国際税務

グリーンカード保持者に相続税はかかる?

グリーンカード保持者に日本の相続税がかかるかは、被相続人と相続人の住所や国籍など様々な条件によって決まります。保持者が日本の家族から財産を受け取る場合、日本の相続税がかかる可能性があります。

米国税務上の非居住外国人や外国遺産から一定の贈与・遺贈を受けた場合、一定の財産を受け取るとForm 3520(米国外から受けた一定の贈与・遺贈をIRSへ報告する情報申告書)の提出が必要になる場合があります。複数の相手から受け取った場合は、一定の関係にある相手からの受取額を合算して判定します。

グリーンカード保持者本人が亡くなった場合は、死亡時のドミサイルによって米国連邦遺産税の課税範囲を判定します。この記事では、米国市民ではないグリーンカード保持者を想定し、代表的な状況ごとに日米の課税範囲、提出書類、申告期限、ドミサイルの確認に用いる資料を整理します。

グリーンカード保持者と日米の相続税

  1. 日米で税金を負担する対象が異なる
  2. 米国遺産税におけるドミサイルの考え方

1. 日米で税金を負担する対象が異なる

日本と米国では、相続に関する税金の課税の仕組みや申告・納税を行う人が異なります。日本の相続税は、原則として財産を取得した相続人などが納めます。課税範囲は、相続人と被相続人の住所や国籍、相続開始前10年以内の国内住所歴などを基に判定されるのが特徴です。外国籍の方が関係する場合には、日本での在留資格や居住期間も確認します。

一方、米国の連邦遺産税は、亡くなった方の遺産の移転に対して課されます。申告と納付は、原則として遺産管理人が行います。日本では相続人と被相続人の双方、米国では亡くなった方の状況が判定の出発点となるのが異なる点です。

2. 米国遺産税におけるドミサイルの考え方

米国遺産税上の居住者かどうかは、グリーンカードの有無だけでなく「ドミサイル」で判定します。ドミサイルとは、居住し、その時点で他の場所へ移る明確な意思を持たない 生活の拠点のことです。米国の所得税では、グリーンカード保持者は原則として米国居住者に当たります。

一方、遺産税では、死亡時の居住状況や本人の意思などを踏まえてドミサイルを判断します。グリーンカードは判断材料の一つですが、保持しているだけで結論は決まりません。

「グリーンカード保持者なら全世界の財産に米国遺産税がかかる」と一律に判断しないことが重要です。

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グリーンカード保持者の相続税を状況別に確認

グリーンカード保持者が相続人になる場合と保持者本人が亡くなる場合では、確認すべき税務が異なります。ここでは、代表的な3つの状況に分けて課税関係を確認します。

  1. 日本に住む親から財産を相続する場合
  2. 米国を生活の本拠とする保持者が死亡した場合
  3. 日本帰国後に保持者が死亡した場合

1. 日本に住む親から財産を相続する場合

米国に住むグリーンカード保持者が、日本に住所のある日本国籍の親から財産を相続する場合、原則として国内外の財産が日本の相続税の対象となります。相続人が米国に住んでいても、申告要件を満たせば日本の相続税申告が必要です。

日本の相続税申告は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。日本に住所がない相続人が相続税を申告する場合は、納税管理人を定めて届出を行います。

日本で相続税を申告した場合でも、米国でForm 3520などの報告が必要かを別に確認することが重要です。

2. 米国を生活の本拠とする保持者が死亡した場合

死亡時のドミサイル(生活の本拠)が米国にあると判断されれば、米国遺産税では日本を含む全世界の財産が対象となります。申告・納税の要否は、遺産の規模や生前贈与、基本除外額、各種控除などを踏まえて検討します。

日本の相続税は、被相続人だけでなく、相続人の住所や国籍などによって課税範囲が変わります。

たとえば、日本に住所がある相続人は原則として国内外の財産が対象です。一時居住者に該当する場合などは、被相続人の状況によって課税範囲が異なることがあります。

また、財産を受け取る配偶者が米国市民でない場合、米国連邦遺産税の配偶者控除の適用には制限があります。

QDOT(適格国内信託)を利用するなど、一定の要件を満たせば配偶者控除を受けられる場合があります。

米国在住のグリーンカード保持者が亡くなった場合は、米国遺産税と日本の相続税の判定がそれぞれ必要です。日米で同じ財産が課税対象となる場合は、日米間の相続税に関する条約や外国税額控除による調整も確認します。控除の対象や限度額は、財産の所在地や課税関係などによって異なります。

3. 日本帰国後に保持者が死亡した場合

米国遺産税では、グリーンカードを保有しているだけで課税範囲は決まりません。死亡時の生活状況や本人の意思などから、ドミサイルが米国にあったかを判断します。

日本を生活の本拠とし、米国にドミサイルがないと判断された場合、米国遺産税は原則として米国内所在財産が対象です。米国内の不動産や米国法人の株式などが該当します。

米国内所在財産の価額などが申告基準を超える場合には、原則としてForm 706-NAの提出が必要となります。財産の種類ごとに、米国遺産税上の所在地や取扱いを確認することになります。

一方、日本の相続税は、被相続人と相続人の住所や国籍などによって課税範囲が決まります。被相続人が日本に住所を有していた場合でも、外国籍の方が関係するケースでは、在留資格や相続人の状況などを含めて確認します。

ドミサイル判定に使う資料

ドミサイルは、生活の実態や本人の意思などを総合して判断されます。以下は、その確認に用いる資料の例です。特定の書類だけで結論が決まるものではなく、必要な資料は個別の状況によって異なります。

  1. 日米の住所履歴を確認する
  2. 日米の滞在履歴を確認する
  3. 家族や仕事の拠点を確認する

1. 日米の住所履歴を確認する

死亡時に、どちらの国を生活の拠点としていたかを確認できる資料を集めます。

  • 日米の自宅の登記簿や売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 日本の住民票や戸籍の附票
  • 電気・ガスなど公共料金の請求書

両国に自宅をお持ちの方ほど、実際にどちらを生活の本拠としていたかを示す記録が判断材料になります。

2. 日米の滞在履歴を確認する

どちらの国で、どの程度生活していたかを確認できる資料も整理します。

  • パスポートの出入国記録
  • 出入国在留管理庁の出帰国記録
  • 航空券や搭乗記録

滞在日数だけでドミサイルが決まるわけではありません。

3. 家族や仕事の拠点を確認する

家族の居住地や仕事の拠点も、生活の本拠や転居意思を判断する材料になります。

  • 配偶者や子の居住地
  • 勤務先や事業の所在地
  • 主に利用していた銀行・証券口座
  • 運転免許や医療保険の登録状況

家族や仕事、金融取引などの拠点を確認し、複数の資料を組み合わせて死亡時の生活の中心を判断することが重要です。

グリーンカード保持者の相続で確認する米国の提出書類

米国の書類は、保持者が財産を受け取る側か亡くなった側かによって異なります。ここでは、相続に関連する主な3つの書類を整理します。

  • Form 3520 一定の贈与や遺贈の受領を報告する書類
  • Form 706 米国市民や遺産税上の居住者の遺産税申告書
  • Form 706-NA 米国非居住者で米国市民ではない方の遺産税申告書

Form 3520 一定の贈与や遺贈の受領を報告する書類

Form 3520は税金を計算して納める書類ではなく、外国信託に関する取引や、外国の個人・遺産などから受け取った一定の贈与・遺贈を報告する書類です。相続との関係では、主に贈与・遺贈の受領に関する情報申告を確認します。

米国税務上のU.S. person(米国市民・居住者など)に該当するグリーンカード保持者が、米国税務上の非居住外国人である日本の親や外国遺産から、1年間に合計10万ドルを超える贈与・遺贈を受けた場合は、原則として報告が必要です。

暦年で申告する個人の提出期限は、原則として受領した年の翌年4月15日です。米国外で居住・勤務するなど一定の要件を満たす場合や、期限延長の適用を受ける場合には、提出期限が異なります。

未提出や記載の不備に対してペナルティが生じる場合があるため、提出要否と併せて期限や記載事項を確認します。

Form 706 米国市民や遺産税上の居住者の遺産税申告書

Form 706は、米国市民または米国遺産税上の居住者が亡くなった場合に、一定の要件を満たすと提出する申告書です。提出は原則として遺産管理人が行います。

2025年に成立した米国の税制改正により、2026年の基本除外額は1,500万ドルとなりました。2027年以降は物価に応じて調整されます。

原則として、遺産総額に調整後課税贈与額などを加えた額が1,500万ドルを超える場合は、Form 706の提出が必要です。また、亡くなった配偶者の未使用の控除枠を引き継ぐために、遺産額が基準以下でも申告が必要となる場合があります。

申告・納税期限は、原則として死亡日から9か月以内です。申告期限の延長が認められても、納税期限が自動的に延長されるわけではないため、それぞれの取扱いを確認します。

Form 706-NA 米国非居住者で米国市民ではない方の遺産税申告書

Form 706-NAは、米国市民ではなく、米国遺産税上も非居住者である方が亡くなった場合に、一定の要件を満たすと遺産管理人が提出する申告書です。死亡時の米国内所在財産に調整後課税贈与額などを加えた額が6万ドルを超える場合は、原則として提出が必要です。

日米相続税条約の適用要件を満たす場合は、一定の割合で計算した統一税額控除を利用できることがあります。条約に基づく取扱いを適用する場合は、Form 706-NAに計算根拠や所定の書類を添付します。

6万ドルは提出要否を判断する基準であり、最終的な納税額を決める金額ではありません。条約の適用も含めて確認することが重要です。なお、相続した外国の金融口座などについては、Form 3520とは別に、FBARやForm 8938などの報告が関係する場合もあります。保有する財産の内容や金額に応じて確認します。

グリーンカード保持者の相続税なら税理士法人ネイチャー

グリーンカード保持者の相続では、日米の住所歴やドミサイル、財産の所在地、申告期限をまとめて整理しなくてはなりません。

税理士法人ネイチャーでは、日本国内での相続税申告をはじめ、海外に保有する財産の評価や外国税額控除の適用可否の検討など、国際相続に関する幅広いご相談を承っています。また、TIAG®の加盟メンバーとして、TAG Alliancesが有する105か国以上、2万5,000人以上の専門家ネットワークを活用し、必要に応じて各国・地域の専門家と協力しながら案件に対応します。海外での税務申告や法的手続きが求められる場合にも、現地の専門家と連携してサポートします。

海外にある資産を相続するケースや、海外在住の相続人が関係する案件など、多様な国際相続に対応可能です。英語でのコミュニケーションが必要な際には、バイリンガルスタッフが海外の相続人や現地の専門家との意思疎通をサポートします。相続発生後の税務申告に加え、将来の海外財産の承継を見据えた事前のご相談も受け付けています。

現在ご契約中の顧問税理士との関係を継続しながら、国際相続に関する業務だけをご相談いただくこともできます。必要書類や資料がまだそろっていない段階でも、お気軽にお問い合わせください。

まとめ:グリーンカード保持者というだけでは相続税は決まらない

相続人がグリーンカード保持者であるだけで、米国遺産税がかかるわけではありません。保持者が亡くなった場合は、死亡時のドミサイルによって米国遺産税の課税範囲が変わります。

最初に保持者が相続人か被相続人かを確認し、生活拠点、財産の所在地、米国の提出書類の順に整理しましょう。日米の申告は、期限も提出先も異なります。全体を早めに把握すると、申告漏れを防ぎ、日米双方で課税される場合の調整も進めやすくなります。

税理士法人ネイチャーでは、国際相続や海外資産に関する税務を取り扱っています。ご自身のケースで日米のどの申告が必要になるか気になる方は、相続税の初回無料相談をご利用ください。

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